夢がもてない

日本における社会的養護下の子どもたち

用語集

養子縁組希望里親 :児童の養子縁組を希望する里親。

社会的養護(狭義) :実親、または適切な監護を行いうる保護者を欠いていると政府が判断した児童に提供される養育。

児童養護施設:おおむね3歳から高校卒業までの子どもを養育する施設(ただし、義務教育終了の後に子どもが教育機関を離れた時点で児童養護施設への措置は終了するため、それらの子どもは含まれない)。

児童相談所 :子どもの福祉向上を目的とし、都道府県または政令指定都市に設置される機関。

ファミリーホーム(小規模住居型児童養育事業):家庭において、56人の子どもの養育を行う制度

自立援助ホーム:義務教育を終了した後教育機関を離れ、児童養護施設等を退所した15歳~19歳の子ども、または、都道府県知事が支援を必要と判断した同年齢の子どもが生活する施設。

乳児院 :乳児および幼児を養育する施設。

親族里親3親等以内の親族が務める里親。祖父母や兄姉は該当するが、おじ・おばは該当しない。

情緒障害児短期治療施設 :心理的・精神的問題を抱え日常生活に支障をきたしている子どもが、医療的な観点から心理治療を行う施設。

専門里親 :都道府県知事がその養育に関し特に支援が必要と認めた児童を養育する里親。対象となるのは、虐待を受けたために心身に有害な影響を受けた児童、非行等の問題を有する児童、身体障害、知的障害や発達障害、または精神障害がある児童。

一時保護 :児童相談所が子どもを親から分離した後に、子どもを一時的に保護すること。


日本地図

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要約

将来の夢なんてありません。
ノゾミさん(15)、大阪の施設入所者、201112
たいていの職員は仕事だから僕たちの相手をしているみたいに思えてしまう。仕事だから遊んでくれるだけ。愛してくれるわけじゃないんです。ケンジさん(17)、東京の施設入所者、20128
これで日本の社会的養護が変わらなければ、もう当分変わることはないと思います。
東日本大震災当時の宮城中央児童相談所の里親担当職員、20125

2011311日の東日本大震災は東北沿岸地域を中心に未曾有の被害をもたらした。約16千人が死亡し、241人が孤児となった(201211月現在)。大半の孤児たちは親族に引き取られ、行政からの援助や民間の募金等の支援等が寄せられた。悲劇であることは変えようのない事実だが、子どもたちにとって生活を再建するための様々な支援がなされてきた。

もっとも、親がいない、あるいは、家庭に深刻な問題を抱える子どもは他にも大勢いる。これらの子どもたちには依然として光が当てられていない。政府が向ける関心も支援もはるかに限られたものである。2013年時点で全国39,047人の子どもが、親に子どもを適切に養育する能力や意思がないとの政府の判断に基づき、社会的養護制度の下で生活している。1

社会的養護下の子どもたちの大半(85%以上)は施設に住んでいる。約34千人(2013年)の子どもたちが施設で生活している。2そのほかの子どもたちは里親宅、あるいは、ファミリーホーム(1軒の家で56人の子どもを養育する形態の社会的養護)で生活している。社会的養護制度の下で生活する子どもたちのうち、最終的に養子縁組されるのは303人(2011年)とかなり少数である。3児童養護施設の平均在所期間は約5年である。日本における施設収容率は、他の先進国と比べて際立って高い。4

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子ども用の寝室(関西地方の児童養護施設)。 10代後半の子どもにも 1人部屋が割り当てられていない。自分だけの場所がない状態だ。 © 2012 猿田佐世/ヒューマン・ライツ・ウォッチ

本報告書は日本の社会的養護制度を検証するものである。現行制度には、乳児院、児童養護施設、情緒障害児短期治療施設、自立援助ホーム、里親制度、ファミリーホーム(小規模住居型児童養育事業)が存在する。制度の仕組みと手続きを分析するとともに、乳児を含む大半の子どもを施設に収容することの問題点、ならびに社会的養護制度における人権問題に焦点をあてる。続いて、社会的養護終了後に子どもたちの多くが経験する厳しい現実、また、里親制度が以前から抱えている様々な問題を検討する。最後に、東日本大震災の震災孤児のおかれた状況を考察する。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、施設内虐待がいく度か社会的に注目され社会的養護が改善されたこと、また、里親推進などの前向きな政策が実施されてきたことを評価している。その一方で、社会的養護には、実務運用上の問題や人権問題がいまだ多く存在していることは指摘せねばならない。

具体的な問題の例としては、子ども同士や養育者からのいじめ・身体的虐待や性的虐待、施設の貧弱さ、大規模施設の問題(愛着関係を築く機会や生活に必要なスキルを学ぶ機会が限られている現実、子ども一人あたりの占有面積が狭い点など)、子どもからの苦情申立制度が充実していないことなどがあげられる。自立に向けた支援の欠如の結果、低収入の仕事にしか就けないこと、また、ホームレスになる危険性すら存在する点も問題としてあげられる。高等教育の機会も限られているほか、就職や賃貸契約などで保証人が必ず求められる社会で社会的養護出身者が生きていくには常に困難がつきまとう。

より大局的視点から言えば、施設での養護そのものが虐待といえるかもしれない。家庭での養育の機会を子どもから奪っているからである。家庭で育つことが子どもの発達と福祉にとっていかに重要かは多くの研究の示すところである。

これらの問題の多くの原因となっているのが、社会的養護を必要とする子どもの委託先を決める児童相談所の姿勢である。児童相談所は長年、養子縁組や里親制度よりも施設委託を優先してきた。こうした姿勢の背景にある数多くの理由については本文に詳述するが、主な理由としては、既存施設の経済的利益をおもんばかること、また、里親より施設を好むことが多い実親の意向を重視する傾向などが指摘できる。茨城県つくば市の施設職員は「日本では親の利益が子どもの利益より重要だとみなされるのです」と話す。

国際人権基準では、社会的養護下にある子どもを施設に収容するのは最終手段と定められている。拡大家族(extended family)による養育や養子縁組・里親養育が不適切でその子どもの最善の利益にならないと判断される場合に初めて、施設養育という最終手段を用いる、としているのだ。

***

施設偏重は、社会的養護下にあるすべての子どもにとっての問題である。しかし特に問題が大きいのは乳児についてである。2013年度時点で約3千人の赤ちゃんが乳児院で生活している。国際基準は、3歳未満の幼い子どもは、ほぼ例外なく家庭的な環境に置くべきと定めている。また子どもの発達を専門とする多くの専門家が、3歳未満の子どもが施設で育つと愛着障害や発達遅滞を生じ、脳の発達に悪影響を及ぼすリスクがあることを指摘している。東京のある乳児院の職員は、人手が足りず夜に赤ちゃんが泣き出してもあやす人さえいないと訴えていた。

施設で暮らす子どもの中で、障害をもつ子どもはかなりの割合に上る。その大半は軽度の知的障害や情動障害だ。政府の統計によれば、児童養護施設で生活する子どものうち4分の1に障害があるとのことである。

児童養護施設に暮らす障害のある子どもの一部は、障害児用の学校に通学しているため、地域社会の中で教育を受ける機会を失っている。さらに、社会的養護下の子どもの中にはそれ以上に同年代の子どもや地域社会から隔離されている子どもたちもいる。情緒障害児短期治療施設に収容されている子どもたちである。この施設は障害のある子どものみを対象としており、外出だけでなく通学をも制限している場合がある。国際人権基準は、障害のある子どもには、地域社会を基本とする環境で生活し、インクルーシブ教育を受けるために必要な支援を受ける権利がある、と定める。

親から分離された子どもが最初に入所させられるのは一時保護所だが、ここにも拘束や長期化という問題がある。子どもは一時保護所の敷地から出ることを許されず、通学や外部交通も制限される。一時保護の期間は2カ月までと定められているものの、実際には何度でも延長できる。一時保護日数の全国平均は28日(2011年度)。長いものでは2年近いケースもあった。

児童養護施設には新しく清潔で安全な建物が多いものの、ヒューマン・ライツ・ウォッチの訪問した施設のうち数カ所には問題があった。ある施設では、男性棟ではきつい尿の臭いがした。壁のコンセントは剥き出しになっており、壁紙ははがれ、多くの家具が壊れていた。

しかし建物以上に問題なのは、施設内の生活そのものである。まず子どもにはプライバシーがほとんど認められない。また、児童の居室の1室あたりの最低面積は、2011年に基準が改正されたにもかかわらず、それでも1人につきたった4.95平方メートルである。また大人の養育者との愛着や信頼関係を結ぶ機会にも欠けている。施設職員は交代制で、仕事に忙殺されていることも多く、子ども一人ひとりに注力し一貫した養育を行うことができないのが現実である。

多くの施設が大規模であることも問題を増幅している。児童養護施設を運営する法人の半数以上が定員20人以上の施設で子どもたちを養育しており、100人を超える定員を有する施設も30カ所ある。施設生活は基本的な生活スキルを学ぶ機会に欠けている。人間関係を築き、人とコミュニケーションを取り、社会生活を営む際のスキルを養う、また、料理や外出時の食事の仕方を覚えるなど、一般家庭にいる子どもなら自然と身につく社会常識を身につけるのは、施設の生活では容易ではないのが実態だ。

プライバシーが守られる場所がほとんどなく、フラストレーションがたまる生活を強いられている上に、過去の家庭内虐待で受けたトラウマなども原因となって、施設の子ども同士の暴力やいじめも発生している。施設で暮らさざるをえないことを劣ったことと捉える感覚ゆえに、子どもたちが施設で暮らしていることを理由に学校でいじめられることもある。

里親制度にも問題がある。国の被措置児童等虐待届出等制度によれば、養育者による虐待の割合は、里親からの虐待のほうが施設での虐待よりも高い。里子が死亡する事件もここ最近で数件起きている。

また里親委託は4分の1が不調となり、多くの子どもが里親宅から施設に送り返されている。不適切な里親認定とマッチング手続きも問題の一因だ。里親には十分な研修・支援・モニタリングが提供されていない。情報提供を行い、研修を実施する立場にある児童相談所は、人員も専門性も不足している。また、政府も、里親の役割の重要性を社会にアピールすることができていない。結果として、十分な資質が備わっていない人びとが里親として登録されている場合も少なくない。このことは障害など多様なニーズをもつ子どもを委託する際に特に問題となる。

施設で育った子どもの多くが退所後の生活に苦労していることは、施設や政府が、子どもが施設から自立するまで(高校卒業、あるいは、それ以前に教育機関を離れた時点で委託終了となり自立となる)に十分な準備をさせていないことの証左であろう。また、社会的養護下の子どもたちの教育レベルも一般家庭の子どもたちに比べて低い。東京都の場合、社会的養護下にある子どものうち高校を卒業する率は73%にすぎない。高等教育課程(大学、短大、専門学校)卒はわずか15%だ。全国平均では高校卒は81.5%、高等教育課程卒は36.1%である。5施設を出た子どもたちが、低収入の仕事に就いたり、失業者となることもかなり多い。ホームレスになることすらある。

政府は里親利用を拡大する必要性を認めてはいる。だが社会的養護制度全体の改革プランは断片的で、本格的とは言いがたい。

政府は2011年、社会的養護の配分を変え、今後10数年間で本体施設(新基準は45人以下)、施設運営のグループホーム、里親(ファミリーホーム含む)を各3分の1にするとの目標を掲げた。しかしこの計画では、大規模施設か家庭により近づけたユニット単位の環境かの違いはあるにしても、3分の2の子どもの施設委託を国が依然として認めていることになる。6この方針に沿って多額の予算が割り当てられ、多くの大舎施設でユニット化とグループホーム化のための新築や改築が行われている。

小規模施設は大規模施設に比べれば、子どもにとってよい環境と認められているとはいえ、家庭での養育とまったく同等なものにはなりえない。このような現状は、この少しだけ改善された施設養育への政府の依存が逆に強まる事態を生み、しっかりした里親制度への転換を阻む可能性もある。既存の施設の維持を優先してこの転換を先送りすることは、決してあってはならない。既存の施設が現在の予算規模と仕事の確保に常に関心をもっているのは無理もないが、政府は国際法上の義務に従い、子どもの最善の利益を最優先とし、施設の小規模化はあくまで暫定的なものとして扱うべきだ。

政府は、子どもの養育のための良質な里親制度の保障、および、養子縁組と里親養育の利用促進(同時に施設委託の削減)に本腰で取り組まねばならない。また、里子の死亡事件は社会的に大きな注目を集めたが、今後こうした痛ましい事件を起こさないためには、まだいくつもの改善がなされねばならない。現在の里親制度を改革・改善しない限り、委託数だけを上げても里親不調の割合が増え、悲しい結果が増すことになりかねない。里親が質の高い養育を行うためには優れた研修・支援・モニタリングが不可欠である。養子縁組の促進・改善策も真剣に検討されねばならない。

現行制度の欠点は克服可能である。しかし現状維持の言い訳として、容易に施設に収容できる現状、および、養子縁組と里親制度の改善に伴う困難がもち出され続ける限り、抜本的な改善は望めない。

東日本大震災による震災孤児と同様に、社会的養護の下にあるすべての子どもが家庭で暮らす権利をもっている。実親との生活が適わないのであれば、近い親戚や養親、里親による代替的養護を提供すべきである。

震災孤児へのケアと支援においては、政府が民間と一丸となって、最も弱い立場に置かれた国民を守る力が十二分にあることを証明した。社会的養護を必要とするすべての子どもに対しても、震災孤児に匹敵する関心と支援が向けられなければならない。


主な提言

国会への提言  

  • 国連「子どもの代替的養護に関するガイドライン」に従い子どもの最善の利益を確保するため、児童福祉法を改正し、社会的養護を必要とする子どもの委託先の決定を家庭裁判所などの独立した機関が行うようにすること。

日本政府への提言  

  • 乳児を施設養育から家庭養育に移行するための確実な計画を立て、その一環として、すべての乳児院を閉鎖すること。その計画においては達成期限が明確にされねばならず、計画の実現に向け、十分な資源投入と政治的意思が十分確保されねばならない。計画において3歳未満の子どもは家庭的環境で養育されることを明示すること。
  • 里親委託ガイドラインを国連の代替的養護ガイドラインに沿って改正し、都道府県と政令指定都市、児童相談所にその執行を指示すること。国連ガイドラインは、施設養育を「かかる養護環境が個々の児童にとって特に適切、必要かつ建設的であり、その児童の最善の利益に沿っている場合」に限るべきと定めている。
  • この改正では、乳児院などにおける施設養育が廃止されるまでの間、家庭的環境での養育に先立って施設入所を行うことのできる最長の期間について、当該子どもの最善の利益に反しない限り、具体的な短期の期限を設けること(たとえば児童は最長6カ月まで、乳児は最長3カ月までに限って施設入所が可能である等)。
  • 虐待を行う等子どもの適切な監護を行うことのできない実親が、社会的養護下の家庭養護への子どもの委託に同意しない場合には、児童福祉法第28条の手続きを利用し、子どもの里親委託の承認を家庭裁判所に申し立てるよう指示すること。
  • 専門家による政府から独立した委員会に対し、里親委託や施設入所などの長期的な措置に優先して、養子縁組が確実に検討されるために必要な施策を提言するよう諮問すること。
  • 子どもを養育する意思または能力のない妊娠中の女性の相談にのり、新生児の特別養子縁組制度を活用すること。
  • 親族里親と養子縁組希望里親を含むすべての里親が、十分な研修・モニタリング・支援(里親手当を含む)を得られるようにすること。質の高い包括的なプログラムを策定するため、専門家による政府から独立した委員会に対し、里親向けの包括的な研修・支援プログラム、モニタリング制度に関する施策提言を諮問すること。

調査方法

本報告書のための調査は、201112月から20142月にかけてヒューマン・ライツ・ウォッチのコンサルタント1名、スタッフ2名によって日本国内で実施された。インタビュー回答者は202人で、うち32人が社会的養護下にある7歳から17歳までの子ども、27人が社会的養護を経験した大人である。発言を引用したすべての子どもと一部の大人の名前は仮名である。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはまた、里親、施設長、施設職員、国や地方公共団体の公務員(児童相談所10カ所の職員を含む)、児童養護や保育の研究者、NPONGOの専門家にもインタビューを行った。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、児童養護施設18カ所、乳児院4カ所、自立援助ホーム1カ所、情緒障害児短期治療施設1カ所の計24施設、ならびにファミリーホーム・里親家庭7軒を訪問した。

子どもの当事者団体の話し合いやイベント、全国児童養護問題研究会、関東・甲信越・静岡地方の里親大会、里親会の集まりなど、会議やワークショップにも参加した。

インタビューと現地調査は、都道府県ごとに異なる施策のあり方を包括的に調査するため、4地方10都府県で実施した。東北は岩手・宮城、関東は茨城・千葉・埼玉・神奈川・東京、関西は大阪・兵庫、九州は大分である。

東北地方では、社会的養護の全体状況のほか、2011年の東日本大震災で親を亡くした子どもたちについても調査を行った。関東と関西を対象としたのは、全国的に見て社会的養護下にある子どもの数が最も多いこと、さらに関西ではいまだに多くの大規模施設が運営されていることにも見られるように、制度面で大きな違いがあるためだ。大分県は近年、里親委託の件数が著しい増加を見せたことから現地調査の対象とした。

インタビューを行った202人のうち、61人が東北地方の方々である。ヒューマン・ライツ・ウォッチは201112月、20125月、6月、8月と4回現地を訪れた。東日本大震災で被災した市町村を訪ねたほか、震災孤児やその養育にあたる人びと、地元の地方公務員や民間団体代表者などにインタビューした。

調査では、児童養護施設を多角的に捉えるため、千葉県内の児童養護施設で子どもたちとともに活動を行い、宿泊もさせていただいた。社会的養護下にある高校生を対象とした3日間のキャンプにも参加した。

本報告書が用いる「子ども」は、18歳未満のすべての人を指す。子どもの権利条約における子ども・児童の定義は「18歳未満のすべての者をいう。ただし、当該児童に適用される法律によりより早く成年に達したものを除く」とされる。

児童福祉法も子ども・児童を「満十八歳に満たない者」と定めている。ただし民法上の成人は20歳だ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、すべてのインタビュー回答者に対し、インタビューの目的とそれが任意であること、またデータの収集や使用の方法について事前に説明を行い、回答者から口頭で承諾を得た。インタビューは可能な限り第三者がいない環境で実施されたが、若干のケースにおいては、回答者の同意の下、友人など第三者が同席した状況で実施されたものもあった。

インタビューは日本語か、通訳を利用して英語と日本語で実施した。回答者に金銭報酬は一切支払っていない。

本報告書の作成にあたり、ヒューマン・ライツ・ウォッチは社会的養護に関する日本政府の文書や法律を検討した。また国連、および、NPONGOの報告書等を参照した。

本報告書は、英語オリジナル “Without Dreams – Children in Alternative Care in Japan”の翻訳版である。


I. 日本の社会的養護制度

日本では、2013年時点で39,047人の子どもたちが社会的養護制度の下で生活している。7

第二次世界大戦後、児童養護施設に住む子どもの多くは戦争孤児・浮浪児であった。しかし現在の日本の社会的養護の下で暮らすのは、その多くが両親あるいは片親のいずれかは生存しているが、家庭内虐待やネグレクトによって親とともに生活ができない子どもたちである。 8

1990年代後半から家庭内児童虐待が大きな社会的問題となってから現在まで、家庭内虐待の児童相談所への報告件数は増え続けてきた。9ほか、親との死別、親の精神障害・収監などで親とともに生活できない子どもも、社会的養護下で生活している。

政府の報告(2008年)によれば、児童養護施設で生活する子どもの53%、里親の下で生活する子どもの32%、乳児院で生活する子どもの32%が家庭内虐待の被害児であるとされる。10もっとも、委託自体は異なる理由でなされたものであっても虐待やネグレクトの被害も受けている子どもや、親や保護者から分離された後しばらくたってから、虐待やネグレクトの経験が判明する場合もあり、この数字には、これらの子どもたちは含まれていない可能性もある。

9割近くの子どもが虐待かネグレクトの被害を受けているのではないかと話す児童養護施設職員もいる。11厚生労働省によれば、児童養護施設で生活する子どもたちが受けてきた虐待の種類は、ネグレクトが70%、身体的虐待が39%、心理的虐待が24%、性的虐待が4%である。12

社会的養護を必要とする子どもについては、政府機関である児童相談所が一義的な責任を担う。児童相談所は全国206カ所に存在し、設置されている都道府県または政令指定都市に報告を行うこととされている。13

児童相談所に対して、学校や医療機関、警察、そのほか一般の人びとからの通告などで子どもの要保護性についての情報が伝えられると、児童相談所職員が調査を実施し、子どもの安全確認を行い、援助方針を検討する。 14

一時保護

緊急に子どもの安全確保が必要と判断する場合には、児童相談所長が、子どもを親から分離して一時保護する決定を行う。日本ではこのプロセスに司法は関与しない。 15

一時保護の期間、子どもたちは多くの場合、児童相談所の監督下にある一時保護所で生活することになる。この期間、子どもたちは外出が許されず、通学や外部との接触も制限されることが多い。16乳児は乳児院に一時保護委託される。児童福祉法では、一時保護期間は2カ月以内とされているが、延長可能で、延長回数には制限がない。

1日あたりの一時保護所の保護人員の平均は全国で1,541人、平均在所日数は28日である(2011年)。平均が最も長い千葉県では、子どもの平均在所日数は53日である。17長いケースでは、2年近く子どもが一時保護所に滞在するという場合もある。18 36%(2011年)の自治体が、定員を超えた数の子どもを収容せざるを得ない一時保護所をかかえる状態となっている。19

一時保護期間中、児童相談所は親子の再統合を目指し、親子関係の調整を行う。もっとも、多くの事案で問題の根本原因となっている家庭内虐待や、薬物依存などを克服するために親を支援する特別なプログラム等はほとんど存在しない。 20

一時保護した子どもについてさらに長期の親との切り離しが必要と認められる場合には、児童相談所は子どもを児童養護施設や里親等に委託する。これについて以下詳述する。 21

社会的養護の各制度

一時保護の後に子どもたちが委託される日本の社会的養護制度は以下から構成される。

  • 乳児院:乳児および幼児を養育する施設22
  • 児童養護施設:おおむね3歳から高校卒業までの子どもを養育する施設(ただし、義務教育終了の後に子どもが教育機関を離れた時点で、委託は終了する)23
  • 自立援助ホーム:義務教育を終了した後教育機関を離れ、児童養護施設等を退所した15歳~19歳の子ども、または、都道府県知事が支援を必要と判断した同年齢の子どもが生活する施設
  • 情緒障害児短期治療施設 :心理的・精神的問題を抱え日常生活に支障をきたしている子どもが、医療的な観点から心理治療を行う施設 24
  • 里親制度:家庭において、14人の子どもに養育を行う制度
  • ファミリーホーム(小規模住居型児童養育事業):家庭において、56人の子どもの養育を行う制度

社会的養護下にある子どもの数 (2013 10 1 日現在 ) 25

児童養護施設

28,831

乳児院

3,069

情緒障害児短期治療施設

1,310

里親

4,578

里親型グループホーム

829

自立援助ホーム (15-19)

430

総合計:

39,047

子どもの施設委託・里親委託は、児童相談所が、実親など保護者の同意を得て行うのが慣例となっている。26保護者の同意が得られないときは、児童相談所長または都道府県は、児童福祉法第28条に基づき施設への入所措置あるいは里親措置等をとることについて家庭裁判所の承認を求め、家事審判の申し立てを行うことができる。申し立てに際しては、親に監護させることが著しく当該児童の福祉を害すると立証する必要がある。家庭裁判所が施設あるいは里親措置に付すると承認した子どもについては2年ごとに更新手続きが必要である。27

児童養護施設

日本の社会的養護では、施設養育が中心であり、里親委託は14.8%にすぎない。子どもの平均在所期間は5年だが、10年を超えて施設で生活する子どもも18%も存在する。28

日本の児童養護施設は大規模で、定員の平均は55人である。一番大きな施設の定員は164人である。29

日本政府は児童養護施設を3つのカテゴリーに区分している。20人以上の子どもがいる大舎制(大舎の住居を有する児童養護施設の数は280)、13人~19人の子どもがいる中舎制(中舎の住居を有する児童養護施設の数は147)、12人以下の小舎制(小舎の住居を有する児童養護施設の数は226)である。30

しかし、「中舎制」「小舎制」と分類されている施設の多くは、実際は「小規模」ではない。多くの場合、「ユニット形式(小規模グループケア)」を採用する等していることから「小舎」と数えられているだけで、一養護施設全体の子どもの総数はかなり大きいものとなる。施設全体では、100人以上の子どもを受け入れる「大舎制」と規模の点ではさほど変わらない施設もある。31

「大舎制」の施設では、子どもは寮のような環境で生活している。部屋やトイレ、食堂、居間を数十人の子どもが共用する。日本の児童養護施設の51%が、1つ、あるいはそれ以上の大舎の施設を有している。

グループホームやユニット形式を採用し、施設においても小人数のグループによる養育を行う取り組みがなされている。大規模施設を小規模な形式に変更し、養育の質を高め、住居環境を小規模化しようとするものである。ユニット形式とは本体施設の中を68人の小規模なグループに区切り、それぞれのグループ間の行き来をなくして生活する形式である。グループホームとは、本体施設の運営の下、地域の民間住宅等を借りる等して1軒に6人までの子どもを3人程度の担当職員で養育する方式である。

乳児院と情緒障害児短期治療施設については第2章で論じる。

里親制度

日本では、4,295人の子どもが里子として3,293世帯の里親宅で暮らしている(2012年)。また671人の子どもが177カ所のファミリーホーム(小規模住居型児童養育事業)で暮らしている。日本には下記4種類の里親制度とファミリーホーム制度がある。

里親制度の種類

養育里親:日本ではもっとも基本的な里親制度。養育里親は、5年ごとに登録を更新しなければならず、その際には、都道府県または市、もしくは実施資格のあるNPOによる更新研修(1日)を受講する。養育里親には、里親手当が月額72,000円支給される。このほか一般生活費、教育費、医療費等が支給される。322012年の登録里親数は7,001世帯であるが、子どもを実際に委託されている里親数は3分の1をわずかに超える2,617世帯であり、委託児童数は3,283人である。

専門里親:児童相談所がその養育に関して特に支援が必要と認めた場合、子どもは専門里親に委託される。対象となる子どもは、児童虐待等の行為により心身に有害な影響を受けた子ども、非行等の問題を有する子ども、身体障害または精神障害がある子どもである。専門里親となるには、養育里親か児童養護施設職員の経験が3年以上あることが条件であり、専門里親研修を修了している必要がある。また委託児童の養育に専念できることも求められる。専門里親は、2年ごとに研修を受けて、登録を更新せねばならない。専門里親には、里親手当が月額123,000円、ほか、一般生活費、教育費、医療費等が支給される。2012年の専門里親の登録数は602世帯だが、専門里親として子どもを預かっている専門里親は152世帯に留まる。委託児童数は184人である。33

養子縁組希望里親:子どもの養子縁組を希望する里親。2012年の登録数は2,124世帯で委託を受けているのは183世帯、委託児童数179人。34元の家庭に復帰する可能性の低い子どもと不妊に悩む里親との間により強い関係を築くために用いられることが多い。日本では最終的に里子と養子縁組する里親は17%を少し上回る程度にすぎない(里親制度全体の統計)。35金銭的な理由から、養育する子どもの養子縁組を実際には望んでいるものの養子縁組希望里親ではなく養育里親として登録している里親も多い。養育里親が養子縁組希望里親として登録した場合、月額72,000円の里親手当(都道府県または市および国からの支給)を受給することができなくなる。支給されるのは一般生活費、教育費、医療費等のみとなっている。

親族里親:直系3親等内の親族である子どもを受け入れ、子どもを養育する責任を負う場合の里親制度を指す。親族里親には里親手当が支払われないが、一般生活費、教育費、医療費等は支給される。直系3親等内の親族の中では、おじ・おばには民法上の当然の扶養義務がないため養育里親制度の適用が認められ、里親手当が支払われる。この例外措置は、2011年の東日本大震災後、甥や姪を引き取るおじ・おばが増えたために設けられた。2012年時点で、登録里親数445世帯、委託里親数434世帯、委託児童数649人。36

ファミリーホーム(小規模住居型児童養育事業):2009年に創設された制度である。個人の住居において家庭的養護を56人の子どもに提供する制度であり、里親制度の規模拡大をはかったものである。37

