A shelter on the grounds of Sadanga National High School, Mountain Province, used as quarters by soldiers of the 54th IB, Charlie Company, on November 18, 2011.

© 2011 Jake Scobey-Thal/Human Rights Watch

(ニューヨーク)-政府軍や武装集団が学校などの教育機関を軍事目的で利用しており、その結果、世界中の生徒と教育が危険にさらされている、と「教育を攻撃から守る世界連合(Global Coalition to Protect Education from Attack:以下GCPEAとも)」が本日発表の調査報告書内で述べた。

調査報告書「砲火の中の授業:紛争下での教育機関の軍事利用」(全77ページ)は、紛争あるいは悪化した治安の下で、政府軍、親政府勢力、反政府武装勢力などが、軍事目的で教育機関を利用している実態を調査。学校が、兵舎、兵站基地、作戦本部、武器弾薬貯蔵庫、拘留尋問センター、発砲陣地、偵察基地、新兵募集地などとして利用されている実態を明らかにした。

教育を攻撃から守る世界連合(GCPEA)のディレクターのディヤ・ニジョ-ネ(Diya Nijhowne)は、「軍隊が学校内に基地を設立した瞬間に、学校は攻撃目標に変わる」と述べる。「軍は学校や大学を利用すると、たいてい軍の利便性を生徒の安全と教育よりも優先させてしまう。」

世界各国政府が、政府軍や武装勢力が紛争時に学校などの教育機関利用することを制限する政策および法律を採用すべきだ、とGCPEAは提唱。

2005年1月〜2012年10月までに起きたアフリカ、アジア、欧州、中東、南米の少なくとも24の国(同期間に武力紛争があった国で、明らかな多数派)で、政府軍や武装勢力が教育機関を利用した事実を、本調査報告は明らかにした。

兵士は学校全体を占拠することもあるが、多くの場合は、いくつかの教室、階全体、運動場など、学校あるいは大学の一部を利用するだけである。しかしそれでも、生徒たちは攻撃などの暴力の危険にさらされる。最悪のケースでは、子どもが死傷し、学校は損壊あるいは完全に破壊される。軍の学校利用を理由として、強硬な反対勢力が学校に攻撃をしかけるのだ。

生徒たちの安全は、きちんと訓練を受けていない兵士や無規律の兵士が学校内で非行を行うことによっても、損なわれる可能性がある。たとえば、性的虐待や嫌がらせと、事故あるいは銃火器の誤発砲や武器の暴発などの非行・事故が起きる可能性がある。

前出のニジョーネ ディレクターは「各国で紛争が起きた時、教育施設は戦場になることが日常茶飯事だ」と指摘する。「武力紛争時であっても、安全な教育へのアクセスが優先されるべきである。武装部隊は、生徒の教育を受ける権利を尊重する必要があるという、明確なメッセージを各国政府は出さなければならない。」

教育機関の軍事利用は、すでにぜい弱な教育インフラや制度を損なう危険がある、とGCPEAは述べる。学校などの教育機関の軍事利用のせいで、高い退学率、入学者の減少、低い高等教育進学率、教室内の過密、授業時間の損失などの教育的悪影響があり、女子は特に多くの悪影響を受ける。

安全な学びの場の提供こそが、武力紛争下の学生にとって重要な保護となる、とGCPEAは述べる。命を救う情報の提供、戦争による心理的影響の緩和、武装勢力による人身売買や新兵募集から子どもをまもるのが、安全な学校や大学である。質の高い教育は、長期的にみれば平和と紛争後の和解を促進すると共に、自らの人生を切り開き、コミュニティーに繁栄をもたらすのに必要な若者の技術と能力の向上を助ける。

国際人道法は学校建物の軍事利用全面禁止までは盛り込んでいないものの、生徒と教師が教育目的で学校建物を使用している時に、政府軍と武装勢力がこれを使用することを禁じている。国際法上、教育機関の軍事利用は、教育機関を合法的な軍事目標に変える可能性があり、生徒と教師が敵勢力の攻撃を受ける危険にさらされることになる。仮に物理的攻撃がない場合でも、学校と大学の利用の可能性、教育の質、学ぶ機会を低下させることは、国際人道法上定められている教育を受ける権利の侵害に繋がる可能性がある。

本調査報告書は、各国政府がすでに採り入れている教育施設の軍利用を明確に禁止もしくは制限する政策の例など、よい実践例も強調。たとえば、アイルランドフィリピンは、軍が学校を利用するのを禁止する国内法を備えている。インドとコロンビアの裁判所は、学校を占拠していた政府軍部隊に撤去命令を出した。フィリピンコロンビアは、学校の軍事利用を禁止する政策をすでに採用している。国連平和維持活動局(DPKO)は、平和維持部隊が作戦活動中に学校を利用しないよう義務づける新たな歩兵大隊マニュアルを公表したばかりだ。

また本調査報告書は、各国政府、地方団体、関係国際機関に、予防介入、緊急対応、現行法に違反した個人あるいは団体に法律および法律外ともに責任追及措置を採ることなどを含む、実行的で組織的な対応を立案し、教育機関の軍事利用を厳しく監視するよう求めている。

「学校を危険にさらさずに軍事活動を展開できることを学んできた各国政府は、自らの戦争体験に基づき、他国にも自分たちの先駆的措置にならうよう働きかけるべきだ」と前出のニジョ-ネ ディレクターは指摘。「学校と大学は、軍と恐怖の場ではなく、学びと安全の場であるべきだ。」

2005年1月〜2012年10月までの間に、教育機関を軍事利用したことが報告されている国は、アフガニスタン、ビルマ/ミャンマー、中央アフリカ共和国、チャド、コロンビア、コートジボワール、コンゴ民主共和国、グルジア、インド、イラク、イスラエル/パレスチナ占領地、リビア、マリ、ネパール、パキスタン、フィリピン、ソマリア、南スーダン、スリランカ、スーダン、シリア、タイ、ウガンダ、イエメンの24カ国である。

GCPEAは、武力紛争時の生徒・教師・学校・大学への攻撃問題に取り組む、緊急事態下での教育・高等教育組織・国際人権・国際人道法分野で活躍する国連諸機関および団体の連合体。GCPEAの運営委員会は、「Education Above All」「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」「セーブ・ザ・チルドレン・インターナショナル」「Scholar Rescue Fund」「国連教育科学文化機関(以下ユネスコ)」「国連難民高等弁務官(UNHCR)」「国連児童基金(ユニセフ)」からなる。本調査報告書「砲火の中の授業:紛争下での教育機関の軍事利用」は、GCPEAが委託して作成された独立した外部調査である。GCPEA運営委員会の委員である各団体からも独立して作成されたものであり、同運営委員会のメンバー団体の見解を必ずしも反映したものではない。