(ニューヨーク)---ビルマ軍事政権は拘束中の活動家ザガナ氏を直ちに釈放するとともに、氏が、引き続き、サイクロン「ナルギス」の被災地域への支援活動を自由に行うことを許可すべきである。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日このように述べた。

ザガナ(ビルマの人気喜劇俳優で社会活動家)は6月4日に逮捕された。氏は逮捕の前に、英国放送協会(BBC)と、タイの亡命ビルマ人が発行する雑誌イラワディ誌のインタビューに応じ、政府の救援活動の問題点及び国連機関の対応の遅れについてコメントしていた。

「ザガナ氏はビルマ有数の著名人だ。その氏が被災者支援を行っている最中、同国政府はメディアで発言したことを理由に、ザガナ氏の身柄を拘束した。これは、同国政府が国民の救援よりも監視に関心を持っていることの表われだ。ビルマの状況を真に懸念する政府は、ビルマ政府にザガナ氏の即時釈放を強く迫るべきだ。」ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズはこのように述べた。

ザガナ氏の逮捕の際には自宅の家宅捜索が行われ、外貨のほか、サイクロンと2007年9月のラングーン(ヤンゴン)での街頭デモの様子を映した複数のビデオが押収された。伝えられるところによれば、氏は現在もラングーン中心部の尋問センターに収容され、取調べを受けている。ボランティア400人以上からなるザガナ氏の組織は、サイクロンで被災した村まで出向き、緊急性の高い食糧の援助を行っていた。

ザガナ氏(本名マウントゥラ)は、1988年の民主化デモ後に1年間拘束された経験がある。また1990年には政治演説をしたために4年間投獄され、その後も当局からは、映画や公演を禁止されるなどの嫌がらせを恒常的に受けている。例えば、2006年12月1日の世界エイズ・デーに、ザガナ氏らはHIV感染者(PWH)のためのクリニックで無料治療イベントを行おうとしていたが、保健省によって中止させられた。

ザガナ氏は2007年9月26日、僧侶によるデモを公に支援したとして再び警察に逮捕され、20日間拘留された。まず市庁舎に収容されたが、タニンの国家技術専門学校に移送され、最終的にインセイン刑務所に収容された。氏は釈放されるとすぐに、ヒューマン・ライツ・ウォッチに当時の経験を語り、何度も移送されたのは、ほかの被収容者と接触させないでおくためだろうと話していた。インセイン刑務所では、通称「軍用犬」棟で独房拘禁された。この棟は9房からなり、「88世代学生」グループのタンティン氏や、国民民主連盟のミンソー氏など著名な活動家の収容に用いられている。

ザガナ氏が2007年に入っていた房は、狭く(一辺7フィート=2.1メートルの正方形)、換気も悪い。外から隔離され、30匹ほどの番犬に囲まれていた。夜は床に広げた薄い敷物で眠ったという。鉄格子の扉は大型の鉄板で覆われており、戸の下の所に小さなすき間があるだけだった。何も見えず、何も聞こえなかったという。夜には40ワット電球が思い出したように点灯して、蚊を寄せ付けた。氏はこの房に8日間拘留され、4日目までは水浴びの許可も出なかった。トイレも水もなかったため、トレイの上で用を足さなければならなかった。それも一杯になったので、ドアの下で排尿しようとしたところ、番犬にかみつかれそうになったという。

釈放直後に、ザガナ氏は外国人記者のインタビューを受けたため、再び数日間拘束された。

2007年10月28日に当局は、釈放の条件として、報道機関の取材を受けないという宣誓書へのサインをザガナ氏に強要した。現在、当局が氏を拘束しているのは、この条件に違反してBBCに出演したことを理由にしているというのが大方の見方だ。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ザガナ氏が現在もなお、前回とまったく同じ悲惨な収容状態に置かれている可能性のあることに懸念を表明し、また各国政府に対して、ビルマ政府当局に氏の即時釈放を働きかけるよう求めた。ザガナ氏の家族は、逮捕後から今まで面会ができないでいる。当局が氏を何らかの容疑で立件したかは不明である。

1991年にザガナ氏は、ヒューマン・ライツ・ウォッチが組織する「表現の自由委員会」からヘルマン/ハメット賞を授与されている。

国連の潘基文(バン・キムン)事務総長の訪問と、5月25日にラングーンで行われた国際支援国会合を受けて、ビルマ政府は国連機関や国際人道援助団体の支援要員へのビザ発給規制を緩和し、入国を許可している。しかし、同国政府の支援活動に対する姿勢は一貫性を欠いており、支援物資や要員のイラワディ・デルタ地域へのアクセスを許可することもあれば、一部のビルマ市民や団体などには許可を与えないこともあるという状況だ(ヒューマン・ライツ・ウォッチ「ビルマ:新ルールは支援をさらに遅らせる」、2008年6月12日、(https://www.hrw.org/english/docs/2008/06/12/burma19124.htm)。

「ザガナ氏の逮捕に深い憤りを覚える。氏はサイクロン被災者支援への政府の妨害について事実を話したのであり、その氏を逮捕することは、わずかなビザの発給を『打開』と主張することのまやかしぶりを明らかにするものだ。」アダムズ局長はこのように述べた。