2012年の登録里親世帯の総数は8,726世帯だが、子どもを委託されていない養育里親は6割にも上る。この問題は第3章「不適切な認定とマッチング」で論じる。

里親認定・登録・委託までの流れ

里親制度を運営するのは都道府県および政令指定都市に設置される児童相談所である。里親希望者が児童相談所に申し込むと、基礎・認定前研修、家庭訪問・調査が行われる。

調査結果は都道府県知事(政令指定都市市長)に送付される。知事・市長は希望者の適格性について児童福祉審議会の意見を聞く。

里親認定には、児童福祉法施行規則の要件を満たしていることが必要とされる。具体的には、要保護児童の養育についての熱意があること、経済的に困窮していないこと、養育里親研修を修了したこと等である。 38 これは国が定める里親認定要件だが、各都道府県・市が追加で要件を定める場合もあるので、自治体によって要件は若干異なる。 39

委託に適当な子どもがいる場合に、児童相談所を通じて里親と里子のマッチングが行われ、一時保護所や施設に里親登録者が通い、また自宅に何度か預かるなどした上で委託となる。 40

里親に支給される手当等 

政府は子どもの一般生活費を里親に支給する。2013年時点の支給額(月額)は乳児54,980円、乳児以外47,980円である。また、里親には、幼稚園費・教育費・入進学支度金・就職・大学等支度金・医療費等も支給される。このほか、養育里親には月額72,000円(2人目以降36,000円加算)の里親手当等が支給される。

専門里親には123,000円(2人目以降87,000円加算)の手当が支給される。41 なお、親族里親、養子縁組希望里親には里親手当は支給されない。42

委託後の支援

子どもの委託後は児童相談所職員など(ほか、児童養護施設の里親支援専門相談員など)が里親宅を訪問し指導、支援する。 43

里親は各地域の里親会に所属することが推奨されている。里親会は里親サロンを開き、研修を行い、里親の相談窓口となる等、里親サポートを担う。里親支援機関事業として、都道府県から補助金を受けた里親会やNPOに研修等の事業が委託されることもある。2012年度からは児童養護施設や乳児院に里親支援専門相談員が設置され、里親の相談にのる等している。委託後の支援に関わる問題は第3章で論じる。

養子縁組

適切な期間内の家族再統合が不可能な場合、養子縁組は、里親や施設による養護よりも子どもの利益に資すると一般的に評価されている。しかし児童相談所は養子縁組の活用には消極的であり、結果として2011年に児童相談所を介して養子縁組された子どもは303人にすぎなかった。この年に届け出済み民間機関による養子縁組は127人だった。44

未成年者の養子縁組には家庭裁判所の許可が必要である。15歳未満の子どもの養子縁組については、子どもの実親などの法定代理人が代諾する。45

日本には特別養子縁組制度がある。実の親子関係類似の関係を築くため、実親と子どもとの親子関係は終了する。特別養子縁組の対象となるのは6歳未満の子どもに限られ、6カ月以上の期間監護した状況を検討の結果許可される。46愛知県など一部自治体では、子どもを養育する意思がない、あるいは、それができない妊娠した女性の相談にのり、特別養子縁組先を探す試みを行っているが、多くの地域ではこの取り組みはなされていない。


II. 施設での虐待と課題

毎日がとてもつらかった。中学校の友だちにはみんな両親がいたんですよ。だから僕も親が欲しかった。
東北地方の施設で暮らすマサキさん(15)、201112

昔から施設では子どもへの体罰が行われることがあった。現在も少数ながら事例の報告があるが、最近は体罰をなくす取り組みが行われ、件数そのものは大幅に減った。 47 もっとも、施設に住む子どもに対する施設内外の子どもからのいじめ、嫌がらせの被害は後を絶たない。

さらに、施設偏重自体が人権侵害に該当しうるし、一部施設については施設環境そのものが人権侵害に該当しかねないものもある。児童発達の専門家による多くの研究結果によれば、施設収容は子どもに深刻な発達遅滞をもたらし、障害や回復不能な精神的損害を与えることがある。こうした影響は施設滞在期間が長いほど、または施設環境が悪いほど悪化する。

大人による虐待

かつて児童養護施設では、身体的虐待(殴る蹴る、長時間の正座 48 など)が、多くは「しつけ」という名目で広く行われていた。ある施設職員は「昔は、よく手をあげた」と話す。 49

しかし「体罰」は許されないという認識が社会に広まり、一部施設での虐待事件が1990年代後半から2000年代前半にかけて連続して注目を浴びたことで改革がなされた。

20094月に政府はようやく児童福祉法を改正。「施設職員等は、被措置児童虐待等その他被措置児童等の心身に有害な影響を及ぼす行為をしてはならない」と定めた。50

この改正を受けて設置されたのが被措置児童等虐待対応ガイドラインである。これにより虐待等を発見した者には通告義務が課せられ、都道府県知事等には施設・里親下での虐待通報件数の公表が義務づけられた。 51 ヒューマン・ライツ・ウォッチがインタビューした何人もの専門家が、社会的養護を提供する側の体罰が当たり前という風潮は影を潜め、施設職員による子どもたちの虐待の程度はかなり落ち着いてきたと述べていた。 52

2011年(平成23年)の統計によれば、被措置児童等虐待届出制度に基づき行われた施設・里親における虐待の届出総数は全国で193件。53政府による調査で、46件で被措置児童等虐待の事実が認められた。内訳は身体的虐待37件、心理的虐待6件、ネグレクト2件、性的虐待1件。これら46件の発生場所は児童養護施設が約3分の2、里親・ファミリーホームは13%。残りの26%は、乳児院1件、児童自立支援施設4件、児童相談所(一時保護所含む)3件、障害児施設等4件だ。

身体的虐待事案には、施設職員が子どもに注意する時に平手で叩いたり、蹴ったりしたというものもあった。54ある児童養護施設では、子どもが弟を一方的に殴るなどしたときに「殴らないと分からない」と言ったことに対して、職員3名が体罰を加えた。職員たちは「自分がやられたらどうか」と怒ったという。職員が子どもと性的な行為に及んだとの事案が起きた児童養護施設もあった。

ある子どもは施設にいたときのことを思い出しながら、ある職員が、1人の子どもが何か悪いことをしたと思うたびにその子を殴っていたと述べた。「みんな見ていました。でも止めなかった。声さえかけなかった。」55

虐待はきわめてデリケートな問題である。何をされたか報告することを躊躇する被害者もいる。加えて多くの子どもは、自分の被害を施設等の外に報告するすべを知らない。そうしたことからすれば、社会的養護制度内の虐待の実際の発生件数は政府統計よりも多い可能性が高い。 56

子ども同士のいじめや暴力

プライバシーが守られていないこと、フラストレーションがたまること、多くの人に囲まれて生活すること、とくに弱い立場にある子どもと腕っぷしの強い年長の子どもが分離されずに集団生活をしていること等から、暴力やいじめがなされることがある。インタビューでは、多くの施設出身者が、施設の生活で一番辛かったのはほかの子どもたちからのいじめであると答えた。ある施設長は「年上の子どもと年下の子どもの間にはつねに力関係があることは認識しています」と述べた。 57

中学生のアキさんは、施設にいたときほかの子どもたちからいじめられた。担当職員にいじめを訴え、職員は子どもたちに止めるように言ったが、いじめは続いた。 58 アキさんは「施設長にはっきり止めるように言ってほしかった」と言う。しかし施設長は何もせず、いじめは続いた。アキさんは、施設に住むほかの子どもたちに倉庫に連れて行かれ、性的ないやがらせを受けた。アキさんは言う。「あの施設にいたときはずっとつらかったです。嫌がらせのことを誰にも話せませんでした。私が自分で言わなくても施設職員が気づいてくれたらよいのにと思っていました。」 59

アキさんの里母は「施設の方は、このまま(施設に)置いておいたら妊娠する可能性があるということで、そのことが発覚してすぐにこの子は施設からうちに送られてきました」と述べた。 60

別の施設の施設長は、子どものあいだの性的虐待事案は平均して年に1件あると話している。61

大阪の施設にいるジョウジさん(15)はこう述べた。

僕は小学校の時とてもやんちゃでした。手当たり次第にものを殴ったり、壊したりしていた。施設ではいつでもけんか。どうでもいいことでほかの子を殴っていました。前にいた施設では先生たちの死角になっている場所がありました。子どもたちはそこで脅されたり、そこで泣いたりしていました。 62

施設出身者である阿部俊幸さん(19)は、小学生の頃に施設の高校生からひどくいじめられたと話す。「バットで殴られたり、顔面を殴られたり。(中略)上級生の気分次第で殴られた。」職員も気づいてはいたと思うが「でも、おばあちゃんだったので。何も言わなかった。」63

子どもは施設に住んでいるためにばかにされたり、仲間はずれにされたりする。ハナさん(13)は「クラスのみんなは私が施設から通っていると知っていて、なんとなく距離を置いています」と述べる。64

ある施設長は、施設の子どもは学校で苦労していると指摘する。「施設で暮らしているから、家族と暮らしていないからですよ。普通じゃないというので、特別な目で見られるのです。」6520歳になるが施設で暮らしているマイコさんは指摘する。

施設にいることを隠す子どももいますよ。児童養護施設の子どもが特別視されることもありますから。 66

ノゾミさんはこう述べる。

施設暮らしは惨めです。学校がすぐ近くだから、どこから通っているのかみんなにわかってしまいます。たとえば、去年のことですが、突然クラスメイトたちが、私はみんなの税金で養われていると言い出しました。今年は今年で、みんながどこか遠くに遊びに行こうという話をしているときに、私に向かって言うのです。「あなたは施設から学校に来てるから無理よね。お金も時間もないんだし。」いつでもそうです。「たぶんあなたは無理よね。施設だしね」と言われるのです。 67

乳児の施設収容

日本では社会的に養護することが必要な乳児の大半が施設に収容される。しかし研究によれば、4歳未満の子どもは親や養育者と十分な関係を結ぶ機会がないと、発達と精神に悪影響を被るリスクがある。68

2011年度に社会的養護下にある2歳以下の子ども2,032人のうち、里親委託は15%(310人)に留まり、残る85%1,722)は乳児院入所だった。69 68都道府県政令・中核市のうち約半数が0歳児を里親委託していなかった(2011年度)。70 2010年度末時点で2,963人の子どもが乳児院で生活していた。71

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ベビーベッドが所狭しと並ぶ東京都内のある乳児院。定員 35人のベッドルーム 2つに、 0~ 2歳児が暮らしている。 2012年 8月撮影。 © 2012 猿田佐世/ヒューマン・ライツ・ウォッチ

たとえば、最多の要保護児童をかかえる東京都では、平成23年度に2歳未満の子どもを395人措置した。乳児院への委託は95%で、里親委託は0歳児1人、1歳児17人だけであった。乳児の委託のほとんどが施設委託であったのである。生後1カ月以下の新生児56人については、里親委託は実に0件だった。72

児童虐待や愛着障害の専門家であるヘネシー澄子さん(東京福祉大学名誉教授)はこう述べる。

親との安定した愛着関係は、脳の正常な発達に重要な役割を果たします。生後3カ月以内に築かれる愛着関係とその後のものは深さと質が違います。(略)乳児院に預けることで知的に遅れてしまった子どもを作り上げているのです。73

自ら子ども時代を施設で過ごし、現在は里親である竹中勝美さんは指摘する。

日本の社会的養護では赤ちゃんを乳児院に入れてわざわざ障害者を作り出し、その後になって、その障害をケアしなければならない、大変だ、と騒いでいる。最初から里親に預ければそんな苦労もいらないのに本末転倒です。 74

済生会中央病院附属乳児院(東京)では、定員35人の0~2歳児に対しベッドルーム2つで養育を行っている(ほかにプレイルームと食堂が1つずつある)。看護師長竹内まつ江さんは言う。

この建物は関東大震災(1923年)を契機に作られた施設で、(この環境を)子どもたちに申し訳ないと思うのですが、どうしようもないのです。75

二葉乳児院(東京)では、夜に子どもが泣いてもあやす人がいない場合があるという。職員はこう説明する。

夜になると手が足りず、1人でたくさんの子どもを見なければなりません。何人かの子どもが同時に泣いていると、どうしても1人の子どもを抱いてあやしつつ、ほかの子どもには枕ミルク(ベッドサイドに哺乳瓶を固定して子どもに吸わせる方法)をせざるを得ないのです。76

障害のある子どもの隔離

社会的養護下にある子どもは障害のある率が高い。政府によれば、児童養護施設に入所している子ども(障害児用の施設ではないことに留意)の約4人に1人に障害または医学的な問題がある。77障害の種別は、知的障害(40%)、広汎性発達障害(11%)、注意欠陥多動性障害(ADHD)(11%)、身体虚弱(10%)、言語障害(6%)、てんかん(5%)、学習障害(LD)(5%)であった。78

児童養護施設の子どもの53%が被虐待児であり、情緒・行動上の問題が多く見られる。このため専門的ケアを要する子どもの総数はさらに増える。79虐待は身体的障害だけでなく、脳の発達にも影響を及ぼし発達面でも様々な問題を引き起こす。80

被虐待児に顕著な傾向としては、問題行動の噴出、解離(記憶の断裂や意識状態の変容、幻覚、別人格へのスイッチングなどが日常的に認められ、攻撃的行動が頻発)、過覚醒状態による多動、易刺激性、感情コントロールの不全、攻撃的行動等があげられる。 81

しかし、被虐待児を施設入所させることで、こうした既存の問題のケアよりも、より大きな困難を引き起こすこととなる。たとえば、適切な人間関係の形成をいっそう難しくするなどである。 82

また、障害のある子どもが社会的養護下に入る際、同年代の子どもたちや地域社会からさらに分離される場合もある。約1,300人の子どもが入所するのが、全国38カ所の情緒障害児短期治療施設である。これは情動に問題を抱えた子どもたちの治療および生活指導を行う施設である。83

厚生労働省によれば、入所児童の70%以上が被虐待児だ。84施設には医師、心理療法担当職員、看護師が置かれ、心理治療のほか生活指導や学校教育などの支援を行う。治療のために通所する子どもたちもいるものの、ほとんどの子どもが施設収容されて暮らしており、通う学校も施設内にある場合もある。

治療目的が達成されれば退所となる。入所期間の全国平均は2.1年。85ヒューマン・ライツ・ウォッチは横浜市内の施設を訪問した。小学生から高校生まで50人の子どもが生活する場だ。施設長は「一定の改善が見られるまでは3年程度かかります」と述べる。そして「小学校から高校卒業まで在籍する子どももいる」と付け加えた。86

この施設では、小中学生の子どもは施設内の教室で学ぶ。施設長は「普通の学校と変わりません」と胸を張る。 87 自室から教室までの通学は建物内での移動。外に出て敷地内の運動場で遊ぶことはできるが、施設からの外出には許可が必要だ。

施設には子ども50人に対してパソコンがわずか2台しかなく、同年代の子どもや地域社会からの隔離をさらに深める原因の1つとなっている。日本は1人あたりのパソコン保有台数が10人に約8台と世界で最も高い部類に入る。88

高校になると多くの子どもが施設外の学校に進学するが、溶け込むのは容易ではない。施設長はこう述べる。
引け目を感じてしまうのです。自分が普通ではないと思っていて、自分から臆してしまう。人の目をものすごく気にしてしまうのです。 89

高校まで通常の学校に通っていないことが、子どもの不安感や疎外感につながっているのではないかと尋ねたものの、施設長から明確なコメントはなかった。

これら38カ所の情緒障害児「短期」治療施設では、子どもを「特別」支援教育施設に通学させるという措置をとることもある。特別支援教育モデルでは、障害のある子どもは分離された学校で教育を受ける。障害のある子どもとない子どもの間にはほとんど交流がない。これは、地域社会からの疎外(障害のある子どもが一般に直面する状況である)をさらに深め、差別が強まる原因ともなりうる。90

「治療施設」に入所して分離されていなくても、児童養護施設から障害のある子ども向けの学校に通学させられるケースもある。たとえば鈴木正志さん(仮名)は普通高校ではなく「特別支援学校」(高等部)に通ったが、周りの生徒は障害の程度が進んでいたので、友達ができず1人で過ごした。「先生と飲みに行ったりしていた。友達と言えば、普通高校に行っている中学からの友達だった。」91

マイコさんは小中学校を障害のある子どものための特別支援学校に通ったが、高校では普通学校に進学した。

高校に行ったとき、初めて地域の中で生きている感じがしました。知らないことがほんとうにたくさんありました。考え方とか生活の仕方とか、とにかくまったく知りませんでした。地域の中で生活できていたなら、ほかの人と話をするのももっと楽にできたはずです。 92

障害のある子どものインクルーシブ教育や、障害のある子どもへの地域における非施設型居住ケアの国際基準については第5章を参照されたい。

施設の抱える全般的な問題  

日本の社会的養護は施設養育に偏重している。先進国のなかで、13.5%2012年)という日本の里親委託率はきわめて低い。93一方、社会的養護下にある子どもの比率はほかの先進国と比べて低い。94

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児童養護施設の平均在所期間は約5年である。14%の子どもが10年以上在籍している。955章で詳しく述べるように、国際基準は、施設ではなく家庭での養育を一般に推奨している。

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就学前の子ども用の寝室(関西地方の児童養護施設)。二段ベッドの横には遊ぶスペースがある。 2012 6 月撮影。 © 2012 猿田佐世/ヒューマン ライツ ウォッチ

多くの研究が、施設養育一般を指して、子どもの精神・身体・知能・言語の発達が被る悪影響の一因だとする。 96 多くの子どもが実家庭の虐待やネグレクトが原因で施設に委託されているにもかかわらず、施設養育が悪影響を及ぼし、子どもの受けたダメージを深刻化しかねないのだ。英国ノッティンガム大学で法心理学・児童保健学を教えるケヴィン・ブラウン教授は「『質の良さ』がはっきりしている入所型養育施設でさえ、子どもの人間関係形成能力に一生を通じて有害な影響を与える」と論じる。 97 里親養育は施設養育よりも、子どもとの間により深く持続的で一貫した関係を築くことが可能である。里子だった福田恵さんは述べる。

(施設と里親の)一番の違いは、絶対大人が変わらないところ。(施設経営の小規模養育形態である)グループホームでも、大人が住み込んで24時間やってますよ、ということになっているけど、その大人が死ぬまでそこで働いているかというとそうではない。98

埼玉県でファミリーホームを運営し、里子4人を育てる丸山智也さんは、施設養育に由来する問題を目の当たりにしてきた。たとえば、今まで預かってきた子どもたちの多くに発達遅滞があることを実感している。丸山さんは自身の経験も踏まえ、こうした遅れの原因は、実親宅での虐待のみならず、行き届かない施設養育にもあるのではないかと話す。「施設では『安全』を一番の目標としています。子どもたちに積極的に新しいことに挑戦させるような育て方はできません」と丸山さんは指摘する。「私たち里親は、子どもに何かできないことがあったら、『こうすればできるかも、ああすればできるかも』といろいろ考え、できるようになるまで根気強くトライさせ続けますが、施設ではそれもできません。」 99

丸山さんは、帰宅した里子たちの宿題を毎日見ている。そして里子たちにはちゃんと「勉強をさせないとだめ」と指摘する。社会的養護下の子どもたちには幼いころからハンディがあるので、学力でカバーさせなければならず、「実子以上に勉強させないと、と思っている」と話す。また丸山さんは子どもたちに地域のサッカー教室等いろいろな課外活動にも参加させている。丸山さんによれば、施設養育との違いはここにもあるという。

週末になったら、子どもたちはサッカーに行く、ぼくら親もついていく。これは、ごく当たり前のこと。でも、施設では、1人の子どもに外に行かれちゃうと施設の職員が1人取られてしまう。だから子どもたちは習い事も十分にできない。100

大規模施設という問題

施設収容は様々な問題を引き起こすが、日本には施設の規模が大きい場合が多い結果、その問題がさらに深刻化している。児童養護施設を運営する法人の半数以上が大舎制(定員20人以上)の施設で子どもたちを養育しており、定員が100人を超える施設が30施設。さらにその30カ所のうち5カ所は定員150人を超えている。101こうした児童養護施設の多くが、定員一杯、もしくは数人少ない程度にまで子どもを受け入れている。

児童養護施設「目黒若葉寮」の職員早川悟司さんは、大規模施設では十分な質の高い生活環境が提供できないと説明する。「大舎に子供たちを長く置くのは、それだけで制度による虐待です」と述べる。「子どもたちの生活スタイルは、一般家庭とかけ離れた生活環境となっています。子どもたちを普通ではない環境に置くから、子どもたちは本来学ぶはずのことを学べないのです。」 102

政府は近年、家庭的養護に力を入れだした。これによって大規模施設偏重型から小規模型(ただし、施設である点では同じ)への移行が始まっている。日本政府は、ユニット形式やグループホームなど、大きな法人の中で行われる小規模単位の養育の推進を指して、「家庭的養護」を推進していると主張している。

日本政府は2011年に、社会的養護のバランスを変え、今後10数年間で本体施設(新基準は45人以下)、施設の運営によるグループホーム、里親(ファミリーホーム含む)でそれぞれ3分の1にするとの目標を掲げた。103この方針に沿い、多くの大舎施設でユニット化、グループホーム化に向けた新築や改築が進められている。104

大規模施設の一部はユニット制、グループホーム等を導入している。当該施設の職員からは「子どもが落ち着いた」「住環境が(一般家庭のように)静かになった」との意見があった。 105 このほかにも、グループホームなどでは一般家庭に近い環境のなかで育つため、冷蔵庫の使い方が分からない、調理の前の野菜の形を知らない、といった日々の生活をする上での問題点は、大幅に少なくなるという利点も見られた。 106

こうした点は改善されたとしても、施設養育が家庭養護とすっかり同じになることはない。小規模施設は大規模施設よりも子どもにとってはよいと考えられているが、一般的に言って、家庭養護と比較すると子どもの最善の利益にはならない。多くの施設が大規模施設からグループホーム化やユニット化に移行するため改築や新築に取り組んでいる現状は、この少しだけ改善された施設養育に対する政府の依存が逆に強まる事態を生み、成熟した養子縁組と里親制度への転換を阻む可能性もある。

スタッフ不足、愛着関係を築くことの難しさ  

施設では職員が交代制で勤務するので、担当する子どもを一貫して養育することはまれだ。その結果、多くの子どもが大人の養育者との絆や信頼関係を結べないままの環境で育っている。

山本節子さんは7年間児童養護施設で働いた後、25年以上里親を務めている。現在はファミリーホームで6人の子どもを養育する。節子さんはこう語る。

乳幼児期から、特定の人からの愛情を受け、安心できる不動の関係でいること。多少いろいろあったとしてもこの「不動の関係」を築くということ、これが絶対的に必要だと思います。施設養育を長期に受けるというのは、人としては基礎的な安定感を欠くのです。 107

同一人物が一貫して養育することは、施設養育では実質的に達成不可能である。職員の担当制を採用する施設でも8時間勤務の交替制なので、いつでも同じ子どもたちを見るわけではない。職員の採用・退職もあるので、養育にあたる職員は何度も入れ替わることになる。

施設で暮らすヒロさん(高校3年生)は言う。

小さい子たちが職員に抱っこされているのを見るとすごくうらやましい。職員たちは忙しいから私みたいに大きい子どもに構っている時間がないでしょう。職員が交代したり、時には辞めたりするときもあって、それは最悪です。職員が変わるのは耐えられません。途中でいなくなるくらいなら、そもそも信頼なんてできないって思ってしまう。 108

ケンジさん(17)はこう述べる。

3歳から15歳まで同じ職員が担当でした。でも2年前に変わってしまって。新しい職員は僕には全然若くて。(中略)たいていの職員は仕事だから僕たちの相手をしているみたいに思えてしまう。仕事だから遊んでくれるだけ。愛してくれるわけじゃないんです。109

98人を受け入れる大阪の児童養護施設をヒューマン・ライツ・ウォッチが訪問した際、ある職員は胸を張って言った。

職員には、担当する子どもと月1回おやつの時間を取るように決めてあります。2人で顔を合わせて、職員が子どもに何か問題はないかと尋ねるのです。110

日本の施設は、職員配置の面でヨーロッパや北米の児童養護施設と比較して圧倒的に劣っている。111このことは質の高い養育を維持する上で必然的に問題を生じさせる。イングランドでは、人員配置基準は子ども1人あたり最低1人である。日本においては、2012年に見直された配置基準によれば、職員と子どもの比率は、2歳未満の幼児で1.6123歳の幼児で2135歳の幼児で41、少年(6歳以上)で5.51である。

日本の新たな配置基準は、施設養育に関わる人びとを大きく失望させる内容だった。多くの人は大幅な改善を期待していた。112個別対応職員や家庭支援専門相談員の配置について措置費加算があるものの、ユニット制施設の一部では3交代制で働く職員について、18人の子どもを夜1人で担当させている場合がある。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、2カ所の施設でこうした職員配置があったことを確認した。人手不足でニーズに対応できていないという不満は、それ以外の施設で働く職員からもあがっていた。

生活力のつきにくさ  

子ども時代を施設で過ごした人たちに「施設養育で欠けていることは?」と尋ねたところ、圧倒的多数が「社会で必要な基本的なことを教えてもらえない」というものであった。元施設出身者の森川喜代実さん(30)は、このように説明してくれた。

施設を出て一番困ったのは生活の基本的なことがわからないことです。電気はお金を払わないと家まで送られてこないこと、電車の切符の買い方、マクドナルドでの注文の仕方がわからないなど。普通の家庭の子どもだったら当たり前に体験していることを私たちは知らないで社会に出るのです。 113

現在、里親と暮らす小学校6年生のトモさんは、施設を出たての頃「一緒に買い物に行っても何をしていいかわからなかった」と話す。114

ある里親は、施設では「ごく普通のことが知らないうちに制御されていて、それが当たり前になってしまう」と指摘する。これらは「生活の中で学び取ることが必要」なのだと述べる。 115

これら一見小さなことの積み重ねが、施設出身者の自立困難につながっていく。インタビューでは、施設在籍中の十分な訓練の必要性を訴える施設出身者が後を絶たなかった。たとえばコミュニケーション能力や生活スキル、社会常識である。 116  また、施設内の子どもにとっては、家庭生活にかかわる社会常識を身につけ、自らが将来築くことになる家庭のモデルを知ることが難しい。 117 ある里子(高校生・女子)は「里親宅に来て、生まれて初めて家庭団らんとは何かがわかりました」と話していた。 118

プライバシーがないこと

児童養護施設「幸保愛児園」園長の宇田川邦房さんは、蚕棚のように並ぶ備づけ二段ベッドを見せ、この施設で子どもを適切に養育することは難しいと訴えた。 119

ヒューマン・ライツ・ウォッチが訪問した別の施設では、児童養護施設が病院と併設されていた。子どもの部屋は一般病棟と同じ型の大部屋で、病院のベッドがところ狭しと並んでいた。そのベッドの上だけが子どもたちのプライベートなスペースだ。 120

ある施設では8人の子どもが1室に住んでいた。121何年かその施設で生活していたマイコさんはこう述べる。

時にはゆっくり考えたいことってありますよね。静かなところでじっくり考えたいことって。でも周りに人がいて、別にそれで緊張するわけではないにしても、やっぱりいつでも周りの目が気になって。ただ1人になれたらなって時々思うんです。122

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男子用 子ども部屋(岩手県内の児童養護施設)。病院 の部屋が利用されており、病院用ベッドが所狭しと並んでいる。 2012年 8月撮影。 © 2012 猿田佐世/ヒューマン・ライツ・ウォッチ

現在は里親と暮らす中学生のアキさんは、施設にいたときのことを話してくれた。「ほかの子どもと3人で1部屋でした。高校生でも3人で1部屋なんです。プライバシーなんてなかった。」123

児童福祉施設が遵守すべき最低基準は「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」で定められている。1242011年に、児童の居室の1室の面積は1人につき3.3平方メートルから4.95平方メートルに引き上げられた。乳幼児のみの居室の1室の面積は、わずか1.65平方メートルだったものが2.47平方メートルとなった。125

衛生 安全環境面の問題

ヒューマン・ライツ・ウォッチが訪問した施設のなかで、衛生・安全環境面で大いに問題があることがすぐにわかるものが2つあった。

ある施設では、男性棟できつい尿の臭いがした。壁のペンキははげ、壁紙ははがれていた。壁のコンセントは壊され、カーペットにはシミが目立ち、家具の多くは壊れていた。椅子の座面はめくれていて、壁には穴が空いていた。 126

この環境には特に憂慮させられた。というのは、施設では政府が推進する「小規模」施設に適合する建物が新築中だったために、この棟の維持管理が後回しになっている可能性があった。

