2022年7月1日で、香港の主権が英国から中国に移譲されて25年になります。香港政府は公式式典と中国の習近平国家主席の訪問でこれを記念する予定です。
このように美化されたイメージの影で、香港政府は弾圧を行っています。香港警察国家安全局は、香港で最後に残った民主派政党の社会民主連線(League of Social Democrats)に強い警告を行い、抗議活動の計画を断念させました。また、前党首(主席)の呉文遠(Avery Ng)氏を恣意的に自宅軟禁している模様です。主権移譲についての世論調査の結果発表さえも、警察の圧力で延期されています。香港政府が一部のメディアに式典取材を禁じる一方で、警察は習主席の目に反政府的な動きが一切入らないようにとバリケードを幾重にも張り巡らせているのです。
1997年に香港の主権を得た際、中国政府は香港人の自由―香港の実質的な憲法「香港特別行政区基本法」に明記されていますーを、また基本法と「市民的および政治的権利に関する国際規約」で保護された諸権利を尊重すると公約しました。
しかし、中国政府はその約束を守りませんでした。香港人がみずからの権利を求めて抗議行動を強めたとき、中国政府は強権的な国家安全維持法を香港に課し、有力な民主派指導者を投獄し、立法府を有名無実な承認装置に変えるとともに、香港の自由な報道機関と市民社会を解体してしまったのです。そして、過去に人権侵害を行った警察官を行政府の次期責任者に任命しました。退任する林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は「香港はこれまでと同様に自由だ」と発言していますが、人権と報道の自由の尊重にかんする国際ランキングは急落し、世界148位となっています。
香港人はそれでも抵抗を止めていません。今週、親中派が公営住宅を大量の五星紅旗(中国の国旗)で覆うと、住民たちは逮捕の危険を顧みず、その旗を追悼の意を示す白や黒の布で覆ったり、そこに落書きをしたり、撤去したりしました。
ネットには皮肉なコメントが書き込まれてもいます。香港を訪れた英国女王が子どもたちに歓迎されている写真を載せ、「英国植民地時代の香港、英国女王に虐げられた子どもたち」とタイトルをつけた投稿がありました。ネットユーザーたちは写真にこうコメントをつけています。「(英領時代の)香港は貧しくて、今のように金属製のバリケード(…)がいたるところに置かれることなどありえなかった。党に感謝する!」
各国政府は、主権移譲を記念する一連の行事への参加を見合わせ、香港人を侮蔑する中国政府を正当化するようなことがないようにすべきです。そして、香港人の人権を求める揺るぎない闘いへの支持を公に示すべきです。