(ニューヨーク)-2009年3月14日、アフガニスタンのカピサ(Kapisa)州で8歳の少女が白リン弾で火傷を負った事件について、NATO軍は直ちにその事件の調査結果を公表するべきである、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。NATO担当官は、娘が火傷を負ったのはNATO軍の発射した砲弾のせいだとする父親の主張を否定している。
「白リン弾は恐ろしい火傷を起こす。よって、民間人の居住地域では使用されるべきでない。」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの上級軍事アナリスト マーク・ガルラスコは述べた。「NATOはこの事件の調査結果を直ちに公開するべきである。」
3月14日、少女の家族は、火傷の治療のため娘をバグラム米軍基地に連れて行った。米国軍医によると、少女の顔と首に白リンが付着していたという。今回の事件は、3月にカピサ州東部のアラーサイ(Alahsay)地方で発生。カピサ州では、NATO軍と反政府集団の間の激しい戦闘が頻発していた。
NATO当局者は、この交戦で白リン弾を使用したことは否定していない。しかし、当該家屋の近くに着弾した記録はないと主張している。NATOは、タリバーンが砲弾を発射した可能性を指摘。ただ、その証拠は何も提供していない。国際治安支援部隊は、本日、2007年12月から2009年3月までの間に反政府武装勢力が白リン弾を使用したとされる、4件の事件に関する情報を公開した。
国際人道法下では、白リン等の化学物質は、軍事行動を隠す"煙幕"として使用することは許されている。また、一定の条件の下では兵器として合法的に使用することが許されてもいる。しかし、一方で、白リン弾は焼夷弾的効果が高く、人々に重度の火傷を負わせ、農地や建物、周辺一帯に火災の被害を及ぼす危険がある。人口密集地帯における白リン弾の使用は、民間人の死者、負傷者の発生を防ぐため、全ての実行可能な予防手段を講じるという国際人道法の条件に違反すると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは考えている。
アフガニスタンにおけるNATO軍及び米軍の司令官の広報担当官であるリチャード・ブランシェット准将は、アフガニスタンで白リン弾を使用したことを認めた。准将は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対して、「白リン弾は、多くの国で、煙幕、目標、照明として一般的に使用される通常兵器であり、我々は白リン弾で人々を標的にしてはいない」と述べた。
「NATOは、カピサ事件で白リン弾を使用したことを否定していない。また、反政府武装勢力がそれらの砲弾を発射したとの主張を裏付ける証拠も提供していない。」と、ガルラスコは述べた。「NATO軍と米軍は、多数の民間人犠牲者が発生しているため既に危機感を募らせているアフガニスタン国民に対して、白リン弾を非合法的な形で使用してはいないと安心させる必要がある。」