もう1つの施設は、子ども56人が1つの部屋で暮らす大舎制であったが、各自の本やコップ、タオル、服等が部屋中に散乱し、窓にはほこりが積もり、廊下には汚れたマットレスが積まれていた。

しかし外部団体による第三者評価の最新の結果では、ヒューマン・ライツ・ウォッチが確認した問題が認識されていないどころか、おぼろげにすら認められていないようだった。たとえば、後者の施設は2013年の第三者評価では「居室等施設全体がきれいに整美されている」について、a評価を受けていた(3段階評価で最高がa、最低がc)。この施設は「子ども一人一人の居場所が確保され、安全、安心を感じる場所となるようにしている」という項目でb評価だった。127

効果的な通報制度の欠如

国は子どもが施設の問題や虐待を通報できるようにするための措置を講じることを求めている。国の定めに従い、施設は子どもの意見や苦情に適切な対応をするために必要な措置を講じなければならない。 128 多くの施設が、子どもの意見を施設職員に直接届けることのできる特別なポストを設置している。このほか「子どもの権利ノート」もある。これは国が都道府県・市に対し、作成の上で児童相談所で配布するよう強く推奨するものだが、すべての都道府県が行っているわけではない。

さらに、国は各施設に3年に1度の第三者評価を義務づけており、さらに、子どもの苦情解決にあたっては第三者の関与を義務づけている。129

「子どもの権利ノート」には、子どもには権利があること、問題がある際の相談先(電話番号)等が書かれている。児童相談所は里親や施設に子どもを委託する際、子どもにこのノートを渡している。ヒューマン・ライツ・ウォッチは「子どもの権利ノート」が役に立っているかどうか、複数の施設に暮らす高校生5人に聞いたところ、ノートの存在を知っていたのは1人だけだった。130

国の基準を満たすため、多くの施設が有識者、弁護士、学者などの外部の第三者委員を設けている。外部の目が施設に行き届くこと、子どもたちが外部に声を届けられるようすることが目的である。

しかし制度の運用は施設によってまちまちだ。第三者委員と施設との実際の関係にもかなりばらつきがある。たとえば、毎月1度、夕食の際に第三者委員が来て子どもたちと交流する施設もある。131しかし年に1度の訪問のみで第三者委員と子どもたちとの交流がほとんどない施設もある。委員の選出が適切ではない施設があるとの指摘もあった。たとえば子どもの問題について専門性を有しているからではなく、地元の名士だから選ばれている場合が存在する。132

東京の児童養護施設「目黒若葉寮」のグループホームでは、ダイニングルームの目立つところに、第三者委員の似顔絵と連絡先が掲示されていた。「この人たち知ってる?」と子どもに聞くと「1人は知っています。ほかの人は知りません」との答え。133第三者委員についての情報が、子どもたちの目につかないところに掲示されている施設もある。

厚生労働省の審議会メンバーも務める林浩康教授は指摘する。

第三者委員も、ポストも、形骸化していますよ。権利ノートも、ただ配っても子どもたちが捨てちゃって役に立っていない。本当に役に立てるためには、一緒に読み聞かせするなどして子どもたちに本当に利用できるものにしていかなければ。 134

このほかに、無料相談電話の設置や、意見や苦情を伝えるために(地方自治体、児童相談所、子どもの権利に関するNPOなどを宛先として)そのまま投函できる無料の葉書の配布なども考えられる。

2012年度から、各施設には3年に1度、外部団体の第三者評価を受けることが義務づけられた。厚生労働省の説明によれば、行政監査が最低基準を満たしているのかなどを確認するのに対し、第三者評価は、よりよいものを目指し、福祉サービスの質の向上を意図するものである。135

しかし林浩康教授の指摘によれば、これは子どもたちの不満を吸い上げるほどの評価制度となってはおらず、表面的なものに留まっている。 136 さらに国の現行の規定では、施設自体に第三者評価を行う外部団体を選ぶ権限を委ねており、独立性と恣意性の点で問題がある。 137

III. 里親制度の問題点

社会的養護を必要とする子どものうち、里親に委託されているのはわずか14.8%だ。 138

日本政府は2010年、里親およびファミリーホームの委託率を2014年度までに16%に引き上げるとの目標を掲げた。さらに2011年には、今後10数年で、本体施設(定員45人以下)、グループホーム(本体施設の下、民間住宅などでの養護を行う。定員6人)、里親およびファミリーホームをそれぞれ3分の1にする、との目標を掲げた。 139 もっとも、多くの先進国において多ければ7~9割以上、そうでなくとも半数以上の子どもが里親に委託されているものであり、この3分の1という目標数値自体が各国と比較すれば低いといえる。 140

日本政府も、近年、里親委託優先を掲げて取り組みを進めている。これらの前向きな姿勢はおおむね評価できる。しかし本章で詳しく述べるように、いくつもの問題が未解決だ。また施設委託偏重の姿勢は根強く、強く求められる改革の範囲と可能性を限定している。

近年の取り組み

社会的養護措置児童における里親委託率(ファミリーホームも含む)は、2002年には全措置児童7.4%(3万4,109人のうち2,517人)にすぎなかったが、2010年度には

同3万6,450人のうち13.5%(4,966人)にまで上昇している。

この10年あまりの間、日本政府は、里親委託率を向上すべく多くの制度改正を行ってきた。

  • 「専門里親」制度と「親族里親」制度の創設 141
  • 里親一時休息のための制度である「レスパイトケア」の実施
  • 里親委託増加策と里親養育支援策を検討する里親委託推進委員会の設置 142
  • 里親支援機関事業(里親サポートのNPO業務委託など)の実施
  • 養育者の住居で5~6人に家庭的養護を提供するファミリーホーム(小規模住居型児童養育事業)の創設
  • 里親手当の大幅引き上げ 143
  • 里親委託優先の原則を掲げる「里親委託ガイドライン」の策定(平成23年3月30日策定。平成23年9月1日および平成24年3月29日改正)。この原則に基づき、児童相談所は社会的養護下にある子どもについて施設委託よりも優先して里子委託を検討しなくてはならない。 144

これらは有効な方策だ。しかし里親制度には、以下に示すとおり、依然問題が存在する。

里親制度下の虐待

身体的・精神的・性的虐待は里親制度下でも、施設内と同様に発生している。厚生労働省の「被措置児童等虐待届出等制度の実施状況」によれば、養育者による虐待の割合は里親の下の方が、児童養護施設の下より高い。 145 私的な家庭の中で行われるため、里親制度下での養育をモニタリングするのは難しい。また施設内よりも、外の目が虐待に気づくまでに時間が掛かる可能性が高い。政府や自治体の担当者が、里親委託のモニタリングと、里親や委託された里子への適切なサポートを効果的に実施できていないことは明らかに大きな問題である。

最悪の場合、里親委託下の子どもが死亡する事件も(極めてまれではあるが)起きている。2010年に東京都杉並区で起きた事件はマスコミの大きな注目を集めた。2010年8月23日、午後530分頃から午後1045分頃までの間に、里親の鈴池静被告が里子の渡邉みゆきちゃん(当時3歳7カ月)の頭や顔を繰り返し殴打したとされる。多数の挫裂創傷等を受けたみゆきちゃんは、8月24日午前2時頃に死亡した。146被告人は裁判で、殺したのは自分ではなく第三者によるものだと主張した。しかし第一審の東京地方裁判所は被告人を有罪とし、傷害致死罪で懲役9年の判決を言い渡した。147鈴池被告は無罪を主張したが、最高裁は2014年に原判決を支持し、上告を棄却した。

このほかにも栃木県宇都宮市で2002年に里子が里親に殺される事件が起きている。また2006年には、千葉県佐倉市で里子の男児(1)が泣き止まなかったとして、里親に激しく揺さぶられ死亡する事件があった。 148

里親による傷害事件は、ここ数年でほかにも複数が報道されている。2009年2月、北海道在住の里親、根本靖子容疑者が里子の女児(7)の首にピンを突き刺したとして逮捕された。子どもは全治2週間の傷を負った。裁判所は根本被告を傷害で有罪とし、罰金刑の判決を下した。 149 2009年5月、大阪市の里子の女児(5)が、里親の吉村陽子容疑者により全治6カ月の重い裂傷を負わされた。大阪地方裁判所は吉村被告に懲役3年(執行猶予5年)の有罪判決を言い渡した。 150

2009年8月、宮崎県在住の里親、安波圭容疑者は里子の男児(6)の尻にかみつき約1カ月のけがを負わせた。安波容疑者は警察に傷害容疑で逮捕された後、懲役10カ月(執行猶予3年)の判決を受けた。 151

施設委託偏重と進まない里親委託

日本政府は2000年代半ばから里親委託を推進している。しかし、子どもの委託先の決定権をもつ児童相談所の姿勢にほとんど変化がないため、結果的に大半の子どもが施設委託されている。

児童相談所は子どもの最善の利益のみに基づいて本来決定を行うべきだが、実際にはそれ以外の相反する利害(実親との良好な関係の維持、時間を要する司法手続の回避など)を考慮しており、施設委託偏重の一因となっている。

里親委託優先を促す姿勢によって、児童相談所が国際人権基準に沿って里親委託を増やす見込みは低いと見られる。

確かに里親委託児童の数は過去10年間で増加した(2002年の2,517人から2011年の4,966人)が、施設委託児童数も同期間でやや増加している(2002年の3万1,592人から2011年の3万1,693人)。 152 里親委託の割合が徐々に増えていることを示すものとして評価する意見もあるが、社会的養護下にある子どもの数が全体として増加した結果にすぎないとして批判的に捉える意見もある。

これらの変化を、定員超過のため児童養護施設に入所できなかったために里親に委託されたにすぎないとし、一部の専門家と里親は、里親委託数の増加は意図的なものでもなければ、日本政府の積極的関与の結果でもないと捉えている。 153

3分の1を里親養育とするとの計画は、実施の進行状況がかんばしくないこともあわせ考えれば、政府の政策が全体として十分でないことを示している。さらに、社会的養護に携わる多くの人びとがこの目標そのものと、計画の現実的な実現可能性に疑問を抱いている。また具体的移行を支援する予算措置が不明確であることも指摘されている。 154

里親委託ガイドラインで示した里親委託優先の原則に対し、政府はこの例外を設けてこれを後退させてしまっている。たとえば、ガイドラインは次のような場合は当面、施設措置を検討するとしている。具体的には「情緒行動上の問題が大きく、施設での専門的なケアが望ましい場合」や「保護者が里親委託に明確に反対している場合(法第28条措置を除く)」、「不当な要求を行うなど対応が難しい保護者である場合」という例外だ。

ガイドラインは児童相談所に対し、施設に入所する子どもが「1年以上(乳幼児は6カ月)面会等保護者との交流がない」状態になるまで里親委託を検討しないことを許してしまっている。 155 この規定は乳幼児にとって特に問題だ。乳幼児は国連ガイドラインによって施設入所が厳密に制限されているにもかかわらず、この規定では最大6カ月まで当然のこととして施設入所が認められているのである。しかも実際には、施設入所する乳幼児の在所期間は6カ月を超える場合がほとんどなのである。

児童相談所はなぜ、里親委託ではなく施設委託を好むのだろうか。

第1には、現在の社会的養護の中心は施設養育とされており、そのような運用が長年続いてきたことがその理由である。児童相談所職員は現行の制度(児童養護施設等)の運用・維持に多くの時間と労力を割いてきた。結果として児童相談所職員は、里親委託を増やすことで施設側との関係を損なうことをしばしば躊躇する。施設は委託された子の人数を基礎に支給される措置費で運営されているのである。施設の小規模化や、ユニット形式の導入などが施設優先の継続を正当化する理由とされることもある。

第2の理由は、里親への十分な支援と効果的なモニタリングがないことである。このため児童相談所職員は、里親制度が子どもの保護と支援を行う上で真に適切な選択肢であるとの確信をもてず、里親制度を完全に信頼することができない。里親による虐待発生時に責任を問われることを怖れ、子どもを既存の児童養護施設に委託する児童相談所職員は多い。

第3の理由は、児童相談所の職員数不足と専門性の欠如である。それにより職員には、施設に過度に依存する現状を変更することができないのが現状である。また、後に詳述する通り、児童相談所は実親の意見を優先する傾向があり、実親には子どもの利益よりも施設委託を優先する傾向がある。

子どもの最善の利益は通常、適切に立案・実施・モニターされた家庭的養護にある。これを実現するためには、社会的養護下では、家庭的養護が原則であるとの考え方を政府・自治体職員がもつべきだ。

国は都道府県・市と児童相談所に対し、子どもの最善の利益を厳密に尊重し、実親および施設との間の利害対立を克服するよう直ちに指導しなければならない。国は、常に児童相談所に内在する利益相反的な複数の立場を解消し、家庭裁判所などの独立した機関に、社会的養護下の子どもがどこで養護されるべきかの決定を担わせるため、法改正を検討すべきだ。

さらに施設依存から里親制度の強化へと移行するための改革が必要だ。里親への措置を増加させた場合に生じるかもしれない潜在的な問題を検討し、家庭的養護下にある子どもへのサポート強化などの適切な措置がとられねばならない。 156

児童相談所職員、施設職員、政府関係者、そのほか関係者は意識改革を行い、不必要な施設入所により子どもから家庭的環境を奪うことそのものが人権侵害であることを認識すべきである。社会的養護への最適なアプローチをめぐる考え方について、厚生労働省や都道府県・市、また、全国のすべての児童相談所に発想の転換が強く求められる。

里親委託の少なさについては、既存の施設の存在と里親制度改革の必要性が現状維持の言い訳となるかぎり、抜本的な改善は決して望めないだろう。

政府当局者は家庭的養護が原則との発想をもたねばならない。仮に、里親制度へ移行する過程で何らかの問題が生じたとしても、だからといって施設委託に戻すのではなく、政府は、里親制度の適切かつ迅速な改善(里子へのサポート充実など)によってそれらの問題に対応すべきである。施設養育ではなく里親養護を原則とするという発想の転換が必要である。これこそが、すべての問題点の改善(細部にわたっての里親サポートの充実から、児童相談所の人材拡充についてまで)に必要な視点である。

福岡市や大分県では近年、里親委託率が大きく伸びている。正しいアプローチをとれば成果が得られると示す好例だ。 157 両自治体の職員は委託率向上の理由として「児童相談所の職員の里親委託有効性の理解」(福岡市・大分県)と「里親委託を推進する理由が、『子どもの最善の利益を確保する』という子ども中心の視点であったこと」(大分県)をあげている。 158

2011年7月の全国児童相談所長会でも発想の転換の重要性が指摘された。ここでは「里親への新規委託率の低い自治体では、養育を進める上で起こる課題を慎重に取り扱う意見が多い。それに対して、新規委託率の高い自治体では、慎重に取り扱うと同時に、これらの課題を乗り越えて、『乳幼児はまず里親委託を検討する』といった積極的な姿勢が見られる」との議論があった。また次の点にも注目している。

里親への新規委託率を高めるためには、乳児委託を含め、家庭的養護全体に対して積極的に取り組む児童相談所の姿勢が大きく影響している。 159

費用の観点からも、施設養育中心主義からの移行は説得的だ。たとえば0歳から18歳まで大都市の乳児院および児童養護施設で育つならば、1人8,373万2,000円の経費がかかり、里親宅で生活するならば3,200万円から3,800万円 160 で済むとの試算がある。 161

実親が委託先決定をコントロールしている事態

子どもを児童相談所や施設に委託する際には実親の同意をとるのが慣習となっている。しかし東京都児童相談センターの職員は「(里親に委託してよいという)親の同意がなかなかとれない」と言う。そして、その一因は「実子を里親にとられてしまうと思う人が多い」 162 ことにあると指摘する。茨城県つくば市の施設職員は「日本では親の利益が子どもの利益より重要だと見なされるのです」 163 と話した。また、長谷川実・宮城県中央児童相談所主幹は次のように述べた。

いつか引き取りたいと思って、施設に同意する親が一般的には一番多いのではないでしょうか。里親に取られるというイメージがあるのでしょう。親と冷静に話ができなかったりします。 164

この点について、里親歴25年の山本節子さんはこう話す。

そんな言い訳、もう卒業しましょう、って私はいつも言うんです。社会的養護の事情をよく知らない実親に、どういう話し方をするかによって、実親の考えはほとんどの場合変わります。(中略)児相の話し方ひとつです。 165

東京のある乳児院の職員は、児童相談所の実親対応に改善の余地があることを述べる。

こちらから、里親希望ということで上げている子どもについても、児童相談所から両親の同意がとれない、と返事が返ってきてしまう。もっと児相に頑張ってほしいと思うこともあります。 166

実親が児童相談所の意向に従わない場合には、児童相談所長か都道府県が家庭裁判所に対し、児童福祉法第28条に基づき「保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する」ことを示して、子どもを里親または施設に委託する承認を求めて申し立てをすることができる。 167

子どもの最善の利益を保護するため、実親が子どもの里親委託に同意しない場合には児童相談所は28条手続きをとるべきである。しかし、児童相談所はこの手続の利用を躊躇している。2010年には児童養護施設か里親に養護される子どもが3万2,365人いたが、このうち児童相談所が28条手続きを用いたのは466人のみである。さらに児童相談所は、28条手続きにおいて里親委託ではなく施設入所を求めていたと見られ、28条手続き事案の子どもはほぼすべて、施設入所となっている。全里親委託数2,610件中、28条手続きを経ているのは18件のみである。すなわち、実親が里親委託に同意しない場合には、ほぼすべての子どもが施設に入所させられているのが実態なのである。 168

国の里親委託ガイドラインも28条手続きに躊躇する児童相談所の現状を黙認しているようである。ガイドラインは「最終的に理解が得られない場合は(略)法第28条措置を除き」子どもは施設委託となると述べる。しかし里親委託に実親が同意しない場合、28条手続きを申し立てるよう児童相談所に指示してはいない。 169

家庭裁判所は児童相談所長からの施設入所・里親委託に関する申し立ての大半(85%) 170 を承認するが、児童相談所は手間と時間が掛かるという理由から28条手続きの申し立てを躊躇する傾向にある。家庭裁判所が決定を出すまで申請してから平均2~4カ月掛かる。 171 また申請準備期間を加えるとさらに1、2カ月は掛かる。この間、子どもは通常児童相談所内の一時保護所に入所しここから出ることができない。28条手続きの決定を待つ間、一時保護のため子どもを里親に委託することに法的制約はない。しかし児童相談所は判を押したように子どもを一時保護所に入所させる。28条手続きをとると、2年後には更新の手続きをとるため家裁に再度申立てをする必要がある。 172

岩手県のある児童相談所の職員はこう説明する。

28条の手続きをとっていると、一時保護所に3カ月も4カ月もいなければならなくなり、その間、子どもたちは学校にも通えない。施設委託ならば親が同意するということであれば、早く施設に委託してあげたほうが子どもたちのためになるでしょう。 173

このほか、児童相談所が同意を求めて親の説得を行うことには金銭的な理由もある。実親は子どもを社会的養護下で養育する場合、政府に委託費を収めなければならないこととされているが、親が委託に同意しない場合、委託費を支払わないことが多いのである。 174

最終的な親子再統合を目指すという政府の目標も大きな障害となっている。児童相談所が実親との関係を悪化させたくないと里親措置を求めた強い行動に踏み切れないからだ。長谷川実・宮城県中央児童相談所主幹はこう話す。 175

なんとか今後のこともあるので、親と対立しないようにしたい。親に返せれば一番いいので。同意をもらう努力をした方が今後のためになる。

タケオさん(15)は、3歳から委託された施設でなんとか生活を続けている。里親のところに行くのはどうだろうと学校の先生に相談したら、それはやめた方がよいのではと言われたという。「もう少し考えた方がいいんじゃないのかな。もし里親のところで暮らしたとしても、実の親のことは覚えていたいだろう」とその先生は言った。

タケオさんはこう話す。

僕はそんなふうに考えたことはなかった。けれども先生に言われてそうかなと思い始めた。僕には3歳になるまで育てくれた家庭がある。あの家から自分を切り離してしまうようなことはしたくないなって。 176

タケオさんは現在も施設にいる。実の両親との主なやりとりは、5歳のときから毎年誕生日に来る手紙。また小学校を卒業したときに1度面会があった。ただ最近は母親との手紙をやりとりする回数が増えてきたと言う。 177

児童相談所の不十分な態勢

里親委託の伸び率の如何は、児童相談所の姿勢によるところが大きい。 178 しかし、現在の日本の社会的養護制度では、児童相談所の多くに里親サポートを十分に行うだけの資源がない。結果として、児童相談所が里親委託に消極的になってしまう。

「里親に委託するのは手間暇が掛かる。施設なら、とりあえず預けてしまえる。交流も何もない」と、東京で3人の里子を育てるホッブス美香さんは語る。そして、児童相談所が忙しすぎて、里親と里子のマッチングのプロセスを丁寧に進めることができないと指摘する。 179

たとえば児童相談所は、里親に子どもを委託した後は措置終了まで一軒一軒里親宅を家庭訪問することになっている。 180 岩手県のある児童相談所の職員は里親制度の積極利用について「里親委託ガイドラインが厳格に適用されるので、難しい。それを一つひとつ実際に行っていくのは実際には手が回らなくて困難」と実情を説明する。 181

宮城県中央児童相談所の長谷川実主幹は「児童相談所へのプレッシャーはあるだろう」と言う。2010年の杉並事件(里母が、委託されていた里子を殺害したとされる事件)のようなことは絶対に起こしてはならない、と言いながら、長谷川さんはこう続けた。

里親さん宅の中に入ってしまうと(子どもの様子が)見えない。施設だとよく行き来もするし、知っている施設の中にいるので、安心できる、というのもある。 182

厚生労働省の外部委員として施設運営指針・里親養育指針等ワーキンググループ委員を務める林浩康教授は、児童相談所の業務過多を里親委託が進まない原因であると指摘する。 183

児童相談所は業務が過剰であり、虐待対応にも追われている(2012年の通報件数は6万5千件以上)。人手不足で相談業務を含むほかの業務が十分に行えないことがある。 184

たとえば岩手県宮古児童相談所の矢作淳次長は、1年間で新規案件が127件あったと述べた。これら個別ケース以外に、次長の立場による行政事務や児童養護施設対応、里親会対応等のほかの各種業務も同時に行わねばならないとのことであった。 185

児童福祉司の数がほかの先進国に比べると圧倒的に少ないため、1人あたりの取扱件数がかなり多い。たとえば大阪府では人口620万人に対して児童福祉司はわずか108人。1人が担当する新規案件は年225件。加えて前年以前からの案件も引き続き担当している。これに対してニューヨーク市では、人口800万人に対して児童保護局員は2,058人。1人あたりの年平均の新規案件は12件だ。ニュージーランドは人口390万人に対して児童ソーシャルワーカーは989人。1人あたりの新規案件は年約30件(社会的養護のみならず非行も含んだ数字である)。 186

このような負担があれば、現状で児童相談所が里親委託に積極的でないのは当然であると津崎哲雄教授(京都府立大学)は述べる。津崎教授は言う。

(児童相談所は)施設送致より時間的・手続的・専門技能的・エネルギー的に比較できぬ次元で手間が掛かる里親委託を積極的に行うはずがない。 187

児童相談所の職員の専門性も欠けている。元大阪市中央児童相談所所長である津崎哲郎教授(花園大学)が言う「知識とノウハウ」が不足しているのだ。 188 政府の統計によれば、子どものケアに関係した教育を受け、資格をもつのは、児童相談所長で53%、児童福祉司で約65%にすぎない。 189 教育的バックグラウンドが児童養護とはほぼ無関係なことも多い。東京都内のある児童相談所長はたしかに医師だが、専門は外科だ。児童相談所の職員の前職がまったく異なる分野、たとえば土木、水道などであることも少なくない。 190

施設の既得権と投入資源不足

「正直なところ、子どもが来てくれなくなったら施設としては困りますよ。子どもを預かることで運営しているのですから」と東北地方のある児童養護施設長は述べた。 191

入所児童の数を基本に行政から措置費を受け取り、施設を運営している法人経営者としては当然の本音であろう。

児童相談所職員と施設経営者との人間関係のために、児童相談所が里親ではなく施設に子どもを入所させる現状があるとの指摘もある。津崎哲雄教授は「自治体関係者が民間施設とできるだけ敵対せぬよう、ことを穏便に済ませようとする抜き差しならぬ慣行」がありその結果、里親よりも施設に子どもが送られることとなると見る。 192

里親制度の充実のためには、それ相当の里親制度への資源投入が必要になると、林浩康教授は指摘する。林教授は言う。

実際に里親制度を中心に回していくのだとすると里親制度に施設同様の費用をかけていかなければならないのです。欧米諸国の里親制度に比べて日本の里親制度は費用がかけられなさすぎです。 193

里親養護に対する社会的認識の薄さ  

日本における里親制度についての認知度はかなり低い。全国児童相談所長会が2010年に行った調査は「市民に子どもの社会的養育に参加しようという、意識、関心が乏しい」ことが里親委託の抑制要因の1つであるともしている。 194

一部の都道府県市では、里親推進が成功し、里親委託が増加している。これら地域の児童相談所からは「NPOとの共同による効果的な制度の普及啓発」「リーフレット作成、DVD作成上映などによる普及啓発」「説明会等で里親の体験談を講演」が有効であったとの回答が出された。 195

制度の存在を知らなければ、里親のなり手は増えようもない。また、社会からの里親制度への差別的な視線を減らさねば、里親が社会資源を広く利用することも叶わない。 196 東京で3人の里子を育てるホッブス美香さんは、里親には自分が里親であることを隠したがる人もいると言う。里親に社会的なレッテルが貼られていること、預かっている子どもが学校で仲間はずれにされていじめに遭うと考えていることなどがその理由だ。 197

多様な里親確保を  

幅広い子どものニーズに対応できるだけの十分多様な里親が確保されていない現実がある。

宮城県気仙沼児童相談所支所の管理職は「適切な里親がいないのです」と述べる。「この児相管轄下には登録里親は5人しかいません。もっとたくさんの登録里親がいれば、子どもたちに合う里親さんを探すことができるのですが…。」 198

岩手県内のある児童養護施設長は「社会的養護で預かっている子どもたちは、発達障害などを抱え里親では手に負えない子どもがほとんどです」と指摘する。「専門性をもった里親もいない。専門里親といっても、本当の意味での専門性は身についていません。」 199

また児童相談所は、いまだ里親になるのは育児・家事専業の人がいる世帯が望ましいとするが、共働き家庭でも積極的に里親登録は認められるべきであるし、未婚者やLGBTカップルが里親になることも想定すべきである。 200 そして、親族里親の利用促進に向けた率先した取り組みも必要だ。里親委託率の高い国々では親族里親の利用がその委託率の高さを押し上げている。日本では社会的養護全体の約1.7%にすぎない親族里親委託だが、諸外国の親族里親への委託率はイギリス18%、アメリカ23%、オーストラリア40%である。 201

厚生労働省によれば、虐待児を養育することを前提として設けられた専門里親制度についても、登録する専門里親の数が十分でないという問題がある。 202 同省は800人の専門里親登録を目標としている。専門里親として登録する里親のリクルート、専門里親の研修のさらなる充実はいうまでもない。専門里親でも対応が困難な重い障害を抱える子どもを育てるために、職業的里親の導入も検討されるべきとの意見もある。 203

また、必要な場合には、都道府県市を超えての適切な里親への委託も促進されねばならない。現在も都道府県を超えた委託は可能であるにもかかわらず、別の都道府県にいる里親に委託される子どもの事案は多くない。 204

不適切な里親認定とマッチングの問題

里親認定はきわめて緩い制度である。東京都で里親を行う施設出身の竹中勝美さんは「ある年齢以上の人が結婚していて、前科がなければ認定される」と述べる。 205

年齢、家の広さ、収入など若干の条件はあるが「申請があればよほどの事情がない限り、里親認定は拒めない」と児童相談所職員も述べる。 206 岩手県宮古児童相談所次長の矢作淳さんは、明らかに不適切な人が里親として認定されている場合があると述べる。 207 児童相談所がそのように判断すると、その人は里親としてリストには登録されながらも長年子どもが委託されないことになる。

全国の登録里親8,726世帯のうち未委託の里親世帯は5,434世帯にも上る。 208 東京都の児童相談所職員はこのギャップについて、多様なニーズをもつ子どもに最も適したマッチングを行うためには里親候補が数多く必要なのです、と説明する。しかし竹中勝美さん(東京)は「里親認定を厳密に行うこととし、ただし、里親認定を受けた里親には委託を直ちに行うべき」と述べる。でなければ、意気込んで登録をした里親も数年もすれば意欲を失ってしまう、と続けた。 209

