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(ベイルート)-イラン北部の都市では、基本的人権の行使を理由に数十人が投獄されていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書で述べた。イラン当局はすべての政治囚をただちに無条件で釈放すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

キャラジでの拘禁:あるイランの都市の政治囚たち」(全59頁)は、首都テヘラン近郊の都市キャラジにある3つの刑務所に投獄中の188人の事案を検討した。訴追理由となった容疑、革命裁判所での訴訟記録、弁護士や囚人の家族らから寄せられた情報も分析した。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、うち62件で、当局が囚人を逮捕し、革命裁判所が有罪判決を下した唯一の理由は、被告が言論の自由などの基本的権利や、非暴力集会を行い、結社を結成する権利を行使したためであることを明らかにした。このほか数十件について(テロ関連容疑で死刑判決が下った35件を含む)、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、司法手続を損なった恐れのある、著しい適正手続き違反の可能性を疑っている。

「1年前には穏健派を自認する新大統領が選出され、イラン国内の政治囚の多くが釈放される日も近いとの期待が広がった。だが多くがいまだに収容されている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東・アフリカ局長代理ジョー・ストークは述べた。「囚人の釈放を行う最大の責任は司法権にある。しかしハサン・ローハニ大統領と現内閣は、釈放に向けた働きかけを今すぐ強めるべきだ。」

政治囚には、野党の党員やブロガー、ジャーナリスト、弁護士、労働運動家、宗教的少数者の権利を擁護する活動家などがいる。これらの政治囚たちは、司法権が国の安全を脅かすと主張する行為について、曖昧で包括的な容疑で有罪とされ服役中だ。国連の人権専門家の複数の報告書によれば、イラン全土の政治囚は数百人に上る。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、このほかキャラジで投獄されている126人の身元を特定した。テロ関連容疑で死刑判決が下されたが、革命裁判所での不公正な裁判で有罪とされた可能性がある人もいる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは5月、イラン司法権長官に対して囚人177人の事案を照会した。今回の報告書ではその多くを扱っており、詳しい容疑のほか、検察から提出された証拠があれば、それも記述している。司法権は現時点で回答を寄せていない。

今回扱った政治囚の大半は、ラジャーイー・シャフル(ゴハルダシュト)刑務所内の1つのエリアに収容されている。33人は、イラン最大の非ムスリム少数者で、困難な状況にあるバハイ教の信者だ。うち5人が教団指導者であり、最大20年の刑が宣告されている。理由はスパイ活動、「聖なるものへの冒涜」、「地上への頽廃の撒き散らし行為」など。すべてバハイ教指導者としての非暴力活動に対するものだ。

同じエリアには、少なくともバハイ教信者11人が収容されている。かれらはバハイ高等教育院の教職員だ。これは、政府がバハイ教徒を公立大学から排除しているため、1987年に大学に代わるものとして設立された機関である。バハイ国際共同体によれば、2014年5月の時点で、イランでは136人のバハイ教徒が、信仰にかかわる事柄のみを理由に投獄されている。

このほかキャラジの刑務所当局は、キリスト教の牧師2人と改宗者2人を拘禁している。牧師のサイード・アーベディーニー師は「国家の安全を脅かそうとした」として8年の刑を宣告された。家庭教会を設け、運営したことが罪に問われたと、妻のナグメ・アーベディーニー氏はヒューマン・ライツ・ウォッチに述べた。

