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中国:攻撃にさらされる人権弁護士たち

法律支援NGO閉鎖 弁護士の資格剥奪 市民社会の自由は縮小へ

(ニューヨーク)-中国政府は、法律支援と調査をおこなうNGO公盟法律研究センター(在 北京)を閉鎖。北京の弁護士53名からの資格はく奪を発表した。中国政府が、人権の守り手たる人権活動家を沈黙させるための措置をますます強化している、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

7月17日、北京市民事局(Beijing Civil Affairs Bureau)局員は、公盟法律研究センター(Open Constitution Initiative:OCI)) の事務所を捜査。当局は、OCIが不適切な登録を行ったとして、全てのコンピューター及び文書を押収した。

OCIは、中国政府が政治的「敏感」だとする課題についても画期的な調査研究を行うと同時に、強い政治的影響下にある司法制度の下、救済を受けられない団体や個人に対する法律支援も行ってきた、中国ではめずらしい団体。OCIは、2008年3月にチベットで発生した騒乱の原因を究明する報告書などを発表している。本報告書はチベット地域における中国政府の政策を批判。OCIは、法律支援活動の一貫として、2008年秋に明らかになった粉ミルクのメラミン混入事件で被害を受けた子どもの親たちのうち、政府に補償を求める親たちの代理活動なども行なってきた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア・アドボカシーディレクターであるソフィー・リチャードソンは「これまでも、中国政府の人権活動家に対する攻撃はひどかった。しかし、OCIへのこの対応は、攻撃がさらに悪化したことを示す」と語る。「OCIの活動は、中国の人びとの不満を和らげ、社会の動揺を最小限に食い止めるのに役立つ。政府が、まさに尊重すべき活動を行なっている団体なのに。」

事務所捜索の前日には、北京税務当局が、OCIに、未払いの税金及び付加課金として計142万元(20万米ドル)を直ちに支払うよう求めていた。OCIの関係者は、税金の支払いが一部遅れていたものの、誤りは早急に修正したうえで未払い税金はすべて支払った、と説明。OCIは、今回の閉鎖措置は、政治的動機によるもの、と見ている。

7月9日には、法の支配に対する更なる打撃が加えられた。この日、北京司法局(Beijing Justice Bureau)は、弁護士53名の資格を「再登録申請を怠ったという理由で」取り消したと、ウェブサイトで公表。資格をはく奪された弁護士リストの中には、政治的に敏感な事件の代理人として著名な人権弁護士 江天勇(Jiang Tianyong)氏などの名前がある。江天勇弁護士が代理している事件には、2008年3月に起きたラサの騒乱に関連して起訴されたチベットの宗教指導者の事件、2007年6月に解放された陝西省(Shaanxi province)奴隷労働の被害者たちの事件、非合法化された組織・法輪功(Falun Gong)のメンバーたちの事件などがある。

弁護士53名に対する今回の資格の剥奪に先立つ2009年5月、北京司法当局は、人権課題を取り扱う著名弁護士たちの免許再交付申請を認めないように、と法律事務所に圧力をかけていた。再登録期限は5月31日とされていたが、資格をはく奪された弁護士たちの氏名が正式発表されたのは今回が初めてである。

今週初め、北京法政局(Beijing Bureau of Legal Affairs)は、北京の弁護士たちに対し、7月5日に新疆ウイグル自治区のウルムチ(Urumqi)市内で起きた暴動に関与したとされる容疑者たちの弁護をすることへの「注意」を通達。同様の禁止令は、2008年3月のチベット地域における抗議運動後、チベット人の弁護人を務めようとした北京の弁護士に対しても、出された。

リチャードソンは、「中国政府には、2つの選択肢しかない。不満を解消する方法として、国民に裁判を起こすことを許すか、さもなくば、街頭に持ち出させるか、だ」と語る。「中国政府指導部が、法律扶助活動や法的な調査を今後も禁止し、弁護士の活動を妨害し続けるのであれば、自ら墓穴を掘ることになろう。」

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