津崎哲雄教授は、里母が里子の女児を殺害した2002年の宇都宮事件を例にあげて、里親のアセスメントとマッチング、および認定過程を厳格にすべきだと述べた。この事件では、里母である非日本人女性は日本語が流ちょうではなく、日本社会から孤立しストレスを感じていた。主たる監護者は里母だったにもかかわらず、児童相談所は里父と連絡を取っていた。さらに里子の女児(3)には重い愛着障害があった。津崎教授は、この件ではリスクの高い里親がリスクの高い子どもとマッチングされたため悲惨な結末を生んだという主張は説得的だと考えている。 210

児童相談所の元職員(男性)はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、自分の児童相談所時代の業務を振り返りながら、しっかり調査をせずに里親世帯への評価も不十分なまま里親委託してしまったことがあったとし、子どもたちを不適切な家庭に委託した経験を後悔していると述べた。この元職員は、ケースごとの個別のアセスメントをきちんとしないまま里親に委託したケースの例をあげた。ある里親家庭に以前から委託している子どもがうまくいっていたために、よく吟味をせずに2人目の里子をその家庭に委託したところ、2人目の委託はうまくいかず不調となり、この2人目の子どもが施設に送り返されてきたケース。また、別のケースでは、書類に基づき適切な里親家庭と判断し子どもを委託したが、委託後に、子どもを受託したかったのは夫だけで、妻は反対だったことが判明した、とのことであった。

この元職員は、児童相談所の職員が不適切と見なした場合でも、里親登録を拒否することは難しいと述べた。その理由の1つとして、里親制度が養子縁組と同じだと考えている里親候補者が存在し、里親の多くは子どもができないために里親登録していることをあげる。こうした里親は職員に「なぜだめなのですか。わたしたちにも赤ちゃんをもつ権利がありますよね」と尋ねるという。 211

不十分な準備と委託後の里親サポートの不足

登録里親には認定前に6日間の研修(座学と実習を各3日)が義務づけられている。研修は国のガイドラインに基づいているが、都道府県が具体的なプログラムを策定し、実施している。 212 2008年に研修は義務化されたが、研修の成果についての調査はまだ行われていない。

研修では「里親は社会的養護の担い手である」という認識を育てるための情報を提供すべきである。社会的養護下の子どもの半数以上が虐待の被害児であることを踏まえ、研修では難しい状況での養育に関する実践的側面が中心となり、虐待の影響を受けた子どもたちを養育する上で里親が果たす重要な役割に焦点を置くことがきわめて大切である。現状ではこの点が明らかに欠けている。 213

児童相談所はアフターケアをほとんどしないというのは、インタビューで多く耳にした声である。ある東京の里親は「家庭訪問には年に1度くらいしか来ません」と述べた。 214 別の里親はこう言う。

一般的には児童相談所のワーカーなんて、落ち着いたら、年に1度も来ませんよ。また、2~3年で人が変わっちゃうので、なかなか頼って相談するということもできません。 215

継続した里親宅の訪問、モニタリング、相談対応などのサポート業務は非常に重要である。里親不調が全体の4分の1であることを考えればなおさらだ。 216

津崎哲雄教授は言う。

里親は自然に存在するものではない。里親は貴重な児童福祉資源として、養護児童のために入所施設よりも優先すべき資源として行政が育成・支援すべきものである。里親は研修や支援を受けて初めて里親になるのである。 217

専門里親であってもその半数近くに委託解除の経験があるとの調査もあるが、その理由はほとんど明らかになっていない。この数字が示すのは、経験豊かな里親であったとしても乗り越えられない状況が起きうること、 218 また里親家庭で生じる問題をうまく感じとり、委託の早い段階で状況を改善することが強く求められていることだ。

子どもを引き上げられることを恐れる里親からは、子どもの委託解除権をもつ児童相談所が、委託に関する問題を話したり、アドバイスを求めたりする相手だとは考えられないとの声がある。里親の吉田奈穂子さんは「初めて子どもを迎える家庭のなかで、児童相談所や施設との関係に緊張し続けた。連携しよう等と考えたこともなかった」と話している。 219

現在、里親支援の取り組みは、里親支援機関事業が委託されているNPOや里親会、民間団体も進めている。里親支援専門相談員が配置された児童養護施設・乳児院、施設付属の児童家庭支援センターも里親支援を行っている。 220 もっともこうした支援はまだ範囲が限られている。

養育する里子についての十分な情報やニーズが委託前に里親に提供されていないのも問題である。それではどのように育てていいのか里親側は判断しようがない。大阪で里親を行う梅原啓次さんはこう述べる。

近年少し改善は見られますが、どんな背景事情をもっている子どもなのか、どんな環境で育ってきた子どもなのか、情報が十分に伝わってこないのです。 221

里親側の非現実的な期待

児童相談所職員からは、里親希望者は里子に、(障害がなくて)健康、低年齢、女児であることを望みがちとの指摘がある。 222 児童相談所職員は、引き取った里子が障害児だったら、後で苦情を言ってくる里親がよくいると述べる。東京都児童相談センター・児童相談所職員はこう話す。

0歳や1歳といった子どもは、障害が出るかどうかについてしばらくの間観察してからでないとわからないので、その間、里親委託できないのです。それで、2歳や3歳になってしまう。 223

二葉乳児院の職員は「一度里親に引き取られた子が、しばらくして髪の毛を切ったら耳が見える髪形になったと。その耳の形が気に入らないということで、送り返されてきたことがありました」と言う。 224 「(里親に)出しても里親不調ですぐ帰ってきてしまう」というのも、多くの施設関係者の回答であった。 225

養子縁組の問題

養子縁組は子どもにとって適当な永続的解決策の1つである。しかし国の通知「養子制度等の運用について」が児童相談所に対し、子どもが養子縁組を結べるよう努めるよう指示しているにもかかわらず、 226 児童相談所側は養子縁組のあっせんに優先して取り組んではいない。2008年から2011年にかけて児童相談所を通して成立した養子縁組は年250から300件程度にすぎない。 227

児童相談所が養子縁組に積極的でない理由の1つは、緊急の児童虐待への対応に追われて余裕がなく、すでに自らの監護下にある子どもを施設入所させる方が、個別に養子縁組を進めるよりも手間も時間も掛からないためだ。 228

乳児を含む大勢の子どもが恒久的な生活場所を求めており、その事情がきわめて深刻な場合は多い。元児童相談所職員(愛知県)・矢満田篤二さんは「虐待死で命を落とすのは、出生直後が1番多い」と語る。虐待死する子どもの半分以上は生後1カ月以内に命を落としている。 229

矢満田さんは、こうした乳児は特別養子縁組制度によって養子縁組されるべきだと述べた。愛知県の児童相談所は積極的に特別養子縁組に取り組み、また、妊娠中から児童相談所が相談にのり、生まれたばかりの新生児を特別養子の縁組を前提に里親委託を行っている。しかし愛知県は例外であり、養子縁組に積極的な児童相談所はわずかである。矢満田さんは「ノウハウもないし、乳児院に顔向けできないため、児童相談所がやりたがらない」と述べた。 230

現行の制度では、養子縁組に至った養親と養子縁組希望里親については、研修を受ける義務も機会もない。養親も児童相談所から支援を受けることはない。養子縁組希望里親への金銭的支援は限られており、里親手当は支給されない。児童養護の専門家のあいだには、養子縁組希望里親と養親も研修を受け、また必要に応じて里親と類似のサポートや支援が受けられるようにすべきであるとの指摘もある。 231

IV. 足りない自立支援

施設を卒業するときは、「やっと刑務所から出られる!」と思ってうれしかった。でも人生そんなうまくいかないっすよ。1日が長い。人生が楽しくない。

 鈴木正志さん(21歳・千葉県) 20126月のインタビューより

社会的養護の下で育った子どもたちが、措置終了後にまず直面する大きな問題が自立である。日本では18歳で完全に親から自立する者はほとんどいないのが現状だが、社会的養護制度の下では、学校を離れると同時に早ければ15歳で措置が終了する。高校を無事卒業した子どもたちも、卒業と同時に自力で生活をしていかなくてはならない。

児童福祉法上、必要な場合には、20才になるまで社会的養護は措置延長できるとされ、2011年には厚生労働省から措置延長の積極的活用を図るようにとの通知も出されている。232しかしながら、実際には、児童相談所に提出される措置延長申請が認められることは多くない。233

支援を受けられなくなった子どもたちは住む場所を失う。頼るところのない若者たちを待ち構える生活は、家族とともに生活をする同年代の若者たちが送る日々とは随分と異なるものだ。社会的養護出身者が進学して高校より上の教育を受けたり、安定した職に就いている割合は、家族に支えられる一般の子どもたちに比べて大変に低い。千葉にある児童養護施設の施設長、森田雄司さんはこう説明する:

施設にいる子供たちにもっとお金をかければ、もっと子どもたちは社会で活躍する大人に育ち、結果、社会に出た後、ちゃんと働いて納税義務を果たせる大人になるのに、今は卒園後も生活保護などで税金がかかる大人を作り出してしまっているのです。 234

ホームレスとなる子どもたち

施設退所者がホームレスになっているのか、これまで日本では十分な注意は払われてきていない。 235 しかし、低スキルのエントリーレベルの職では賃金が低いという理由もあいまって、施設を離れることを余儀なくされた多くの若者たちは、退所時に施設の支援を得て見つけた仕事を続けられないことが多い。そして、その最初の職を手放してしまえば、次の仕事を見つけることは容易ではない。 236

現在21歳の鈴木正志さんは、2歳から18歳まで千葉の児童養護施設で育った。施設を離れてから3年の間に彼は少なくとも20回職を変えている。施設を出るときに就職した内装業の会社ではまったく仕事がもらえず、月2万円ほどの給与ですぐに生活困難に陥った。 237 施設からの退所時に自立生活支度金を受け取ったが、1人暮らしのための家具やそのほかの生活必需品を購入するとお金はすぐになくなった。 238 半年も経たぬうちに家賃が支払えなくなった彼はホームレスとなり、漫画喫茶 239 やそのほか可能な所で寝泊りをしてきた。 240

さらに、中学卒業と同時に働き始め、そのため施設を離れることを強いられた若者たちにとって、ホームレスになるリスクは特に高いと言えるだろう。241加藤祐さん(仮名、29)は、高校進学をしなかったために15歳で生活していた施設を出て、実の父親のもとへと戻ったが、再度虐待に遭い家を出た。職を転々としたのちにホームレスとなった彼は、以来、生活保護に頼って生活をしながら現在に至る。そんな加藤さんは、せめて18歳になるまで社会的養護を受けられたらよかったのに、と話した。242

高等教育課程への進学の難しさ

東京都で社会的養護を受ける子どもたちの中で、高校課程を修了する者は全体の73%、そしてその先の大学、短大、専門学校などの高等教育課程を修了する者は全体のわずか15%である。

一般的に、東京都は日本全体においても平均して進学率が高い。東京都内の高校進学率は98%、さらにその後の高等教育課程への進学率は65.4%を数える。243もっとも、日本全体でも高校卒業率の平均は81.5%、そしてさらなる高等教育機関の卒業率は36.1%となっている。244

進学への希望をあきらめ高校卒業と同時に働き始めたという、千葉在住の28歳の施設出身者は、ヒューマン・ライツ・ウォッチのインタビューで、「結局、(資金的に)実親の支援がある人しか進学なんてできませんよ。僕も進学したかったんですけど」と話した。245

日本では高校までの教育課程は無償で受けることができる場合もあるが、それ以降の高等教育を希望する場合、その資金を自ら貯めて用意する必要性に直面する。施設の出身で、現在、専門学校に在籍する19歳の学生はこう話している。

高校時代に部活をやりたいと思うけれど、進学を考えるとお金を貯めないとならないので、高校生になってからすぐバイトをします。週7でバイトしている人もいるくらい。でもそうすると勉強する時間がないんですよね。 246

ヒューマン・ライツ・ウォッチのインタビューに答えた一部の高校生からは、情報不足から進学を諦めているという実情も垣間見えた。 247 施設で生活するある高校生は、「奨学金等の情報をもっと知らせてほしい」と訴えている。 248

社会的養護制度の下で育った人びとのための当事者団体の理事長を務める渡井さゆりさんが訴えるように、「子どもに対して学費を投入するのは(その子の将来について)目に見えて効果がある。」 249

保証人と自動車免許取得の壁

日本では、未成年のみならず成人であっても、住まいや仕事を得るために「保証人」が必要となる。非常に限られた例外を除いて、アパートやマンションを借りるにも雇用契約を交わすにも保証人がいなければことが進まない。未成年であれば、親権者なしには携帯電話を入手することさえ困難な場合がある。通常であれば、家族がこうした役割を引き受けてくれるが、社会的養護出身者にはそれを頼める相手がいないのが現状だ。 250

ホームレス支援団体「もやい」の職員、稲葉剛さんは、「『家族がいる。支えがある』というのが前提の社会システムであることが社会の1番の問題となっている」と話す。251

政府は2007年、社会的養護制度出身の子どもたちが仕事や住まいを探す際に、児童養護施設の施設長や児童相談所、または里親が、保証人や親権者代わりとなることを奨励する要綱を出しているが、それもすべて子どもたちが施設や里親のもとを離れてから1年間という期間に限られている。252その結果、社会的養護の出身者の中には、仕事や住まいを見つけることに苦労し、路頭に迷うケースが生まれている。施設出身者で東京在住の三浦宏一郎さん(35)は、高校卒業後、証券会社の就職試験に受かったが、保証人を求められ、「それがネックとなり就職ができなかった」と体験を話した。253

また、施設出身者にとってもう1つの大きな壁が、平均20万から30万円かかる自動車免許の取得である。自動車免許は、男性の施設出身者の間で希望の高いとび職や建設作業員、職人といった職種で求められることの多い条件である。2012年度から、社会的養護の措置を受ける高校3年生を対象に、自動車免許の取得やそのほかの資格取得等就職準備のための経済的支援として国から55,000円が支給されることになったものの、254その額は十分ではない。

社会的養護後の自立支援の必要性  

施設出身の子どもたちの退所後を支える「アフターケア相談所 ゆずりは」所長の高橋亜美さんを、日中に事務所でつかまえるのは難しい。施設出身の元子どもたちを支えて、市役所、病院、警察、弁護士事務所などを飛び回る。「ゆずりは」は、施設出身者が退所後に頼ることのできる全国的にも数少ない相談所である。

東京の住宅街の一角にある「ゆずりは」の小さな事務所には、生活に直結する厳しい問題を抱えた施設出身者がひっきりなしに訪れる。常勤スタッフ2人にパートタイムスタッフが1人という態勢の中、2011年度の相談件数は延べ4,280件。255多くが中卒者や高校中退者である。

インタビューに答えてくれた高橋さんは「(元子どもたちは)手取りで12万、13万といったびっくりするような少ない金額でやりくりしている」と話す。親がおらず、頼るところもないなか、多くの人たちが「風邪ひとつ引けないという緊張感の中で生活をしている。追い込まれて精神に変調をきたすこともある」と言う。高校を卒業することなく、生活保護受給者やホームレス、受刑者になった施設出身者をこれまでに数多く見てきたと高橋さんは述べる。256ホームレス支援団体からは、児童養護施設に対して「今まで福祉で保護されて生活していたのに、どういう生活をさせていたのか」と批判の声が出るとのことである。

「(虐待経験をもつ人の一部は)トラウマで、コミュニケーションがまったくダメだったり、怒られたり注意されることでフラッシュバックで固まっちゃったり」と高橋さんは付け加える。「ゆずりは」が支える施設出身者は最年長で40代だが「それでも今も苦しんでいる。何歳になったら癒えるというものでもない。早期発見、手厚い保護が必要」と高橋さんは訴える。 257

児童養護施設で育った三浦宏一郎さん(35)は「自分たちには逃げ帰る場所がない」と語る。18歳で高校卒業と同時に上京した三浦さんは、施設職員から「本当に困ったことがあれば行政に行きなさい」と見送られた。仕事を転々としたが19歳で無職となり、ついに手もちの資金は5,000円にまで減った。当時のことを彼はこう話す。

「役所に助けを求めていったところ、『(税金で)高校卒業させてもらったのに、これ以上生活費をもらう必要ないでしょ。』と追い返された。行政は当てにならないと悟った。」 258

茨城県の施設出身者、高木あゆみさん(仮名、24)は「施設を出てから相談相手なんて誰もいなかった。親には生後2カ月で捨てられているから相談なんてできない。施設に戻ることもできなかったし、戻りたいとも思わなかった」と語る。1人で生きていかねばならなかった高木さんは生活費を得るためには売春をするしかなかった。「知らない人でも、私の話を聞いてくれるのがうれしかった。自分の居所を探していた。」259

東京都などでは、社会的養護制度卒業後の若者のアフターケアを専門に行う自立支援相談員を配置してはいるものの、退所した子どもたちに対する公的な援助制度は何もない。千葉県の児童養護施設で育った森川喜代実さん(30)は「施設を出て必要なのは、1人でいいから何でも相談できる人」と語る。260

社会的養護の措置解除後、施設出身者や元里子が運営する当事者団体に集う人もいる。その1つ、東京にある「日向ぼっこ」にはそういった若者たちがふらっと立ち寄り、自分の居場所を確認し、安心感と支えを得て、またそれぞれの生活に戻っていく。頻繁に通う三浦宏一郎さんは「ここは、僕の居場所です」と話す。261

しかし、全国でこういった当事者団体は約10カ所程度しかなく、その多くはまだ成長過程で対象者のニーズに十分応えられるまでに至っていない。それに加え、多くの施設・里親宅の子どもたちがそういった集まりがあることを知らぬまま社会に出ている。

施設出身者の退所後の支援の不足

最近まで、退所者の状況把握は各児童養護施設に任されており、退所後わずか1年で子どもと連絡がつかなくなる施設もあるくらいであった。今日に至るまで、退所者や元里子の状況に関する全国レベルでの包括的調査や統計は存在しない。そうした人びとがこれまでに直面し、今も直面している数多くの悩みや問題、あるいは最も必要としている支援内容がほとんど把握されていないのが現状である。「何のための社会的養護だったのか、その措置がよかったのかどうかの調査をちゃんとすべき」と当事者団体「日向ぼっこ」を運営する渡井さゆりさんは述べる。 262

政府から発表されている唯一の統計(執筆当時)は、都内の施設出身者や元里子を対象として実施された東京都の調査だ。201012月から20111月にかけて行われたこの調査により、社会的養護を終えた人びとがきわめて厳しい状況に直面している実情が明らかになった。最終学歴は低く、また、正社員として定職に就いている割合や平均収入も低かった。263なお、この調査は施設や里親などが措置終了後の住所を把握している対象者のみに調査票を郵送する形式で実施されたため、きちんとした住まいや助けを求める手立てさえもたない、すなわち最もサポートを必要としている層が調査対象から漏れている可能性がある。264

里親制度と自立

自立への歩みにおいて、施設よりも里親の下に委託された子どもたちの方が比較的その条件はよいと言えるが、前述したような児童養護施設退所者が直面する困難の多くは里子にも当てはまる。子どもが18歳になった後も自費で住まいを提供し、生涯の関係を築く里親も多い。265しかしながら、里親のボランティアに依存すれば、里親の負担ばかりが大きくなるし、里親間による条件の格差を生むことにもつながる。また、里子は、里子同士のつながりを施設出身者よりも作りにくいという問題もある。

大学や専門学校などに進学する里子は全体の47%で、児童養護施設で生活する子どもたちよりもその割合は高い。 266 しかし、高額の費用がかかる高等教育への進学は、里子にとっても経済的な壁が大きい。インタビューに答えてくれたある里親の女性からはこんな声が聞かれた。

本当は行かせてやりたいんですけれど、お金がないので仕方がないのです。将来行きたくなったら大学にはいつでも行けるんだから、とりあえずは就職してお金を貯めたら?と勧めます。 267

V. 国際人権基準

子どもの権利条約の前文は、家族が子どもの成長 および福祉のための自然な環境であるとの認識を示している。その人格の完全なかつ調和のとれた発達のため、子どもは「家庭環境の下で幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長すべきである」とする。 268 国際人権法は、社会と国家によって、できる限り広範な保護および援助が家族に対し与えられるべきであるとする。 269

子どもの権利条約は「締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない」と定める。このような決定は、家庭内虐待やネグレクトなどの特定の場合において必要となることがある。 270

2009年に国連人権理事会で採択され、国連総会でコンセンサスで採択された「子どもの代替的養護に関するガイドライン」は、「親による養護を奪われ又は奪われる危険にさらされている児童の保護及び福祉に関する」271子どもの権利条約の実施を強化することを目的とする。このガイドラインは、子どもが両親(または場合に応じてそのほかの近親者)の養護下で生活できるようにし、またはかかる養護下に戻れるようにすることを第1に目指して活動すべきであるとの一般原則から出発する。したがって政府は、家族がその養護機能に対する様々な形態の支援を受けられるよう保障すべきである。272

子どもを家族の養護から離脱させることは最終手段と見なされるべきであり、可能であれば一時的な措置であるべきであり、できる限り短期間であるべきである。 273 一時的もしくは恒久的にその家庭環境を奪われた児童または児童自身の最善の利益にかんがみその家庭環境にとどまることが認められない児童は、子どもの権利条約の下で国が与える特別の保護および援助を受ける権利を有する。 274 こうした代替的養護には「里親委託(略)、養子縁組又は必要な場合には児童の監護のための適当な施設への収容」などがある。 275

子どもの代替的養護に関する決定は、すべて個別の事例にそくして行われるとともに、その子どもの最善の利益と権利に基づいてなされねばならない。政府は自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する必要がある。児童の意見は、その児童の年齢および成熟度に従って相応に考慮されるものとする。 276

代替的養護に関するすべての決定は、家族との接触および家族への復帰の可能性を促進し、児童の教育、文化および社会生活の断絶を最小限にとどめるため、原則として児童の通常の居住地のできるだけ近くで養護を行うのが望ましいという点を、十分に考慮すべきである。 277

代替的養護を受けている児童に関する決定は、安定した家庭を児童に保障すること、および養護者に対する安全かつ継続的な愛着心という児童の基本的なニーズを満たすことの重要性を十分に尊重すべきであり、一般的に永続性が主要な目標となる。 278

施設入所は最終手段

子どもの権利条約は、代替的養護の一形態として「必要な場合には」児童の監護のための適当な施設への委託が含まれるとする。279この表現は、施設は代替的な家族環境よりも一般に望ましくないことを示している。ただし子どもによっては施設養育が最善の措置になることがある。たとえば自立する直前の10代後半の子ども、分離を望まない大人数の兄弟姉妹、里親との関係が何度も破綻した子どもなどだ。

実際、子どもの権利委員会(締約国の条約履行状況をモニタリングする専門家による独立機関)は、政府は「子どもの施設入所は最終手段であり、家族的手段がその子どもにとって不適当であると考えられる場合にのみ行われるようにする」べきだと述べている。 280

同委員会は幼児の施設入所は特に不適切であるとする。

調査結果からは、質の低い施設養育は健全な心身の発達を促進しない可能性が高く、長期的な社会適応に重大な悪影響を与える影響があることが示唆された。これは特に3歳未満の子どもと5歳未満の子どもにもあてはまる。代替的養護が求められる場合、家庭的養護か家庭に類似する養護に早期に委託した方が、幼い子どもにとってよい結果を生む可能性が高くなる。締約国は、安全、養護と愛情の継続、ならびに幼い子どもが相互の信頼と尊敬に基づく長期的な愛着形成を行う機会を確保する代替的養護形態に資金を用い、支援することが推奨される。たとえば里親制度、養子縁組、拡大家族への支援である。281

施設入所が必要な場合もあることは認めるものの、同委員会は「こうした措置が最終手段であることを確保し、できる限り短期間であることを確保するため. . .児童のこれら施設への措置は定期的に見直されるべきである」と述べている。282

子どもの代替的養護に関するガイドラインは、代替的養護の一形態としての居住型施設養育の位置づけを次のように詳しく述べている。

居住養護の利用は、かかる養護環境が個々の児童にとって特に適切、必要かつ建設的であり、その児童の最善の利益に沿っている場合に限られるべきである。 283

専門家の有力な意見によれば、幼い児童、特に 3歳未満の児童の代替的養護は家族型の環境で提供されるべきである。この原則に対する例外は、兄弟姉妹の分離の防止を目的とする場合や、かかる代替的養護の実施が緊急性を有しており、またはあらかじめ定められた非常に限られた期間である場合であって、引き続き家庭への復帰が予定されているか、または結果としてほかの適切な長期的養護措置が実現する場合であろう。284

施設養育と家庭を基本とする養護とが相互に補完しつつ児童のニーズを満たしていることを認識しつつも、大規模な施設養育が残存する場合には、かかる施設の漸進的な廃止を視野に入れた、明確な目標および目的をもつ全体的な脱施設化方針という文脈に沿った代替策を発展させるべきである。かかる目的のため各国は、個別的な少人数での養護など、児童に役立つ養護の質および条件を保障するための養護基準を策定すべきであり、かかる基準に照らして既存の施設を評価すべきである。公共施設であるか民間施設であるかを問わず、施設養育の施設の新設または新設の許可に関する決定は、この脱施設化の目的および方針を十分考慮すべきである。 285

国または地方の所轄当局は、かかる施設へは適切な入所のみが認められるよう、厳格な審査手続を設けるべきである。 286

各国は施設養育において、児童一人ひとりに応じた養護が実施できるよう、また必要に応じて児童が特定の養護者に愛着を抱く機会をもてるよう、十分な人数の養護者が配置されることを保障すべきである。 287

施設環境について、同ガイドラインは「定期訪問及び抜き打ちの訪問の両方で構成される頻繁な検査を確実に実施すべき」と定めている。 288

里親制度

国際基準は、里親制度が施設養育より子どもによりよい養護を一般に提供すると認識しているが、人権を尊重する里親制度の維持には、相当量の金銭的・行政的支援が鍵となる。国連の代替的養護ガイドラインは、適切な里親制度の提供に必要な行政措置等を指摘している。

所轄の当局または機関は、児童のニーズを評価した上、評価したニーズを里親候補の能力および資源とマッチさせるシステムを構築し、関係者全員が児童の委託に対応できるシステムを案出し、関係職員をそのように訓練すべきである。

児童の家族、地域団体、文化的集団とのつながりを維持しつつ児童に養護と保護を提供できる公認の里親を各地に確保すべきである。

里親向けの特別な準備、支援およびカウンセリングサービスを策定し、児童の養護期間中および養護の前後に、養護者が定期的に利用できるようにすべきである。

養護者は、里親組織および親の養護下にない児童を支援するそのほかの制度の中で、自らの意見が聴かれ、方針に影響を及ぼす機会をもつべきである。

重要な相互支援を提供し、実践と政策展開に貢献することができる、里親の団体の設立を奨励すべきである。 289

養子縁組

国連の代替的養護ガイドラインは、養子縁組が適当かつ永続的解決策であると明記している。政府はすべての子どもに対し、里親養育や施設養育などの長期的な措置よりも先に、適当な永続的解決策を見つけるよう努力すべきである。

これは、子どもが自分の家族の元で養護を受け続けられるようにするための活動を支援し、それに失敗した場合には、養子縁組などの適当な永続的解決策を探ることを定めた国連の代替的養護ガイドラインに沿ったものである。解決策のいかんにかかかわらず、社会的養護は「子どもの完全かつ調和のとれた発育を促進する」という条件の下で行われるべきだ。 290

したがって、子どもを永続的に放棄したいと希望する親から接触があり、親族のそのほかの養育努力についても失敗した場合、政府は養子縁組など、子どもを永続的に養育する家族を見つけるべく努力を行う。

国連の代替的養護ガイドラインは、政府職員に対し、家族が自らの子どもの養育を続けられるように、カウンセリングおよび社会的支援の機会を保障すべきであると定めている。そうした努力が失敗に終わった場合、ソーシャルワーカーはその子どもに対し恒久的な責任を負うことを希望するほかの血縁者がいるかどうかを、またその人物の養育に委ねることが子どもの最善の利益にかなっているかどうかを判断する。ガイドラインはこう述べる。「他の血縁者による養育が不可能であるか、又は児童の最善の利益に沿わない場合、合理的な期間内に、児童を永続的に養育する家族を見つけるべく努力を行う。」 291

障害のある子ども

障害者の権利に関する条約(日本の批准は20141月。以下「障害者権利条約」)の一般原則には、固有の尊厳、個人の自立、無差別、社会への完全かつ効果的な参加および包容(インクルージョン)、障害者の受入れ、機会の均等、施設およびサービス等の利用の容易さなどが含まれる。292

