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(バンコク)今年8月下旬、中国政府は少なくとも4千人のカチン民族の難民をビルマ北部の紛争地域に送還した。これは国際法に違反する行為である、とヒューマン・ライツ・ウォッチは中国外務省宛の本日付書簡で述べた。

中国政府は、カチン難民に難民認定を申請する機会を与えないまま強制送還を実施した。同国政府は申請を受け付ける代わりに、カチン民族は難民でないと直ちに宣言し、難民に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)へのアクセスを許さないまま、ビルマ政府とカチン州でのカチン独立軍(KIA)との紛争は「収束した」と根拠も示さずに主張した。

「中国政府は難民に関する国際法を遵守することよりも、その規定を書き換えることを望んでいるようだ」とヒューマン・ライツ・ウォッチ難民局長のビル・フレリックは述べた。「中国が今後独自の難民認定基準を設けるのにあたり、国際基準を無視するのではなく、尊重することが絶対に必要だ。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは中国政府に対して、カチン難民がビルマに強制送還されず、人道支援にアクセスをすることができるなど、国際法に基づいた処遇を受けることを保障するよう求めた。中国政府はUNHCRが難民認定を実施することを受け入れるか、国際法に従った独自のプロセスを定めるべきだ。

背景

2011年6月、ビルマ北部カチン州にある中国が建設する水力発電ダム付近で、ビルマ国軍とカチン独立軍(KIA)との戦闘が発生した。この戦闘により、17年の停戦合意は崩れ、75,000人以上のカチン民族が土地を離れることを余儀なくされた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ビルマ国軍が2011年6月以降にカチン民族の住む村を攻撃し、家を破壊し、財産を略奪した時の様子を記録している。ビルマ国軍兵士は、尋問では民間人への脅迫・拷問を行い、カチン民族の女性を強かんし、対人地雷を使用し、わずか14歳の子どもを含む住民を徴用して前線などで強制労働にあたらせた。

土地を離れたカチン民族に対する保護はビルマでも中国でも不十分だ。ヒューマン・ライツ・ウォッチは2011年に、中国当局がカチン難民約300人に対してビルマ側への強制帰還を命じた2件の事例など、ルフールマン(追放・送還)に該当する事例を複数記録した。中国当局が国境でカチン民族の保護希望者の越境を拒否し、紛争地帯への帰還を強要する事例も、戦争開始時点から存在する。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、2011年6月以来中国に入国したカチン民族に「難民」という用語を適用する。すべてがカチン州で起きている武力紛争と人権侵害を逃れた人びとであり、もしカチン州に帰還させられれば生命に対する深刻な脅威に直面するだろうからだ。中国政府は、1951年難民の地位に関する条約と1967年議定書だけでなく、難民と保護希望者を保護する、その他の国際人権条約の締約国でもある。難民条約は「難民を、いかなる方法によっても、人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見のためにその生命又は自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ」強制送還することを禁じている。ノン・ルフルーマン原則は難民保護の要であり、中国政府の難民に対する法的義務の基本である。

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