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カンボジア:欠陥のある障がい者法案を改訂せよ

包括的な権利ありきのアプローチを採用してスティグマ終結の道の模索を

Front side of the National Assembly of Cambodia in Phnom Penh, May 7, 2019. © Daniel Kalker/picture-alliance/dpa/AP Images

(バンコク)–カンボジア政府は国際人権法にのっとって障がい者の平等な権利を確保すべく、障がい者法案を改訂すべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。 カンボジアは2012年に、障がい者権利条約(以下CRPD)を批准。同条約は、すべての障がい者が全面的かつ平等なかたちで社会に参加しながら、人権を同様に享受できることを目的としている。

カンボジアの障がい者の権利保護に関する法案は公表されていないが、ヒューマン・ライツ・ウォッチは2021年3月3日付けの写しを入手した。法案は障がいを持つ人びとの権利に関する法的枠組みの策定を目的としているものの、人権に基づくアプローチを採用しそこなっている。教育、雇用、交通、社会的・法律的サービスおよび自立した生活への平等なアクセスを保障するどころか、むしろ障がいを持つ人びとに対するスティグマを補強してしまうような文言が使われているのである。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの障がい者権利の専門家クリティ・シャルマは、「これまで長い間、カンボジアには障がい者権利保護法が求められていたが、法案からスティグマを呼び起こす文言を排除し、社会からの排除ではなく社会への全面的な包容の権利を保障する必要がある」と指摘する。「もし法案が国際基準を満たすかたちで改訂されれば、カンボジアの多くの障がい者に平等な権利と強力な社会的保護を確保するための大きな一歩を、政府は踏み出すことになるだろう。」

当該法案における障がいの定義は、障がいの医療モデルを参照した時代遅れのパラダイムに基づき、「障害」「損傷」「機能不全」といったスティグマを呼び起こす文言が使用されており、障がいは「治癒」や「治療」が必要なものであることを示唆している。

この国際条約の重要な条項を実行するためには法案の改訂が必要だ。改訂には、障がい者との協議を義務づけるCRPD第4条、法の前に等しく認められる権利に関する第12条、施設での恣意的拘禁の防止を含む身体の自由および安全の権利に関する第14条、拷問または残酷な、非人道的な、もしくは品位を傷つける取り扱い、もしくは刑罰からの自由に関する第15条、自立した生活および地域社会への包容に関する第19条、公職に就く権利の確保を含む政治的および公的活動への参加に関する第29条が含まれる。

法案では「障がいのレベル」が定められている。これは、特定の障がいを持つ人びとを自立した生活や適切な支援へのアクセスから除外する根拠になってしまうため差別的である。政府は、障がい者が社会に完全に包容され、自立して生活できるようにするための適切な支援措置を義務付ける国際規約を満たす条項を再編成すべきだ。

法案の第4条は障がい者の権利および雇用・保健サービス・教育・アクセシビリティの取り決め、平等な社会参加、法律サービスといった政府の義務について定めるもので、教育に関する条項は、「インクルーシブクラスに出席できない障がい者」のためのクラスを政府が提供するとしている。このことは、インクルーシブで質の高い教育を提供する代わりに、ある種の分離政策を導入することを意味する。CRPD第24条のもと、公立学校および教育機関が、合理的配慮(障がい者個々のニーズに基づいた必要かつ適切な調整)を提供し、包括的な方法を用いて指導し、指導がすべての生徒のニーズに適合していることを、政府は保障する義務がある。

法案で性暴力やハラスメントからの保護に焦点を当てた条項は、ジェンダーに基づくものを含むあらゆる形態の搾取・暴力・虐待からの保護と、監視システムおよび支援サービスの指針を定めたCRPD第16条に十分沿っていない。法案はあい昧な文言で「適切かつ効果的な措置」を義務付けるのみで、身体的暴力や搾取、虐待といったその他の形態の暴力からの保護を提供するものではない。したがって、障がいを持つ人びとのために、アクセス可能かつ匿名の苦情申立て手続きを定め、かつ合理的配慮を提供する条項を設ける必要がある。

法案の第4条はカンボジア障害者全国評議会の設置を目指すものだ。この政府機関はCRPD第33条で義務付けられているように、独立した機構が補完すべきで、「すべては私たちありき」というCRPDの基本原則に沿った意思決定の過程に、障がい者および障がい者を代表する団体を含めるべきだ。

2019年、カンボジアは8つの州で、障がい者身分証明書発行パイロットプロジェクトを展開し、2021年初めまでに約1万4,000人が登録されたとしている。このカードは、社会福祉にアクセスできるように設計されている。が、登録に関する情報や担当職員の研修が不相当なために、手続きの処理が遅れている。「今現在は障がい者カードに価値があるとはあまり言えない」と、障がい者担当省のトップYeap Malino氏が2月に発言した。

2020年6月に内務省は、心理社会的障がいのある人、つまり精神衛生症状に対する差別をさらに定着させる公共秩序法案を提出した。現時点で法案は、心理社会的障がいのある人の市民的自由を恣意的にはく奪し、施設に拘禁することができるという足かせなき権限を当局に付与するものになっている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは2013年の報告書で、相当かつアクセス可能なコミュニティベースの社会サービスの欠如およびスティグマや差別のために、実際の、またはそうだとされた心理社会的障がい者がカンボジアで身体を拘束され続けている問題を調査・検証した。政府は速やかにこうした身体拘束を禁ずるべきだ。

障がい者の権利担当専門家シャルマは、「カンボジア政府は、孤立と虐待の制度を廃止する機会を無駄にすることなく、支援と独立の制度を構築していくべきだ」と述べる。「カンボジア障がい者法の起草に関与している国連やドナー国・機関は、障がい者権利条約にそった草案の最終版を強く主張していかなければならない。」

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