障害者権利条約は障害者の権利のパラダイムシフトをもたらしている。障害はもはや「治療」されるべき医学的状態としては見なされていない。同条約は障害が人の側に存在するものであり、社会の側に対して、障害者が社会に完全かつ効果的に参加することを保障するよう変わることを求めている。 293

障害者権利条約は、障害のある子どもについて政府が次のことを行うよう定めている。

  • 障害のある児童がほかの児童との平等を基礎としてすべての人権および基本的自由を完全に享有することを確保するためのすべての必要な措置をとる。
  • 障害のある児童に関するすべての措置をとるにあたっては、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。
  • 障害のある児童が、自己に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利ならびにこの権利を実現するための障害および年齢に適した支援を提供される権利を有することを確保する。この場合において、障害のある児童の意見は、ほかの児童との平等を基礎として、その児童の年齢および成熟度に従って相応に考慮されるものとする。 294

条約では、施設主義から脱した必要な支援を伴う地域社会生活への移行が強調されている。 295

障害者権利条約はまた、危険な状況や人道上の緊急事態においてとるべき行動を定めている。締約国は、国際法(国際人道法および国際人権法を含む)に基づく自国の義務に従って「危険な状況(武力紛争、人道上の緊急事態及び自然災害の発生を含む)において障害者の保護及び安全を確保するための全ての必要な措置をとる」と特に記している。 296

障害のある子どもが家庭生活を営む権利

障害者権利条約に基づき、政府は障害のある子どもに対し、家族生活について平等な権利を保障しなければならない。この権利を実現し、並びに「障害のある児童の隠匿、遺棄、放置及び隔離を防止するため」、国は「障害のある児童及びその家族に対し、包括的な情報、サービス及び支援を早期に提供することを約束する。」 297

国はまた「児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない」。さらに「いかなる場合にも、児童は、自己の障害又は父母の一方若しくは双方の障害に基づいて父母から分離されない。」 298

障害のある子どもの脱施設化と地域社会への包容

障害者権利条約は「近親の家族が障害のある児童を監護することができない場合には、一層広い範囲の家族の中で代替的な監護を提供し、及びこれが不可能なときは、地域社会の中で家庭的な環境により代替的な監護を提供するようあらゆる努力を払う」と定める。 299

障害者権利条約の下で政府は、すべての障害者がほかの者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を有することを認める義務があるとともに、障害者が、この権利を完全に享受し、並びに地域社会に完全に包容され、および参加することを容易にするための効果的かつ適当な措置をとる義務がある。この措置には、次のことを確保することによるものを含む。

障害者が、ほかの者との平等を基礎として、居住地を選択し、およびどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること、ならびに特定の生活施設で生活することを強いられないこと。

地域社会における生活および地域社会への包容を支援し、ならびに地域社会からの孤立および隔離を防止するために必要な在宅サービス、居住サービスそのほかの地域社会支援サービス(個別の支援を含む)を障害者が利用する機会を有すること。 300

障害者権利条約に記された地域社会で生きる明白な権利は、障害者の施設化の長い歴史から生じたものだ。施設主義を差別的かつ不必要とする認識はますます広まっている。

政府は障害のある子どもの社会福祉制度を、施設養育に重点を置いた制度から、住居を含めた地域社会に基づく支援サービスに転換すべきである。301こうした制度は選択における平等、自律、地域社会への完全な包容と参加を可能なものにすべきだ。障害者権利条約に施設での居住と養護が一切言及されていないことは、最も重度の障害者でも十分なサポートがあれば地域社会での生活と包容が可能であることを示す、過去40年以上にわたる調査研究と経験の進展が反映されている。

障害者権利条約の実施を監督する専門家委員会は国に対し「障害者への施設に基づく養護を段階的に停止し、廃止するための直接的行動」をとるよう求めている。 302

障害のある子どもを包容するインクルージブ教育

教育におけるインクルージョン(包含)はすべての人に教育を受ける権利があるとの考え方に根ざす。障害者権利条約は国に対して「障害者を包容するあらゆる段階の教育制度」を確保することを義務づけている。 303 特に国に対して障害のある子どもが「障害に基づいて一般的な教育制度から排除されないこと」、ならびに「他の者との平等を基礎として、自己の生活する地域社会において、障害者を包容し、質が高く、かつ、無償の初等教育を享受することができること及び中等教育を享受することができること」を保障するよう義務づけている。 304 そしてさらに、国に対しては合理的な配慮の提供と「その効果的な教育を容易にするために必要な支援を一般的な教育制度の下で受けること」を「完全な包容という目標に合致する」かたちで保障することを義務づけている。

子どもの権利委員会は学校運営のあり方の変更、児童生徒への支援サービスの提供、「さまざまな障害をもつ子どもを教える準備を行い、好ましい教育効果を挙げるようにするための」普通学級の教員への研修の重要性を認定している。 305

インクルージブ教育では、すべての児童生徒が自分の住む地区の普通学級に参加する。 306 これは「障害者と非障害者、少女と少年、民族的多数者と少数者の子ども、難民、健康に問題を抱えた子ども、就労する子どもなど」を対象とする。 307 さらにインクルージブ教育は、児童生徒に対して支援サービスと個別のニーズに基づいた教育が提供されることを求める。 308

インクルージブ教育は、特別な教育上のニーズをもつ子どもを排除し、そうした子どもに学校で好ましくない経験をさせる教育制度に内在する障壁を取り除くことに重点を置く。 309 これは当該の子どもではなく、教員と教室の側に変化を求めるものだ。支援サービスは、対象とする子どもを支援サービスの実施場所に移動させるのではなく、子どものいるところで実施されるべきだ。インクルージブ教育を行う教室では、障害のある子どもは、その子にとって最適な教育効果が得られる方法を教員と親、児童生徒に対して示す、個別の教育プログラムを受ける。 310

教室での多様性は、固定観念を打破し、理解と学習を向上させるなど、すべての子どもに利益をもたらすと理解されている。経済協力開発機構(OECD)加盟国と非加盟国の双方での研究は、障害のある児童生徒の学業成績は、障害のない仲間とともに学び、必要な場合には特別支援を受ける包容的環境の方が高くなることをますます明らかにしている。311教育の権利に関する国連特別報告者を務めたヴェルノール・ムニョス氏が指摘するように、インクルージョンを指向する学校を運営することは差別と闘う最も効果的な方法であり、したがって障害のある子どもに教育を受ける権利を完全に保障する上で不可欠なものだ。312子どもの権利委員会はまた、インクルージブ教育は障害のある子どもに対して「他人から承認されたアイデンティティがあること、また学習者、級友、市民からなるコミュニティに属していること」を示すことができることを確認している。313

インクルージブ教育は、統合教育と区別される必要がある。統合教育は、障害のある子どもが普通学校に参加できる(普通学校内に設置された教室への通学を含む)ことを目的として、その技能を発達させることに焦点を置いている。しかし、このモデルは、障害のある子どもが実際に学習に取り組めているのかを問題にした上で、教育制度全体に及ぶ障壁を解決するよりは、子ども自身を問題と見なす傾向がある。 314 普通学校内の特別学級は、障害のある児童生徒の一部に対しては、点字訓練や理学療法などの実施により、普通学級への参加を補完し、促す点で利益をもたらすこともある。 315

相談を受ける権利、意見を表明する権利

子どもの権利条約は、子どもが自己の意見を表明する権利があるとし、その意見は年齢と成熟度に従って相応に考慮されるものと定める。 316 したがって子どもには、代替的養護の選択肢について意見を求められ、十分情報を与えられる権利がある。 317

障害のある子どもを含めた子どもの意見は、親との分離の時点だけでなく、里親か施設への措置、養護計画の策定と評価、親や家族との面会に関する決定がなされる時点でも、その子どもの最善の利益を決定する上で考慮されなければならない。 318

さらに国連の代替的養護ガイドラインは次のことを定める。

養護を受けている児童は、自分の処遇や養護の状況に関して苦情や懸念を訴えることのできる、既知の効果的かつ公平な制度を自由に利用できるべきである。かかる制度には、最初の相談、フィードバック、実施、さらなる相談が含まれるべきである。過去に養護を受けた経験のある青年をこのプロセスに関与させ、その意見を十分に尊重すべきである。 319

自立支援制度

国連ガイドラインは、養護後(アフターケア)の生活に向けた準備とトレーニングの重要性を認定している。また養護の終了を迎える子どもが専門家に相談できるようにすべきであると注記している。 320

子どもの権利委員会の日本に関する最終見解  

子どもの権利委員会は、締約国の子どもの権利条約の遵守状況をモニタリングしている。直近の2010年の第3回審査において、国連子どもの権利委員会は「親の養護のない児童を対象とする家族基盤型の代替的児童養護についての政策の不足、家族による養護から引き離された児童数の増加、小規模で家族型の養護を提供する取組にかかわらず多くの施設の不十分な基準、代替児童養護施設において広く虐待が行われているとの報告に懸念を有する」と述べている。321

委員会は、里親への義務的研修と里親手当の引き上げに支持を表明する一方、一部の里親(養子縁組希望里親と親族里親)が財政的に支援されていないことに懸念を表明している。 322

委員会は日本政府に以下の勧告を行った。

(a) 里親や小規模なグループ施設のような家族型環境において児童を養護すること。

(b) 里親制度を含め、代替的監護環境の質を定期的に監視し、すべての監護環境が適切な最低基準を満たしていることを確保する手段を講じること。

(c) 代替的監護環境下における児童虐待の責任者を捜査、訴追し、適当な場合には虐待の被害者が通報手続、カウンセリング、医療ケアおよびそのほかの回復支援にアクセスできるよう確保すること。

(d) すべての里親に財政的支援がされるよう確保すること。

(e)児童の代替的監護に関する国連ガイドラインを考慮すること。323

VI. 東日本大震災の震災孤児

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2011311日、マグニチュード9.0を記録した史上最大級の東日本大震災は、その後の大津波および原発事故と合わせ、東北地方を中心に未曾有の被害をもたらした。死者15,884人、行方不明者2,633人、全壊した家屋127,302戸、半壊は272,849戸、一部損壊は748,777戸、また損壊した非住居建築物数は58,421件に上った。324

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放課後にがれきの横を歩く小学生。津波で甚大な損害を被った岩手県大槌町にて。2011年5月。© 2011 Toshifumi Kitamura /AFP/Getty Images.

また、震災によって241人の子どもたちが孤児になるなど、親権者を失った。こうした震災孤児は宮城県に126人、岩手県に94人、福島県に21人いる。3252012年の時点で、児童養護施設で生活する5人を除く全員が親族と生活をしていた。なお、児童養護施設にいる5人のうち、2人は震災以前から施設で生活していた子どもである。326全国では、計1,483人の子どもたちが東日本大震災で少なくとも片親を亡くしている(震災遺児)。327

震災直後、全国の児童養護施設・児童相談所が連携して孤児受け入れの体制を整えたが、児童相談所の職員が震災1週間後に孤児の状況調査のため避難所に出向いた際には、すでに孤児が親族の下で保護、世話されていた。328孤児を引き取った親族の大半は、子どもの祖父母、おじやおば、成人した兄姉などで、これらの人びと自身が被災者であることも多かった。

東日本大震災当時、小学校1年生だった宮城県石巻市の梶原真奈美さんは、津波で母親を失った。震災前は母子と祖母との3人で生活していたが、震災で祖母と2人暮らしとなり、ヒューマン・ライツ・ウォッチが訪問した際には、おじ一家が加わって生活していた。ほかの多くの被災地沿岸部の市町村同様、石巻市は津波によって壊滅的な打撃を受け、がれきの山と化していた。

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津波で被災した児童養護施設・一関藤の園(岩手県一関市)の子どもたち。カトリックのシスターの訪問を受ける。2011年11月。© 2011 Fulvio Zanettini/ADH/Laif/Redux

震災後、数週間の避難所生活を経て、おじの家で2カ月間生活した後、真奈美さんはやっと自宅に戻ることができた。ヒューマン・ライツ・ウォッチが訪れたときには、自宅周辺は震災の爪あとが生々しく残る風景だったものの、彼女は毎日学校に通い、放課後も稽古事で忙しくしていた。周りの皆を励ましながら、毎日を普通に過ごそうと努めていると話してくれた真奈美さんは、娘を亡くして今も泣き暮らす祖母を励ましながら、母の仏壇の前の献花に祖母へのメッセージを飾った。

「ばっちゃま、泣かないで。」 329

里親制度の利用

親族に引き取られた孤児について、岩手県一ノ関児童相談所所長の平賀友章さんは、「児童相談所の方で、積極的に里親制度の利用を進めました」と話す330。結果、親をなくした親族の子どもを引き取った168人が里親制度に登録した。うち95名が親族里親制度の利用、73名が親族による養育里親の利用である。331

3親等内の親族は、民法上扶養義務が認められることから里親手当の支給されない親族里親制度の利用のみが認められていたが、震災後、おじやおば等には養育里親制度の適用が認められ、里親手当が支給されることとされた。332

また、里親制度の利用のない残りの68名の震災孤児は、親族の養子となったり、離婚後の片親の親権復権により実親とともに生活したりするなどしている。333

震災当時の宮城中央児童相談所の里親担当職員は、東日本大震災は社会的養護のあるべき姿を見直す最善の機会であると語る。 334 相談所では震災直後から、子どもを引き取りたいという全国さらには国外からの里親希望者からの電話が連日鳴り続けたという。

岩手県庁保健福祉部児童家庭課によれば、通常は毎年15組程度のみしか増加しない里親数であるが、震災を経て年30組の増加になったとのことである。 335 震災を契機に里親制度の認知度が増し、里親希望者の増加につながっている。また、震災孤児のほぼすべてを親族が引き取ったという事実も、子どもに対するあるべき養護の姿の一面を示している。子どもがすでに慣れている身近な人びととともに過ごす家庭養育は、多くの場合、子どもの最善の利益に資する社会的養護であろう。

将来への不安

このように前向きな点が見受けられる一方で、突然子どもを養育することになった親族は大きな苦労を抱えている。

最高齢の親族里親は岩手県の加藤紀雄さん(90)。以前から長男一家と同居していたが、長男を震災前に病気で、震災で長男の妻を失った。現在は残された長男の子どもである小学校3年生と6年生の孫2人との3人暮らしだ。家政婦を雇って家事を頼みながら、90歳と思えぬ元気な加藤さんではあるが「いつ自分の健康状態が悪化するかわからない、いつまで面倒をみられるのだろうか」とその不安は大きい。336

児童相談所は、孤児の様子を把握すべく、当初は毎月家庭訪問を行っていた。しかし「今まで通りの家族での生活を続けているだけなのだからあまり来ないでほしい」という声も強く、家庭訪問の回数を減らした児童相談所も多い。 337 各県の里親会も、孤児を受け入れた里親のサポートのため、里親サロンなどを定期的に開催しているが、親族側には自らが「里親」であるという認識が薄く、参加は極めて低調である。 338

一部の里親はすでに不安を抱えており、今後問題が出てくる可能性もある。たとえば、岩手県にはある里親から以下のような懸念の声が寄せられた。

(引き取った)中学生の男の子は、普段から話をしない。震災の悲しみも表面に出さない。親を恋しいとも口にしない。そのままほおっておいてよいのか。
仮設住宅でスペースがなく、異性同士の子どもたちが複数一緒に住んでいるため、今はよいがこの先が心配。 339

岩手里親会会長の高橋忠美さんによれば、2012年まで震災孤児に関して目立った問題はなかったものの、2013年に入って軽微ながらも問題行動が何件か報告されている。340

6千人以上の死者が出た1995年の阪神・淡路大震災では、子どもの心への負担が表に現れるピークは地震から34年後だったとの報告がある。341

震災孤児の経済面の保障

孤児には、行政からの援助、民間の募金等からの支援等が集中しており、経済的な問題はさほど聞かれない。公的基金には、災害弔慰金500万円、災害義援金(一次配分50万円、二次配分815,000円)、遺族基礎年金月額65,741円があり、そのほか、あしなが育英会特別一時金282万円や、朝日新聞厚生文化事業団子ども応援金(小学生300万円、中学生200万円、高校生150万円)等の非政府団体からの支援もある。342各県がホームページに奨学金や支援金のリストをまとめており、それ以外にも多くの公設民設の支援制度が存在する。

親の財産相続や死亡保険金受領の結果、孤児の中には1億円を超える財産を手にすることとなった子どももいる。 343

実際、孤児への支援の集中によってほかの被災者との差が生まれているとの指摘もある。孤児・遺児を対象に特別一時金の給付を行っている「あしなが育英会」の東北事務所長はこう話している。

経済面では「お前は孤児でよかったな」と孤児が言われるような状況です。震災の前からの孤児や母子家庭もあり、震災で仕事を失った家庭もあります。ほかの人にも支援をしたいのだけれど、孤児や遺児に特定されて寄付が集まっており、ほかの目的に使えず、悩ましい状況です。 344

中学生と高校生の2人の子どもをもつ母親からはこんな懸念も聞かれた。

私の家は家族も子ども2人を含め全員助かり、家は半壊で済みました。しかし、デザイナーの仕事をしている夫はクライアントをほとんど津波で失い、去年は夫の収入がほとんどない状態でした。毎日、新聞で支援の欄を見たりしますが、孤児、遺児ばかりで、私達が応募できるものはまったくありません。子どもを進学させられるのか不安です。345

被災児たちの心のケアと社会的支援  

被災者が以前の生活を取り戻すために何よりも不可欠な地域の復興そのものの歩みは、遅々として進んでいない。精神看護学を教える佐藤利憲さんはこう説明する。

震災後の子ども達は、すぐキレたり、感情の起伏が激しかったり、眠れなかったり、食べられなかったりという症状が出ていました。もっとも、親を亡くしていますが一見わかりません。1年近く毎月、孤児・遺児達と接していますが、時々ぽろっと遊びの中で漏らす子どももいますが、そういうことは語らない子がほとんどです。 346

子どもたちの心のケアについては、震災直後から、児童精神科医や心理士のグループが東北各地の避難所を回るなど注意が払われてきた。児童相談所も児童心理士などの専門家を入れたチームを作って孤児・遺児の把握や対応に努め、問題点があれば医療機関につなぐなどの取り組みを行ってきた。 347

震災後、児童精神科医の下には、奇異な行動、赤ちゃん返り、遺尿症、夜泣きといった症状を示す子どものケースが寄せられてきた。 348

また、前述の通り、被災児が抱える精神的負担が初めて社会的に表面化したのは、震災から2年後のことだった。宮城県庁保健福祉部子育て支援課班長の小山和郎さんも、被災地で初めて子どもの問題行動が報告されたのは2013年のことと述べる。34920124月から20133月の間、不登校の中学生の割合が全国最多を記録したのが宮城県だったが、350小山さんはこれを震災の影響ではないかと見ている。351

20141月、厚生労働省研究班が、震災後2年後の被災者の状況に焦点を置いた報告書を発表した。被災した岩手・宮城・福島の3県で、3歳から6歳の幼児の28%が深刻な不安や抑うつなどの「内向的問題」を抱えており、ひきこもりとなっているケースも認められるという。また、調査対象となった子どものなかにはほかに、攻撃的な行動をとるなど「外向的問題」が見られる子が21%、社会適応性など「総合的問題」がある子が26%いた。報告は、いずれの子も治療を必要としている状況で、なかには複数の問題を抱えている子もおり、迅速な対応が求められると結論づけている。352

多くの子どもが親族に引き取られているからといって、現状に安心してはならない。小さなSOSをつかみとるべく、児童相談所や学校、地域社会などが連携して関わりをもち続けることが重要である。

子どもの養育に関わる人びとの多くが、被災地では子どもの心のケアが行き届かないのではと懸念を示す。たとえば、岩手県には人口130万人に対して児童精神科医はわずか1人しかいない。353このため被災地では、他地域から児童精神科医や心理療法士が応援に来ていたが、それをいつまでも継続できるわけではない。地元自治体からは「常に待機をしていて、何か災害があった際に、チームで数カ月単位、年単位で被災地にいてくれるチームを国の方で制度として整えて欲しい」という要望も出ている。354

震災孤児・遺児のグリーフ・ケアを行っている「あしなが育英会」や「仙台グリーフ・ケア研究会」では、小学生を中心に孤児・遺児が同様の境遇にある仲間と集ったり、大学生以上のファシリテーターと自由に遊んだり、話をしたりする機会を提供している。355仙台グリーフケア研究会の理事を務める佐藤利憲さんは「このケアが、グリーフケアの特効薬かというと、そんなことはないと思うけれど、選択肢の1つになればいい」と話す。356あしなが育英会東北事務所長の林田吉司さんは、助けを必要としている子どもたちに手を差し伸べることの難しさを指摘する。「1番辛い人たちは、集いには来ない。そこにどうやってこういう制度があるかを知らせていくことが重要だ。」357

両団体は、保護者どうしの会話の場も設け、親の心のケアの場も提供している。「親の方が精神的に不安定になっています。そして、保護者が精神的に不安定である場合には確実に子どもにそれが移るので親の心のケアはとても重要なのです」と佐藤さんは言う。 358

あしなが育英会のあるスタッフは、被災家庭訪問時の経験に触れ、子どもたちが直面する問題への対応の難しさを指摘している。

ご自宅に伺ってお母さんに話を聞いたときには、「うちの子どもは大丈夫なんです。いつも頑張ってくれて、本当に励まされています。でも、私がダメなんです」といって泣きくずれました。それで、子どもさんは大丈夫なのかなと思って子ども部屋に行ったら、子どもが大泣きしていて、子どもも本当につらいんだなあ、と、実感しました。ただ、お母さんのいるところでは、子どもは頑張っちゃうんですよね。お母さんを支えなきゃって思うから。 359

被災地の子どもたちの支援で重要なのは長期的な視点で状況を把握していくことであると、この職員は強調していた。 360

提言

国会への提言

すべての子どもに家庭で育つ機会を保障するために

  • 国連「子どもの代替的養護に関するガイドライン」に従い子どもの最善の利益を確保するため、児童福祉法を改正し、社会的養護を必要とする子どもの委託先の決定を家庭裁判所などの独立した機関が行うようにすること。
  • 児童福祉法を改正し、養子縁組と特別養子縁組を社会的養護に組み込むこと。

厚生労働省への提言

すべての子どもに家庭で育つ機会を保障するため

  • 乳児を施設養育から家庭養育に移行するための確実な計画を立て、その一環として、すべての乳児院を閉鎖すること。その計画においては達成期限が明確にされねばならず、計画の実現に向け、十分な資源投入と政治的意思が十分確保されねばならない。計画において3歳未満の子どもは家庭的環境で養育されることを明示すること。
  • 里親委託ガイドラインを国連の代替的養護ガイドラインに沿って改正し、都道府県と政令指定都市、児童相談所にその執行を指示すること。国連ガイドラインは、施設養育を「かかる養護環境が個々の児童にとって特に適切、必要かつ建設的であり、その児童の最善の利益に沿っている場合」に限るべきと定めている。改正の一環として、現行の里親委託ガイドラインが「施設措置を検討する」場合としてあげている里親委託優先の原則の例外規定を見直すこと。この例外規定は「里親委託優先の原則」を大幅に損なうものである。 361
    • 乳児に関する規定を国連の代替的養護ガイドラインに沿う形で改正すること。ガイドラインは、子どもの代替的養護は特に3歳未満では家庭的な環境で行うべきとしている。
    • 里親委託ガイドラインにおける、子どもについて1年、乳幼児について6カ月の施設在籍が可能なことを示唆する指導を改めること。乳児院等における施設養育が廃止されるまでの間、家庭的環境での養育に先立って施設入所を行うことのできる最長の期間について、当該子どもの最善の利益に反しない限り、具体的な短期の期限を設けること(たとえば児童は最長6カ月まで、乳児は最長3カ月までに限って施設入所が可能である等)。>362
    • 虐待を行う等子どもの適切な監護を行うことのできない実親が、社会的養護下の家庭養護への子どもの委託に同意しない場合には、児童福祉法第28条の手続きを利用し、子どもの里親委託の承認を家庭裁判所に申し立てるよう指示すること。
  • 適切かつ適当な期間内での家庭復帰が不可能と判明した場合、または、家庭復帰が子どもの最善の利益に反すると判断された場合には養子縁組が検討されねばならない。これを実現するため、専門家による政府から独立した委員会に対し、必要な施策提言を諮問すること。専門家委員会は以下を検討すべきである。
    • 里親委託や施設入所などの長期的な措置に優先して、養子縁組が確実に検討されるために必要な施策を検討すること。
    • 子どもを養育する意思または能力のない妊娠中の女性の相談に乗り、新生児の特別養子縁組制度を活用すること。
    • 政府が里親に提供する研修と支援(里親手当を含む)について、養子縁組希望里親や養親にも提供されるべきものは何かについて検討すること。
    • 児童相談所の養子縁組を行う能力を向上させる具体的な手段を、必要な人員の増員を含めて提言すること。
  • 児童養護施設の新設をやめること。また小規模ユニット化の場合を含め、子どもを収容する施設を建設する際には、その建設が家庭養護の促進を妨げ、施設養育偏重を促進する結果とならないようにすること。
  • 政府が2011年に提示したいわゆる「今後10数年」の計画は、社会的養護に占める里親委託(ファミリーホーム含む)の割合がわずか3分の1で、残りの3分の2は施設入所を引き続き認める内容である。この計画を再検討に付し、すべての子どもに家庭で育つ機会を保障するために養子縁組と里親委託についてより大胆な目標を設定すること。この新計画とあわせて、具体的な行動計画も策定すべきであり、現在の財政枠組み(現制度においては、施設には、政府からの措置費を得るために入所者数を確保するインセンティブがある)とは異なる枠組みも導入すること。

里親養育の改善のために

  • 親族里親と養子縁組希望里親を含むすべての里親が、十分な研修・モニタリング・支援(里親手当を含む)を得られるようにすること。質の高い包括的なプログラムを策定するため、専門家による政府から独立した委員会に対し、里親向けの包括的な研修・支援プログラム、モニタリング制度に関する施策提言を諮問すること。この委員会は現行の里親研修の見直しと研修ニーズの調査を行うとともに、児童相談所の里親支援能力を向上させる具体的な手段(家庭訪問、効果的な定期モニタリング制度、改革実施に必要な人的資源など)についても提言すべきである。
  • 現行の里親選定基準と実際の運用、ならびに政府による潜在的里親層への広報を評価・検討し見直すこと。より公正で透明性の高い基準を策定し、幸福と愛情そして理解のある環境のなかで子どもの最善の利益のために養育を行う強い意思と能力がある里親候補全員に対して、差別なしに里親登録を行うこと。登録にあたっては、事実婚カップル、独身者、そのほか子どもの最善の利益のために養育する強い意思と能力があるいかなる集団も排除されてはならない。子どもの最善の利益のために養育を行う強い意思と能力をもたない不適切な里親候補は登録されるべきではない。多様なバックグラウンドをもった資質ある候補者に里親登録申請を促す全国的な広報活動を効果的に実施すること。
  • 地方自治体が、教師や心理士、医師、弁護士等の専門家、また、地域の団体等と連携して、里親委託と里親養育に求められる適切な支援とモニタリングを行える態勢を整えること。

障害のある子どもに適切な生活水準を保障するために

  • 障害者、障害のある子どもの親、障害者団体の代表等を含む政府から独立した専門家委員会に対し、施設養育を受けている障害のある子どもの状況を調査・再検討し、障害のある子どもを養育する里親に特に必要な措置を講じるなど、そうした子どもたちの養育が地域社会の中で行われるために必要な包括的施策を提言するよう諮問すること。この提言においては、障害をもつ子どもの地元の普通学校通学を確保すべきである。
  • 一定期間を定め、その期間内に、情緒障害児短期治療施設で生活する子どもの脱施設化を行い、地域社会内での家庭養護へと移行すること。また情緒障害児短期治療施設を、今よりも利用しやすい制度に改善し、障害のある子どもを広く支援するものに転換すること。地方自治体が、教師や心理士、医師、弁護士等の専門家や、地域の団体等と連携し、里親と委託された子どもとを全面的に支援できるようにすること。
  • 支援団体や専門的なアドバイザー等の仕組みを作る等して、地方自治体が、教師や心理士、医師、弁護士等の専門家や、地域における障害者の当事者団体や障害児の親の団体等と連携しながら、専門里親への障害をもつ子どもの委託と養育に必要な支援を行える態勢を整備すること。

実親から分離された直後の子どもに適切な一時滞在場所を確保するために

  • 児童相談所に対し、保護した子どもの通学や移動の制限など人権侵害につながりかねない対応については、それが子どもの最善の利益であるとの個別ケースに即した判断に基づかない限り停止するよう指導すること。
  • 一時保護制度を改善し、実親から分離された直後のすべての子どもについて、児童相談所の管理下にある一時保護所に入所させるのではなく、ほかの子どもと触れあい、学校通学が可能で、可能な限り従前と同様の生活を継続できる、より適切で人道的な生活を認めること。現在行われている地域の里親宅へ委託しての一時保護も、問題解決に向けた1つの選択肢であろう。

