Students protest arrests of civil society activists in Delhi in January 2011.

© 2011 Yogesh Kumar/The Times of India/AFP

(ラーンチー)-インド当局と毛沢東主義ゲリラが市民社会活動家を脅迫・襲撃し、インド中央部及び東部で窮状に陥っている地域の基本的自由を侵害すると共に援助提供を妨害している、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した報告書で述べた。

報告書「2丁の銃に挟まれて:インド毛沢東主義ゲリラ紛争 市民社会活動家への襲撃」(全60ページ)は、インドのオリッサ州、ジャルカンド州、チャッティスガル州の活動家に対する人権侵害の実態をとりまとめている。毛沢東主義ゲリラとの武装紛争がある地域で、開発援助を行ったり人権侵害の公表に携わっている草の根活動家が、政府治安部隊と毛沢東主義ゲリラ(ナクサライト(Naxalites)とも呼ばれる)のターゲットになる危険性が特に高いことをヒューマン・ライツ・ウォッチは明らかにした。毛沢東主義ゲリラは活動家が密告者であると頻繁に非難し、行政事業を実施しないよう活動家に警告している。一方、警察は活動家に密告者となるよう求め、拒否する者を毛沢東主義ゲリラの支援者であると非難し、恣意的に逮捕したり拷問している。当局は扇動法を適用して言論の自由を制約すると共に、刑事事件を作り上げて政府批判者を投獄している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、活動家への嫌がらせや襲撃などの人権侵害を直ちに止めるよう、政府軍と毛沢東主義ゲリラの双方に求めた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ南アジアディレクターのメナクシ・ガングリーは「毛沢東主義ゲリラと政府軍部隊は常に対立しているが、コミュニティへの人権侵害を公表する市民社会活動家をターゲットにする姿勢に関しては共通している」と語る。「援助要員と人権活動家は、安全に活動ができ、人権侵害に注目を集めるという理由だけで政治的計略を持っている、と非難されない必要がある。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは2011年7月から2012年4月にかけて、主にオリッサ州、ジャークハンド州、チャッティースガル州で、インド治安部隊と毛沢東主義派による人権侵害を目撃した或いはそれに精通している、地方住民・活動家・ジャーナリスト・弁護士への60を越える聞き取り調査を行った。今回の報告書は概ね、その聞き取り調査をベースにしている。

人権保護活動家は、毛沢東主義派から直接襲われることはまずないものの、恐怖の広がるなかで活動せざるを得ず、また毛沢東主義派の人権侵害を批判すると重大な危険に遭う。毛沢東主義派は、政府への密告者や「階級の敵」と見なした者には特に残虐で、自称「人民法廷(以下ジャン・アダラト)」での即決「裁判」の後、ためらいなく、銃殺や斬首に処する。ジャン・アダラトは、独立性、公平性、裁判官の能力、推定無罪、弁護を受ける権利などに関する国際基準に遠く及ばない。

2011年3月に毛沢東主義派が、ジャークハンド州で、ニヤマト・アンサリを殺害したのは、その一例だ。彼は、国の地方雇用保障事業を受けようとする村民を支援していたが、毛沢東主義派は彼を拉致し、後には殺害したことを認めている。それは彼が「警察当局の影響下にあって、反人民、反革命的活動等をし、反党的だった』ので、処罰されたとの主張だ。

オリッサ、ジャークハンド、チャッティースガルの各州当局は、多くの市民社会活動家を恣意的に逮捕し、拷問などの虐待行為を加えてきた。また頻繁に政治的動機から、殺人罪・共謀罪・扇動罪などの容疑をかけて訴追している。最高裁判所が1962年、法律のもとでの起訴は、暴力を扇動した証拠を必要とする、という判決を下したにも拘わらず、扇動罪容疑での起訴が行われていて、それらの訴追は多くの場合、検察官が法廷で容疑を裏付けられず取り下げられている。しかし、その取り下げまでの間、保釈申請が通常認められないので、活動家は長期間不必要に拘留されることになる。警察は、活動家を毛沢東主義派やその支持者であるとして、その信用を落とすことで、自らの活動を正当化しようとしている。

