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(ニューヨーク) - ビルマの民主化指導者アウンサンスーチー氏への今回の有罪の判決は政治的な動機に基づくものであり、ビルマ軍事政権による言語道断な権力の濫用である、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日このように述べた。そしてビルマの友好国を含む世界各国政府に対し、この判決を非難し、ノーベル賞受賞者スーチー氏の即時無条件釈放を要求し、軍政指導部への個人制裁を強めるよう求めた。

ラングーンのインセイン刑務所内の刑事裁判所は2009年8月11日に、スーチー氏が自宅軟禁命令に背いたとして3年の刑を宣告した。量刑はその場で自宅軟禁1年6ヵ月に減刑された。

「今回の裁判は茶番だった。法プロセスが極めて恣意的に運用されていた」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは述べた。「軍政は著名な反体制活動家を茶番裁判にかけて沈黙させてきたが、それによって、来年中に実施すると軍制が宣伝している総選挙が何の変化ももたらさないであろう理由をはっきりと示した。」

警察は2009年5月14日に、アウンサンスーチー氏(64)と、氏の身の回りの世話をするキンキンウィン氏(65)と娘のウィンママ氏(41)の二人を逮捕し、経済の中心地ラングーンのインセイン刑務所へと移送した。3人は5月18日に裁判にかけられた。容疑は2009年5月4日と5日に、アメリカ人のジョン・ウィリアム・イェトー氏の突然の訪問を許可したことが、スーチー氏の自宅軟禁命令が定める条件に違反していたというものだった。

イェトー氏は、スーチー氏の自宅軟禁命令を破った点では他の3人と同じ容疑だが、さらに入管法違反容疑でも起訴され、懲役7年を宣告されている。4人の被告全員が量刑の重い国家防御法(正式には、破壊活動を起こそうとする者の危険から国家を防御する法)違反で起訴されていた。

ビルマで行われる政治囚への刑事裁判は、公平な裁判の実施に関する国際的な基準を満たしていない。裁判官は独立しておらず、被告側には自らの主張を十分に述べる機会が与えられていない。スーチー氏への裁判は、5月18日から7月31日まで何度かの延期を挟んで実施された。裁判では双方で計14人の証人申請を許可されたが、スーチー氏側については、弁護人が何度か要請したにもかかわらず、追加の証人は2人だけしか許されなかった。

裁判は非公開で行われており、外交官や報道機関に傍聴が許されたのはたった数回だった。検察側は、スーチー氏も自宅周辺を警備する当局と共同で責任を負っており、イェトー氏が、スーチー氏の自宅の警備網を突破し、自宅に侵入することで自宅軟禁命令の条件に違反していることになると主張した。

「裁判が徹頭徹尾政治的な判決となることは当初より疑う余地はまったくなかった」と、アダムズが述べた。「公判で提出された証拠にせよ、採用されなかったりした証拠にせよ、証拠が今回の茶番判決に何らかの影響を与えたと考えるだけばかげている。」

スーチー氏の裁判は、国際社会からすでに広く非難されている。バラク・オバマ米大統領はこれを「見せかけだけの裁判」と呼んでいる。また潘基文国連事務総長は7月3日と4日にビルマを訪問した際に、スーチー氏と面会することができなかった。普段はビルマ政府と緊密なシンガポール政府も、氏の逮捕に「落胆」を表明し、このことを「国民和解への障害物」と呼んだ。

東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳陣もまたスーチー氏の解放を求める声明を発表した。ASEAN議長国のタイによる声明は「ドー・アウンサンスーチーをめぐる最近の動きについて深い懸念を表明する」とした上で、ビルマ軍事政権は「責任あるASEANの加盟国として、人権を保護し、促進する義務がある」と述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはASEANに対し、設立されたばかりの「人権に関する政府間委員会」(設置条項は7月20日に合意)を用いて、ビルマ政府に一連の行動への責任をとらせるよう求めた。

ビルマ政府を支持し、貿易相手としている国々(中国、ロシア、インドやASEAN加盟国)はこの判決を非難するとともに、ビルマ軍政首脳に個人制裁を実施する手段を追求すべきである。こうした制裁措置をすでに行っている国々(米国、EU、スイス、オーストラリアとカナダ)は既存の個人制裁措置を拡大・強化すべきである。

国連安全保障理事会はビルマを強く非難するとともに、ビルマ軍政首脳に対して有効な手段(国際的な武器禁輸や範囲を拡大した個人制裁など)をとるために重い腰を上げるべきだ。

「ビルマの友好国(中国、ロシアとインドなど)は、ビルマ軍政指導部に対して、スーチー氏を直ちに釈放するよう軍政指導部に圧力を掛ける必要がある」とアダムズは述べた。「ASEANや国連、そして関心を持つ諸国政府は、言葉で軍政を批判するだけでなく、行動も言葉と一致させるべきだ。」