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ビルマ:援助のあらゆる制限の撤廃が必要

貧弱な被災者救援策は政府の抑圧の表れ

(ニューヨーク)--- ビルマ軍事政権は、サイクロン・ナルギスで被災したイラワディ・デルタ地域へのアクセス制限の緩和という歓迎すべき動きの一方、即時かつ無条件にあらゆる援助を受入れるべき状況でもあるにもかかわらず、依然として融通の利かない対応に終止し、一部の支援は実施できないままだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日このように述べた。ビルマ政府が、今回の人道危機を一義的には国内治安問題として対処していることは、人々のニーズよりも政治的抑圧が優先されていることを示している。

ビルマ政府は国連機関、米国国際開発庁(USAID)、国際人道援助団体の要員からのビザ申請を保留していたが、国連の潘基文(バン・キムン)事務総長の訪問と、5月25日にラングーンで行われた国際支援国会合を受けて、ビザ発給への規制を緩和し、入国を許可している。しかし、ビルマのテインセイン首相は、25日の会合で、支援要員の入国許可と長期復興支援を結びつけるように「復旧と復興の分野に関心のある諸団体なら、我が国の優先順位と必要な範囲に応じて、これを受入れる用意がある」とだけ述べた。

だが同国は現時点では復興の段階には達していない。国連の推計によれば、軍政の妨害が原因となり、サイクロン被災者のうち援助を受け取った人は半数に満たない。しかも援助が「届いた」とされる人々の中にも、多くは援助キットを1箱受け取っただけで、十分な食糧・水・住居・医療の支援を受けていない人が多いと思われる。

「困窮する人々への支援を、軍政指導部の描く優先事項より優先しなければならない。軍政側は、支援活動をいまだ妨害し、援助を求める人々を支援する取り組みにブレーキをかけている。これは、災害時ですら、抑圧がビルマを支配していることを示している。」ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズはこのように述べた。

ビルマ軍事政権=国家平和開発評議会(SPDC)は現在もなお、例外はあるものの、国際社会からの支援要員がデルタ地域に行く際には、48時間前の許可申請を定めている。サイクロン以前には、プロジェクトの現場を訪問するのに4週間前の許可申請が必要だったことを考えれば、劇的な進歩とはいえる。だがいまだに貴重な時間が無駄になっている。

国連の世界食糧計画(WFP)の数台のヘリコプターが到着しており、浸水地帯で援助を配布を認められた文民船舶の数は増加している。だが政府は、支援物資とロジスティック関係の資材を積んで2週間も沖合に停泊する米国、フランス、英国の軍艦への着岸許可を拒んでいる。米国の軍艦は、援助を迅速かつ効果的に遠隔地に配布できるヘリコプターと小型船を備えているのにも拘わらず、政府は文民の船舶のみを受け入れるという。

「国民がビルマ軍政指導部の被害妄想のせいで不必要に苦しみ続けているのに、これらの艦船が、ただ沖合から退去するというようなことになってはならない。人命のかかった時間とのたたかいなのだから、ビルマ政府はこれらの艦船に着岸を許可し、デルタへの移動許可をただちに与えるべきだ。」アダムズ局長はこのように述べた。

ビルマ軍政の全国災害準備委員会は27日に出した報道発表で、個人とグループが、政府機関を通さずに、独自に移動して援助を配布することを許可すると発表した。しかし当局は、一般ビルマ市民が被災地に援助物資を届けようとする取り組みをいまだ妨害してもいる。報道によると、当局は5月25日に、市民による援助物資をラングーンから運んできた運転手46人を停車させ、車両を没収している。

ラングーンで配布されている政府のチラシには、当局との協議なしに援助を配布しないようにと記されている。「支援者は支援物資をだれかれ構わず配布することのないように。郡区・区・村のサイクロン救援委員会に行くように。そして、ミャンマー国民の威信を保ち、被災地の住民と外国人から軽蔑されるのを防ごう。」

官僚的な対処による物資の輸入の遅滞や規制で、緊急に必要な技術関係の資材や、衛星携帯電話・携帯電話・車両といった物資を持ち込みが妨げられている。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ビルマ政府に対し、支援物資と技術関係の資材の規制を解除し、通常の官僚主義的な手続なしでの輸入を許可するよう求めた。

国際社会の注目が今回の人道危機に注がれる一方で、ビルマ政府は、まともな政治改革の必要性がサイクロン被害への遅くかつ不適切な対応によっても明らかになったにも拘わらず、これを拒否している。5月27日、支援国会合で潘事務総長とドナー国政府がビルマを訪問したわずか2日後、軍政は野党・国民民主連盟(NLD)の指導者、アウンサンスーチー氏の自宅軟禁を1年間延長した。氏は過去18年間のうち13年間を自宅軟禁状態で過ごしている。5月27日には、氏の自宅軟禁延長に抗議するNLD党員が当局に逮捕されたとの報道があった。ビルマにはスーチー氏以外にも約1,800人の政治囚がいると推計される。軍政は5月10日、サイクロン襲来から間もないにもかかわらず、全土のほとんどの地域で憲法国民投票を実施した。そして5月24日には、サイクロンの被害が甚大だった残りの地域でも投票を実施。準備過程と実施には明らかな瑕疵があるにもかかわらず、中国とタイは国民投票を進展と歓迎した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、国際社会のドナー国政府・機関に対し、サイクロンに対するビルマ政府の遅くかつ不十分な対応は、同国政府の過去数十年にわたる政治的抑圧(表現・結社・集会の自由に関する権利や、ビルマ国民が政権を自ら選択する権利を侵害など)と本質的に結びついていることを認識するよう求めた。

「援助を政治の道具にしているのは、国際社会ではない。軍事政権だ。軍政は決定的に重要な最初の数週間に、支援と支援要員をブロックし、恥知らずにも国民投票を進めた。援助を政治改革に結び付けられないドナーは、今回のような災害の再発を防止するせっかくの機会を逃している。」アダムズ局長はこのように述べた。

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