Cambodia's opposition leader and President of the National Rescue Party (CNRP) Kem Sokha talks during an interview with Reuters in Prey Veng province, Cambodia May 28, 2017.

© 2017 Samrang Pring/Reuters

(バンコク)― カンボジア政府は野党党首の政治的動機に基づく刑事立件を取り下げ、無条件に釈放すべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。カンボジア救国党(CNRP)党首のケム・ソカ氏は、カンボジア刑法第443条「外国との通謀」および反逆罪で有罪判決を受けた場合、最高で30年の刑が科される。同氏は国民議会の議員であることから、憲法が免責を保障しているにもかかわらず、当局はこれら根拠なき刑事手続を進めている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長代理フィル・ロバートソンは、「カンボジア政府は、2018年の国政選挙運動が始まる前に選挙に決着をつけるべく、ケム・ソカ氏の反逆罪を仕立て上げた」と述べる。 「フン・セン首相は、民主主義が自分の支配の継続を阻むようなことはさせないつもりのようだ。カンボジアの再建に長年貢献してきた国々は、1991年のパリ和平協定に対するこの裏切り行為を非難する必要がある。」

2017年9月3日の深夜すぎに、約200人の警察官が首都プノンペンのトゥールコークにあるケム・ソカ氏の自宅に押し寄せた。逮捕状の提示を拒否して、睡眠中のケム・ソカ氏と妻のTe Chanmono氏がいる居住エリアに踏み込み、ソカ氏の身柄を拘束。その後は氏の携帯電話を押収し、手錠をかけてどこかに連行した。

政府寄りの報道機関「フレッシュ・ニュース」が、カンボジア放送ネットワークの動画リンクを添えて、逮捕を最初に報道。その動画は、ケム・ソカ氏と「その他の外国人がカンボジア王国に危害を加えるため」の陰謀計画を秘密裏に議論している様子を撮影したものだと主張している。

フン・セン首相は2017年8月23日、救国党が「国家と国民に反逆[行為を]して[いる]」と非難する演説をした際に、この訴追を予言してみせた。また近ごろも、「外国のパワー」にカンボジアの内政干渉はさせないと断言し、ケム・ソカ氏が「自国を裏切っている」疑いをめぐり、氏と関係するあらゆる外国人の捜査を更に行うよう命じた。

フレッシュ・ニュースはその後、ケム・ソカ氏事件に関与している可能性があると政府がしている人物として、救国党党首代行Pol Ham氏やSon Chhay氏といった国会議員、ならびに党報道官の Nhem Ponnarith氏やOu Chanrith氏、ケム・ソカ氏の娘のKem Mona氏やKem Samathida氏の名を報じている。

9月5日に検察がケム・ソカ氏に対し正式な刑事手続きを開始。司法捜査請求書が提出され、捜査判事が同氏を尋問した。氏は捜査判事が訴追の有無を判断するまで、司法捜査の下で被疑者とみなされることになる。

前出のロバートソン局長代理は、「反逆罪でケム・ソカ氏を訴追することは、カンボジアにおける人権はもちろん、将来の民主的発展への希望にも壊滅的な打撃となるだろう」と指摘する。「政府はまたもや司法を悪用して、政敵を黙らせるために司法制度を操っている。」

カンボジアの人権状況は、来年2018年7月の国政選挙が近づくなか、この1年間で急速に悪化した。2013年の国政選挙では野党が躍進し、与党カンボジア人民党は不意打ちをくらったかたちとなった。フン・セン首相はその後、反体制派やNGOに直接向け、政府関係者による再三の暴力を示唆する脅し等の威嚇行為など、憂慮すべき政治的レトリックのエスカレートを指揮してきた。とりわけ今年行われた地方選挙にいたるまでの期間に、これが顕著に表れている。フン・セン首相やティア・バニュ国防相、Sok Eysan人民党報道官など軍上層部および大臣数名がくりかえし、軍は抗議者の「歯を[中略]折る」または「中立を保たない」人民党側に立つと警告してきた。フン・セン首相は、野党が選挙で勝つようなことがあれば、「内戦」につながる可能性があることに言及。(組織された平和的反対運動を、暴力的な政府打倒であるかに見せかけて)「色の革命」を唱える人物には暴力も辞さない、と威嚇した。

2017年地方選挙の選挙運動中にフン・セン首相は、「国家の安全」を守るためなら「よろこんで100人〜200人を排除する」だろうと公言。野党は「自分の棺を準備すべきだ」と言ってのけた。選挙後にもこの主張をくりかえし、亡命中の元救国党党首サム・ランシー氏についても明確に言及。同氏が暴力の標的になると知っていたことを示唆した。Vong Sauth社会問題担当相は8月2日、2018年国政選挙の結果に異議を唱える抗議者は、「竹の棒で殴られる」だろうと、ポル・ポト政権が用いた冷酷な処罰法に言及した。加えて、社会問題省の職員が人民党を支持しない場合は解雇する、と脅している。

人民党主導の議会は、2017年に政党法の抑圧的修正案をふたつを通過させた。これらの改正により、当局は政党を解散させたり、公正で透明な手続きや控訴手続きを経ずに党首の政治活動を禁じることができるようになった。改正には野党にとっての障害となる数多くの制限が設けられている。特に、刑事訴追で有罪判決を受けた党首を追放しない限り、政党に解散を迫る条項は、サム・ランシー氏が救国党に関わるのを阻止するもの。それに、ケム・ソカ氏が反逆罪などで有罪判決を受けた場合、党の主導権を失うことになる。内務省はまた、適正手続および表現・結社の自由を侵害する、広範かつあいまいに定義された制限に基づいて、無期限に政党を活動停止できる幅広い権限を有する。カンボジア法は、野党を弱体化させたり、完全に解散させられる強力なツールを政府に与えているのである。

ケム・ソカ氏の恣意的な逮捕は、ヒューマン・ライツ・ウォッチがこれまでの報告書で広く調査・検証してきたように、30年以上にわたるその支配を維持するためならば何でもするという政府の姿勢の一環だ。

ロバートソン局長代理は、「カンボジアの政治的友好国および援助国は、ケム・ソカ氏が直面している言語道断な訴追や、民主的な手続きに対する攻撃に対し、危機感を公に示すべきだ」と述べる。「もし今後、路線を変更しないのであれば、来年の選挙を自由かつ公正なものとみなすのは不可能であると、フン・セン首相に警告しなくてはならない。」