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(ベイルート)エジプトでは新学期が2014年10月11日に始まって以来、大学生110人以上が逮捕されている。エジプト政府当局はただちにこれらの学生を釈放すべきだ。今回の大量逮捕劇の目的は、ムハンマド・モルシ前大統領が2013年7月に解任されて以降、大学で頻発する抗議行動の復活を防ぐことにあるとみられる。当局による逮捕とその後の動きは、自由に集会を開く権利を非暴力的に行使した学生たちだけが狙いであるようにみられる。

大学での政治活動の制限強化を記録する運動体である自由監視学生団(Students for Freedom Observatory)によると、治安部隊は10月11日に全国15県で学生71人を逮捕した。この団体の情報では、多くの学生が夜明け前の家宅捜索で逮捕されている。現場には制服警官、私服警官、完全武装した特殊部隊が現れたという。警察は大学での抗議行動が全国的に発生したのを受け、10月12日に44人、13日にさらに17人を逮捕した。自由監視学生団によれば、当局は学生14人を釈放したが、その他の多くの学生たちに対して15日の勾留延長を決定した。またミヌーフィーヤ大学ではデモを指揮したとして学生5人が停学処分となった。

「今回の学生の大量逮捕劇は、言論・集会の自由への予防的な攻撃である」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東・アフリカ局長代理ジョー・ストークは述べた。「大学は政治的な議論も含め、身の危険を感じずに意見が交換される場でなければならない。」

逮捕された学生の大半が参加した抗議行動は、学問の自由と逮捕された学生の釈放を求めるとともに、アブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領に反対の立場を示すものだった。シーシ大統領は元国防相としてモルシ前大統領を解任し、6月の大統領選挙で当選した。

モルシ氏の解任後に始まった大学での新学年(2013-14年)では、少なくとも14人が抗議行動に関する暴力事件で死亡したと、エジプトの現地紙『アル=アフラム』は報じている。当局はデモに備えるため、今年度について新学期の開始を10月中旬に遅らせた。6月、シーシ大統領は自らが直接大学の学長と学部長を指名できる大統領令を発布した。エジプトでは革命後に成立した軍事政権が2011年に規則を変更し、大学は学長と学部長を互選できるようになった。大学の学長には現在「教育過程を妨げる犯罪」を理由に教員を解雇する権限がある。エジプトで有名な世俗高等教育機関であるカイロ大学では、政治活動が全面禁止されている。政府は民間警備会社のファルコン社を雇って、大学12校の入口を警備している。

土曜日の大量逮捕は全国的な現象の模様だ。

ムスタファ・タレク氏(21)の自宅に10月11日午前2時30分頃に警察が現れたと、弟のムハンマド氏はヒューマン・ライツ・ウォッチに述べた。タレク氏はマンスーラ大学工学部を卒業したばかりで、今年度の期末試験のボイコット運動を組織していた。大学警備員の学生暴行事件への抗議が目的だった。大学は試験日程の変更を余儀なくされたと、弟ムハンマド氏は述べた。

20人ほどの制服・私服警官が、一家の住む大学近くの集合住宅に現れた。しかし逮捕状を見せろという父親の求めには応じなかったという。タレク氏の寝室(4歳の子どもも一緒に寝ていた)に入ろうとする警官を制止したところ、自分は父とともに殴られたとムハンマド氏は述べた。家具や引き出しをひっきかき回したのち、警察はタレク氏を自宅から連れ出した。ムハンマド氏が兄の所在をたずねたところ、警察からはお前には関係のないことだと言われたという。当局はタレク氏に対し、ムスリム同胞団との関係や抗議行動の組織化への関与について尋問したのち、15日の勾留延長をつけたと、ムハンマド氏は述べた。

警察はイスラーム・アブドッラー氏(21)を、ダミエッタ(ディムヤート)市Shehadiyya区の自宅から連行した。父のガマル氏によると、10月11日午前1時30分頃のことだった。制服・私服警官10~15人(一部は突撃銃で武装)が一家をたたき起こし、アブドッラー氏を外に連れ出した。2台のマイクロバスが待機していたと、父のガマル氏は述べる。

アブドッラー氏は、ダミエッタ大学商学部の4年生で学生会副委員長だ。父のガマル氏は、息子が抗議活動に参加していたことは知らなかったと話している。また警察にアブドッラー氏が逮捕されてから、市内の国家治安部隊本部前で息子を待ったという。午前3時頃、警察が息子を連行するのを見たとガマル氏は述べた。両手を身体の前に出した状態で手錠をかけられ、その建物内に連れていかれたそうだ。息子についての情報はそれ以降一切ないとガマル氏は述べている。

10月11日の午前3時頃、カイロのSayyida Zeinab地区では、警察が共同住宅に住むイブラヒム・サラ氏の自宅に現れたと、サラ氏の母アイシャ氏は述べた。警察はドアを開けたサラ氏に、学生証と身分証明書の提示を求めると、室内を捜索し、引き出しや家具をめちゃくちゃにした。自宅にやって来たのは警官と覆面姿の特殊部隊だったと、母のアイシャ氏は述べた。

サラ氏はヘルワン大学工学部の2年生だ。警察が「殉教者アブデル・ラーマン・ハサン」と書かれた洗濯ばさみについて尋ねられ、これは友だちのことだと説明した。警察はサラ氏の携帯電話とノートパソコンを押収した。息子をどこに連行するのかとのアイシャ氏の問いかけには応えなかった。息子はそのまま外に連れ出されたとアイシャ氏は述べた。

アイシャ氏はまた、サラの兄たちが地元の警察署と検察局を訪ねたが、拘禁場所についても容疑についても一切説明されなかった、と話した。ある警察官は一家が立てた弁護士に対し、サラ氏を連行したのは自分たちであり、この件について詮索しないほうがよいと述べたという。

「息子には無事でいてほしいだけです。とても良い子で、逮捕をされるようなことはしていません」とアイシャ氏は述べた。「とても心配です。息子のことが気がかりでなりません。でも私はなんとか気持ちを強くして、取り乱したりはしませんでした。」

同時刻に別の学生も逮捕されている。ヘルワン大学4年生で情報科学部を学ぶアフメド・ヤセル氏(22) の集合住宅にある自宅に、10月11日の午前3時に政府治安部隊が現れたと、姉のイナス氏はヒューマン・ライツ・ウォッチに述べた。武器を携帯した男性3人が現れ、うち一人は戸口で突撃銃を手にしていたという。

カイロ市ナスル・シティーにあるヤセル氏の自宅の室内を捜索した隊員たちは、捜索の理由を氏が10月12日の抗議行動を呼びかけたからだと述べたと、イナス氏は話した。ヤセル氏は明確なモルシ前大統領支持者で、学生会に所属していたこともある。拘束された学生たちの釈放を求める「反クーデター」デモの呼びかけも行ったと、イナス氏は述べた。警察は2014年5月のデモの際に一度ヤセル氏を拘束した。裁判所は非合法デモの実施、非合法組織への所属、軍と警察への侮辱で5年の刑を宣告した。当局は裁判中にヤセル氏を釈放したまま、有罪判決が出た後も身柄拘束をしなかったと、イナス氏は述べた。

イナス氏によれば、10月12日、検察は、現在カイロ市ナスル・シティー第一警察署に拘禁されているヤセル氏について、15日の勾留延長を決定した。

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