たとえば、「オリッサ州ケオンジハル総合地方開発訓練機関」の活動家であるラビンドラ・ムマル・マジヒ、マドフスーダン・バドラ、カンデラム・ヘブラムは2008年7月、恣意的に逮捕された。3人は全員、毛沢東主義派だという虚偽の自白をするまで、激しく暴行された。国連先住民族の権利に関する特別報告官であるジェイムス・アナヤが、3人の安全について懸念を表明した際、インド政府は警察の主張に従って、3人は犯行を自供していると反論した。後になって3人全員が無罪となり、警察の主張に対し政府が独立的な調査を怠っていた事実も明らかになった。しかし、3人は2年半の間、審理前拘禁で苦しめられた。

「活動家を含め、犯罪行為に携わった者は誰であれ公正に訴追されなければならない。しかし、地方当局は、州を批判する者は毛沢東主義派の反乱を支援しているなどという漠然とした推測に基づくのではなく、犯罪行為の明確な証拠に基づいて行動しなければならない。インド政府が介入し、政治的動機による訴追をなくすべきだ」と前出のガングリーは指摘した。

活動家のヒマンシュ・クマルは、チャッティースガル州バスタル地方で中心になっている部族住民との、草の根活動を止めなければならなかった。彼は、政府の食料と保健医療プログラムの実施と、他の開発プロジェクトに取り組むために、地方活動家のネットワークを構築していた。チャッティースガル州が2005年に毛沢東主義派に対抗して、サルワ・ジュダム自警運動を始めた後、彼はサルワ・ジュダムによる人権侵害の告発を始めた。メディアやデモの際に目立つようになり、その報復として地方当局は、彼の団体事務所が森林保護地域に違法に設置されていると発表し、2009年5月には警察がその建物を取り壊した。同地域で他の場所を確保できず、また雇い人の何人かが脅され逮捕されたため、彼はチャッティースガル州を離れなければならなくなった。

「インド政府は毛沢東主義派問題の解決に向け、開発事業を行う一方で毛沢東主義派に対する治安維持活動という、同時並行の取り組みが必要だと、繰り返し言ってきている。しかし、地方当局や治安部隊が、長く無視されて来た辺境地域での開発事業をまさに実施している市民社会活動家を攻撃し脅迫している。そして政府は、地方当局や治安部隊のこうした行為を止めさせることを怠っている」と前出のガングリーは語る。

証言

「警察は、『あんた、あちこち行ってるよね。なんで毛沢東主義派に殺されないですんでいるの?』って言うんですよ。でも実際は、毛沢東主義派もボクに怒ってるんです。毛沢東主義派に反対するようボクが住民を煽ってるって、ゲリラの地域のリーダーが言うんですよ。ボクがやってるのは、自分たちの命を守るために抗議しなきゃ駄目だって、住民に伝えてるだけなんです。住民は2丁の銃の間で挟まれて、身動きできなくなってるんですよ。だから私たちは困ってるって言わなきゃ駄目なんです。ボクは警察に言われました。『我々は監視してるよ。お前さんはしゃべりすぎだ、刑務所にぶち込んでやるよ、殺人容疑に気を付けるんだな』って」

-チャッティースガル州の人権保護活動家、2011年8月(詳細保留)

「アイツら[警察]は、ボクを殴りはじめて・・・それで聞き続けるんですよ、『お前、毛沢東主義派か?』てね。ボクは『違う』って言いました。でもお前が否定するなら、もっと殴ってやるって、アイツらは言いい、結局、ボクは『そうです』って言ってしまいました。」

-マドフスーダン・バドラ、2011年7月、オリッサ州

「ボクの活動仲間は、ひどい場合は殺人まででっち上げられて逮捕されました。暴力での報復が増え続けています。ボクの戦略は逆効果なんじゃないか、部族住民を守るんじゃなくて、もっとひどい目に遭わせやすくしてるんじゃないかって、感じるようになったんです。ダンテワダで活動を続けることは、ボクが守ろうとしてきた住民に、もっと嫌がらせを、もっと襲撃を、もっと逮捕をもたらすだけなんです。ボクはダンテワダを離れようと決心しました。」

-ヒマンシュ・クマル、2011年8月、チャッティースガル州