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Foster mother Asako Yoshinari and her foster child at a park near her home in Inzai, Chiba prefecture, Japan, June 24, 2016. © 2016 Toru Hanai/Reuters

「愛してくれるわけじゃないんです」と、2012年にケンジ・Mさん(当時17)は私に語りました。ケンジさんは、当時入所していた東京都内の児童養護施設の職員についてこう語りました。「たいていの職員は、仕事だから僕たちの相手をしているみたいに思えてしまう」。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの10年前の報告書に登場してくれたケンジさんは、3歳から児童養護施設で暮らしていました。ケンジさんの言葉は、親が養育する意思又は能力がないため子どもたちをどう養育するかという日本の社会的養護制度の根本的な問題を言い当てていました。つまり、お金の問題です。日本の政府・自治体は民間の乳児院・児童養護施設に措置費を支払っていますが、この金銭的インセンティブ構造が、改革に対する施設側の抵抗の原因になっています。そして、子どもたちを、愛情をもって子育てする家庭に委託するよりも、施設に入所させるというインセンティブを作り出しているのです。

しかしこの4月から、日本では新たな制度が施行されています。これまでの損得計算が変わっていくきっかけになる可能性があります。

2022年6月に成立した改正児童福祉法で導入された新制度では、乳児院・児童養護施設などを運営する法人が、「里親支援センター」を設置してかわっていくことで、義務的経費を得ることができます。このセンターは里親のリクルート、トレーニング、里親とのマッチング、里親への支援、里親に委託された子どもの自立に向けた支援などを行います。

たとえば、児童養護施設が里親支援センターに転換したとして、登録里親家庭数に応じた人数の専従職員の人件費が国と都道府県から支援されることになります。

今回の制度改正は、子どもの権利の活動家・専門家や国会議員たちが、その数は少ないながらも、10年以上にわたって粘り強い取り組みを懸命に重ね、施設側の強力なロビイングに屈せず実現させたものです。

私がケンジさんに会った10年前、日本ではおよそ4万人の子どもが社会的養護の対象となっていました。このうち里親委託は12%に満たず、ほとんどが施設入所でした。日本政府は2017年、社会的養護の対象となる乳幼児の75%超、学齢期以降の子どもの50%超を里親に委託するという数値目標を設定しました。しかし、2021年度末の時点で、里親等委託率は24%どまりです。

今回の改革はたしかに重要な一歩です。一方、乳児院のすみやかな全面廃止などのさらなる改革が必要です。

日本で暮らすすべての子どもに、家庭で暮らす権利があります。もしそれが産みの親との間でかなわないのなら、施設ではなく、近しい親戚や養親、里親など、子どもたちを真に愛してくれる環境での社会的養育がなされるべきなのです。

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