ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は昨年、全国14都道府県でLGBTの子どもや若者数十人を含む100人超から、学校でのいじめの実態について聞き取り調査を行った。明らかになったのは、LGBTの子どもからいじめの報告を受けた教師の対応がばらばらである実態だった。

教師の対応は個人のLGBT観・知識に大きく左右され、無知や偏見に満ちた反応も少なくなかった。レズビアンのキヨコさん(20歳、仮名)は中学時代「女の子っぽくない」といじめられたが「先生が助けてくれないことは周知の事実」だったと語った。

名古屋の高校生タダシさん(仮名)は「(教師には)LGBTの知識が全然ないので、何をしたらいいのかわからない」と話す。いじめられないよう、社会の性別規範に合わせるよう指示された子どももいた。

HRWのオンライン調査(25歳未満の当事者中心に458人回答)では、学校で最近LGBTへの暴言等を経験した子どもは8割を超えており、約3割は教師の発言だった。さらに、教師がこれらを目撃したケースのうち6割は、教師が特に反応せず、放置していた。

トランスジェンダーの子どもには、通学自体が試練となっていた。自らのアイデンティティー(自己同一性)と違う制服、トイレ、着替えなどを余儀なくされ、苦しさから不登校になるケースも後を絶たない。

文部科学省は今年4月、性的指向・性自認に関する教職員向けの手引を公開した。重要な一歩だが、さらなる取り組みが必要だ。手引などを基に、現役教員全員に対する包括的研修を義務化するべきだろう。

また「いじめ防止対策推進法」や「いじめ防止基本方針」は、性的指向・性自認に触れていない。施行3年の見直しを行う今年、LGBTの児童生徒など特に弱い立場の子どものカテゴリーを明記し、対策に本腰を入れるべきだ。

必要な改革は教育分野に留(とど)まらない。性的指向・性自認に基づく差別を禁止する包括的な法律が必要だ。

トランスジェンダーの人びとの戸籍変更の条件を定めた「性同一性障害特例法」は、トランスジェンダーを精神障害ととらえた上で、その診断に加え、一律20歳以上という年齢要件や不妊手術や離婚を事実上強制するもので、人権を侵害する内容だ。世界保健機関(WHO)は、2018年までに発表予定の国際疾病分類改訂版で、性同一性障害を精神疾患から外す見込みだ。医学の考え方も変化しており、時代遅れの日本の制度には抜本的改革が必須だろう。

現行制度は、トランスジェンダーの子どもの大きな負担となっている。教育を受ける権利の保障の観点から、文科省はいち早く精神疾患モデルからの脱却を宣言し、子どものありのままのアイデンティティーを受け入れる制度にすべきだ。