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国連:ジェンダーアイデンティティについて 画期的な投票

性自認を理由とする超法規的殺人を非難する 史上初の決議

 

以下の声明は、20121121日、国連が採択した画期的な決議を受けて出されたものである。国連は初めて、ジェンダーアイデンティティ(性自認)を理由とする殺人を含む、超法規的殺人を非難する画期的な決議を採択した。

各国政府が画期的決議の採択で、超法規的処刑を非難

ジェンダーアイデンティティを理由とする超法規的な殺人について、

初となる歴史的な非難決議

(ニューヨーク)-国連総会の第3委員会において、超法規的な、正規の手続きを経ずに即座、若しくは恣意的に行われる処刑を非難する決議A/C.3/67/L.36が採択されるという歴史的投票結果を、人権団体から成る国際的グループは大きな喜びとともに歓迎した。2010年の同委員会では、「ジェンダーアイデンティティ」に言及した部分が決議文から削除されてしまったが、今回の投票は、これを覆した。さらに国連総会は、歴史上初めて「ジェンダーアイデンティティ(以下性自認)」を決議文に盛り込み、人権の普遍性に対する自らのコミットメントを拡大したのである。

第3委員会から2年に1度発表される今回の決議は、差別を原因とする殺人事件の捜査を行うことを各国に要求し、全ての人びとの生存権を保護するよう強く求めている。決議はスウェーデン政府が提案し、世界34ヶ国が共同提出した。

過去12年にわたり、この決議は各国に「性的指向を含む、差別を原因とするあらゆる殺人事件を・・・速やかかつ徹底的に捜査すること」を、強く求めるに留まっていた。国連人権理事会の決議第17/19を除けば、この決議文は性的指向に具体的に言及する唯一の国連決議となる。今年初めて、「性自認」という言葉が、超法規的殺人の標的にされやすいカテゴリーのリストに加えられた。

火曜日の会議において、イスラム協力機構(Organization of Islamic Cooperation)を代表して演説したアラブ首長国連邦は、決議文から「性的指向と性自認」への言及を削除し、「もしくはその他のいかなる理由によっても」という表現で代替する修正案を提案した。UAEの提案は、賛成41、反対86、棄権31、欠席32で否決された。また、処刑対象となる危険の高いグループに対する全ての具体的言及を削除しようとするローマ教皇庁の案も、正式に提案されることなく終わった。

さらに、国際法に違反した手法で行われる死刑という方法で犯される恣意的殺人の事例が続いていることに対して「深刻な懸念」を表明するという文言も、シンガポールによる削除の動きがあったが、第3委員会は持ちこたえた。シンガポールの提案は賛成50、反対78、棄権37、欠席30で否決された。

決議の全文は賛成108、反対1、棄権65、欠席19で採択された。

ブラジル、米国、南アフリカを含む多くの政府が、性的指向と性自認への言及を削除しようとする修正案に対して、強く非難する演説を行った。国連総会でLGBTの権利についてアジアの国々はほとんど「沈黙」してきたが、今回日本政府はこの過去を打ち破り、以下のような演説を行った。「我が国は、性的指向や性自認を理由に、人びとを殺すことを容認できません。我が国の代表は、文案への修正提案に反対を投じました。LGBTの権利を守るという観点からこうした殺人に言及することに意味があると我が国は考えるからです。」

一部の政府は性的指向や性自認への言及を厳しく非難。スーダンはアラブグループを、イランとアラブ首長国連邦はイスラム協力機構をそれぞれ代表しその旨の非難を行った。トリニダード・トバゴは、「性自認」への具体的言及は同国にとって「格段の問題」をもたらすと発言した。エジプト政府は「性自認のようなあいまいな概念を、人種・肌の色・性別・宗教・言語を根拠にした他の差別と同列に並べ、正当化しようとする試みに重大な懸念を抱く」と頻繁に発言した。性的指向と性自認に言及してエジプト政府は「新しい権利もしくは基準を作ろうという試みにも、我が国は警戒感を抱いている」とも発言している。

総会での投票結果は劇的だった2010年決議をさらに発展させるものだ。国連総会第三委員会は2010年当時、「性的指向」の削除を、賛成79、反対70、棄権17、無投票26で採択し、「性自認」については触れていなかった。しかし事態の異例の転換をみせ、その後、総会に決議案が提出され、賛成93、反対55、棄権55、欠席又は無投票17の投票結果で、「性的指向」の文言の復活が採択された。

決議に「性的指向」を含め、「性自認」を加えることを支持することを、各国は火曜日に決定した。この新たな動きは、性的指向と性自認にかかわらず差別から保護する必要性があるという認識が高まりつつあり、国連や地域人権機関で前向きな動きが相次いで起きているという文脈の中で起きたことだ。性自認とその表現を理由に殺害された人びとに捧げられた「トランスジェンダーの日」に、この決議の対象範囲が拡大され「性自認」を盛り込まれたことは特筆に値するといえよう。

投票

● シンガポールの修正案に対する投票結果の詳細は、こちら。投票の様子の写真は、こちら

● 性的指向と性自認の削除に向けた、アラブ首長国連邦の修正案に対する投票結果の詳細は、こちら。投票の様子の写真は、こちら

● 「超法規的な、正規の手続きを経ずに即座、若しくは恣意的に行われる処刑を非難する決議」を採択した投票結果の詳細は、こちら。投票の様子の写真は、こちら

 

各人権保護団体の反応

アムネスティ・インターナショナル (国際団体)

