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スリランカ:大統領再選 2期目こそ、真実解明とアカウンタビリティ(責任追及)を

潘基文 国連事務総長は、中立な国際調査団の設立を

(ニューヨーク)-マヒンダ・ラジャパクサ大統領が、スリランカ大統領に再選された。ただし、2期目の間も、数千人を超す多くの重大な人権侵害の被害者たちがジャスティス(法の正義)を否定され続けることがあってはならない。潘基文 国連事務総長及び日本などの主要関係国は、スリランカの重大人権侵害に対するアカウンタビリティ(真実解明と責任追及)に向けて動き出すべきだ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

スリランカの人権状況は、ラジャパクサ大統領の1期目に、著しく悪化。しかも、大統領は、重大な人権侵害を行なった者たちの責任を問わずに放置した。タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)との26年に及ぶ内戦は、2009年5月にLTTEの敗北で終結。しかし内戦の最終盤で、政府軍もLTTEも、国際人道法に対する重大な違反行為を何度も行なった。その結果、民間人7千名以上が死亡。国連はその事態を「大量虐殺(bloodbath)」と呼んだ。

「スリランカの人権状況は、ラジャパクサ大統領政権下、これまでにないほど悪化した」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは語った。「ラジャパクサ大統領は、一期目、対テロ戦争遂行のためには人権侵害は容認されるという誤った印象を巧みに演出した。しかし、内戦は終結した。国連と主要関係国は、被害者そして犠牲者のため、公正な法の正義の実現を強く求めるべきだ。」

ラジャパクサ大統領は、サラス・フォンセカ(Sarath Fonseka)元陸軍参謀長との激戦の末、2010年1月26日の選挙に勝利。投票日当日は比較的平穏であったものの、選挙監視員らによれば、選挙運動期間中には数百回の暴力事件が発生、少なくとも4名が殺害された、という。

内戦中から引き続き内戦後にいたるまで、ラジャパクサ政権は30万人近い国内難民を巨大な強制収容キャンプに閉じ込め、国際法に違反して難民の権利や移動の自由を剥奪。スリランカ政府は、1万1千人以上を、LTTE関係者との容疑で、検問所や収容所内で逮捕。逮捕された人びとに当然認められるべき、弁護士の助言を受ける権利や裁判所に身体拘束への異議を申し立てる権利などを認めず、突然に家族から引き離した。

こうした実態に対し、ひるまず批判の声をあげる活動家に対する脅迫と襲撃は増加。スリランカ政府は、テロ対策法や非常事態法の諸規制を平和的な手段で政府を批判した人びとに適用。開かれた議論を行なう余地はますます小さくなった。政府は独立したメディアを敵視。なかには、ジャーナリストが殺害される事件もおき、数十名のジャーナリストが国外避難を余儀なくされた。

スリランカでは、長年にわたり、強制失踪と拉致が横行し続けている。2002年の停戦が崩壊して政府軍とLTTEの間の戦闘が激化した2006年、強制失踪・拉致が急増。2006年と2007年、国連の国連強制失踪作業部会で世界で一番多くの「失踪」事件が登録されたのは、スリランカだった。

2006年1月にトリンコマリー(Trincomalee)で起きた学生5名の超法規的処刑や、2006年8月にムトゥール(Mutur)でおきたフランスのNGOアクション・コント・ラ・ファム(Action Contre la Faim)の援助要員17名の殺害など、ラジャパクサ政権の第一期におきた政治的暗殺事件も未解決のままである。

ラジャパクサ大統領は、人権侵害に対するアカウンタビリティ(真実解明と責任追及)にむけた真摯な措置は何一つ取らなかった、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。2009年7月、ラジャパクサ大統領は、大統領諮問調査委員会(2006年、16件の重大な人権侵害事件を調査するために設置された)について、その任務が完了する前に解散。同委員会を傍聴・監視するために設置された国際独立有識者グループ(International Independent Group of Eminent Persons:IIGEP)は、2008年4月、「同委員会の手続きが透明性を保ち若しくは国際的な規範や基準を満たしているとは判断できない」として、同委員会の傍聴・監視から撤退していた。

過去数年間に、数百-数千件も新たな「失踪」事件や政治的暗殺がおきたが、その大多数はしっかりと捜査もされていないし、犯人は誰一人として処罰されていない。

2009年5月、ラジャパクサ大統領は潘事務総長に対し、内戦末期の数ヶ月におきた人権侵害と戦争法違反の疑惑を調査する、と約束。しかし、その後、ラジャパクサ大統領がそのような調査を行うことは全くなかった。逆に、スリランカ政府は、米国の国務省や国連の超法規的殺害に関する特別報告者が作成した人権報告書に対応すべく弁護団を創設した。

このとおり、スリランカ政府は、重大な人権侵害を放置し、調査をしていない。そこで、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、独立した中立な国際調査団が、紛争の全当事者による人権侵害を調査することが必要だ、と求め続けてきた。これまで、国連事務総長の事務局は、潘事務総長は専門家委員会の創設を検討中である、としてきた。スリランカ軍兵士が昨年戦争犯罪を犯した証拠を「スリランカ政府が調査するのを補助する」ための委員会だ、という。

「ラジャパクサ大統領がこれまでに設置した様々な調査委員会は、人権侵害を調査するというより、実際には、徹底した人権調査を要求する声をかわすためにエネルギーを費やしてきた」とアダムズは語った。「潘事務総長と主要関係各国は、ラジャパクサ大統領のレトリックに、二度と引っかかってはならない。独立した中立的国際調査を求めるべきである。国際調査団の設置、それは潘事務総長の決定にかかっている。」

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