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中国:香港の民主主義には干渉しないとの公約を守るべき

政府の意向に左右される選挙制度は国民参政権を脅かす

(ニューヨーク)-中国政府は2017年に予定されている香港特別行政区行政長官選挙結果に干渉すべきでなく、香港市民が望む候補者を自由に選べるようにすべきである。中国中央政府高官は2013年11月22日、中央政府が承認した個人のみが立候補できるようにする、適性審査制度を設ける方針であることを示唆する発言を行った。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長ブラッド・アダムズは、「香港市民に真の民主主義を与えるつもりが全くないことを、今や中国政府はきっぱり明らかにした」と指摘する。「行政長官選挙をめぐり民意を問うとしておきながら、それ以前に中国政府は、香港の統治責任者決定への影響力を維持すると決めてしまった。」

中国政府最高幹部であり在北京の香港基本法委員会の李飛(Li Fei)主任は11月22日、行政長官は「国家を愛し、香港を愛する」人物でなくてはならず、「中央政府と敵対する」人物ではその基準を満たさないと述べ、2017年の普通選挙実施をめぐり中国政府の強い見方を示した。この発言は、李氏の前任者である喬暁陽(Qiao Xiaoyang)氏と、中央人民政府駐香港特区連絡弁公の張暁明(Zhang Xiaoming)主任が示した同様の見解を引き継ぐかたちとなった。

李氏は更に、香港基本法で義務づけられた行政長官選出のための選挙委員会の構成員は、選抜された香港市民の一部に限定されるであろうこともつけ加えた。同委員会が出馬できる立候補者を「集団で」決定することになる。これは、香港の全有権者を選挙委員会の「委員」とみなし、推薦公認の定数に達した個人なら誰でも出馬が可能となる選挙制度を推す、民主主義推進派団体の近時の提案に対抗するものとして打ち出された。

李発言があったのは、選挙をどのように実施すべきかについて、香港政府が「一般公開協議」を開始せんとした間際のことだった。民意を問う提案を選択したのは香港政府であることから、同発言を受けて公開協議の観点を狭い選択幅に制限し、行政長官の候補者として好ましくない個人を除外する可能性が考えられる。

これまで、大半が中央政府支持者で構成された選挙委員会によって選ばれてきた行政長官だが、香港基本法は「幅広く市民を代表する選挙委員会が民主的手続きに沿って推薦した候補者を普通選挙」で選ぶと規定。また、2007年以降に香港が基本法を3段階で改正し、この目標に向かって前進できる旨も定めている。第1段階は立法会(議会)議員の3分の2が改正を承認すること、第2段階は現行政長官が改正に同意すること、最終段階は中国の最高立法府である全国人民代表大会常務委員会(NPCSC)にその承認を求めて報告すること、である。

しかし、選挙改革をめぐる決定は香港市民の手にあるという公約は、2004年4月6日に全人代常務委が基本法に関してある「解釈」を加えたことで打ち砕かれた。選挙改革に関しては、一貫して中央政府が決定権を持つ、と裁定したのだ。香港の選挙改革の成り行きを決定する権限を増大させた後の2004年4月26日、同委は2007年の行政長官および2008年の立法会議員の選挙は普通選挙としないことに決定。2007年には、2012年の選挙でも普通選挙は実施しないことを決定したが、2017年と2020年の行政長官選挙と立法会選挙は、それぞれ普通選挙で行われる「可能性がある」と述べている。

反体制派の候補者をあらかじめ除外する選出過程は、国際的な人権基準に違反する可能性がある。香港が植民地だった時代に、英国は市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下ICCPR)に署名しており、同規約は現在の香港にも継続して適用されるものだ。その第25条(b)は、「普通かつ平等の選挙権に基づき秘密投票により行われ、選挙人の意思の自由な表明を保障する真正な定期的選挙において、投票し及び選挙される」権利を保障している。世界各国における同規約の実施状況を監視している独立した人権専門家の団体、国連人権委員会は、所属政党を根拠にした個人の除外は「不当」かつ「差別的」であると明確に述べている。同委員会はまた、法律が立候補者の推薦に一定要件を義務づけている場合、「その要件事項は妥当で、立候補への障害として作用するものであるべきではない」としている。

香港政府と中央政府派の政治家たちは、英国が1976年のICCPR署名に際し、香港に関するICCPR第25条(b)の規定適用を保留にしたことを根拠に、同条は香港に適用されない、と主張してきた。しかしながら国連人権委員会は、英国政府による保留は特に選挙導入に関するものであり、ひとたび選挙が実施されれば第25条に従うべきである、という立場を維持している。現に行政長官が選挙を通じて選ばれている以上、同条が保障する原則は適用されるのである。2013年4月に香港地域内のICCPR遵守状況を最後に審査した際、国連人権委員会は香港政府に、「今後のあらゆる選挙に対する優先事項として、規約に沿った普通かつ平等な選挙を実施するために必要な、あらゆる措置を講じる」よう求めた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは香港政府と中央政府に、普通かつ平等な選挙実施に向け期限を定めた、詳細な実行計画を策定することを含む、速やかな行動を強く求めた。2017年行政長官選挙に向けた一般公開協議に関する提案が、必ずICCPR規定をはじめとする国際人権基準に見合ったものであることを、両政府は保障すべきだ。立候補者の推薦を目的に設置されたいかなる委員会もまた、こうした義務要項に従うべきだ。

前出のアダムズ局長は、「選挙改革に関する公約を反故にする企てを考案するのに時間を費やすのではなく、中国政府は真の普通選挙に向けて前進すべきだ」と述べる。「真に望むは民主主義であることを香港の人びとは常にはっきりと示してきた。中国政府の計略は、領土内における自らの正当性を損なうだけだ。」

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