(ベイルート)- イラン政府による非暴力の集会と結社に関する労働者の権利への侵害はますます強まっている。労働運動家と独立系組合活動家数十人が、労働者を守るために声を上げたとして現在も獄中にある。ヒューマン・ライツ・ウォッチはメーデーを前に、イラン政府に対し弾圧を止め、投獄中の労働運動家を釈放するよう求めた。この呼びかけは労働者の窮状を訴えるイラン内外の人権団体による国際キャンペーンの一環である。

労働者の権利擁護団体筋によれば、イランでの労働者の権利を巡る状況は、マフムード・アフマディーネジャード(アフマディネジャド)政権になっていっそう厳しくなった。治安部隊の嫌がらせにあったり、恣意的に逮捕されたりするスト労働者の数は増えている。逮捕後には政治的動機に基づく起訴が行われ、不公正な裁判にかけられる。

「イランの労働者は、集会と結社の自由など基本的権利を求める闘いの最前線に立っている」とヒューマン・ライツ・ウォッチ中東局長サラ・リー・ウィットソンは述べた。「同国の労働者が、批判の封じ込めを狙う政府の弾圧の最初の犠牲者になるケースが多い。」

イラン政府は労働者の組織化を妨害し、労働運動家に弾圧を加えており、労働者は政策や労働条件に影響を及ぼすような意見表明ができずにいる。現在イランは不況にあえぎ、多くの人が貧困に見舞われているが、こうした現在でも状況は変わらないとヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

イランでは政府から独立した労働組合は禁止されている。現在二桁に上る労働運動家が、集会と結社の自由の権利を行使したとして投獄されている。このほか保釈金を払って釈放された事例も多い。この場合には革命裁判所での審理は中断扱いになる。

最近では2013年4月15日、当局は治療のため仮釈放されていた組合指導者のレザー・シャハービー氏に出頭を命じ、首都テヘランのエヴィーン刑務所に再収容した。氏には「反体制プロパガンダ」と「国家の安全を脅かす行為」で6年の刑が宣告されていた。シャハービー氏はテヘラン・近郊バス会社労働者組合(SWTSBC)の財務担当だ。独立労組である同組合はこれまでも当局から繰り返し弾圧を受けている。

3月初めに当局は、コルデスターン州の州都サナンダジュで著名な労働運動家を少なくとも7人逮捕した。容疑は「国家の安全」に関わるものと見られる。

2013年の初め、労働法令の発布を担当する政府機関の労働最高評議会は、来年の最低賃金を25%引き上げた(月額487万リヤル、約3万9千円)。イスラーム労働評議会でテヘランの労働者を代表するグループの1つは労働最高評議会の決定に対し、引き上げ幅の拡大を求めて公式に異議を唱えた。イスラーム労働評議会は、独立労働組合に代わり労働者の権利擁護のため活動するとされる政府公認の組織。イラン労働法第41条は当局に対し、最低賃金の設定にあたってはインフレ率を考慮するよう定めている。公式のインフレ率は32%弱だが、エコノミストの多くは実際には50%を越えていると見ている。

イラン労働法は、イスラーム労働評議会など政府公認組織から独立した労働組合を結成する権利を認めていない。しかし労働者は大規模な独立労組を結成している。例えばテヘラン・近郊バス会社労働者組合(SWTSBC)、ハフト・テペ・サトウキビ労働者組合(HTSCW)、イラン自由労働組合(IFWU)である。2005年以降、当局は以上を含めた独立労組に関わる労働者に対する嫌がらせや出頭命令、逮捕、起訴、有罪判決の宣告などを繰り返している。

大半の逮捕は、メーデー行事や、労組が呼びかけたストライキの期間中に起きている。ストは長期にわたって未払の賃金の支払いを要求することが多い。例えば、活動家筋がヒューマン・ライツ・ウォッチに述べたところによれば、サーヴェ・ローリング・アンド・プロファイルズ・ミルズ社 ( Saveh and SAFA Rolling and Pipe Mills Company)がイラン歴の年末にあたる2013年3月、3か月にわたって労働者のうち2,300人への給与の支払いを延期した。またコフギールーイェ・ブーイェル=アフマド州の道路建設事業で働く労働者も7か月にわたり給与の支払いを受けていなかった。

