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(ラバト)- モロッコの控訴裁判所が7月2日、同性愛行為に対する一審の有罪判決を認容。モロッコ中央部で、少なくとも6人の被告のうち4人が刑法第489条を適用されて有罪判決を受けた。罪状には「同性とのわいせつまたは不自然な行為」が含まれている。

性的指向に基づく差別的訴追の問題性はもちろん、当該事案は公正な裁判に対する懸念をも喚起するものだ。ベニメラルの控訴裁判所は、取調べ中の自白のみを根拠にした有罪判決を支持した。6人の被告全員が公判中にこれら自白を撤回、調書に署名したのはひとえに警察の脅迫によると主張したと、弁護人のひとりハッダ・マイダール(Hadda Maidar)弁護士はヒューマン・ライツ・ウォッチに語った。控訴裁判所は証人を一切調べず、その他の証拠も調べなかった。加えて6人の被告全員が法廷で同性愛者であることを否定したという。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東・北アフリカ局局長サラ・リー・ウィットソンは、「モロッコ政府当局は、合意の上で成人同士が親密な行為に及んだことを容疑として訴追・投獄するのをやめるべきだ」と述べる。「6人の性的指向が何であれ、それが原因で処罰されるべきではない。」

当該事案の詳細入手は困難を極めている。公判が行われた場所が遠隔地であったことや、同性愛行為をめぐる刑事事件に関連する人びとの多くが問題を公に語らず、沈黙を守っているからだ。

今年4月、首都ラバトから南に200キロに位置する小さな内陸の町Fqih Bensalahで男性たちが逮捕され、第一審で同性愛行為ならびに売春扇動・公衆酩酊・飲酒運転において有罪となった。1人は3年、2人は2年半、残り4人はそれより短い刑期を科されている。裁判所はまた、刑法第504条が定める「道徳」犯罪の罰として、一部、おそらくは6人全員を当該地からの追放処分とした。7月2日の控訴裁判決では、被告2人の刑期が短縮され、残りは執行猶予となったほか、追放処分は棄却された。

刑期を科された2人は都市部から遠く離れたFqih Bensalahの刑務所に収監されている。

前述のマイダール弁護士によると、被告の1人は法廷で、酔って自分の車に女性を招きいれたと思ったら実際は男性だったと証言したという。この被告はそれ1点を除きすべての罪状で無罪を主張した。

当該事案のそのほかの訴追内容が刑罰に値するものであったか否か、そして裁判が公正であったか否かにかかわらず、モロッコ政府は同性愛を理由にした訴追をやめるべきだ。

刑法第489条は同性愛行為に6ヵ月~3年の刑期および200~1,000ディル(24~120米ドル)を科すと定めている。

2007年には同国北部の町Ksar el-Kbirの裁判所が、第489条を適用して6人の男性に有罪判決を下している。彼らは、マスメディアが「同性婚の披露宴」と報道したユーチューブ上のプライベート・パーティーに出席していたとされ、警察に逮捕された。

成人同士の同意に基づく同性愛行為を犯罪とすることは、国際法が保障する基本的人権に対する違反である。モロッコは1979年に市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約、以下ICCPR)を批准。同規約はプライバシー権の侵害を禁じている。国連人権理事会はICCPRに抵触するとして、合意の上での同性愛行為を禁ずる法律を非難してきた。恣意的拘禁に関する国連作業部会も、こうした行為を理由にした逮捕は定義上の人権侵害であると示している。

モロッコの2011年憲法前文は、「性別・肌の色・信条・文化・社会的または地域的起源・言語・障がい、または個人的なあらゆる状況を理由にした差別をすべて禁じ、闘う」と謳っている。

前出のウィットソン局長は、「もしモロッコ政府が人権擁護における地域のリーダーとなることを望むのであれば、同性の成人同士が合意の上で私的行為に及ぶことを禁ずる法を廃止すべきだ」と指摘する。

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