国連代表ホセ・ルイス・ディアズ 

「この決議は、国連が現在に至るまで殆ど検討しなかった、人権を侵害する死刑とそれに類する行為に対して新たな視点でスポットライトを当てています。そして第3委員会は強力なメッセージを送っています。全ての人びとが超法規的な殺人と処刑から保護されなければならないということを再び強く確認するとともに、シンガポールなどの国が揉み潰そうとした文言を守り、人権と法の支配の基本的原則を堅持すべきである、というメッセージです。」

ARCインターナショナル(国際団体)

共同理事キム・バンス

「今や、世界の半数以上の国が意見を表明している。我々はLGBTの権利に未だ反対している少数派の国々に、各国の法律を国際基準に合わせることを求めます。」

トランスジェンダー者の平等を求める世界行動(GATE)(国際団体)

共同理事マウロ・カブラル

「性自認が超法規的処刑に関する決議文に盛り込まれたことは、トランスジェンダー嫌悪を動機とする暴力によって殺された人びとを悼む「国際トランスジェンダー追悼の日」であるまさに今日、世界中のトランスの人たちにとって歴史的な橋頭保です。性自認に関する文言は、この決議の趣旨に沿って、トランスジェンダーへの暴力の廃絶に大きく貢献することに間違いありません。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチ (国際団体)

LGBTプログラムのアドボカシーディレクター ボリス・ディトリッヒ

「個人の生命、自由、安全への権利は、人類の基本的な権利です。性的指向や性自認を理由に、多くの人びとが次々に殺されている実態は、本当に心が痛みます。今回の投票を通じて、世界の国々の過半数はこの深刻な問題を深く認識し、その是正を求めているのです。」

国際ゲイ&レズビアン者人権委員会(International Gay and Lesbian Human Rights Commission)(国際団体)

代表のジェシカ・スターン

「昨日の国連での投票において、世界中の政府の過半数が、憎悪主義を断固として拒絶し、シンプルですが根本的な前提である「LGBTは存在する権利がある」ことを再確認しました。見方によっては、今回の決議のハードルは低いかもしれませんが、進歩は積み上げるものです。世界中のすべての場所、すべての人びとに対する人権の進展への歩みは、一歩ごとに祝福されねばなりません。」

多様性の尊厳に向けたトランスセクシュアル者組織 (Organización de Transexuales por la Dignidad de la Diversidad)(チリ)

理事のアンドレ・リベラ・ドュアトレ

「この決議の採択は、トランス(性転換、トランスジェンダー、トランスベスタイト、インターセックス)、レズビアン、ゲイ、バイセクシャルの人びとの生命と尊厳を、法的プロセスを経ずに奪うことはできないと認めたのです。今もなお、性的指向や性自認を理由に、社会や人間として恥ずべき異常者として人びとが処刑、もしくは殺されています。今日、各国は意見を公に表明しました。命は権利であり、個人の性的指向と性自認に関わらず保護する義務があると各国は認めたのです。今日、市民社会の苦労が報われました。人権の更なる前進に向けて、我々はさらなる先を目指します。」

RFSL:スウェーデン・レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー連盟(スウェーデン)

代表ウルリカ・ウェスターランド

「性自認を根拠に迫害されてきた人びとを初めて明確に盛り込んだこの重要な決議において、主導的役割を果たしたスウェーデン政府を私たちは高く評価すると共に、その結果に大変満足しています。」

Sayoni(シンガポール)

ジェーン・チョン

「シンガポールのLGBT国民として、シンガポール政府が超法規的殺人を止めるため、今回の決議にSOGI(性的指向と性自認の略語)を盛り込むことに賛成したことを称賛します。これは、あらゆる人間の命の尊厳を認めるという明確なメッセージを表明しています。しかし私たちは、シンガポール政府が決議採択については棄権したのには失望しています。今回の棄権は世界中のLGBTIQ(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー・インターセックス・クエスチョニング=性自認未確定)の権利を更に守るチャンスを逃しただけでなく、自国民の運命に何の配慮も表していないことを表わしています。」

スペクトラム(ウガンダ)

モーゼス・ムリンドゥワ

「性的指向や性自認を理由にした殺人を合法化してはいけない。」

SPoD– 社会政治、性自認、性的指向 調査協会 (トルコ)

国際コーディネーター オヌル・フィダングル

「SPoDは、性的指向と性自認の両方を決議文に盛り込むという、国連総会の決定を歓迎します。性自認を盛り込むという歴史的な投票結果は、LGBTが超法規的処刑から保護されなければならないという明確なメッセージを、全ての政府に送っています。」

「しかしながら、極めて重要な決議の採択の投票をトルコ政府が棄権し、性的指向と性自認を根拠にした保護を盛り込むか否かの投票を欠席しました。毎年トルコ国内では驚くほど多くのLGBTが殺害されているにもかかわらず、このトルコ政府の行動に私たちは深く失望しています。」

TLF・シェア(フィリピン)

理事 ジョナス・バガス

「超法規的処刑に反対する国連の歴史的投票結果は、性的指向と性自認を理由にした恐ろしい処刑に対して各国で連携して反対してゆくという強いメッセージを、国際社会に送っています。世界の多くの国々に根強くはびこる、重大な人権侵害の形態をのさばらせてきた沈黙の壁を、我々は破ったばかりです。このことがLGBTの超法規的処刑の終焉に繋がることを期待しています。しかしながら、フィリピン政府が棄権した事に我々は失望しています。EJE(超法規的処刑の略)に関して政府が沈黙することによって、LGBTに対する看過できない人権侵害を見逃していることを、フィリピン政府は認識すべきです。」

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