労働者の約8割が非正規であり、短期契約か随意契約で働いている。このため手当もかなり低く抑えられ、雇い主による恣意的な解雇にはほとんどなすすべもないと、労働運動家は指摘する。

事態が特に深刻なのは、もっとも弱い立場に置かれた労働者である女性、子ども、アフガニスタン移民だ。活動家筋によれば、大量解雇の際の最初の被害者は女性だ。健康保険や産休の関連費用も原因となる。労働運動家によれば、女性労働者への法的責任を免れようとし、会社に勤めている間は妊娠しないことを約束するよう圧力をかける会社もある。

15歳以下の子ども労働者も増加している。これは当該年齢に満たない人物の雇用を禁じたイラン労働法第79条に違反する。2012年9月にイラン議会調査センターが公開した数字によれば、非就学児童325万人の9割以上が働いている。

労働運動家筋がヒューマン・ライツ・ウォッチに語ったところによれば、核兵器開発疑惑を理由とした米国とEUの対イラン制裁が、労働者の窮状に追い打ちをかけている可能性がある。制裁強化のあった過去数年間で労働者のレイオフを行う工場は増えた。政府統計によると、イラン国内の約5割の製造工場が生産を既に停止したか停止寸前の状態にあり、大規模工場の多くで稼働率は3割程度だ。政府公認の唯一のナショナルセンター「労働者の家」の責任者によると、2011年5月から2013年5月にかけて10万人以上が失業した。

非暴力的な集会の開催と結社に関する権利を行使したことを理由に、現在も投獄されている労働運動家(教員組合の組合員も含む)の一部の氏名を列挙する。レザー・シャハービー氏、アフシーン・オサーンルー氏、シャールク・ザマーニー氏、モハンマド・ジャッラヒー氏、ベフルーズ・アッラーメザーデ氏、ベフルーズ・ニークーファルド氏、アリーレザー・サイーディー氏、ガリーブ・ホセイニー氏、アリー・アーザーディー氏、ペドラム・ナスロッラーヒー氏、ラスール・ボダギー氏、アブドルレザー・ガンバリー氏、メフディー・ファルヒー=シャーンディーズ氏、シャリーフ・サイードパナーフ氏、モザッファル・サーレフニーヤー氏。アフシーン・オサーンルー氏は虚偽の容疑で3年以上投獄されているが、エヴィーン刑務所とサナンダンジュ刑務所で取調中の拷問によって負傷しているにもかかわらず、治療のための保釈がいまだ認められていない。前述のベフナム・エブラーヒームザーデ氏同様に、ベフザード・ファラージョラーヒー氏、ハーレド・ホセイニー氏、ヴァファー・ガーデリー氏、ハリール・キャリーミー氏は治療目的または保釈金の納付により現在獄外にいる。

労働組合を結成し、加入する権利は自由権規約22条と社会権規約第8条で保障されており、イランはこの2条約を批准している。イランは国際労働機関(ILO)の加盟国だが、1948年の結社の自由及び団結権保護条約(第87号)と1949年の団結権及び団体交渉権条約(第98号)への署名を拒否している。イランは子どもの権利条約と1999年の最悪の形態の児童労働条約(第182号)を批准している。ただし1973年の最低賃金決定条約(第138号)は批准していない。

「イラン経済低迷の原因が制裁かその他にあるかは別として、労働者には組織化し、ストや座り込みを行い、自らが有害だと判断した政策に反対意見を述べる権利があるのが当然である」と前出のウィットソンは指摘した。「己の権利を行使しようとする労働者への弾圧が強まっていることは、イラン政府の国民への義務を甚だしく損なうものだ。」