社会的養護施設で暮らす子どもの養育環境改善のために

  • 児童養護施設の生活環境を多くの面で見直すこと。たとえば、子ども1人あたりの居室面積の最低基準の引き上げや、子ども一人ひとりにプライバシーが守られる十分なスペースを認めることなど、施設での生活環境を国際的なベストプラクティスに合わせるための改善がなされねばならない。
  • 施設の査察を頻繁に実施し、施設の状況を確認すること。査察においては、事前通告のある査察のみならず、事前通告のない査察も行われなければならない。また、査察は、児童相談所職員やそのほかの自治体職員、および、そのほか子どもの最善の利益の追求を職責とする独立した第三者によってもなされる必要がある。査察では、子ども間のいじめについても調査がなされるべきである。また、これらの査察を行う者は、施設職員、および、子どもとの意見交換も行って施設の生活状況についての意見を聞かねばならない。
  • 子どもと職員の比率に関する国際的なベストプラクティスに沿った水準まで施設職員を増員すること。

自身に影響のある物事の決定への子どもの参加をより促進するために

  • 都道府県レベルで児童養護施設のモニタリングを行う外部の第三者委員会の設置を義務づけるよう命じ、委員会には社会的養護下の子どもにしっかり関わるために必要な資源と適切な人員を確保すること。当該委員会には施設への定期的かつ自由なアクセスが保障されねばならない。また、子どもが、委員会に対し、施設の処遇や条件に関する苦情を、周囲に知られずに申し立てられるようにしなければならない。里子に対しても、委員会への自由なアクセスが保障されるべきである。
  • 子どもが周りに知られることなく人権侵害の被害を訴え、被害回復を求めることのできる苦情申立制度を前項記載の方法以外にも創設すること。社会的養護制度下のすべての施設に対し、「苦情を訴えた子どもへの報復を絶対に許さない」との方針を遵守させること。社会的養護を経験した若者を、この苦情申立制度に関与させ、その意見を正当に尊重すること。これらの苦情申立制度を様々な障害のある子どもにもアクセスしやすいものとし、必要な場合には、独立した補助者によるサポートを受けられるようにしなければならない。
  • 社会的養護下にある子ども、および、措置解除後の子どもによる当事者団体の結成と活動を促進すること。

措置終了後の子どもの自立を支援するために

  • 社会的擁護下のすべての子どもについて、申し出があれば当該措置の延長を20歳になるまで行うよう確保すること。なお、これを退所後の若者の自立を助ける適切な改革が実現されるまでの暫定的な措置として提案する。
  • 高校・大学等への進学で必要な授業料や諸経費、また運転免許取得費用等、自立を支えるための経済的支援を強化すること。
  • 賃貸契約や雇用契約はもちろん携帯電話契約等、生活に欠かせない契約について、継続的に子どもの保証人ないし保護者を務める人を指定すること。こうした契約で親権者の有無が障害とならないよう措置を講じること。またこの保証人の利用等については、必要に応じて退所後のいかなる時点においても可能とすること。
  • 措置解除後の自立をサポートする専門職員を可能な限り配置するなど、施設退所後の若者を支えるしっかりとしたサポート制度を築くこと。
  • 社会的養護を離れた後の状況についての総合的な調査および分析を行うこと。その調査・分析の報告書においては社会的養護制度そのものの改革に向けた提言も行うこと。

震災孤児を支援するために

  • 震災後10年以下のいずれか適切な時期まで、子どもたちの状況を把握すること。また、それぞれ一人ひとりが被った心身の傷を癒やすために必要なあらゆるケアやそのほか適切なサポートが必要に応じて提供されるようすること。

都道府県と政令指定都市 への提言

すべての子どもに家庭で育つ機会を保障するために

  • 国の里親委託ガイドラインに示された「里親委託優先の原則」に従うこと。国連の代替的養護ガイドラインに沿って「里親委託優先の原則」を効果的に実行する十分な資源を投入すること。
  • 厚生労働省の通知「養子制度等の運用について」を遵守すること。本通知は子どもが養子縁組を結べるよう努めることを児童相談所長に指示するものである。
  • 実親が里親委託に同意しない場合は、家庭裁判所の承認を得て子どもを里親委託すべく、児童福祉法第28条により児童相談所に与えられた権限を用いること。

里親養育の改善のために

  • 里親候補者に対し、子どもの養育に関する情報提供を含め、より包括的で定期的な研修を行うこと。
  • 里親が、子どもを養育するにあたって必要な情報を十分に得られるようにすること。具体的には、その子どもを社会的養護すべき理由、委託前の環境、養育歴、関連するそのほかの情報等が必要である。
  • 里親サポートや里親に対するモニタリングの質的向上を図ること。里親サポートとモニタリングに関わる人びとの専門性を高め、関わる人の数を増やすこと。

実親から分離された直後の子どもに適切な一時滞在場所を確保するために

  • 各子どもの最善の利益に即した具体的判断に基づかずに、通学や移動を制限するなどの人権侵害につながりかねない措置をとる一時保護所での対応について調査し、見直しを行うこと。

障害のある子どもの地域社会における適切な生活水準の確保のために

  • 障害のある子どもの養育と支援を行う優れた資質をもった専門里親を増やし、その養育に向けた適切な研修とサポートを確保すること。

自身に影響のある物事の決定への子どもの参加をより促進するために

社会的養護に関する意思決定に、子どもがより参加できるよう制度の改善を行うこと。たとえば、以下のような具体的な措置を講じるべきである。

  • 子どもの権利ノートの配布方法を大幅に改善すること。子どもに同ノートの内容を十分に伝えること。同ノート記載の内容の実施とそのフォローアップのための効果的な手段を設けること。同ノートの利用方法について一定のカリキュラムを設け、そのカリキュラムを正規の研修プログラムとして職員研修を行うこと。子どもの権利ノートには、子どもが児童相談所やそのほか第三者に無料で送ることのできるハガキをつけるべきである。また無料電話相談の番号や電子メールアドレスも記すべきである。
  • 子どもがどこに暮らすか、施設か里親宅か、等の選択の際に子どもの意見を聞き、それを適切に考慮すること。こうした子どもの意見の聴取がより適切に行われるための実務手続きを考案すること。
  • 施設を監督する地位にある人びとや外部委員と子どもが交流する機会を定期的に設けること。

措置終了後の子どもの自立支援を強化するために

  • 各児童相談所に、社会的養護終了後の子どもとの架け橋となって自立を支援する担当者を任命させ、この担当者に適切な資源と権限を与えること。各児童相談所は、施設にいる子どもの生活スケジュールやプログラム、日課を改訂し、自立生活の準備を徐々にかつ継続的に行えるようにしなければならない。

謝辞

本報告書に関わる調査は、猿田佐世(ヒューマン・ライツ・ウォッチ、アジア局コンサルタント)、土井香苗(日本代表)、ビード・シェパード(子どもの権利局局長代理)が行った。主たる執筆は猿田佐世が行なった。

本報告書の編集は、フィル・ロバートソン(アジア局長代理)、シャンタ・ラウ・バリガ(障害者の権利部長)、ビード・シェパード、ジェイムズ・ロス(法・政策局長)、ダニエル・ハース(上級プログラム・エディター)による。

調査・作成補助は、シャイヴァリニ・パルマーとジュリア・ブレックナー(アソシエート)、吉岡利代(上級プログラム・オフィサー)、坪井友美(アジア局インターン)が担当した。出版作業はグレイス・チョイ(出版局長)とフィツロイ・ヘプキンス(制作マネージャー)による。地図は岡田味佳(フルーツマシン・デザイン)が作成した。

個人的なお話を聞かせていただいた方々、ならびにインタビューに応じていただいた政府関係者、社会的養護関係者、専門家の方々に厚くお礼を申し上げる。報告書に関わる作業を支援し、インタビューを手配いただき、貴重な見解を示していただいたすべての団体に心から感謝したい。本報告書の作成・出版に関しては、ジャパン・ソサエティーJapan Earthquake Relief Fundと東日本大震災復興支援財団から資金的支援を受けた。記して感謝する。

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1 2012年度に新たに社会的養護制度下で養育されることになったと記録された子どもの数は次の通り。乳児院2,237人、児童養護施設5,401人、情緒障害児短期治療施設475人、里親制度826人、ファミリーホーム179人。自立援助ホームに新規入所した子どもの数を示すデータは存在しない。なお、児童養護施設や里親委託先が替わった場合もこの政府統計に含まれてしまうことから、新たに社会的養護の下に入った子どもの合計数はこの統計からも導き出せず、そのデータは存在しない。電話インタビュー:厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課、20131126日。狭義の社会的養護には、情緒障害児短期治療施設が含まれない。だが障害のある子どもに焦点をあてるため、ここに示した数字は情短施設に委託されている子どもの数も含めた。注7参照。

2内訳(2013) は乳児院(3,069)、児童養護施設(28,831)、情緒障害児短期治療施設 (1,310)、自立援助ホーム(430)。厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成263月、1頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/01.html(2014年4月17日閲覧)。

3 内訳は児童養護施設からが21人、乳児院47人、情緒障害児短期治療施設1人、里親235人(2011年度)。厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、84-86頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/01.html2013113日閲覧)。

日本の会計年度はその年の 4 月から翌年 3 月。以下で用いる日本政府の統計は、言及のない限り暦年ではなく年度である。

4 厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、23頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2013126日閲覧)。

5総務省統計局「平成24年就業構造基本調査 第2表:男女、就業状態・仕事の主従、就業希望意識・就業希望の有無、求職活動の有無、年齢、教育別15歳以上人口」、平成25712日、http://www.estat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001048178&cycleCode=0&requestSender=search2014323日閲覧)。

6厚生労働省「社会的養護の課題と将来像:児童養護施設等の社会的養護の課題に関する検討委員会・社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会とりまとめ」、平成237月、41頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/08.pdf2014114日閲覧)。

7厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成263月、1頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2014417日閲覧)。

この数字は、狭義の社会的養護制度(児童養護施設、乳児院、情緒障害児短期治療施設、里親制度、ファミリーホーム、自立援助ホーム)の下で生活する子どもの総数。これらは適切な養護を行う親のいない子どもたちに対する制度である。広義の社会的養護には、補完的養護としての保育所等、支援的養護としての児童館や母子生活支援施設(配偶者のない女子等及びその者の監護すべき児童を入所させて、自立の促進を支援する施設)、治療的養護としての盲児施設等が含まれる。なお、国連「子どもの代替的養護に関するガイドライン」は、養子縁組を適当な永続的解決策とみなしており、養子縁組以前の段階や里親候補者への試験的委託段階には同ガイドラインが適用される。本報告書での社会的養護の分類については、先に触れた狭義の社会的養護の記述も含め、断りのない限り下記文献に従った。加藤孝正・小川英彦編著『基礎から学ぶ社会的養護』ミネルヴァ書房、20124月、12頁。

8同、28-35頁、120頁。

9厚生労働省「子ども虐待による死亡事例等の検証結果(第9次報告の概要)及び児童虐待相談対応件数等」、プレスリリース、平成25725日、http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000037b58.html2013113日閲覧)。児童相談所への児童虐待の相談件数の推移は下記の通り。19901,101人、19951,961件、200017,725件、200534,472件、201056,384件(2010年は福島県を除く)。2012年度における虐待関連の相談は66,807件。厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、4頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf (2013113日閲覧)。「児童虐待相談の対応件数及び虐待による死亡事例件数の推移」、http://www.crc-japan.net/contents/situation/pdf/10011301.pdf2013111日閲覧)も参照。

10厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、4頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2013721日閲覧)

11児童養護施設「子山ホーム」(千葉県)職員へのインタビュー、201253日、千葉県内。

12厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、5頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2013721日閲覧)

13 日本の社会的養護制度では、都道府県と政令指定都市が同じ権限と義務をもつ。簡略化のため、以下「都道府県」とのみ記して政令指定都市を含む場合がある。

14厚生労働省「子ども虐待対応の手引き」、日付なし、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv12/05.html2012920日閲覧)

15 ほかの行政処分と同様であるが、一時保護措置がなされた後に裁判を提起し、訴訟で処分の是非を争うことは可能である。

16大分県児童相談所内の一時保護所職員へのインタビュー(20131018日、大分県内)、および東京都児童相談センターへのインタビュー(2012530日、東京都内)

17厚生労働省「児童虐待防止対策について」、日付なし、26頁、http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000231cm-att/2r985200000231fh.pdf2014125日閲覧)

18山野良一さん(元神奈川県児童相談所児童福祉司で、現千葉明徳短期大学教授)へのインタビュー、2012714日。

山野さんによれば、一時保護期間が長いものでは、2年近くなるケースもまれにあるとのことである。一時保護期間が長引く理由はさまざまである。たとえば、発達障害児を受け入れない児童養護施設があった場合、親が委託にいったん同意したものの、後で撤回するというパターンを繰り返した場合、児童相談所が児童福祉法第28条の定める手続き(施設や里親への委託についての保護者の同意が得られないとき、児童相談所長はこの規定に基づき、家庭裁判所の承認を求めて申し立てを行う)に時間がかかると判断してこれを躊躇していたものの、実際には実親の同意を得るのにもっと時間がかかってしまった場合、児童相談所が家庭裁判所が当該措置を承認するとの確信がもてず、28条手続きを用いなかった場合などである。子どもは、自分の学校には通学できず、一時保護所の敷地内で個人指導などのかたちで教育を受ける。東京都児童相談センターの一時保護所への訪問、2012530日。なお、本報告書でのインタビュー相手の肩書きは当時のものである。

19厚生労働省「児童虐待防止対策について」、日付なし、26頁、http://www.crc-japan.net/contents/situation/pdf/20130611.pdf2014125日閲覧)

20 林浩康さん(日本女子大学教授・社会福祉学・厚生労働省 施設運営指針・里親養育指針等ワーキンググループ委員)へのインタビュー、201294日、神奈川県内。

21東京都における一時保護所の退所後の子どもたちで自宅に帰宅ができるのは57%(1,535人中874人)にすぎない。ほかは児童福祉施設入所424人、里親委託15人、ほかの児童相談所か機関に移送194人、家庭裁判所送致6人である。東京都児童相談センター・東京都児童相談所「事業概要 2012年(平成24年度)版」、日付なし、104頁、http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/jicen/others/insatsu.files/ji2012_Part4.pdf2014313日閲覧)。

22乳児院は、原則として乳児(1歳未満)を入所させて養育する施設であるが、実際には2歳あるいは3歳まで入所していることも多い。厚生労働省「乳児院運営指針」、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知、平成24329日、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_05.pdf201371日閲覧)。子どもに障害があるなど、特別の場合には乳児院は6歳までの子どもも養育することがある。今田義夫さん(日本赤十字社医療センター附属乳児院施設長)へのインタビュー、2012724日、東京。

23児童養護施設は、乳児を除く18歳未満の子どもを対象としているが、特に必要がある場合は乳児から対象にできるとされる。厚生労働省「児童養護施設運営指針案」、平成24329日、http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000202we-att/2r985200000202yy.pdf2014125日閲覧)。

24 狭義の社会的養護には、情緒障害児短期治療施設が含まれないが、本報告書では当該施設の説明も行い、委託されている子どもの数も含めた。注7参照。

25 社会的養護下にある子どもの人数(2013101日時点)。ただし里子の数は2013331日現在。厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成263月、1頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2014417日閲覧)。

26全国児童相談所長会の2010年の統計によれば、児童福祉施設入所中全児童29,755人のうち、実親の同意による委託は29,308人。里親委託措置中の全児童2,610人のうち、実親の同意による里親委託は2,591人。残りの466人(施設入所447人、里親委託措置19人)は少なくとも一度は児童福祉法第28条手続きを経て親から分離されている。

全国児童相談所長会「『親権制度に関するアンケート調査』結果報告」、1頁、 http://www.moj.go.jp/content/000048447.pdf2014313日閲覧)。

27児童福祉法第281-2項。第3章での議論を参照。

28厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成26 3月、22頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2014417日閲覧)。厚生労働省の統計によれば、児童養護施設の在所期間が1年未満の子どもは全体の20%、12年は14%、23年は10%。

29津崎哲雄さん(京都府立大学公共政策学部教授)への電子メールによるインタビュー、20131016日。および厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課への電話インタビュー、2013115日。

30 厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、7頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2013115日閲覧)。この数字は施設にいかなる規模の住居建物が存在しているかを示すにすぎないことに注意されたい。たとえば、1つの園が敷地内に定員8人のユニットを7つ、同13人のユニットを2つもつ場合、この統計では、小舎制1施設と中舎制1施設として2回カウントされる。

31 厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課への電話インタビュー、2013115日。

32 2013年時点で、一般生活費(月額)は乳児54,980円、乳児以外47,980円。里親には、幼稚園費・教育費・入進学支度金・就職・大学等支度金・医療費等も支給される。

33 なお専門里親資格をもっている世帯にも養育里親としての委託がなされているケースも多い。宮島清「虐待を受けた子どもを委託する場合- ソーシャルワークの立場から」『里親と子ども』、第2号、200710月所収。専門里親の全体数と専門里親として子どもの委託を受けている者の数のあいだには大きな開きがある。それは、専門里親登録している者も、専門里親としてではなく、養育里親として子どもを委託されているケースがあるためである。この場合、書類上は「委託のない専門里親」として計算されている。また、専門里親がファミリーホームを運営している場合にも、「子どもを委託された専門里親」としては計算されないことも理由の1つである。

34 里親委託されている子どもの数と子どもを養育する里親の数が一致しないが、これは統計上の誤りとみられる。ヒューマン・ライツ・ウォッチが厚生労働省に問い合わせたところ、統計上の誤りが生じていることは認識しており、複数のカテゴリに登録されている里親について二重に計算が行われているためと思われるとの回答だった。厚生労働省はこれ以上の明確な理由や説明を示さなかった。

35 厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、86頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf201431日閲覧)。

36ヒューマン・ライツ・ウォッチは厚生労働省に対し、児童相談所に親族里親として登録しながら、子どもを養育していないケースがある理由をたずねた。厚生労働省側は明確な回答を示さなかったが、データの更新が不完全である可能性があると述べた。厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、1頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2013113日閲覧);厚生労働省雇用均等・児童家庭局「里親委託ガイドラインについて(雇児発03309号・平成23330日)」、2011330日、http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018h6g-att/2r98520000018hlp.pdf2013113日閲覧);厚生労働省雇用均等・児童家庭局「里親制度の運営について(雇児発第0905002号・平成1495日)」『里親委託運営要綱』、200295日、http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018h6g-att/2r98520000018hlp.pdf2013113日閲覧)。親族の子どもを預かりながら里親として登録している者の少なさが、日本の低い里親率を実情よりさらに下げていると述べる研究者もいる。林浩康さん(日本女子大学教授・社会福祉学・厚生労働省 施設運営指針・里親養育指針等ワーキンググループ委員)へのインタビュー、201294日、神奈川県内。

37厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、21頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2013115日閲覧)。

児童養護施設がファミリーホームを創設する場合もあるが、その多くは各里親世帯が養育する子どもの数を6人まで増やした形をとっている事が多い。このためファミリーホームは里親制度の一形態として、基本的には日本では里親同様の扱いとなっている。したがって本報告書での「里親」は、特に断らない限りファミリーホームも含むこととする。しかし、6人の子どもを同時に養育することは、1戸の住居であっても「里親制度」とまったく同じではないという意見もある。高橋忠美さん(岩手里親会代表)へのインタビュー、2012517日、岩手県内。

38厚生労働省雇用均等・児童家庭局「里親委託ガイドラインについて(雇児発03309号・平成23330日)」『里親委託ガイドライン』、2011330日、http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018h6g-att/2r98520000018hlp.pdf2013726日閲覧)。

39この里親認定要件は各都道府県・市によって異なる。たとえば東京都では、住居要件として「原則として、居室が210畳以上であり、家族構成に応じた適切な広さが確保されていること」、収入要件として「世帯の収入額が生活保護基準を原則として上回っていること」等のほかの要件をおいている。東京都においては、さらに、里親希望者が単身である場合には、知識や経験を有するなど子どもを適切に養育できると認められねばならないという要件もおいている。この過程で問題が認められなければ、里親候補は里親として認定・登録される。厚生労働省雇用均等・児童家庭局「里親委託ガイドラインについて(雇児発03309号・平成23330日)」『里親委託ガイドライン』、2011330日、http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018h6g-att/2r98520000018hlp.pdf2013113日閲覧)。東京都福祉保健局「東京都里親認定基準」、http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/satooya/seido/hotfamily/satooya/s_kijun/index.html2014313日閲覧)も参照。

40厚生労働省雇用均等・児童家庭局「里親委託ガイドラインについて(雇児発03309号・平成23330日)」『里親委託ガイドライン』、2011330日、http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018h6g-att/2r98520000018hlp.pdf2013727日閲覧);厚生労働省雇用均等・児童家庭局「里親制度の運営について(雇児発第0905002号・平成1495日)」『里親委託運営要綱』、200295日、http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018h6g-att/2r98520000018hlp.pdf2013727日閲覧)。

41これらの額は2009年以降のもの。厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、18頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2013727日閲覧)。

42厚生労働省雇用均等・児童家庭局「里親委託ガイドラインについて(雇児発03309号・平成23330日)」『里親委託ガイドライン』、2011330日、http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018h6g-att/2r98520000018hlp.pdf2013726日閲覧)。厚生労働省雇用均等・児童家庭局「里親委託ガイドラインについて(雇児発03309号・平成23330日)」『里親委託ガイドライン』、2011330日、http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018h6g-att/2r98520000018hlp.pdf2013123日閲覧)。2011年の東日本大震災後、おじ・おばには養育里親制度の適用が認められ、里親手当が支給されることとされた。

43厚生労働省「里親委託ガイドライン」では、委託後概ね1週間以内に1回、さらに概ね1カ月以内には再度の訪問をし、その後も、児童相談所の担当者や里親支援機関の担当者が適宜訪問するとされている。

44 厚生労働省「民間養子縁組あっせん事業の状況について」、日付なし、1頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_15.pdf20131023日閲覧)。

45 民法第797798条。

46 民法第817条の29条。

47インタビュー:浦島佐登志さん(施設内虐待を許さない会代表)、20131017日、東京都内。

48 注省略(英語版では正座についての説明)

49インタビュー:森田雄司さん(児童養護施設「子山ホーム」施設長・千葉県)、2012424日、千葉県内。

50 児童福祉法第33条の11。

51厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課/厚生労働省社会・援護局障害福祉部障害福祉課「被措置児童等虐待対応ガイドライン~都道府県・児童相談所設置市向け~」、雇児福発第0331002号/障障発第0331009号、平成213月、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/tuuchi-45.pdf 2013725日閲覧)。

52 インタビュー:山野良一さん(元神奈川県児童相談所児童福祉司・現千葉明徳短期大学教授)、2012年7月14日、千葉県内。インタビュー:黒田邦夫さん(児童養護施設「二葉むさしが丘学園」施設長・東京都)、2012年10月9日、東京都内。インタビュー:平湯真人さん(弁護士)、2012年10月9日、東京都内。

53 厚生労働省「平成23年度における被措置児童等虐待届出等制度の実施状況」、平成24年10月25日、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo04-04.pdf (2013年4月1日閲覧)。

54 同上。

55 インタビュー:アキさん(里子・女性・高校生)、 2012 7 月、関東地方。

56 インタビュー:吉田恒雄さん(駿河台大学法学部教授)、2012年7月6日、東京都内。

児童養護施設職員の早川悟司さんは、職員や施設は虐待の報告を嫌がると話す。早川さんが、他の職員が子どもの耳を引っ張った事件発見したとき、この事案を都に報告すべきだと強く施設に主張して、ようやく施設は報告を行ったとのことである。インタビュー:早川悟司さん(児童養護施設「目黒若葉寮」職員・東京都)、2012年8月1日、東京都内。

57 インタビュー:児童養護施設長、2011124日、東北地方。

58 インタビュー:アキさん(里子・女性・高校生)、20127月、関東地方。

59 同上。

60 インタビュー:里親(女性・匿名)、20127月、関東地方。

61 インタビュー:情緒障害児短期治療施設長(横浜市)、20131016日。

62 インタビュー:ジョウジさん(15・施設入所者)、20111212日、大阪府内。

63インタビュー:阿部俊幸さん(19・施設出身者・千葉)、2012722日、千葉県内。

64 インタビュー:ハナさん(13)、20111214日、大阪府内。

65 インタビュー:情緒障害児短期治療施設長(横浜市)、20131016日。

66 インタビュー:マイコさん(20・施設入所者)、20111211日、東北地方。

67 インタビュー:ノゾミさん(15)、2011年12月12日、大阪府内。

68 Frank DA et al., "Infants and Young Children in Orphanages: One View from Paediatrics and Child Psychiatry," Pediatrics, 1997, 97(4): 569–578. ヨーロッパの施設についてのある研究によれば、親がいない状態で養護施設に委託された3歳未満の子どもには、愛着障害や発達遅滞を生じ、脳の発達に悪影響を及ぼすリスクがある。この研究は結論部で「早い段階で親から育てられなくなったことによるネグレクトと被害は、幼い子どもへの暴力に匹敵する」と述べている。University of Birmingham, UK Centre for Forensic and Family Psychology. International Foster Care Organisation (2005)での引用。Committee on the Rights of the Child Day of General Discussionへの提出資料 http://www.crin.org/docs/resources/treaties/crc.40/GDD_2005_IFCO.pdf

69 子どもの里親委託開始年齢は2歳が一番多く、全里親委託のうち16%656人)、続いて1歳で12%(513人)、その次が0歳で10%(402人)。しかし3歳はわずか9%(392人)、4歳は7%(272人)、5歳は6%(244人)となり、7歳より後になると各年齢とも4%以下である。全国児童相談所長会『児童相談所における里親委託及び遺棄児童に関する調査』、『全児相』第91号別冊、20117月、57頁。

70 厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf(2014年4月1日閲覧)。厚生労働省家庭福祉課「新生児等の新規措置の措置先(都道府県市別)(平成23年度)」、88頁(2014年2月3日閲覧)。

71 厚生労働省「社会的養護の施設等について」、日付なし、 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/01.html(2014年2月3日閲覧)。

72 厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf201441日閲覧)。厚生労働省家庭福祉課「新生児等の新規措置の措置先(都道府県市別)(平成23年度)」、88頁(201423日閲覧)。

73 ヘネシー澄子さん(クロスロード・ソーシャルワーク社所長・東京福祉大学名誉教授・社会福祉学博士)講演「赤ちゃんの脳の発達に影響を及ぼす、愛着形成について」、2013524日開催、東京都内。

74 インタビュー:竹中勝美さん(児童養護施設出身、現里親・東京)、201277日、埼玉県内。

75 インタビュー:竹内まつ江さん(乳児院「済生会中央病院附属乳児院」看護師長・東京都)、201281日、東京都内。

76 インタビュー:乳児院「二葉乳児院」職員(女性)、2012年7月31日、東京都内。

77 厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、6頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2013111日閲覧)。厚生労働省雇用均等・児童家庭局「児童養護施設入所児童等調査結果の要点(平成2021日現在)」、平成21713日、2

http://www.crc-japan.net/contents/notice/pdf/h20_0722.pdf2013111日閲覧)

78厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成25年3月、6頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf(2013年11月1日閲覧)。なお用語法は厚生労働省の分類に従った。

79 多くの施設職員が、施設に措置された子どもの9割ほどが被虐待児ではないかと見ている。インタビュー:「子山ホーム」職員(千葉県)、2012年5月3日、千葉県内社会的養護を必要とする子どもたちには虐待の被害児が多い現状については以下を参照。厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、2013年3月、4頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf(2013年7月25日閲覧)。虐待と障害の関係についても多くの議論がなされている。玉井邦夫さんは、発達障害(広汎性発達障害やLD、ADHD)という特性が虐待を生じさせてしまうこともあるが、虐待が発達障害を生じさせるという因果関係はないとする。とはいえ虐待を受けることで、子どもの発達に非可逆的なダメージを与えて子どもの行動像が障害児と似通ってくると述べる。玉井邦夫『特別支援教育のプロとして子ども虐待を学ぶ』学研、2009年、61頁。

80 庄司順一、篠島里佳「虐待・発達障害と里親養育」『里親と子ども』第2号、2007年10月所収。杉山登志郎『子ども虐待という第四の発達障害』学研、2007年、21頁。

