ヒューマン・ライツ・ウォッチは、日本を含む世界90カ国以上の人権状況についてモニタリングと報告を行う非政府組織(NGO)であり、子どもの権利を含む様々なテーマを取り扱う専門家チームを有している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは2012年から2013年にかけて、日本における子どもの代替的養護に関する調査を行い、代替的養護下の子ども32名や代替的養護を経験したことのある成人27名を含む200名以上を対象にインタビューを行った上で2014年5月、89ページにわたる報告書「夢がもてない:日本における社会的養護下の子どもたち」を発表した。そして、子どもの権利条約および国連総会の採択した子どもの代替的養護に関する指針(国連代替的養護指針)など、子どもの権利に関する国際法や基準により適合させるため、日本の現行の養子縁組制度や里親制度などの代替的養護制度に対する大幅な改革の提言等を行った。本報告書は特に、子どもの不必要な施設収容に終止符を打つことや、子どもに永続的な解決策を確保することの重要性などを指摘した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、他のアジア・欧米諸国における代替的養護制度に関する調査も行ってきた。そして日本国内及び世界各国で行なった調査に基づき、ヒューマン・ライツ・ウォッチは法務省の特別養子縁組制度の見直しに関する中間試案に対し、以下の2点に関してパブリック・コメントを提出する。

「第1 養子となるものの年齢要件等の見直し」 

「第23 特別養子縁組の成立に係る規律の見直し」

基準となる指針: 

子どもの権利条約上、すべての子どもはできる限りその父母に養育される権利を有する。実親が子どもの養育を行う意思がなく又は困難である場合、国連代替的養護指針は、国家が子どもの養育のために家庭に対してカウンセリングや社会的支援などの必要な措置を施す旨を規定している。それが失敗した場合、当該子どもに対し恒久的な責任を追うことを希望する他の血縁者がいるか否か、その者の養育に委ねることが子どもにとっての最善の利益にかなっているか否かを判断するため、ソーシャルワーカーによる評価を実施するものとする。そして国連代替的養護指針は、「他の血縁者による養育が不可能であるか、または子どもの最善の利益に沿わない場合、合理的な期間内に、その子どもを永続的に養育する家族を見つけるべく努力」が行われるべきと規定する。すべての子どもについて、政府は里親委託や施設収容などの他の長期的な措置を検討する前に、まず適切かつ永続的な解決策を見つけるべく努力するべきである。そして養子縁組は、適切かつ永続的な解決策のひとつである。

提言: 

 「第1 養子となるものの年齢要件等の見直し」について 

現行民法は特別養子縁組できる子どもを、申立時6歳未満に限り、例外的に8歳未満とする。

中間試案の掲げる3つの案についてヒューマン・ライツ・ウォッチは、年齢要件を15歳未満に引き上げるとともに、例外も認める丙案が最善であると考える。 

しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチは特別養子縁組の機会は、15歳未満のみならず18歳未満のすべての子どもに認められるべきと考える。非公式な養護を含め、代替的養護を受けている子どもに関する決定は、安定した過程を子どもに保障すること、および養護者に対する安全かつ継続的な愛着心という子どもの基本的なニーズを満たすことの重要性を十分に尊重すべきである(国連代替的養護指針、第12条)。年齢の高い子どもの中には特別養子縁組以外の対応が最善の利益に沿う場合もあるが、養子縁組制度へのアクセスに一律の年齢制限を設けることは恣意的であり、子どもの最善の利益に沿わない場合が多い。よって、ヒューマン・ライツ・ウォッチは18歳未満のすべての子どもに特別養子縁組への適格性を認めるよう提言する。

「第23 特別養子縁組の成立に係る規律の見直し」について

現行制度下では、家庭裁判所は2つの別個の判断を1つの審判手続きで行なっている。まず、子どもの実親が同意していない場合も含め、当該子どもが特別養子適格要件を満たしているか否か。そして次に、6ヶ月間にわたる試験養育を経た特定の養親候補者がその子どもと相性が良く適切であること。加えて、現行制度下では、家庭裁判所申立をできるのは養親候補者に限られる。

現行制度は、試験養育を経た後に子どもが特別養子適格性を有しないとの判断を家庭裁判所が示す可能性があるという不安を残すもので、これが養親候補者が子どもの養育を引き受けることに対する阻害要因になることがある。

よってヒューマン・ライツ・ウォッチは、現行の家庭裁判所判断を二段階の審判に分ける甲案を支持する。すなわち、まず特別養子適格要件の判断が行われ、次に養親子適合性要件の判断が行われる。よって、養親候補者が養子候補児の試験養育を始める前に一段階目の判断が行われうる。さらに、甲案は養親候補者に加え、児童相談長による家庭裁判所への申し立ても可能とする。