キャラジではジャーナリストとブロガー9人が投獄されているが、その1人マスウード・バスターニー氏は2009年7月に逮捕されるまで、ニュースサイト「ジョムフーリーヤト」の記者だった。妻でジャーナリストのマフサー・アムラーバディー氏によれば、バスターニー氏は「反体制プロパガンダ活動」と「国家の安全を脅かす集会と共謀行為」で6年の刑を宣告された。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ラジャーイー・シャフル刑務所に人権活動家7人とベテランの人権派弁護士1人が収容されていることを確認している。人権活動に携わってきたモハンマド・セイフザーデ弁護士(67)は、ノーベル平和賞受賞者シーリーン・エバーディー氏ら仲間の弁護士とともに、人権擁護協会を共同設立した。最初に宣告された9年の刑は2年に減刑されたが、投獄中に政府を批判する内容の書簡や署名入りの声明を書いたことで刑期が6年追加されたと、エバディ氏はヒューマン・ライツ・ウォッチに述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、暴行など重大犯罪で有罪とされた126人を特定した。しかし当局の狙いは、これらの人びとの非暴力活動にあった可能性がある。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、多くの事案について当局の主張を覆すだけの十分な情報を集めることができなかった。しかし一部の事案について、甚だしい適正手続き違反を確認している。これは有罪判決の正当性を疑問に付すものだ。

一例として、モハンマド・アリー(ピールーズ)・マンスーリー氏は、イラン政府がテロ組織に指定し、非合法化しているモジャーヘディーネ・ハルグ(MEK)を支援したとして17年の刑に服していると、娘のマンスーメ・マンスーリー氏は述べた。娘のマンスーメ氏はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、革命裁判所は2回短い裁判を行っただけで、父のマンスーリー氏を「武力による体制破壊」(モハーレベ。最高刑は死刑)と「最高指導者への冒涜」で有罪判決にしたと話した。また氏によれば、裁判所は、マンスーリー氏が妻と妻の姉妹に会うため、MEKメンバーが長年亡命生活を送るイラクのアシュラフ・キャンプを訪れたこと、および1988年の政治囚数千人が大量処刑された事件(犠牲者の多くはMEKメンバー)を記念するため、テヘランのハーヴァラーン墓地で開かれた2007年の式典スピーチに参加したことを有罪の根拠とした。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが特定した126人には、スンニ派イスラムの教義を厳格で字句通り解釈することを支持する、スンニ派の活動家または「伝道師」を名乗る人も多い。大半はイランの民族的少数者であるクルド民族かバラーチ民族だが、外国人もいると、これらの事案に詳しい消息筋は述べた。当局は、囚人には、武装活動に参加し、暗殺や殺人を企てるなどした人物や、武装集団を支援したり、その他の方法でイランの治安を脅かした人びとが存在すると主張する。

126人のうち35人は死刑囚で、処刑のリスクが高いと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。多くは内務省の収容施設に数週間から数ヶ月拘禁され、拷問などの虐待を受けたと模様だと、これらの事案の一部に詳しい消息筋はヒューマン・ライツ・ウォッチに述べた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、こうした囚人について複数の事案を詳しく検討した。ザーニヤール・モラーディー氏とログマーン・モラーディー氏、ハメド・アフマディー氏、ジャハーンギール・デフガーニー氏、ジャムシード・デフガーニー氏、カマル・モーラーイー氏は、全員が野党を支持し、テロにかかわったとして起訴された。しかし容疑を否認した上で、治安機関と情報機関によって、何ヶ月にもわたり外界との連絡を絶たれて隔離拘禁され、拷問を受けて、自白を強要されたことを鮮明に証言した。

6月12日、ヒューマン・ライツ・ウォッチと17の人権団体はイラン政府に対し、キャラジ市内の刑務所にいる囚人について、リストに挙げた人びと全員への処刑を停止し、死刑執行の全面的一時停止を実施するよう求めた

死刑囚のうち少なくとも1人、バルザン・ナスロッラーザーデ氏は、犯罪を行ったとされる時点で18歳未満だった。国際法は、イランが締約国である子どもの権利条約を含めて、犯罪を行ったとされる時点で18歳に満たない犯罪者の処刑を禁じている。

「ローハニ大統領は、革命裁判所による裁判の公正さに深刻な疑いがあることを踏まえ、死刑執行の即時一時停止を明確に求めるべきだ」と、前出のストーク局長代理は述べた。「またイランは、法に基づく権利を行使したことを理由に拘束されている人をすべて釈放すべきだ。」

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