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フィリピン政府がついに重い腰をあげ、同国の悪疫となっていた未解決の超法規的処刑の対策に乗り出しました。「暗殺部隊」の黒幕と目され、乱暴な物言いで知られるミンダナオ島タグム市のレイ“チョン”ウィ前市長を殺人の容疑で起訴したのです。国家警察捜査局は、2004年~2011年が任期だった前市長ほか28人が、市が後ろ盾となっていた暗殺部隊による殺害事件の、少なくとも80件に関与していたことをつきとめています。

もっとも、3月4日に発表されたウィ前市長の容疑を、タグム市の元支持者たちは冷静に受け止めることでしょう。ヒューマン・ライツ・ウォッチは昨年5月の報告書ですでに「タグム暗殺部隊」の存在を明かしていました。この武装部隊は同市の給与体系に組み込まれて組織化され、資金供与と指示を前市長から受けていたのです。何百件規模の殺害事件に関与し、被害者の多くには前市長が「雑草」呼ばわりしていたストリートチルドレンも含まれます。子どもたちはしばしば、かなり残酷な方法で殺されました。たとえば、9歳だったジェニーボーイ“コーキー”ラギュロスさんは、2011年4月12日にタグム市路上で血まみれになって死亡しているのを発見されました。身体には22もの刺し傷があったといいます。

フィリピンにおける、防犯のための自警と称する超法規的処刑や暗殺部隊の暗躍は、今に始まったことではありません。しかし、いくら路上での暴力事件には慣れっこの国でも、タグム暗殺部隊への政府関与度合いの大きさは、新聞の一面を飾ってきました。こうした世間の圧力もおそらくあって、レイラ・デ・リマ司法長官が事件の訴追に踏み切ったと思われます。ウィ前市長の訴追はまた、ベニグノ・アキノ3世大統領の歓迎すべき政策転換の表れともいえます。大統領はこれまで、ダバオ市やセブ市などで問題となっていた暗殺部隊による殺害事件をおおむね無視してきました。路上の「望まれない者たち (undesirables)」を排除するための超法規的手段を促進または推奨する、地域の防犯キャンペーンにも寛容な態度をとってきたのです。 

とはいえ、まだまだ課題は山積みです。不処罰問題に取組むとしたアキノ政権の大言壮語なイニシアチブ(超法規的処刑の捜査・訴追の促進に向け、2012年に設置された通称「スーパーボディー」)は、国内人権団体が新たな事件を数々報告しているにもかかわらず、ほとんど機能していません。「私兵」をもつ地元政治家や国家治安部隊は、ジャーナリストや左派活動家、環境活動家、部族長などの殺害に関与しています。しかし、ごく少数の例外を除いて、これら殺人事件で訴追された個人はいませんし、背後の首謀者にいたってはなおさらのことです。

アキノ大統領は今回のウィ前市長の訴追で、超法規的処刑に対する継続的な政府行動開始を示す絶好の機会を得たと言えるでしょう。この訴追が一過性のイベントに過ぎなかった、とならないことを願うばかりです。

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