81杉山登志郎『子ども虐待という第四の発達障害』学研、2007年、118および121頁。杉山登志郎「虐待を受けた子どもへの精神医学的治療」『里親と子ども』第2号、2007年10月、92頁。虐待を受けた子どもの80%は反応性愛着障害の兆候を示すとする報告もある。西沢哲「虐待を受けた子どもの心理的特徴」『里親と子ども』第2号、2007年10月、44頁。反応性愛着障害とは「生後5歳未満までに親やその代理となる人と愛着関係がもてず、人格形成の基盤において適切な人間関係を作る能力の障害が生じるに至ったもの」と定義される。「愛着者から急に引き離された乳幼児は、無反応になり」(依存抑うつ)「たとえ十分な栄養が与えられていても、心身の発達の著しい遅れ、さらには免疫機能の低下までが生じ、時として死に至ることもある。」杉山登志郎『子ども虐待という第四の発達障害』学研、2007年、28頁

82 ケヴィン・ブラウン(津崎哲雄訳)「乳幼児が施設養育で損なわれる危険性:EUにおける乳幼児の脱施設養育施策の理論と方策 乳幼児施設養育という国家によるシステム虐待を考えるために」、英国ソーシャルワーク研究会・翻訳資料第20号、2010年8月、11, 17および25頁、 http://foster-family.jp/tsuzaki-file/The_Risk_of_Harm_to_young.pdf (2013 年8 月26 日閲覧)。

83 加藤孝正・小川英彦編著『基礎から学ぶ社会的養護』ミネルヴァ書房、2012年、148頁。

84厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成25年3月、20頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf(2013年7月20日閲覧)。

85厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成25年3月、81頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf(2013年11月3日閲覧)。

86インタビュー:情緒障害児短期治療施設長(横浜市)、平成25年10月16日。

87 同上。

88 "Getting Wired," The Economist, December 19, 2008, http://www.economist.com/node/12798277(2014年4月1日閲覧)。

89インタビュー:情緒障害児短期治療施設長(横浜市)、平成25年10月16日。

90国連人権理事会「障害者の教育権:教育の権利に関する国連特別報告者ヴェルノール・ムニョスによる報告(The Right to Education of persons with disabilities: Report by the UN Special Rapporteur on the Right to Education Vernor Muñoz)」2007年2月19日、A/HRC/4/29、http://www2.ohchr.org/english/bodies/hrcouncil/docs/11session/A.HRC.11.8_en.pdf(2011年6月17日閲覧)。

91 インタビュー:鈴木正志さん(21・施設出身者)、2012年6月25日、千葉県内。

92 インタビュー:マイコさん(20・施設入所者)、2011年12月11日、東北地方。

93 2011年度末時点での児童養護施設入所児童数は28,803人、乳児院は2,890人、里親等は4,966人。社会的養護下にある児童総数36,659人に対する里親委託率は13.5%である。厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成25年3月、22頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf(2013年8月18日閲覧)日本政府がまとめた「各国の要保護児童に占める里親委託児童の割合(2010年前後の状況)(%)」によれば、各国の里親委託児童の割合は下記の通り。オーストラリア93.5%、香港79.8%、アメリカ77.0%、イギリス71.7%、カナダ(ブリティッシュ・コロンビア州)63.6%、フランス54.9%、ドイツ50.4%、イタリア49.5%、韓国43.6パーセント。なお「制度が異なるため、単純な比較はできないが、欧米諸国では、おおむね半数以上が里親委託であるのに対し、日本では、施設:里親の比率が9:1となっており、施設養育への依存が高い現状にある」とのコメントが付されている。厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成25年3月、23頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf(2013年8月15日閲覧)。

94 日本では2005年の時点で、18歳以下の子ども1万人に対する社会的養護下にある子どもの数は17人である。フランスでは同102人(2003年)、米国66人(2005年)、英国55人(2005), オーストラリア49人。June Thoburn,“Globalisation and Child Welfare: Some Lessons from a cross-natinal Study of Children in out-of-home care,” Social Work Monograph, University of East Angelia, Norwich, 2007, p.30, https://www.uea.ac.uk/polopoly_fs/1.103398!globalisation%201108.pdf(2014年4月10日閲覧)。

95 厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成25年3月、81頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf(2013年8月18日閲覧)

96 ケヴィン・ブラウン(津崎哲雄訳)「乳幼児が施設養育で損なわれる危険性:EUにおける乳幼児の脱施設養育施策の理論と方策 乳幼児施設養育という国家によるシステム虐待を考えるために」、英国ソーシャルワーク研究会・翻訳資料第20号、2010年8月、11, 17および25頁。 http://foster-family.jp/tsuzaki-file/The_Risk_of_Harm_to_young.pdf  

(2013年8月26日閲覧)ヨーロッパでのある研究は、施設養育に委託される時点で障害のある乳幼児は27%であったが、施設養育から離れる時点ではおよそ3人に1人が何らかの形の障害を抱え、地域社会で可能な限り事後支援を必要としていた。これはおそらく施設で養育されことによる影響と考えられようと論じる。

97 11頁

98 インタビュー:福田恵さん(元里子・31)、2012年7月26日、埼玉県内。

99 インタビュー:丸山智也さん(ファミリーホームを運営する里親)、2012年9月12日、埼玉県内。

100 同上。

101厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成25年3月、7頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf(2013年11月3日閲覧)日本最大の施設は大阪にある。定員は164人だが、実際の入所者数は定員以下である可能性もある。

102 インタビュー:早川悟司さん(児童養護施設「目黒若葉寮」職員・東京都)、2012年8月1日、東京都内。

10 3厚生労働省「社会的養護の課題と将来像:児童養護施設等の社会的養護の課題に関する検討委員会・社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会とりまとめ」、平成23年7月、8および41頁、

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001j8zz-att/2r9852000001j91g.pdf (2013年11月1日閲覧)。

104 同上。

105 インタビュー:関貴教さん(児童養護施設「日照養徳園」グループホーム職員・茨城県)、2012年8月3日、茨城県内。

106 インタビュー:森田雄司さん(児童養護施設「子山ホーム」施設長・千葉県)、2012年10月3日。インタビュー:早川悟司さん(児童養護施設「目黒若葉寮」職員・東京都)、2012年8月1日、東京都内。

107 インタビュー:山本節子さん(ファミリーホームを運営する里親・女性・東京)、2012年9月6日、東京都内。

108 インタビュー:ヒロさん(高校3年生)、2012年8月28日、東京都内。

109 インタビュー:ケンジさん(高校3年生・施設入所者)、2012年8月28日、東京都内。

110 インタビュー:施設職員、2011年12月13日、大阪府内。

111 たとえば、英国では子ども1人あたりの職員配置基準は自治体によって差があるが、おおむね1:1から1:15(子ども:職員)である。しかし日本ではこの比率は5.5:1(同)である。英国の全国基準である「児童法(1989年)指針と規則、第5巻:児童養護施設」(Children Act 1989 Guidance and Regulations, Volume 5:Children’s Homes)は、以下のように定める。3.16条規則(Regulation)25と基準(Standard)17は、登録者に対し、当該施設に委託された子どもと青年のニーズを満たすに足る適当な資格と経験を備えた職員を確保しなければならないと義務づけている。児童養護施設職員は、施設の運営方針(statement of purpose)に示された要求を満たし、入所児童の健康・福祉・安全を確保・促進するのに必要な能力を示すことができなければならない。さらに、児童養護施設規則(2001年)の規則25(児童養護施設の職員配置)は以下のように定める。25条1項 登録者は(略)(b)入所している児童の健康・福祉を確保・促進することを考慮した上で、適当な資格・能力・経験を有して児童養護施設で働く人物を十分な人数だけつねに在籍させるものとする。電子メールによるインタビュー:津崎哲雄さん(京都府立大公共政策学部教授)、2013年11月6日。

112厚生労働省「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準の一部を改正する省令」、厚生労働省令第八十八号、平成24531日、http://kanpoo.jp/page.cgi/20120531/h05811/0002.pdf?q=児童福祉施設の設備及び運営に関する基準の一部を改正する省令(同八八)(20137月25日閲覧)。ここでいう職員配置基準は直接養育に関わる職員のみが対象。施設長や栄養士、調理員、家庭支援専門相談員などは含まれない。

インタビュー:森田雄司さん(児童養護施設「子山ホーム」施設長・千葉県)、2012年4月24日、東京都内。インタビュー:黒田邦夫さん(児童養護施設「二葉むさしが丘学園」施設長・東京都)、2012年10月9日、東京都内。宇田川邦房さん(児童養護施設「幸保愛児園」園長・神奈川県)、2012年6月4日。

113 インタビュー:森川喜代実さん(30・千葉・施設出身者)、2012年6月6日、大阪府内。

114 インタビュー:トモさん(里子・埼玉)、2011年9月12日、埼玉県内。

115 インタビュー:ファミリーホームを運営する里親、2012年9月12日、埼玉県内。

116 インタビュー:森川喜代実さん(30・千葉・施設出身者)、2012年6月6日、大阪府内。インタビュー:渡井さゆりさん(29・東京・施設出身者・当事者団体「日向ぼっこ」理事長)、2012年7月13日、東京都内。

117 厚生労働省「里親及びファミリーホーム養育指針」も「成長過程の一時期に特定の養育者との関係と家庭生活の体験を得たことは、子どもにとって意味を持つ原体験となる」とする。厚生労働省雇用均等・児童家庭局長「里親及びファミリーホーム養育指針」、雇児発0329第1号、平成24年3月29日、9頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/tuuchi-56.pdf(2014年4月11日閲覧)。滝沢友子さん(32・千葉・施設出身者)は、18歳の措置解除直前に、虐待が行われていた施設から里親委託に変更となり6カ月だけ里親宅で生活した。「施設より里親制度が特別に良いとは思わなかったが、家庭とはどういうところかがわかったのは体験として良かった」と述べる。インタビュー:滝沢友子さん、2012年7月27日、千葉県内。

118 インタビュー:匿名(女性・高校生・里子)、2012年8月下旬、長野県内。

119 宇田川邦房さん(児童養護施設「幸保愛児園」園長・神奈川県)、2012年6月4日。

120 ヒューマン・ライツ・ウォッチによる施設訪問、2012年8月23日(詳細は差し控え)。

121 ヒューマン・ライツ・ウォッチによる施設訪問、2011年12月11日(詳細は差し控え)。

122 インタビュー:マイコさん(20・施設入所者)、2011年12月11日、東北地方。

123インタビュー:アキさん、2012年、関東地方。

124厚生労働省「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」、平成24531日改正(厚生労働省令第八十八号)、http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23F03601000063.html2013725日閲覧)。

125厚生労働省「児童福祉施設最低基準等の一部を改正する省令の概要(平成236月公布施行)」、20116月、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/01.pdf2013810日閲覧)。

126 ヒューマン・ライツ・ウォッチによる施設訪問、2011年12月11日、大阪府内

127全国社会福祉協議会「社会的養護施設第三者評価結果」http://www.shakyo-hyouka.net/search/index.php?forward=detail2&pref =&name=%E6%97%AD%E3%81%8C%E4%B8%98%E5%AD%A6%E5%9C%92&org=&ym_from=&ym_to=&page=1&id=2822014113日閲覧)。

128 厚生労働省「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」(厚生労働省令第六十三号)、第14条の3、http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23F03601000063.html(2014年1月13日閲覧)。

129厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、40頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2013111日閲覧)。厚生労働省「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」、平成24531日改正(厚生労働省令第八十八号)、第14条の3http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23F03601000063.html2014113日閲覧)。厚生労働省「社会的養護の課題と将来像:児童養護施設等の社会的養護の課題に関する検討委員会・社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会とりまとめ」、平成237月、http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001j8zz-att/2r9852000001j91g.pdf 2013620日閲覧)。国連のガイドラインは、養育される子どもがよく知られた、効果的で公平な苦情処理制度にアクセスできるようにしている。国連子どもの代替的養護に関するガイドライン、第99パラグラフ。

130施設で生活する高校生5人にインタビューした。男性2人と女性3人で、それぞれの属する施設は関東地方が3人、東海地方が2人。2012829日、長野県内。

131インタビュー:黒田邦夫さん(児童養護施設「二葉むさしが丘学園」施設長・東京都内)、201256日、東京都内。「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」第14条の3により、各施設には第三者委員を設ける義務がある。

132インタビュー:村田紋子さん(小田原女子短期大学教授)、2013910日、東京都内。

133 ヒューマン・ライツ・ウォッチによる目黒若葉寮の訪問、2012年8月1日。

134 インタビュー:林浩康さん(日本女子大学社会福祉学科教授・厚生労働省 施設運営指針・里親養育指針等ワーキンググループ委員)、2012年9月4日、神奈川県内。

135 厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成25年3月、39~42頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf(2013年10月1日閲覧)。厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課/厚生労働省社会・援護局障害福祉部障害福祉課「被措置児童等虐待対応ガイドライン~都道府県・児童相談所設置市向け~」、雇児福発第0331002号/障障発第0331009号、平成21年3月。

136 サービスの適切性の評価までできないのではないかと、林浩康教授は懸念を表明する。インタビュー:林浩康さん(日本女子大学社会福祉学科教授・厚生労働省 施設運営指針・里親養育指針等ワーキンググループ委員)、2012年9月4日、神奈川県内。

137 インタビュー:吉田恒雄さん(駿河台大学法学部教授)、2012年7月6日、東京都内。

138 この数字は里親委託率として用いられることが多い。日本政府もこの数字を使っている。この数字は里親、ファミリーホーム、児童養護施設および乳児院にいる子どもの数で、里親とファミリーホームにいる子どもの数を除したもので、自立援助ホームと情緒障害児短期治療施設にいる子どもの数を含んでいない。先進国のなかで、14.8%2013年)という日本の里親委託率はきわめて低い。厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成263月、22頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2014417日閲覧)。

139 「子ども・子育てビジョン」、閣議決定、平成22129日、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/vision-zenbun_0001.pdf2014110日閲覧)。「別添2 施策に関する数値目標」同上。および、厚生労働省「社会的養護の課題と将来像:児童養護施設等の社会的養護の課題に関する検討委員会・社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会とりまとめ」、平成237月、http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001j8sw-att/2r9852000001j8ud.pdf201446日閲覧)。これに従うと45人より多くの子どもが1つの住居に住む施設はただちに施設構造の見直しを迫られる。

140 厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、23頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2013126日閲覧)

141 専門里親制度は被虐待児を養育することを前提として設けられた。そうした子どもには、虐待等で深く傷ついている子どもを養育できる経験と技能のある里親が必要である。親族里親制度は親族による養護を促進するために設けられた。親族による養護が子どもの最善の利益である場合が多く、かつ、里親候補が少ない事情もあり、親族による子どもの養育が推奨される。

142 厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、21頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2013818日閲覧)。

143たとえば、養育里親については、里親手当を36,000円から72,000円に引き上げた。厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、18頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2013818日閲覧)。

144厚生労働省雇用均等・児童家庭局「里親委託ガイドラインについて(雇児発03309号・平成23330日)」『里親委託ガイドライン』、平成23330日、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_11.pdf2014110日閲覧)。

145 Ministry of Health, Labour and Welfare, “ Abuse Reporting System for Children in Alternative Care Implementation Status in 2009” (“平成21年度における被措置児童等虐待届出等制度の実施状況”), December 7, 2010, http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000ybr9-att/2r9852000000ybzv.pdf (accessed July 15, 2013). Ministry of Health, Labour and Welfare, “ Abuse Reporting System for Children in Alternative Care Implementation Status in 2010” (“平成22年度における被措置児童等虐待届出等制度の実施状況”), January 16, 2012, http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo04-03.pdf (accessed August 15, 2013). Ministry of Health, Labour and Welfare, “ Abuse Reporting System for Children in Alternative Care Implementation Status in 2011” (“平成23年度における被措置児童等虐待届出等制度の実施状況”), October 15, 2012, http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo04-04.pdf (accessed November 25, 2012). 厚生労働省「平成22年度における被措置児童等虐待届出等制度の実施状況」平成22年12月7日、http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000ybr9-att/2r9852000000ybzv.pdf (2013年7月15日閲覧)。厚生労働省「平成22年度における被措置児童等虐待届出等制度の実施状況」平成24年1月16日、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo04-03.pdf(2013年8月15日閲覧)。厚生労働省「平成23年度における被措置児童等虐待届出等制度の実施状況」平成24年10月25日、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo04-04.pdf (2012年11月25日閲覧)。

146 「杉並」刑事事件判決 東京地方裁判所 2012年7月13日言渡し 被告 鈴池 静 傷害致死被告事件。

147 同上。

148 2006年3月、千葉県佐倉市の佐藤瑞枝被告が里子の男児(1)の身体を揺さぶり硬膜下血腫で死亡させた。千葉地方検察庁は、被告に殺害や傷害の故意がなかったと判断し、過失致死罪で略式起訴した。2006年4月20日、千葉簡易裁判所は被告に対し罰金50万円の略式命令を出した。「佐倉の男児死亡:死亡は「過失」、被告に罰金50万円 即日納付」『毎日新聞』、2006年4月21日。津崎『この国の子どもたち』146-171頁。千葉県佐倉における里子過失致死事件については、前掲の毎日新聞記事(2006年4月21日付)などを参照。

149 「里親に罰金30万円命令 女児にけが負わせる 帯広簡易裁判所」『朝日新聞』、2009年3月10日。「傷害:ピンで7歳刺す 容疑で68歳里親を逮捕」『毎日新聞』、2009年2月27日。

150「大阪の里子傷害:無職の女に有罪判決 罪認め謝罪、猶予付き」『毎日新聞』、2010116日。

151Watch! 里子虐待事件、大阪市が検証 里親の相談体制強化を」『毎日新聞』、201255日。

152 2002年には34,109人の社会的養護措置児童のうち、2002年度において児童養護施設入所児童は28,903人、乳児院が2,689人であった。また2011年には36,656人の社会的養護措置児童のうち、児童養護施設入所児童は28,803 人、乳児院入所児童が2,890人であった。里親養護が特に必要な乳幼児についても乳児院入所者が増えている。厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、22頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2013818日閲覧)。

153電話によるインタビュー:津崎哲雄さん(京都府立大公共政策学部教授)、201378日。インタビュー:竹中勝美さん(児童養護施設出身者、現里親・東京)、201277日、埼玉県内。

154インタビュー:竹中勝美さん(児童養護施設出身者、現里親・東京)、201277日、埼玉県内。

155厚生労働省雇用均等・児童家庭局「里親委託ガイドラインについて(雇児発03309号・平成23330日)」『里親委託ガイドライン』、平成23330日、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_11.pdf2014110日閲覧)。これら問題のある3つの例外のほかにも、さらに2つの例外が設けられている。「子どもが里親委託に対して明確に反対の意向を示している場合」と「里親と子どもが不調になり、施設でのケアが必要と判断された場合」である。もっとも、具体的事案によっては、施設養育が最善になることがある。たとえば自立直前の10代後半の子ども、分離を望まない大人数の兄弟姉妹、里親との関係が何度も破綻した子どもなどだ。

156厚生労働省雇用均等・児童家庭局「里親委託ガイドラインについて(雇児発03309号・平成23330日)」『里親委託ガイドライン』、2011330日、http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018h6g-att/2r98520000018hlp.pdf201251日閲覧)。

157里親委託には、積極的な自治体とそうでない自治体との差が大きい。里親委託率の最も高い新潟県では39.0%の委託がなされているが、最も低い大阪府堺市では同4.2%である。都道府県では鹿児島県の里親委託率が5.8%で最低である。厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、24頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2014320日閲覧)。近年、里親委託の伸び率が高いのは、福岡市21.0%(6.9%27.9%)、大分県16.4%(7.4%23.8%)、福岡県11.7%(4.0%15.7%)である。これは2004年から2011年の伸び率である。厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、25頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2014320日閲覧)。分析結果と自治体の話によれば、里親委託率向上の主な理由として以下が挙げられる。児童相談所の体制強化と職員の里親委託有効性の理解、里親同士の交流を促し相互支援できる里親サロンの充実、NPOとの共働による効果的な制度の普及啓発、里親委託を推進する理由が「子どもの最善の利益を確保する」という子ども中心の視点であったこと、里親と施設の相互理解・連携が里親委託推進に係る事業展開の大きな柱であったこと、施設入所児童のうち里親委託が適当な児童の選定が施設と里親の理解・協力のもと円滑に行われたこと、児童相談所の体制強化および職員の里親委託の有効性理解が進んだこと。以下を参照。厚生労働省「里親等委託率を大きく増加させた自治体における里親推進の取組事例」、平成2361日、http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001e5xt-att/2r9852000001e60p.pdf 2013915日閲覧)。

158厚生労働省「里親等委託率を大きく増加させた自治体における里親推進の取組事例」、平成2361日、http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001e5xt-att/2r9852000001e60p.pdf2013915日閲覧)。

159全国児童相談所長会『全児相 (通巻第91号 別冊)児童相談所における里親委託及び遺棄児童に関する調査』、20117月、97頁。

160電子メールによるインタビュー:津崎哲雄さん(京都府立大公共政策学部教授)、2013116日。

161 同上。

162インタビュー:東京都児童相談センター職員(男性)、2012529日、東京都内。

163インタビュー:施設職員、20111214日、茨城県つくば市内。

164インタビュー:長谷川実さん(宮城県中央児童相談所主幹)、2012817日、宮城県内。

165 インタビュー:山本節子さん(ファミリーホームを運営する里親・女性・東京)、2012年9月6日、東京都内。

166インタビュー:東京都乳児院職員、2012629日、東京都内。

167 児童福祉法(昭和22年法律第164号)。最終改正:平成25年6月14日法律第44号 児童福祉法第28条「保護者が、その児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合において、第二十七条第一項第三号の措置を採ることが児童の親権を行う者又は未成年後見人の意に反するときは、都道府県は、次の各号の措置を採ることができる。 一 保護者が親権を行う者又は未成年後見人であるときは、家庭裁判所の承認を得て、第二十七条第一項第三号の措置を採ること。」同27条の1「児童を小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは里親に委託し、又は乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、情緒障害児短期治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させること。」

168 2010131日現在の児童福祉施設入所中全児童29,755人の内、当初から28条手続きを利用したのは272人、当初同意だったがその後28条手続きに切り替えた(同意を親が翻した)のは10人、28条手続きから同意へと切り替わった(途中で親が同意した)のは165人である。同じく里親委託措置中の全2,610人の子どものうち、当初から28条手続きでの委託は16人、同意から28条手続きへの切り替えは1人、28条から同意への切り替えは1人にすぎない。全国児童相談所長会『「親権制度に関するアンケート調査」結果報告』、平成225月、1頁、http://www.moj.go.jp/content/000048447.pdf201375日閲覧)。

169厚生労働省雇用均等・児童家庭局「里親委託ガイドラインについて(雇児発03309号・平成23330日)」『里親委託ガイドライン』、平成23330日、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_11.pdf2014110日閲覧)。

170最高裁判所事務総局家庭局「児童福祉法28条事件の動向と事件処理の実情 平成211月~12月」、日付なし、http://www.courts.go.jp/vcms_lf/20514011.pdf201375日閲覧)。

171 同上。

172児童福祉法第28条の2「前項第一号及び第二号ただし書の規定による措置の期間は、当該措置を開始した日から二年を超えてはならない。ただし、当該措置に係る保護者に対する指導措置(第二十七条第一項第二号の措置をいう。以下この条において同じ。)の効果等に照らし、当該措置を継続しなければ保護者がその児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他著しく当該児童の福祉を害するおそれがあると認めるときは、都道府県は、家庭裁判所の承認を得て、当該期間を更新することができる。」

173インタビュー:岩手児童相談所職員、20128月、岩手県内。

174額は実親の収入状況によって異なるが、施設あるいは里親に子どもを委託する際には月額数千円~5万円程度の委託費を実親から徴取する。インタビュー:鎌田康弘さん(宮城県中央児童相談所・副参事兼次長)、長谷川実さん(同所主幹)、2012817日、宮城県内。

175インタビュー:長谷川実さん(宮城県中央児童相談所主幹)、2012817日、宮城県内。

176インタビュー:タケオさん(施設入所者・男性・15歳)、20111211日、東北地方。

177 同上。

178全国児童相談所長会『全児相 (通巻第91号 別冊) 児童相談所における里親委託及び遺棄児童に関する調査』95および97頁。

179インタビュー:ホッブス美香さん(里親・女性・東京)、2012711日、東京都内。

180「里親委託ガイドライン」では、児童相談所の担当者や里親支援機関の担当者が委託直後の2カ月間は2週に1回程度、委託の2年後までは毎月ないし2カ月に1回程度訪問する。その後は概ね年2回程度の訪問へと縮小する。厚生労働省雇用均等・児童家庭局「里親委託ガイドラインについて(雇児発03309号・平成23330日)」『里親委託ガイドライン』、2011330日、http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018h6g-att/2r98520000018hlp.pdf201376日閲覧)。

181インタビュー:岩手児童相談所職員、20128月、岩手県内。

182インタビュー:長谷川実さん(宮城県中央児童相談所主幹)、2012年8月17日、宮城県内。「杉並事件」は里親が里子を殺害したとされる事件。詳細は本章前半を参照。

183インタビュー:林浩康さん(日本女子大学教授・社会福祉学・厚生労働省 施設運営指針・里親養育指針等ワーキンググループ委員)、201294日、神奈川県内。

184厚生労働省「子ども虐待による死亡事件等の検証結果及び児童虐待相談対応件数等」、平成25725日、http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000037b58.html 2014417日閲覧)。

185インタビュー:矢作淳さん(岩手県宮古児童相談所次長)、2012821日、岩手県内。

186数値の出典は、才村純『子ども虐待ソーシャルワーク論:制度と実践への考察』有斐閣、2005年、130頁より。

187津崎哲雄『この国の子どもたち:要保護児童社会的養護の日本的構築』日本加除出版、2009年、142頁。

188インタビュー:津崎哲郎さん(花園大学社会福祉学部教授・元大阪市中央児童相談所所長)、201268日、京都府内。

189「平成24年度 所長の採用区分構成割合」および「平成24年度 児童福祉司の採用区分構成割合」、厚生労働省『平成24年度全国児童福祉主幹課長・児童相談所長会議』、平成24726日、19-20頁、http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/dv/kaigi/dl/120726-01.pdf2014320日閲覧)。

190どこでも広く見られるが、具体例としては、東京都児童相談センター、宮城県東部児童相談所気仙沼支所など。インタビュー:東京都児童相談センター・児童相談所職員、2012529日、東京都内。インタビュー:二階堂薫さん(宮城県東部児童相談所気仙沼支所長)および福島伸一さん(同次長)、2012817日、宮城県内。

191インタビュー:児童養護施設長、2012818日、東北地方。同様の意見は、里親や里親サポートNPOからも数件聞かれた。

192津崎『この国の子どもたち』145頁。

193インタビュー:林浩康さん(日本女子大学社会福祉学科教授・厚生労働省施設運営指針・里親養育指針等ワーキンググループ委員)、2012年9月4日、神奈川県内。

194林浩康「社会的養護改革と里親委託推進のあり方」『里親と子ども』第7号、2012年10月、12頁。全国児童相談所長会『全児相 (通巻第91号 別冊) 児童相談所における里親委託及び遺棄児童に関する調査』55頁。

195厚生労働省「里親等委託率を大きく増加させた自治体における里親推進の取組事例」、平成2361日、http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001e5xt-att/2r9852000001e60p.pdf 2013113日閲覧)。

196国連の代替的養護ガイドラインは「国、機関及び施設、学校並びにその他の地域サービスは、代替的養護下に置かれている児童がその養護期間中も期間後も不当な扱いを受けることがないよう適切な措置を講じるべきである」と定める。国連子どもの代替的養護に関するガイドライン(A/HRC/11/L.13, June 15, 2009, annex)、第95パラグラフ。

197インタビュー:ホッブス美香さん(里親・女性・東京)、2012711日、東京都内。

198同管轄内にある児童養護施設「旭が丘学園」の入所定員は70人である。児童相談所の管轄を超え県内の他所への委託は可能であり、実施もされている。ただし、別途、実親との面会や、子どもを元のコミュニティーから切り離すことになる、などの点から遠方への委託が適切かどうかの判断も必要となる。宮城県東部児童相談所気仙沼支所次長福島伸一さんは「もっとも、家庭復帰を目指すということになると、遠くの施設だと難しいので旭ヶ丘になる」と述べる。インタビュー:福島伸一さん、2012年8月17日、宮城県内。

