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ビルマ:差別的な人口法、廃案を

一連の「人種・宗教」法 新たな抑圧と暴力の火種に

(ニューヨーク)ビルマ国会は、当局が宗教的・民族的少数者を抑圧する手段になりかねない人口法案を廃案にすべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。ビルマのドナーをはじめとする関係各国は、政府に法案撤回を公式に求めるべきだ。

この「人口抑制保健法」は当局に「出産間隔」に関する規制を講じるよう命じるものであり、プライバシーの権利はもちろん、子どもを作る時期を自由に選ぶという女性の権利を侵害する。法案は出産間隔を最低36ヶ月と定め、強制堕胎も認められる。法案の起草段階には、成立すれば多大な影響を受けることになる女性たち、とくに民族的・宗教的少数者の女性たちが参加していない。

「人種差別的でムスリムを攻撃する意図を持った活動家たちが法案の推進役だ。差別的なかたちで実施されることは目に見えている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムスは述べた。「審議中の『人種・宗教』法だけでなく、今回の人口法も成立すれば、抑圧と宗派間暴力の激化が見込まれる。」

人口抑制保健法が起草された背後には「人種宗教保護組織(マバタ)」のメンバーの圧力がある。マバタには、ウルトラ民族主義的で反ムスリム的な目標を掲げる有力な仏教僧侶らが参加する。マバタのメンバーらは公式声明を発表し、仏教徒女性をムスリムから守る法律の制定を求めてきた。この法案は、ムスリムを「狂犬」呼ばわりするマバタ幹部たちの、ムスリムを敵視する説教が広まるなかで検討されている。マバタは全国的な署名活動で100万以上の賛同を集め、政府に法案成立の圧力を掛けている。

本法案は政府に対し「結婚した夫婦に出産間隔を空けるよう求める」ことを指示している。この「出産間隔」の定義は「結婚している女性がいったん子どもを産んだら、最低36ヶ月は間隔を空けること」だ。このような硬直的な定義は、女性が自分の年齢や健康状態など様々な要素を考慮し、いつ、どのように子どもを産むかを選択する権利を侵害するものだ。とくにヒューマン・ライツ・ウォッチが懸念するのは、あらゆる避妊法について、使用者が十分な情報を得た上で、完全に納得して同意することを明示的に確保する規定がない点だ。また避妊法を利用する人は、さまざまな避妊法に関する包括的な知識を持つべきだ。

人口抑制保健法は、2014年11月にビルマ国会に「人種・宗教保護法」として一括上程された4法案の1つだ。ビルマ国会で審議され、国民民主連盟(NLD)の反対にもかかわらず通過し、2015年4月6日にテインセイン大統領に送られた。4月9日、同大統領はわずかな修正を行うよう法案を国会に差し戻した。ビルマでは、法律が2度国会を通過すると7日後には自動的に法律として成立する。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは今回の人口法が成立すれば、アラカン(ラカイン)州のロヒンギャ民族ムスリムを攻撃する手段となるとの懸念を表明した。ロヒンギャ民族は数十年にわたり組織的な迫害を受けており、実質的に国籍を取得することができない。また2012年には民族浄化と人道に対する罪の標的となった。基本的権利が否定されているため、海路でビルマを脱出するロヒンギャ民族の人数は増加している。

2012年の暴力事件の根底にある問題を調査するためとして、政府が公式に設置した「ラカイン調査委員会」は2013年の報告書に「ベンガル人[=ロヒンギャ民族を差別し、さげすんで指す表現]の人口急増」に言及したセクション(12.27)を設けた。またラカイン民族仏教徒の政府への「望み」にも触れている。それは「[アラカン民族仏教徒とビルマ民族の言う]ベンガル人に家族計画と出産間隔調整プログラムを広めることで[…]ベンガル人に支配されるのではないかという彼らの恐怖を和らげ、平和共存という目的を助ける」というものだ。こうした産児制限による家族計画を提唱する一方、委員会はこうした措置が自発的なものであるべきだと繰り返し述べ、「強制的に実施すれば[…]わが国の評判は傷つくだろう」と警告している。

法案にはビルマ国内の民間団体多数が強く反発している。2014年12月には180団体が共同声明を発表し、国際人権法が定めるビルマの義務に反すると主張した。

ビルマ政府は、女性権利団体や女性の権利を表明する組織が安全に活動できる環境を提供していないと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。有名なウルトラ民族主義者の仏教僧ウィラトゥ師は抗議に加わった団体を「裏切り者」となじり、脅迫している。国民民主連盟の党員らが唯一国会で法案に異を唱え、反対票を投じた。他党の国会議員は、法案に反対して起立した議員の写真を撮った。あからさまな脅迫行為だ。

政府筋は、国連のビルマの人権状況に関する特別報告者が、人口抑制保健法など一連の人種・宗教法を批判したことに反発した。国連人権理事会に最近提出した報告書で、特別報告者は人口抑制保健法を「子どもの数と出産間隔を決める女性の権利に対する国家の不法な干渉」と評した。

「抑圧と差別があるなかで『人口抑制』を行おうとすれば、仏教徒のウルトラ民族主義者と人権侵害を行う地元当局者を、危険なまでに勢いづかせることになる」と、アダムス局長は指摘した。「政府は今後成立するすべての法律が国際人権基準を満たすようにすべきだ。人口法を成立させてしまえば、ビルマが改革の途上だという主張はまともに相手にされなくなるだろう。」

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