(ニューヨーク)- ヒューマン・ライツ・ウォッチは、本日、「中国政府は、国際オリンピック委員会(IOC)に対し、2008年の北京オリンピックを機に、人権の改善を促進すると保証し、メディアに対しより広範な自由を与えると明確に約束したにもかかわらず、ジャーナリストの人権を侵害し続けている。」と述べた。

本日は、北京オリンピックが始まるちょうど11か月前であるが、中国のジャーナリストは、警官と政府の指示下にあると思われる私服の暴徒からの暴力と嫌がらせに直面し続けている。

「北京での2008年のオリンピックを目前に控え、ジャーナリストへの嫌がらせや暴力が続いていることは、メディアに対するより広範な自由を与えると約束した中国の誠意に、重大な疑念を生じさせる。」「中国政府は、自由なメディアを、公共の安全と社会の安定のための監視機構というより、むしろ敵と見ているようだ。」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア・アドボカシー・ディレクター、ソフィー・リチャードソンは述べた。

2001年、中国政府は、2008年オリンピック招致の努力の一環として、メディアに対して長い間行使してきた厳格な支配を、オリンピックの間は緩める、とIOCに明確に保証した。この公約は、オリンピック開催都市の義務について「IOCは、様々なメディアによる最大限の報道及び世界中の可能な限り広範囲なオリンピック競技の視聴者を確保するため、必要な処置をとらなければならない」と定めるオリンピック憲章51条に沿うものだ。そればかりか、中華人民共和国憲法35条は、報道の自由を明確に保障している。

2006年後半、中国政府は、IOCに対する公約の実行の一環として、認定を受けた外国のジャーナリストに対して認める新たな自由を公表した。ここで、外国の記者は、2007年1月1日から2008年10月17日までを有効期間とする期間限定の規則により、すべての中国の組織や市民に自由にインタビューすることを許可する、とされた。

こうした暫定的規則にもかかわらず、8月24日、警察は、7人の外国人ジャーナリストのグループ(2つのカメラクルーとラジオ・ジャーナリスト1人を含む)を妨害した。ジャーナリストたちは、陈光诚(Chen Guangcheg、刑務所に拘束中の人権活動家)の妻 袁伟静(Yuan Weijing)が、夫に代わり、国際的な人権賞受賞のため空路マニラに発つ予定であったため、その前に袁伟静宅を訪問しようとしていた。ジャーナリストのうちの1人がヒューマン・ライツ・ウォッチに語ったところによると、彼らは、袁伟静宅付近で警備中の警官により強制的に近隣の警察署に連行され、そこで、袁伟静宅に行く許可のため、迂遠な登録手続を取ることを余儀なくされた。

当局は、続いて、袁氏に対し、中国出国を禁じ、出身地の山東省に強制的に帰らせた。AP通信社は、複数の政府職員が、8月31日、袁を北京行きのバスから誘拐し、山東省に強制的に帰らせたと報道した。

最近の別の事件では、江蘇省の宜興裁判所は、環境活動家 吴立红(Wu Lihong)氏に対する8月24日の裁判を報道しようとしたニューヨーク・タイムズ紙とSouth China Morning Post紙に対し、法廷入室を禁じた。同氏は、恐喝と詐欺で有罪判決を受け、3年間の刑に処せられたが、観測筋は、これを政治的な動機によるものと評している。役人たちは、入廷を禁ずる理由を全く説明せず、「通常の裁判手続だ」と言うだけだった。裁判所の外で判決を待つ記者たちに対し、私服警官は、なぜそこにいるか、何を質問したいか、何のための機材か、などの質問に対する回答を要求するなど、嫌がらせを行った。

「ジャーナリストが通常の裁判を報道することを禁じることは、訴訟手続の信頼性に疑念を生じさせる。」とリチャードソンは述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、中国人ジャーナリストや、外国人ジャーナリストのアシスタントや通訳の中国人に対しては、上記暫定規則は適用されず、外国人ジャーナリストと同程度の自由が保障されていない、とも指摘した。その結果、中国人ジャーナリストは、相変わらず、都合の悪い問題を報道されることを望まない地方政府からの報復に対し、極めて無防備なままの状態だ。

8月中旬、5人の中国人ジャーナリスト(政府報道紙People Daily紙の記者1人を含む)が、湖南省の中部で起きた凤凰(Fenghuang)橋の崩壊の目撃者をインタビューしていた。私服を着た暴徒が、インタビューを妨害し、ジャーナリストたちに殴る蹴るの暴行を加えた。ジャーナリストたちは、その後、警察に身柄拘束された。

中国政府は、10月15日に始まる第17回中国共産党大会に先立ち、国内メディアの報道内容に対する規制も強めている。党大会(5年に1度開催)は、次期の党の指導部人事を発表する場であるため、政府が神経を尖らせる時期だ。

8月19日、メディアを管轄する政府当局は、国内の五大新聞社(People Daily紙、Guangming Daily紙、Economic Daily紙、People Liberation Army Daily紙、Beijing Daily紙)に対し、第1面をほぼ同一にするよう要求し、報道機関への支配力を誇示した(http://chinadigitaltimes.net/2007/08/one_editors_job_for_four_newspapers...)。各紙とも、第1面は全て、中国の指導者たちが、水浸しの坑道に取り残された炭坑夫の救助に関わったという記事から始まり、胡錦濤(Hu Jintao)国家主席のカザフスタンへの公式訪問の写真などを掲載。当局は、こうした第一面の「やらせ」について何らの説明もしなかった。

8月31日、中国政府は、「Google China」「China Yahoo」「Baidu.com」など、国内のインターネット検索エンジンに対し、1週間以内に全ての違法で不健全な内容を削除するよう命じた。しかし、その判断の基準は一切示さず、また、これに従わなかった場合の処罰内容も明示しなかった。

「このような曖昧な文言による内容規制は、全てのメディアにとって明白かつ直接的な脅威となる。なぜなら、こうした曖昧な文言による内容規制は、メディアが、党大会を前に、政府を不快にさせるかもしれないニュースや掲載を自ら検閲して規制することを促進するからだ。」と、リチャードソンは述べた。

こうした規制措置は、何千のもサーバーをホストするインターネット・データ・サーバーが、多数、政府当局により、閉鎖される事態にまで発展した。第17回党大会に先立ち、違法なインターネット記載を一掃するため、これらのインターネット・データ・サーバーが閉鎖されたことで、関東省、河南省、四川省、そして東部海岸都市の上海を含むいくつもの省で、何千ものウェブ・サイト、フォーラム、ブログが影響を受けた。

「もし中国政府が、真に、違法行為と戦い、社会不安を和らげたいのならば、なぜメディアを弾圧し、ジャーナリストを虐待するのか。メディアやジャーナリストこそが、まさにそうした脅威の存在を曝くために決定的に重要であるのに。」「こうした行為は、中国市民とIOC対する中国政府の公約をあざ笑うものだ。」と、リチャードソンは述べた。