(ニューヨーク) - ビルマ国軍が、ビルマ北東部の少数民族シャン人の民間人に攻撃を行い、この3週間で1万人以上が避難を余儀なくされた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日このように述べた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ビルマ軍事政権に対し、民間人への攻撃をはじめとする国際人道法違反行為を直ちに停止するよう求めた。

今週8月11日には民主化指導者アウンサンスーチー氏を再び自宅に拘禁する判決が下された。ヒューマン・ライツ・ウォッチはこのことを受け、国連安全保障理事会に対してビルマへの武器禁輸措置をとることを求めるとともに、ビルマの少数民族地域での戦闘における紛争全当事者による戦争犯罪と人道に対する罪の容疑を調査して戦争責任を明らかにする事実調査委員会を安保理が設置することを改めて求めた。

「世界の注目がアウンサンスーチー氏の裁判に向いている間に、ビルマ軍は、少数民族に対して長年行ってきた軍事作戦の一環として、民間人への攻撃を続けている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは述べた。「シャン州で起きている一連の戦闘は、ビルマでは政治的な反体制勢力が弾圧されているだけでなく、少数民族が政府と国軍から組織的に周辺化され、厳しい迫害を受けていることを、国際社会に思い起こさせるものだ。」

シャン人権団体による信頼できる報告によると、ビルマ国軍(ビルマ語で「タッマドー」)は7個大隊を展開し、7月27日から8月1日にかけて、ライカー郡の広い地域とシャン州中部のムンケーン郡の各所で民間人を排除する作戦を行った。伝えられるところによれば、域内の39ヵ村が攻撃を受け、住宅500戸が焼き払らわれた。民間人の生活基盤を破壊するこうした軍事作戦は最近規模を拡大している。ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれを国軍による対ゲリラ戦強化の一環だと捉えている。国軍部隊が攻撃するのは、この地域で活動する反政府武装勢力のシャン州軍-南部(SSA-S)だ。SSA-Sは長年にわたり、激しい待ち伏せ攻撃を定期的に行っている。7月15日には同軍の部隊がライカー郡で国軍第515軽歩兵大隊を攻撃し、兵士11人を殺害。生活基盤を破壊されて居住地域から強制追放された民間人の多くがタイ・ビルマ国境へと逃れていると伝えられる。

タイ・ビルマ国境援助協会(TBBC)が毎年発行する国内避難民調査によれば、国軍がSSA-Sへの攻撃を強めたことで、2008年にはライカー郡やその一帯で民間人13,000人以上が避難民となった。これ以前にも長年にわたって類似の軍事作戦が行われている。1996年~1998年にかけて、ビルマ軍はシャン州中部で民間人を大規模に排除している。国軍部隊は、民間人への計画的な攻撃、超法規的処刑、強かん、拷問、村落の破壊と強制移動、子ども兵士と強制労働の使用についての責任がある。一連の軍事行動により35万人以上の生活基盤が奪われて居住地域から強制追放されたため、避難民の多くが隣国タイで難民となっている。

「ビルマ軍が戦時国際法を無視することのつけが、シャン州の民間人たちの犠牲という形で現れている」と、アダムズ局長は述べる。「シャン州で行われているビルマ軍の攻撃からはっきりとわかるのは、ビルマ国軍が汚いやり方を使っており、民間人の生命と福祉を無視していることだ。」

国軍部隊と友軍(民主カレン仏教徒軍)の最近の攻撃で、6月には少数民族カレン人約5,000人が国境のタイ側に避難することを余儀なくされた。こうした民間人(大部分は女性と子ども)は、戦闘や強制労働、広範に敷設されている地雷から逃れるために避難を余儀なくされている。

タイ・ビルマ国境援助協会の年次調査によれば、ビルマ東部では約50万人が国内避難民となっている。人々は、政府の再定住地か、武装勢力の支配する停戦地域、またはいわゆる自由砲撃地帯で暮らしている。この地帯では、ビルマ国軍部隊が、民間人を「確認しだい射殺」するという国際法に違反する方針のもとでパトロールを行っており、人びとは国軍部隊からの被害を受ける可能性が高い。ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれまでにも、民間人への人権侵害について、ビルマ東部のカレン州の少数民族居住地域での事例とビルマ西部チン州の事例について報告書を発表している。超法規的処刑や拷問・殴打、土地と資産の没収といった人権侵害行為が、実行側の責任を問われることなく続いている。

タイ国境の9つの避難民キャンプには、14万人以上のビルマ難民が存在する。5万人がアメリカ合衆国やノルウェー、カナダなどの第三国に移住できたが、多くの難民がビルマ東部での武力紛争を逃れて今もキャンプに流入している。

タイはシャン州出身者を難民として認めておらず、シャン民族向けのキャンプの設置を認めていない。ビルマ北東部から、大量の人々が迫害を逃れて流入するのを恐れるためだ。難民として認められないため、タイに入ったシャン人は、移民労働者として、多くの場合は法的地位のない状態で、生存ぎりぎりの生活を余儀なくされている。ヒューマン・ライツ・ウォッチはタイ政府に対し、国際法に則って、シャン州での迫害を逃れてきた難民に保護を提供するよう求めた。タイは1951年の難民条約と1967年の難民議定書の締結国ではないが、迫害を受ける国家に人々を送還することを禁止する慣習国際法には拘束されている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは国連安全保障理事会に対し、ビルマで起きていると報告されている戦争犯罪と人道に対する罪に関する調査委員会を設置し、同国への包括的な武器禁輸措置の実現に向けて努力するよう重ねて求めた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ビルマ問題を国連安保理の通常議題にすべきと述べた。ビルマ軍政に自国民の基本的自由を尊重するよう圧力をかけ、国連安保理理事国がビルマの最新状況についての報告を常日頃より受けることができるようにする目的である。武力紛争下での文民(民間人)の保護に関する国連安全保障理事会決議1674は「平和と安全、開発と人権は国際連合機構の支柱であり、集団的安全保障の基盤」であると明らかにしている。

ハーバード・ロースクールの人権プログラム国際人権クリニックが2009年5月に発行した報告書『ビルマでおきている犯罪』は過去の国連機関の人権報告書を検討し、人権侵害行為が広範かつ組織的なもので、国家政策の一部だと結論づけた。この報告書は著名な5人の国際法の専門家が推薦しているもので、強制移住や性暴力、超法規的処刑、拷問の具体的な事例を挙げている。同報告書もまた、ビルマで犯されていると考えられる人道に対する罪と戦争犯罪を調査するために、安全保障理事会による調査委員会の設置を求めた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、武器禁輸によって、ビルマ軍による少数民族居住地域での民間人への攻撃の継続を可能にする武器や軍事援助、技術の供給を停止することができると述べた。中国とロシア(両国はビルマに武器を供給している)は、軍事政権の外交面での主要な後ろ盾であり、現軍事政権に対して国際社会がより強い行動に出ることを妨害している。

国連安全保障理事会は8月13日に、ビルマに関する不十分な弱い表現の報道声明を発表。「すべての政治囚の釈放の重要性を繰り返」したものの、同時に安保理理事国に対する、ビルマの「主権と領土の一体性へのコミットメント」を確認した。

「国連安全保障理事会は怠慢さから脱し、人権侵害行為に関する調査委員会の設置を決議し、武器禁輸を実施しなければならない」とアダムズは述べた。「だが中国とロシアがビルマ軍政指導部への保護を止めなければ、これは実現しない。」