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中国:違法な自宅監禁を止めよ

中国共産党第18回全国代表大会が近づき 自宅監禁される活動家 胡佳

アップデート:1025日、胡佳氏は警護のもと北京を離れ、安徽省にある故郷の村に向った。警察は11月末に第18回党大会が終わるまで北京に戻らないよう、またオンラインでの発言を控えるよう指示した。

(ニューヨーク)-中国の著名な活動家・胡佳(Hu Jia)氏について、中国政府がおこなっている不法な自宅監禁を止めるべきだ、との考えを、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。ここ数週間、治療のためを除いては、必要不可欠な所用のための外出さえ妨げられ、移動の自由への制限の強化が著しい。彼はこれまでも何度も自宅監禁されたことがあるが、現在の自宅監禁の期間は、2011年6月に彼が刑務所から釈放されて以降では最も長い。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国部長ソフィー・リチャードソンは「胡佳氏にとられている厳しい措置の強化は、中国共産党第18回全国代表大会の時期が近付くとともに、他の活動家についてもとられる措置の前兆かもしれない」と指摘。「不法な自宅監禁は、警察国家の手法であり、法律に従って統治を行っていると主張する国家のやることではない。」

胡佳氏は、中国の最も著名な人権保護活動家の1人であり、08年にはサハロフ賞を受賞。しかし、12年9月18日以来、治療を受ける場合を除いて、警察から外出を禁じられている。北京市通州区にある高層アパートの林立する住宅街「ボボ自由都市」にある胡佳氏のアパートを、7~8人の公安警察官が24時間体制で監視し、生活必需品の買い物や家族への訪問、また友人に会うためなどの所用で出かけようとする胡佳氏を公安が妨害している。胡佳氏の外出が唯一許されたのは、慢性肝臓病の治療を受けるための外出で、複数の警官による尾行がついていた。

9月19日には、両親のもとへと外出しようとした胡佳氏を、複数の警察官が妨害。40分間にわたって罵倒、彼を「売国奴」と呼び、インターネット上の「国を売る」投稿を削除しなければ、何らかの「結果」を招くと脅迫した。2012年9月初旬にも同様の事件がおき、警察は外出しようとする彼を阻むため、身体的暴行を加え、肘と胸に怪我を負わせている。

人権活動を理由に2年半の刑を受けた胡佳氏は、11年6月に刑務所から釈放された。それ以降も、熱心な人権活動を続ける胡佳氏は、盲目の活動家 陳光誠氏が12年4月に19カ月に及ぶ自宅監禁から脱出した際には、彼を支援。また、投獄されているノーベル平和賞受賞者 劉曉波氏と、やはり自宅監禁され続けている劉氏の妻・劉霞氏への支持も明言している。12年7月に警察は、胡氏への新たなパスポート発給と、香港・マカオへの旅行に必要な書類の発行を拒否。香港に住む妻と娘のもとを訪問できなくした。

「自宅監禁は、反対意見を持つ人びとを脅迫し沈黙させるために、中国政府が使う十八番」と前出のリチャードソン中国部長は指摘。「法律上全く根拠がない、恣意的で政治的動機に基づく措置を象徴するものだ。」

長期にわたる自宅監禁生活を強いられている人びとには、ほかにも、劉曉波氏の妻である劉霞氏や、著名な上海の人権活動家の馮正虎氏らがいる。

劉霞氏には一切の犯罪容疑もかけられておらず、起訴や有罪判決言い渡しも受けていないが、10年10月以来、北京の自宅に監禁され続けており、その事態を彼女は「国家の人質」と譬える。彼女の監視を職務とする女性警官2人が彼女の自宅に入りこみ、複数の看守が自宅敷地の内外に常駐している。最近のBBC報道で家族の友人の1人が話していたところによると、警察官同伴で母親と親しい友人を時折訪問する以外、外出は許さないという。ノーベル賞を受賞した夫の劉曉波氏は「国家権力転覆扇動罪」に問われて懲役11年の刑を言い渡され、北京から500km近く離れた黒竜江省で服役中だが、警察は劉霞氏に対し、彼への面会は2~3カ月ごとに認めている。

馮正虎氏は、母国への再入国が中国政府に不法に拒否されたことに抗議するため、09年に12週間、日本の成田空港で寝泊まりを続けたことで有名になった。12年2月以来警察によって自宅に監禁されている。彼は警察の取り調べで外部に連行される際をのぞいて、外出を許されていない。警官約24人の警護特務部隊が、24時間体制で監視し、更に2月以来警察は彼の自宅を数回にわたって家宅捜索している。9月19日には、医者に通う妻の付き添いのためにアパートから出ようとしたところ、警官数人から暴行を受けている。

正式な拘禁措置をとると国際的な注目を浴びてしまうが、自宅監禁措置や、警察のいうところの「自宅軟禁」は、そうした注目を浴びずにすむ。よって、中国政府が体制に批判的な人たちの口を封じたいイベントがある前後に、増加することが多い。過去の全国代表大会や、08年オリンピックの直前、「アラブの春」の時には、毎回数十件もの自宅監禁事件が起きた。中国の法律には、自宅監禁を行える根拠は全くない。従って、いつ自宅監禁されるのか、いつそれが終わるのかなどはわからない。また、「自宅軟禁」下に置かれた人びとは、極めて恣意的な処遇に遭い、たとえば外出や生活必需品の買い物、来客の受け入れ、電話やインターネットでの連絡通信、さらに、医師による治療を受けることさえ、できるのか否かについて前もっては分からない。外出を許された場合でも、警察に尾行されたり警察車両で移動させられたりする。「自宅軟禁」に異議を申し立てる手続きは存在しない。

この「自宅軟禁」制度の超法規的性格ゆえ、政府は個人に対する制約を課している事実について、公の場や外交の場で否定することができてしまう。たとえば、山東省の自宅で19カ月以上監禁されていた陳光誠氏の場合も、そうした事実を何年も否定していたし、劉霞氏に対する制約についても現在否定している。2010年10月13日に劉霞氏の自宅隔離拘禁について問われた時、外務省スポークスマンは、「あなたが何をおっしゃっているのか分かりません。私はその件を存じておりません」と述べている。

政府はまた、1989年6月の大虐殺(天安門事件)記念日の直前や、毎年1回の全国人民代表大会、5年毎に開かれる共産党全国代表大会など、政治的に微妙な時期であると考えた際には、より短期間の自宅監禁もしている。共産党第18回全国代表大会は、中国共産党及び中国の指導部交代を正式決定する見込みで、2012年11月8日に開催される予定だ。

「著名な批判者を自宅監禁する措置は止めなければならない。胡佳氏や劉曉波氏のような人びとを釈放するかどうかや、自宅監禁のような方策を取ることを今後は控えるかどうかが、新たな指導部の試金石である」と前出のリチャードソン部長は語っている。 

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