東京新聞・中日新聞 2020年1月17日

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私の所属するNGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(HRW)のケネス・ロス代表が十二日、香港の空港で入境を拒否された。約百カ国の人権状況をまとめた年次報告書「世界人権年鑑2020」を、記者会見で発表する予定だった。

中国は超監視大国。ビッグデータ解析や人工知能を駆使し、その改良を重ねている。ウイグル自治区では、ウイグル系市民やテュルク系ムスリムを統制する数百万人規模の監視システムを構築し、政治的教化のために約百万人を拘禁している。

こうした弾圧を批判する世界の動きに対しては、経済的・外交的影響力を行使する。長年、国内の批判に弾圧でこたえてきた中国政府は、その検閲システムを世界の隅々まで広げようとしている。危機に瀕(ひん)しているのは、世界中の人びとが自由に発言し、投獄や拷問を恐れずに生活する人権の享受を可能にした過去数十年の前進そのものだ。

中国の弁護士や文筆家その他の人権活動家は、基本的人権を守ろうと声を上げた結果、刑務所送り、拷問など多大な代償を支払わされている。それと比べれば、ロス代表の入境拒否は取るに足らないとさえ言える。しかしながら、HRWのような国際団体に対する今回の干渉は、中国政府が推し進める国際規模の「検閲」の一形態だ。日本を含む各国は、一丸となってこれに抵抗すべきだ。遅すぎた、となる前に。

(HRW日本代表)