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スリランカ:「最終」攻撃 民間人の保護を

国連安保理は事実調査委員会の設置を

(ニューヨーク)-スリランカ政府が、タミル・イーラム・解放のトラ(タミルの虎、LTTE)に対して最終警告を発したことを受けて、その後引き続いて大規模攻撃が行われることが予想されるが、その中で民間人犠牲者を最小限にするための措置を強化する必要性が極めて高い、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。スリランカ軍もLTTEも、戦時国際法違反行為を繰り返しており、両陣営による戦争犯罪を調査する国連の事実調査委員会を設置する必要がある。

面積20平方キロメートルの「戦闘禁止区域」内部の消息筋は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、スリランカ軍は今も人口密集地域に対し重火器での攻撃を続けており、また、タミルの虎も民間人の避難を阻止し続けている、と伝えた。今日一日だけでも、数百名の民間人が犠牲になったという未確認情報がある。この一日で、少なくとも1万の人々が避難に成功したが、なお、5万から10万の民間人が、戦闘地域で重大な危険の中に取り残されている。

「スリランカ政府がタミルの虎に発した『最終警告』は、閉じ込められた数万人の民間人に対する最終警告であってはならない」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムスは述べた。「両陣営ともに、民間人の安全に、もっとずっと大きな関心を払う必要がある。さもないと更に多くの民間人が死亡することになる。」

スリランカでの武力紛争に適用される国際人道法に基づき、スリランカ政府軍とタミルの虎は、民間人と民間人財産へ及ぶ危害を最小限にとどめるため、実行可能な全ての予防措置を講じる義務を負う。しかし1月以来、スリランカ北東部のワンニに取り残され包囲された民間人たちの安全に対して、両陣営はほとんど関心を払わず、国連の推計によると4,500名を超える民間人が殺害されたと見られる。タミルの虎は民間人を「人間の盾」として使用し、戦闘地域から逃れようとする民間人たちの避難を阻止し、民間人の人口密集地域付近に戦闘員を意図的に配置するなどして、戦時国際法に違反し続けている。スリランカ政府軍も、病院や人口密集地域に無差別砲撃を加え、戦時国際法に違反し続けている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、スリランカ政府に対し、信頼性のある戦争犯罪行為の申立について、自国軍が行なった行為も含めて、これを捜査し、責任者を適切に訴追する義務を、スリランカ政府が国際法上負っていることを指摘。スリランカ政府のこれまでの戦争犯罪容疑行為の捜査は、ほとんど訴追に結びついておらず、こうした傾向は近年特に顕著である。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、国連安保理にも、スリランカの両陣営が戦争犯罪を犯したという申立てを調査する事実調査委員会を設立するよう求めた。

「関係諸外国政府や国際機関は、スリランカ政府に対し、戦闘禁止区域内部でおきた民間人の犠牲について、スリランカ政府も責任を問われる(責任を問われるのはタミルの虎だけではない)という、一貫した強いメッセージを発しなくてはならない」と、アダムスは述べた。「スリランカでの人道危機は、当然、安全保障理事会の議題として正式に取上げられるべきだ。」

犯意(つまり、意図的又は重大な過失)をもって国際的人道法に対する重大な違反を行う個人は、戦争犯罪容疑で訴追されるべきであると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。人間の盾を使うことや、意図的に民間人に攻撃を加えることは戦争犯罪に該当する。民間人への無差別攻撃が、意図的又は重大な過失をもって行われたかを判断するためには、攻撃された地域に何人の民間人が存在すると知っていたか、病院のような民間施設と推測される施設に対して攻撃が行なわれたか、こうした攻撃が繰り返し行なわれたか、などが証拠となる。

違法な行為や攻撃を命令または実行した個人に加え、戦争犯罪が行われている事を知っていた、または、知っているべきであったにもかかわらず、そうした行為を止めるための手段を講じなかった上官も、上官責任を問われうる。

「スリランカの両陣営の軍司令官たちは、あらゆる行動をとる際に、民間人の安全に配慮する義務がある」とアダムスは述べた。「その義務に反することで、指揮官たちは、将来、捜査と訴追の対象となる可能性を自ら招いている。」

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