199インタビュー:岩手児童相談所所長(匿名)、20128月、岩手県内。

200林浩康「社会的養護改革と里親委託推進のあり方」『里親と子ども』第7号、201210月、11頁。共働き世帯の里親登録者は、今も認められていないわけではないが、育児・家事専業の人がいる家庭が事実上推奨されている。なお、日本全体では共働き家庭の方が多い。厚生労働省『平成20年版厚生労働白書』、平成20722日、63頁、http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/08/2013126日閲覧)

201林浩康「社会的養護改革と里親委託推進のあり方」『里親と子ども』第7号、201210月、16頁。

202児童相談所がその養育に関して特に支援が必要と認めた場合、子どもは専門里親に委託される。対象となる子どもは、(1) 児童虐待等の行為により心身に有害な影響を受けた児童、(2) 非行等の問題を有する児童、(3) 身体障害、知的障害または精神障害がある児童である。専門里親となるには、養育里親の経験が3年以上あること、専門里親研修を修了していること、委託児童の養育に専念できること、経済的に困窮していないこと等の条件がある。登録後は2年ごとに研修を受けて、登録を更新する必要がある。2012年時点の専門里親は602世帯である。

203インタビュー:小宮純一さん(社会的養護専門のジャーナリスト)、2012109日、東京都内。

204インタビュー:黒田邦夫さん(児童養護施設「二葉むさしが丘学園」施設長・東京)、2012109日、東京都内。

205インタビュー:竹中勝美さん(児童養護施設出身者、現里親・東京)、201277日、埼玉県内。

206インタビュー:矢作淳さん(岩手県宮古児童相談所次長)、2012821日、岩手県内。

207 同上。

208厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、1頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2013113日閲覧)。

209 電話によるインタビュー:東京都児童相談センター職員、2013年12月5日、東京都内。インタビュー:竹中勝美さん(児童養護施設 出身者・現里親・東京)、2012年7月7日、埼玉県内。

210 宇都宮事件では、李永心被告が傷害致死で懲役4年の実刑判決を受けた。「宇都宮事件」刑事事件判決 宇都宮地方裁判所 平成15年10月7日言渡し被告人 李永心 傷害致死被告事件 平成14年(わ)832号津崎『この国の子どもたち』146-171頁。

211インタビュー:元児童相談所職員(匿名)、2013123日、東京都内。

212厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)」、平成253月、20頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2013125日閲覧)。

213インタビュー:里親(女性・匿名)、201277日、東京都内。

214インタビュー:ホッブス美香さん(里親・女性・東京)、2012711日、東京都内。

215 インタビュー:山本節子さん(ファミリーホームを運営する里親・女性・東京)、2012年9月6日、東京都内。

216 全国児童相談所長会の調査によれば、子どもを里親に出したがうまくいかずに送り返されてくるケースの割合は、里親委託措置解除647件中156件(25%)に及ぶ。不調ケースの理由は「里親との関係不調による家庭復帰」3.9%(25人)、「里親の問題(健康問題、家族問題)等による措置変更」3.9%(25人)、「里親との関係不調により措置変更」12.2%(79人)、「子どもの問題による措置変更」4.2%(27人)である。全体のうち「里親との関係不調以外の家庭復帰」は28%(179人)、「養子縁組による措置解除」は23%(147人)であった。全国児童相談所長会『全児相 (通巻第91号 別冊)児童相談所における里親委託及び遺棄児童に関する調査』64-66頁。

217津崎哲雄『この国の子どもたち』164頁。

218森和子「養育の不調をどう捉えるか:研究者/支援者の立場から」『里親と子ども』第6号、201110月、10頁。

219吉田奈穂子「不妊経験者が里親になる場合の困難:自分を開き、地域でサポートを受ける必要性」『里親と子ども』第6号、201110月、24頁。

220 林浩康「社会的養護改革と里親委託推進のあり方」15頁。インタビュー:林浩康さん(日本女子大学社会福祉学科教授・厚生労働省施設運営指針・里親養育指針等ワーキンググループ委員)、2012年9月4日、神奈川県内。

221 インタビュー:梅原啓次さん(里親・男性・大阪)、2012年6月7日、大阪府内。

222全国児童相談所長会『全児相 (通巻第91号 別冊)児童相談所における里親委託及び遺棄児童に関する調査』22頁。

223インタビュー:東京都児童相談センター職員、2012530日、東京都内。

224インタビュー:中川久美子さん(乳児院「二葉乳児院」職員・東京・女性)、2012731日、東京都内。

225 シンポジウム「社会的養護を提案する」(主催:NPO法人「明日に架ける橋」、2012年5月30日、東京都内)に出席した複数の児童養護施設長らの意見。例えば、児童養護施設「幸保愛児園」園長宇田川邦房さん(神奈川)、児童養護施設「子山ホーム」園長森田雄司さん(千葉)の発言。

226厚生労働省雇用均等・児童家庭局長「養子制度等の運用について」、雇児発第0331016号、平成21331日、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/tuuchi-24.pdf2013122日閲覧)。

227最高裁判所、日付なし、司法統計平成24年度家事事件編1011頁、http://www.courts.go.jp/sihotokei/nenpo/pdf/B24DKAJ03.pdf 、(201449日閲覧)によれば、児童相談所経由を含めて、800人近い未成年者の養子縁組を裁判所が許可したとみられる。児童相談所やそのほかの届出済機関の支援を経ずに養子縁組される子どもの状況についての包括的調査は、ヒューマン・ライツ・ウォッチの把握する限り存在しない。

228 奥田安弘「養子縁組あっせん法の必要性」、奥田安弘・高倉正樹・遠山清彦・鈴木博人・野田聖子著『養子縁組あっせん:立法試案の解説と資料』日本加除出版、2012年、5頁。

229 インタビュー:矢満田篤二さん(元児童相談所職員、社会福祉士・男性・愛知)、2013年5月27日、東京都内。

230 同上。

231 愛沢隆一「思春期の荒れとそれに直面する里親家庭を支える」『里親と子ども』第6号、2011年10月、39頁。

232「児童養護施設等及び里親等の措置延長等について」雇児発1228第2号 平成23年12月28日 厚生労働省雇用均等・児童家庭局長http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/tuuchi-13.pdf2013615日閲覧)

233神奈川県内で児童養護施設長を務める宇田川邦房さんは2012年のインタビューで「予算がないので、神奈川では今年(2012年)は一切措置延長はやらないと児相に言われました」と述べている。インタビュー:宇田川邦房さん(児童養護施設「幸保愛児園」園長・神奈川県)、201264日。2013年には宇田川さんが神奈川県と交渉した結果、18歳を超えた1人についての措置延長がようやく認められた。電話インタビュー:宇田川邦房さん(児童養護施設「幸保愛児園」園長・神奈川県)、2013126日。

234森田雄司さんインタビュー(男性・千葉の児童養護施設「子山ホーム」園長)、2012424日、東京都内

235特定非営利活動法人「ビッグイシュー基金」が行った調査では、ホームレス50人のうち6人が施設出身者であった。「若者ホームレス白書」201012月 特定非営利活動法人ビッグイシュー基金

上記調査は200811月~20103月まで2年間にわたって行った40歳未満のホームレス50人からの聞き取りによる。

236山野良一さんインタビュー(元神奈川県児童相談所児童福祉司、現千葉明徳短期大学教授)、2012714日、千葉県内

237 2011年度の高卒初任給平均は157,900円。「平成24年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況:1学歴別にみた初任給」厚生労働省、http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/12/01.html201449日閲覧)

238ヒューマン・ライツ・ウォッチのインタビューで彼が話したところによると、彼が受けた経済的支援は児童養護施設を出た際の10万円強の一時金のみであった。政府の発表によると、高等教育課程や就職への準備金として支給される援助額は、2011年度までは216,510円、2012年度にはそれが268,510円に引き上げられた。「平成24年度厚生労働省社会的養護関係予算案の概要」厚生労働省

3頁、 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000202we-att/2r985200000202zc.pdf , 2013 11 2 日閲覧)

239 (訳者注)英語版の本脚注では漫画喫茶の説明を行った。日本語版では割愛。

240鈴木正志さんインタビュー(男性・21歳・千葉の施設出身者)、2012625日、千葉県内。

241山野良一さんインタビュー(元神奈川県児童相談所児童福祉司、現千葉明徳短期大学教授)、2012714日、千葉県内。

242加藤祐さんインタビュー(男性・29歳・施設出身者)、2012728日、神奈川県内。

243東京都のある調査では、社会的養護制度下の子どもたちの最終学歴は、中学卒が23%、高校卒が58%、高等教育機関卒が15%という状況だった。しかし、この調査回答が、施設や里親等が措置終了後の連絡先を把握している元社会的養護制度下の子どもたちからのみに限られていることを考慮すれば、社会的養護出身者全体では中学卒、高校卒の割合がさらに増えると考えられる。山本良一教授が最終学歴が中学卒の元子どもたちこそホームレスになるリスクが高いと指摘するとおり、元いた児童養護施設や里親と連絡が途絶える元子どもたちは低レベルの教育課程しか修了していない場合が多いためである。「東京都における児童養護施設等退所者へのアンケート調査報告書」平成 23 8 月東京都福祉保健局、http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2011/08/DATA/60l8u200.pdf2013713日閲覧)。

244総務省統計局 平成24年就業構造基本調査 第2表 「男女、就業状態・仕事の主従、就業希望意識・就業希望の有無、求職活動の有無、年齢、教育別15歳以上人口」

http://www.estat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001048178&cycleCode=0&requestSender=search2014323日閲覧)。

245インタビュー(男性・28才・施設出身者) 201253日、千葉県内。

246インタビュー(男性・19才・現専門学校生・施設出身者)、201254日、千葉県内。

247施設間格差は特に進学についてばらつきが大きい。補助金や奨学金の存在や利用方法といった有益な情報をしっかりと子どもたちに伝えているかどうかが施設によって大きく異なり、その結果が高校の後の進学率の差異に大きくつながると述べるのは、児童養護施設職員の早川悟司さんである。早川悟司さんインタビュー(男性・児童養護施設「目黒若葉寮」職員)、201281日、東京都内。インタビューに答えた3人の高校生は、奨学金について情報を十分に得られていないと話した。施設で生活する3人の高校生(女子2人、男子1人)へのインタビュー、2012829日、長野県内。

248東海地方の施設で生活する女子高校生へのインタビュー、2012829日、長野県内。

249渡井さゆりさんインタビュー(女性・29歳・施設出身者・当事者団体「日向ぼっこ」理事長)、 2012713日、東京都内。

250自身も児童養護施設で育った渡井さゆりさんは、「心細い思いをしている人がたくさんいる。これがあるから引っ越せないとか」と述べる。渡井さゆりさんインタビュー(女性・29歳・施設出身者・当事者団体「日向ぼっこ」理事長)、 2012713日、東京都内。

251稲葉剛さんインタビュー(特定非営利活動法人 自立生活サポートセンター「もやい」理事長)、 201279日、東京都内。

252森田雄司さんインタビュー(男性・児童養護施設「子山ホーム」園長) 、2012424日、千葉県内。2007年より、施設長が保証人となることを促すため、政府から補助金の支給が行われている。厚生労働省家庭福祉課インタビュー、 2013116日、「身元保証人確保対策事業の実施について」 厚生労働省 2007423日、http://www.zenyokyo.gr.jp/ mimotokakuho/04a.pdf201434日閲覧)も参照のこと。

253三浦宏一郎さんインタビュー(男性・35歳・栃木の施設出身者)、 2012713日、東京都内。

254社会的養護の現状について(参考資料)、平成253月 厚生労働省、13頁、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf2013713日閲覧)。

255アフターケア相談所ゆずりは「アフターケア相談所ゆずりは 2011年度事業報告書」、日付なし。

256高橋亜美さんは、受刑者や生活保護受給者も含め、社会的養護制度の措置解除後の元子どもたちに関する調査を政府が行うべきであると主張する。そのような網羅的な調査は現在存在しない。インタビュー:高橋亜美さん(女性・アフターケア相談所「ゆずりは」所長)、2012年5月31日、東京都内。

257インタビュー:高橋亜美さん(女性・アフターケア相談所「ゆずりは」所長)、2012531日、東京都内。

258インタビュー:三浦宏一郎さん(男性・35歳・栃木県の施設出身者)、2012713日、東京都内。

259インタビュー:高木あゆみさん(女性・24歳・茨城県の施設出身者)、2012714日、東京都内。

260インタビュー:森川喜代実さん(女性・30歳・千葉県の施設出身者)、201266日、大阪府内。

261インタビュー:三浦宏一郎さん(男性・35歳・栃木県の施設出身者)、2012713日、東京都内。

262インタビュー:渡井さゆりさん(女性・29歳・東京都の施設出身者・当事者団体「日向ぼっこ」理事長)、2012713日、東京都内。

263東京都の同調査によると、社会的養護制度下で育った元子どもたちの月収は、31%1520万円、27%10~15万円、14%510万円であった。これは、児童相談所の手を離れた若者の約8割が月に20万円未満の月収しか得ていないことを示す。なお、22歳の高卒の月収の全国平均は20万円弱である。日本経済団体連合会「2010 年6月度定期賃金調査結果の概要:標準者賃金-全産業、規模計」、2011125日、1頁、http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2011/006.pdf2013112日閲覧)。

264 東京都福祉保健局「東京都における児童養護施設等退所者へのアンケート調査報告書」、平成 23 年 8 月、http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2011/08/DATA/60l8u200.pdf(2013年11月2日閲覧)。この東京都の調査のほかに、以下の民間団体による調査報告書がある。全国社会福祉協議会「児童養護施設等を退所した人へのインタビュー調査(2008年度版)」『子どもの育みの本質と実践:社会的養護を必要とする児童の発達・養育過程におけるケアと自立支援の拡充のための調査研究事業 調査研究報告書』、2009年3月、http://www.shakyo.or.jp/research/09jidoujiritsu.html(2014年4月3日閲覧)。および、非営利特定活動法人ブリッジフォースマイル「全国児童養護施設調査 2012 社会的自立に向けた支援に関する調査」、2013年4月、http://www.b4s.jp/_wp/wp-content/uploads/2013/05/db8d0983ff8df05c5d8d8cafad7c7381.pdf(2014年4月6日閲覧)。後者は退所後の子どもたちの状況について施設関係者を対象に調査を行った結果をまとめたもの。

265里親の丸山智也さんは「里親は(子どもの)30歳からが勝負ですよ」と述べる。インタビュー:丸山智也さん(男性・埼玉・ファミリーホームを運営する里親)、2012912日、埼玉県内。

266木ノ内博道「進学をサポートする意義と子どもたちの声」『里親と子ども』第6号、201110月、64頁。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、里親と児童養護施設での養育を比較した際、以下のような大きな違いを認めた。(1)里親は子どもたちの大学進学費用を援助することが多い点、(2)里親は高等教育への熱意をもち、子どもたちに勉学を継続するよう勧めることが多い点、(3)学習環境の違い。しかしながら里子にとっても高等教育はやはり厳しい課題となっている。18歳時の措置解除や経済的な理由から進学を断念する子どもも少なくない。

267インタビュー:里親(岩手里親会会長)、2012517日、岩手県内。

268子どもの権利条約(G.A. res. 44/25, annex, 44 U.N. GAOR Supp. (No. 49) at 167, U.N. Doc. A/44/49 (1989)199092日発効)前文。日本の批准は1994年。

269市民的、政治的権利に関する国際規約(G.A. res. 2200A (XXI), 21 U.N. GAOR Supp. (No. 16) at 52, U.N. Doc. A/6316 (1966), 999 U.N.T.S. 1711976323日発効)第231項。日本の批准は1979年。経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(G.A. res. 2200A (XXI), 21 U.N. GAOR Supp. (No. 16) at 49, U.N. Doc. A/6316 (1966), 993 U.N.T.S. 3197613日発効)第101項。日本の批准は1979年。

270子どもの権利条約、第91項。

271国連子どもの代替的養護に関するガイドライン(A/HRC/11/L.13, June 15, 2009, annex)前文。

272同、第3パラグラフ。

273同、第14パラグラフ。

274子どもの権利条約、第201項。

275同、第203項。

276同、第91項、第121項。

277国連子どもの代替的養護に関するガイドライン、第11パラグラフ。

278同、第12パラグラフ。

279子どもの権利条約、第203項。

280国連子どもの権利委員会「最終見解:ラトビア」( CRC/C/LVA/COI2)第33パラグラフ。

281国連子どもの権利委員会「一般見解第7号:幼児期の子どもの権利の実施」、2005年、第36パラグラフのb

282国連子どもの権利委員会「最終見解:ネパール」( CRC/C/15/Add.261)第50パラグラフ。

283国連子どもの代替的養護に関するガイドライン、第21パラグラフ。

284同、第22パラグラフ。

285同、第23パラグラフ。

286同、第125パラグラフ。

287同、第126パラグラフ。

288同、第128パラグラフ。

289同、第118122パラグラフ。

290同、第2パラグラフ。

291同、第44パラグラフ。

292障害者の権利に関する条約(G.A. Res. 61/106, Annex I, U.N. GAOR, 61st Sess., Supp. No. 49, at 65, U.N. Doc. A/61/49 (2006)200853日発効)第3条。障害者権利条約は「障害者」を明確に定義してはいない。その代わりに当該集団を「長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害であって、様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者」と定義する(同、第1条)。

293 障害者権利条約、前文を参照。

294同、第7条。

295同、第19条。

296同、第11条。

297同、第23条の3

298同、第23条の4

299同、第23条の5

300同、第19条のab

301人権高等弁務官事務所「テーマ別研究(Thematic Study)」、2009126日、HRC/10/48、第50パラグラフ、http://www2.ohchr.org/english/bodies/hrcouncil/docs/10session/A.HRC.10.48.pdf201442日閲覧)を参照。「障害者の自立生活と地域社会へのインクルージョン(包容)の権利を認めることにより、政府の政策は施設から在宅、居住、その他の地域社会支援サービスへと転換することが求められる。」

302障害者権利条約委員会「中国についての最終見解(Concluding Observations on China)」、2012927日、第32パラグラフ。

303障害者権利条約、第24条の1

304同、第24条。

305国連子どもの権利委員会「一般的意見第9号(2006年):障害のある子どもの権利(General Comment No. 9 (2006): The rights of children with disabilities)」、2007227日、CRC/C/GC/9、第62パラグラフ、http://www.unhcr.org/refworld/docid/461b93f72.html2011617日閲覧)。

306 Enabling Education Network, “Report to Norad on desk review of inclusive education policies and plans in Nepal, Tanzania, Vietnam and Zambia,” November 2007, p. 56, http://www.eenet.org.uk/resources/docs/Policy_review_for_NORAD.pdf2011617日閲覧)。

307 Enabling Education Network, “Report to Norad on desk review of inclusive education policies and plans in Nepal, Tanzania, Vietnam and Zambia,” November 2007, p. 9, http://www.eenet.org.uk/resources/docs/Policy_review_for_NORAD.pdf2011617日閲覧)。Save the Children, “Making Schools Inclusive,” 2008, p. 10, http://www.savethechildren.org.uk/en/docs/making-schools-inclusive.pdf 201135日閲覧)。

308 「包容的(インクルーシブ)教育」についての国際的な定義は存在しないものの、関連する国際機関であるユネスコ、ユニセフ、子どもの権利委員会、教育の権利に関する国連特別報告者はこの語をこの説明に沿って用いている。

309 Save the Children, “Making Schools Inclusive,” 2008, http://www.savethechildren.org.uk/en/docs/making-schools-inclusive.pdf 201135日閲覧)。

310ユニセフ「包容的教育の事例集:ネパール(Examples of inclusive education: Nepal)」、2003年、http://www.unicef.org/rosa/InclusiveNep.pdf2011517日閲覧)。

311ユネスコ「包容的教育(Inclusive Education)」、2011年、http://www.unesco.org/new/en/education/themes/strengthening-education-systems/inclusive-education/2011517日閲覧)。Inclusion International, “Better Education for All: A Global Report,” October 2009, http://ii.gmalik.com/pdfs/Better_Education_for_All_Global_Report_October_2009.pdf2011517日閲覧)。

312国連人権理事会「障害者の教育権:教育の権利に関する国連特別報告者ヴェルノール・ムニョスによる報告(The Right to Education of persons with disabilities: Report by the UN Special Rapporteur on the Right to Education Vernor Muñoz)」2007219日、A/HRC/4/29http://daccess-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/GEN/G07/108/92/PDF/G0710892.pdf?OpenElement2011617日閲覧)。

313国連子どもの権利委員会「一般的意見第9号(2006年):障害のある子どもの権利(General comment No. 9 (2006): The rights of children with disabilities)」、2007227日、CRC/C/GC/9、第64パラグラフ、http://www.unhcr.org/refworld/docid/461b93f72.html2011617日閲覧)。

314 Enabling Education Network, “Report to Norad on desk review of inclusive education policies and plans in Nepal, Tanzania, Vietnam and Zambia,” November 2007, p. 10, http://www.eenet.org.uk/resources/docs/Policy_review_for_NORAD.pdf2011617日閲覧)。Sightsavers International, “Policy Paper: Making Inclusive Education a Reality,” July 2011, p. 4.

315 Sightsavers International, “Policy Paper: Making Inclusive Education a Reality,” July 2011, p. 4.

316子どもの権利条約、第121項。

317国連子どもの代替的養護に関するガイドライン、第57パラグラフ。

318国連子どもの権利委員会「一般的意見第12号(2009年):子どもの意見表明権(General Comment No. 12 (2009): The right of the child to be heard)」、第5354パラグラフ。および障害者権利条約、第7条。

319国連子どもの代替的養護に関するガイドライン、第99パラグラフ。

320同、第131136パラグラフ。

321国連子どもの権利委員会「条約第44条に基づき締約国から提出された報告の審査 最終見解:日本」、CRC/C/JPN/CO/32011620日、第52パラグラフ。

322同、第54パラグラフ。

323同、第53パラグラフ。

324警察庁緊急災害警備本部「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の被害状況と警察措置」、2014311日、http://www.npa.go.jp/archive/keibi/biki/higaijokyo.pdf2014322日閲覧)。

325内閣府「平成25年版少子化社会対策白書」、日付なし、107頁、http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2013/25pdfhonpen/pdf/s7.pdf

2014322日閲覧)。ここでの「孤児」には、両親を失った子どもだけでなく、離婚後に親権をもった方の親(離婚時にはどちらか一方の親だけが親権をもつ)、または当該児童の扶養義務を負う祖父母や親族が死亡・不明になった子どもが含まれている。統計上は親権者を亡くした子どもは「孤児」とされるものの、両親が離婚した子どもの場合には、離婚の際に親権を失った側の実親が生存していることもある。

326数値は20121022日時点。電話インタビュー:厚生労働省家庭福祉課、20121114日。

327内閣府「平成25年版少子化社会対策白書」、日付なし、107頁、http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2013/25pdfhonpen/pdf/s7.pdf2014322日閲覧)。

328インタビュー:中野幸二朗さん(岩手県宮古児童相談所所長)、2012516日、岩手県内。

329インタビュー:梶原真奈美さん(小学校4年生・震災孤児)、2012611日、宮城県内。インタビュー:梶原聖子さん(真奈美さんの祖母・親族里親)、2012611日、宮城県内。

330インタビュー:平賀友章さん(岩手県一ノ関児童相談所所長)、2012517日、岩手県内。

331数値は20121022日時点。電話インタビュー:厚生労働省家庭福祉課、20121114日。親族里親には、子どもの一般生活費や医療費などの基本費用は支給されるが、月72,000円の里親手当は支給されない。

332厚生労働省雇用均等・児童家庭局長「児童福祉施設最低基準及び児童福祉法施行規則の一部を改正する省令等の施行について」、雇児発09011号、201191日、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/tuuchi-11.pdf2014412日閲覧)。親族里親と一般の養育里親との最大の違いは里親手当支給の有無にある。三親等内の親族には親族里親としての登録しか認められず、里親手当の給付が認められない。三親等内の親族(尊属)とは、曾祖父母、祖父母、父母、おじ・おば、兄弟姉妹。ただし民法では当然に扶養義務が認められるのは直系血族および兄弟姉妹に限られる。この点を踏まえ、おじ・おば等については里親手当が受けられるよう養育里親としての登録が認められた(民法877条「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」を参照)。

333数値は20121022日時点。電話インタビュー:厚生労働省家庭福祉課、20121114日。

334インタビュー:当時の宮城中央児童相談所里親担当職員(匿名)、2012513日、宮城県内。

335インタビュー:岩手県庁保健福祉部児童家庭課、2012823日、岩手県内。

336インタビュー:加藤紀雄さん(90・親族里親・岩手県)、2012820日、岩手県内。

337C宮城県の児童相談所ではA(要観察)B(中程度)C(安全)とランク分けをし、Aについては毎月、Bについては3カ月に一度、Cについては半年に一度と、家庭訪問の回数を調整した。

338インタビュー:高橋忠美さん(岩手県里親会会長)、2012821日、岩手県内。

339東日本大震災に係る東北6県と厚生労働省の打合せ 岩手県説明資料」、平成231130日。

340電話インタビュー:高橋忠美さん(男性・岩手県の里親)、2013121日。

341中溝茂雄(神戸市教育委員会事務局指導部指導課長)「震災後の心のケアの実際:阪神淡路大震災の経験から」、2011121日。

342岩手県庁児童家庭課「東日本大震災津波で保護者が行方不明・死亡の被災児童への主な支援」、平成23727日、http://www.pref.iwate.jp/dbps_data/_material_/_files/000/000/001/670/20110728-1.pdf2014412日閲覧)。

343インタビュー:花島伸行さん(弁護士・仙台弁護士会子どもの権利委員会委員長)、2012511日、宮城県内。

344インタビュー:林田吉司さん(あしなが育英会東北事務所長)、2012514日、宮城県内。

345インタビュー:女川向学館職員(匿名・女性・東日本東北大震災被災者)、2012514日、宮城県内。

346インタビュー:佐藤利憲さん(仙台グリーフケア研究会理事・仙台青葉学院短期大学講師・精神看護学)、2012516日、宮城県内。

347インタビュー:小山和郎さん(宮城県庁保健福祉部子育て支援課班長)、2012518日、宮城県内。

348インタビュー:平賀友章さん(岩手県一ノ関児童相談所所長)、2012517日、岩手県内。

349電話インタビュー:小山和郎さん(宮城県庁保健福祉部子育て支援課班長)、20131129日。

350“不登校の中学生、宮城県が全国最多 震災が影響か」、朝日新聞、201387日。

351電話インタビュー:小山和郎さん(宮城県庁保健福祉部子育て支援課班長)、20131129日。

352「被災3県の幼児、3割に深刻な心の問題 厚労省調査」、朝日新聞、2014127日。

353ヒューマン・ライツ・ウォッチは、八木淳子さんや佐藤利憲さんなど、多くの専門家から被災地での精神的、社会的サポートが不足しているという声を聞いた。八木さんは、岩手県の宮古・子どものこころのケアセンターの児童精神科医で、講演会「大災害で被災した子どもを救う『プレイメーカー・プロジェクト』」(2012427日、主催:宮城県子ども総合センター・児童虐待防止全国ネットワーク、国立オリンピック記念青少年総合センター)で話を聞いた。インタビュー:佐藤利憲さん(仙台グリーフケア研究会理事・仙台青葉学院短期大学講師・精神看護学)、2012516日、宮城県内。

354インタビュー:中野幸二朗さん(岩手県宮古児童相談所所長)、2012516日、岩手県内。

355インタビュー:佐藤利憲さん(仙台グリーフケア研究会理事・仙台青葉学院短期大学講師・精神看護学)、2012516日、宮城県内。インタビュー:林田吉司さん(あしなが育英会東北事務所長)、2012514日、宮城県内。

356インタビュー:佐藤利憲さん(仙台グリーフケア研究会理事・仙台青葉学院短期大学講師・精神看護学)、2012516日、宮城県内。

357インタビュー:林田吉司さん(あしなが育英会東北事務所長)、2012514日、宮城県内。

358インタビュー:佐藤利憲さん(仙台グリーフケア研究会理事・仙台青葉学院短期大学講師・精神看護学)、2012516日、宮城県内。

359インタビュー:あしなが育英会ボランティア(匿名・女性・保育士・震災孤児宅の家庭訪問を担当)、2012519日、宮城県内。

360 同上。

361 国連の代替的養護ガイドラインは第22パラグラフで、例外的な状況を「兄弟姉妹の分離の防止を目的とする場合や、かかる代替的養護の実施が緊急のものである場合、又は非常に限られた期間とあらかじめ決まっている場合であって、家庭への復帰が予定されているか又はその他の適切な長期にわたる養護の解決策が実現することが予定されている場合」に限っている。

362 里親委託ガイドラインは「1年以上(乳幼児は6カ月)面会等保護者との交流がない子ども」について、里親養育を検討すべきとする。