(東京)日本の新政権は、スリランカ政府に対し、約25万人のタミル人民間人に対する違法な拘束をやめるよう公に求めるべきである。本日公開された岡田克也外務大臣宛ての共同書簡で、5つの国内および国際人権団体がこのように述べた。さらに同書簡は、日本の新政権は、スリランカ政府に対し、政府軍およびタミル・イーラム解放のトラ(LTTE)の行った重大な国際人道法違反行為について、法の正義、および、アカウンタビリティ(真相究明と責任追及)の実現を求めるよう、述べている。
同5団体は、岡田外相に人権尊重の原則に則った立場を取るよう求めるとともに、スリランカの最大のドナー国である日本の特別な影響力を民間人保護のために使うべきである、とした。スリランカの内戦は、今年5月にLTTEの軍事的敗北により終結。しかし25万人の被災した民間人は、いまだに拘束中でその苦難は続いている。この書簡は、アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)、アムネスティ・インターナショナル日本、反差別国際運動(IMADR)、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、ヒューマンライツ・ナウにより作成された。
「日本政府は、スリランカに影響を与えるのに最適な立場にある」とヒューマン・ライツ・ウォッチの東京ディレクターである土井香苗は述べた。「新政権は、スリランカ政府に対しキャンプに拘束中の人びとの解放を求めるとともに、長年続いた内戦の被害者のために法の正義を追求することを期待していると明確にすべきだ。」
同5団体は、本書簡において、日本の新政権に対し以下の点を要請した。
- スリランカ政府に対し、民間人の恣意的拘束を止めるとともに、強制収容キャンプから出たいと希望する人びとを直ちに解放するよう求めること。そこで暮らす民間人の自由への基本的権利が奪われ、移動の自由も奪われている状態に対し、日本政府が深い遺憾の意を抱いているということをあらゆる機会を捉えて表明すること。
- スリランカ政府に対して、避難民の帰還や再定住を行う際に、国連の国内避難に関する指導原則を尊重し順守するよう求めること。
- スリランカ政府に対し、人道団体及び人権団体の安全かつ妨害のないキャンプ住民への即時のアクセスを確保することを求めるとともに、人道団体及び人権団体による人びとの保護やモニタリング活動を可能にするよう求めること。
- 国際人権法及び国際人道法の重大な違反行為があったとの信頼性の高い報告がなされているにも拘わらず、スリランカ政府に、公平な事実調査を行って責任者を法の下で裁くという意思が欠如していることに対する批判を表明すること。
2008年3月以降、スリランカ政府は、LTTEとの内戦ゆえに避難民となった被災者ほぼ全てを強制収容キャンプに留置しており、国際法に違反して、人びとの自由に対する権利や、移動の自由を奪っている。政府は、避難民たちを速やかに帰還させるとの繰り返しの約束を破り、未だに、約24万5000人の国内避難民を汚物の散らばる過密なキャンプに収容している。雨期が迫りつつある今、人びとの健康と福祉は、急速に危険にさらされ始めている。国連、米国政府、欧州連合、インド政府は、スリランカ政府に対し、キャンプに拘束されている民間人を可能な限り速やかに解放するよう要求。しかし、日本政府は沈黙のままである。
国連の人道機関のトップがスリランカ北部での「bloodbath」(大量殺りく)という表現を用いてから5ヶ月が経過した今も、スリランカ政府による真相究明のための事実調査は行われていない。マヒンダ・ラージャパクサ大統領は、今年5月の潘基文国連事務総長との共同声明でこれを約束したにもかかわらず、である。スリランカの内戦では、スリランカ政府とLTTEの双方が、重大な国際人道法違反行為を犯した。
「自公政権から続く人権侵害への沈黙を、新政権は続けるべきではない」と、反差別国際運動日本委員会の武者小路公秀理事長は述べた。
本書簡を提出した5団体は、「日本や他の国々が国際社会とともに繰り返し要求していかなければ、人びとの救済もアカウンタビリティ(責任追及)の実現もありえない」と述べ、日本政府に対し「独立した国際事実調査委員会の迅速な設置を求めるよう」、また、民間人の違法な収容を終わらせるために「断固とした行動をとるよう」求めた。