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カンボジア:薬の臨床実験への参加の強制 止めよ

麻薬使用者に、医学的に適切な自主的治療という選択肢の提供を

(ニューヨーク)-カンボジア政府は、麻薬依存を「治療」するための漢方処方臨床実験に、麻薬常用者を強制的に参加させるのを直ちに中止するべきである、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

2009年12月11日以来、カンボジアの警察は少なくとも17名の人びとを逮捕し、プノンペン郊外にある政府運営のオルグカス・コノム(Orgkas Khnom)麻薬収容センターに拘留。拘禁中の人びとは、自主的に同意する選択肢を与えられないまま、7日間コースで「ボンセン(Bong Sen)」と呼ばれる漢方処方が強制投与された。こうした強制的な臨床実験は、参加させられた者の権利を侵害し、最低限の科学上の基準を満たしていない、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「オルグカス・コノム麻薬収容センターでのこの実験は、恣意的な逮捕と参加強制によって実現された」とヒューマン・ライツ・ウォッチの医療と人権アドボカシーディレクターであるレベッカ・シェレイファーは語った。「こうした実験により導き出されうるいかなる ‘結果'も科学的には信頼できないし、全てのことが倫理上言語道断である。」

この強制臨床実験に参加させられた人びとは、プノンペンの街頭で警察により逮捕されて収容センターに連行された。麻薬使用者が逮捕された場合、通常は社会問題省センターのスタッフが担当するが、今回は、警察は直接オルグカス・コノム収容センターに彼らを連行した。

カンボジアは、臨床実験に対し、常々門戸を解放してきたわけではなかった。2004年、フン・セン首相は国際家族健康開発機構(Family Health International)による抗HIV薬テノホビルの臨床実験の中止を求めた。フン・セン首相はその際「カンボジアはゴミ箱国家ではない。カンボジア国民で実験をしてはならない。動物で行うべきだ」と表明している。

麻薬常習者に対し、全く未知でありかつ実証もされていない麻薬依存「治療」を施すために、強制的な手法を行使するのは、最も基本的な医療倫理に違反し、人権を侵害している、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

漢方の「ボンセン」は、カンボジアで使用登録されていない。この臨床実験は、厚生省の倫理審査委員会の承認を得ないで行われている。

カンボジア対麻薬対策局(Cambodia's National Authority for Combating Drugs)の責任者は、「実験が成功した場合」、麻薬依存者の治療に広範囲に使用されるだろうと述べた、とメディアは報道。また、報道によると、この実験は同局とベトナム民間企業ベン・ツレ・ファタコ総合輸出入貿易サービス(Ben Tre Fataco General Import-Export and Trading Services)の共同事業で、この物質は7日から10日間で「穏やかなデトックス効果」をもたらす、と同企業は主張しているとのことである。

「これは、科学的実験をめちゃくちゃに模倣したものだ。薬物依存症の治療の"成功"を評価するためには、治療の副作用はもちろん、時間の経過とともに、どれだけの人が再度薬物使用をしてしまうかを観察・測定することなしには不可能だ。」とシェレイファーは述べた。

世界保健機関(WHO)も国連薬物犯罪事務所も、オピオイド依存性の治療には、置換療法オピオイドを標準的治療法としている。 WHOの必須医薬品のモデルリストには、メタドンやブプレノルフィンなどが入っている。しかしながら、カンボジアでのメタドン治療の臨床試験は、この数年間、延期され続けている。

カンボジア政府は、真にオピオイド依存症の治療に取り組むのであれば、メタドンやブプレノルフィンなど、ヘロイン依存症などの麻薬依存症などに有効であると実証済みの医薬品の使用をすぐに許可すべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。これらの薬は、カンボジアでは禁止されたままである。

今回のボンセンの臨床実験は、カンボジアとベトナム間で最近増加している麻薬対策協力の一環として行われた。カンボジア対麻薬対策局は、2008年の年次報告書で、「ベトナムからカンボジアへの訪問団を受け入れ、薬物依存者用の少年薬物使用者強制収容施設をベトナムから援助してもらう実現性を検討する予定である」としている。本件援助案件についてのタイムラインは示されていない。

「カンボジア政府は、人びとを恣意的に拘束して、検証もされていない未知の漢方を混ぜて強制的に人に飲ませるというような方法ではなく、麻薬使用者たちに医学的に適切な自主的治療という選択肢を提供すべきだ。」とシュウレイファーは述べた。

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