(ジュネーブ)- ミャンマーのラカイン州に吹き荒れた暴力に関する国内調査委員会は、ロヒンギャに対する残虐行為について信頼に足る報告をせず、法の裁きを推進することもなかったと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書内で述べた。本報告書は2012年から設置された8つのミャンマー政府調査委員会についてまとめたもの。国連人権理事会は第39回会合の一環として、ミャンマーの人権状況に関する決議を採択するとみられているが、証拠を収集し、かつ未来の訴追に向けて事件記録を準備できる機関を設置すべきだ。
2012年にラカイン州で暴動が発生して以来、ミャンマー政府は人権侵害の調査や、危機解決のための勧告を行うとして、8つの委員会を表向きには設置してきた。しかし、ロヒンギャに対する重大な犯罪について説明責任の追及に至った委員会はこれまでひとつもない。2018年5月31日に設置が発表された最新委員会の構成とマンデートからは、それが前任と同様に効果的にはならないことがはっきりとわかる。
ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長ブラッド・アダムズは、「国連人権理事会は証拠を保存し、重大犯罪の被害者のための法の裁きに続く道を開くべく、今すぐ行動すべきだ」と述べる。「人権理事会は、行動を求める国際社会を分断し、目くらましするために設計したような最新の国内委員会の報告を待っている場合ではない。」
ミャンマー政府が設置した最新の委員会の説明から、その主な目的が国際社会の圧力をかわすためにあることがみてとれる。8月29日、ザウ・ハティ(Zaw Htay)大統領担当広報官は、独立調査委員会が「国連機関をはじめとする国際社会の虚偽の主張に対応する」ために設置されたと述べている。
政府は、当該委員会の委託事項をめぐりほとんど情報を公開していない。委員会による報告書提出の期限は2019年8月と先のことだ。フィリピンの外交官ロサリオ・マナロ(Rosario Manalo)氏が委員長を務めるが、説明責任の追及にはほぼ関心がないことを明言している。委員会の初の記者会見で次のように述べた。「誰かを責めたり指を差したりしないことをここに保証します。それでは何も問題が解決しませんから。[前略]名指しは外交的なアプローチといえません。『説明責任はあなたにある!』などと言うつもりはありません。」