7月11日にロンドンで家族計画サミットが開催されます。各国政府、ドナー、民間団体と市民社会が集まり、2020年までに現代的な避妊を利用できる女性を全世界で1億2千万人増やすとの目標について、進捗状況を評価し、実現へのコミットメントを再確認します。
家族計画は人の命を救います。妊娠・出産時の合併症は、15~19歳の年齢層の死因では世界第二位であり、毎日800人の少女・成人女性の命を奪っています。世界保健機関(WHO)の推計によれば、中絶時の合併症により、毎年世界で少なくとも2万2千人が亡くなっています。
英国と国連人口基金、ゲイツ財団が主催するこのサミットでは、各国の政策、若者関連データ、避妊具・避妊薬の不足、人道問題が話し合われる予定です。
しかし、サミットが掲げる目標に立ちはだかる巨大な壁への対応が議題にないことは一目瞭然です。米トランプ政権による「メキシコシティ政策」、いわゆる「グローバル・ギャグ・ルール(世界口封じルール)」の大幅な拡大適用です。
この政策は、米国外の非政府組織(NGO)について、もしそのNGOがいかなるドナーから提供された資金を用いようとも、中絶関連情報を提供し、中絶手術を実施し、または中絶規制法令緩和を求める運動を行った場合、米国から保健関連分野への資金提供が受けられなくなるというものです。米国は保健分野では世界最大のドナーであり、このルールの対象となる対外援助は88億ドル(約1,000億円)に上ります。
政策の影響を受ける団体のなかには、貧困に苦しみ、十分なサービスが提供されていない地域で活動しているところもあります。事業や職員の削減を強いられる結果、計画性のない妊娠や危険な中絶、本来は防ぎうる妊産婦の死亡事例が増加するでしょう。
世界各地での家族計画の取り組みは成功を収めています。米国は依然としてこの分野の主要なドナーでありパートナーです。しかし、グローバル・ギャグ・ルールのような政策はこうした取り組みを妨害します。
英国、カナダ、フランス、スウェーデン、ドイツ、ノルウェー、デンマーク、日本などのドナーは、セクシュアル/リプロダクティブ・ライツへの強い支持を表明しています。これまでの自らの援助の成果を守り、2020年の達成目標を実現するうえで、これらドナー国のリーダーシップはかつてないほど重要になっています。長年リプロダクティブ・ライツを真剣に支援してきたのに、家族計画支援予算を大幅削減したオーストラリアなどの国々も、過去の公約の実現に向け、改めてコミットメントを行うことが求められています。
このサミットの場で公に討議するのは政治的に賢明ではないかもしれませんが、ドナー側とパートナー側には今後、グローバル・ギャグ・ルールに伴う弊害を考慮する必要が生じると思われます。例えば、自らが行う援助の成果、および家族計画と妊産婦死亡率に関するグローバル目標に対し、この政策の影響を綿密に検討・評価することが求められるでしょう。
安全で合法的な中絶を含む、包括的なセクシュアル/リプロダクティブ・ライツとサービスへの支持を強く明確に表明すること、これがサミットに参加するすべての関係者にまず求められているのです。