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1962年以来軍事政権下にあるビルマ(現ミャンマー)で、今月3日、新憲法草案づくりを話し合ってきた国民会議が閉幕した。93年に始まり延々と続く国民会議がやっと新憲法の方針を採択した。

国際社会には、楽観的な見方も出ている。国連のビルマ担当特使であるガンバリ事務総長特別顧問は7月、米国、中国、日本、インドなどの政府代表と相次いで会談し、「進歩を認めることが重要だ」などと軍事政権に対して前向きに働きかけるよう求めてまわった。

しかし、このような楽観主義は現実から目をそらすものだ。基本的人権と民主主義が踏みにじられている現状が改善されるとは限らない。議会の議席の4分の1は軍人たちに割り当てられ、大統領は軍事の見識が必須とされるなど、軍政が制度化されてしまう。ノーベル平和賞を受賞したアウンサンスーチーさんら反軍政指導者の選挙参加を阻む規定が盛り込まれているのだ。

軍事政権と停戦合意を結んだ民族グループの多くも国民会議を問題視し始めているが、憲法制定プロセスへの批判や妨害は刑事犯罪とされ、反対の声を上げることは許されない。国民会議の参加者は、ほとんどが軍事政権に選ばれた支持者たちだ。

国際赤十字委員会は6月後半、軍事政権が国境地帯で「国際人道法に反する行為」を行っているとして異例の非難声明を発表した。ビルマに真の民主化をもたらすには、国際社会が人権侵害の実情を直視して楽観主義から脱し、はっきりと声を上げる必要がある。

近隣の強大国である中国とインドが軍政に外交的支援を与える中、ビルマへの最大の援助国である日本がその役割を期待されている。ビルマで名声を持つ日本こそ、外交のこう着状態に風穴をあけ、軍政に影響を行使できるかもしれない。

今のビルマのねじまげられた新憲法制定プロセス、一般市民への軍事攻撃や基本的自由の否定は決して許容できないということ、そして今後のビルマとの関係は軍事政権が真の改革に取り組むか否かにかかっているということを、日本がしっかりと示す必要がある。国民会議がやっと終了したことなど、何ら喜ぶ理由にならない。

著者はヒューマン・ライツ・ウォッチのコンサルタント。

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