Police officers check the internal passport of passers-by at the Chorsu bazaar in Tashkent. In Uzbekistan, the
lack of local residence registration is an administrative offense that can lead to arrest and detention.

© 2010 Elena Urlaeva

(ベルリン)-ウズベキスタン刑事司法では、電気ショックや疑似窒息といった拷問が行なわれている。政府は拷問撤廃を約束したものの、これを守っていない、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書内で述べた。鳴り物入りで公表された拷問予防措置は、いまだ実施されていない。西側諸国政府は、戦略上の理由でこの中央アジアにある独裁国家と親密な関係を模索し、人権侵害の実態をほとんど全く無視している。

報告書「そして目撃者もいなくなった:ウズベキスタンで横行する拷問、人身保護制度の不履行、弁護士の弾圧」(全107ページ)は、ウズベキスタンで広がる人権侵害に関して、貴重な直接証拠を提供する報告書。ウズベキスタンは、国連人権専門家に対してもほぼ10年の間入国を認めておらず、孤立の状態にある。ウベキスタンでは、投獄された人権活動家が苦しみ続けているほか、政府から独立した意見を持つ市民グループは情け容赦なく弾圧されている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのウズベキスタン調査員スティーブ・スワードローは、「ウズベキスタンは世界最悪の人権問題を抱える国家のひとつ。その事実に西側諸国は気づくべきだ」と指摘。「アフガニスタンの隣に位置することを理由に、同国でおきている拷問や弾圧などの恐ろしい人権問題を野放しにしてはならない。」

本報告書は、2009年~11年にかけてウズベキスタンで実施された、100件超の聞き取り調査を基にしている。

2002年、宗教的に「過激」であるという理由で投獄されていた男性が、煮えたぎる湯につけられて死亡したと専門家が断定する事件が悪名高き刑務所で発生、ウズベキスタンは国際的な非難を浴びた。国連諸機関が同国における拷問を「広範」かつ「組織的」であるとするように、拷問は慢性的な問題だ。

しかし、ウズベキスタンの拷問は過去の話ではない。活動家に煮えたぎる湯を浴びせる、ゴム製警棒や水を満たした瓶で殴る、手首や足首を縛ってぶら下げる、レイプや性的辱めを与える、ビニール袋やガスマスクで窒息させるといった拷問を当局が尋問の際に行なっている実態を、ヒューマン・ライツ・ウォッチは調査し、取りまとめている。

ウズベキスタン政府は、政府から独立した発言も辞さなかったウズベキスタン弁護士たちの一部から弁護士資格を剥奪。独立した法曹界を事実上抹殺してしまった。また、拘禁中の人と弁護士との接見もしばしば拒否されている。

このように人権侵害と弾圧が深刻であるにもかかわらず、米国、欧州連合、そして欧州各国政府の指導者たちはここ数年、ウズベキスタン政府に対する人権問題上の姿勢を著しく軟化させた。アフガニスタンの隣国であり、NATO軍部隊とその物資の補給路として、同国が戦略的に重要だからだ。

欧州連合は2009年にウズベキスタンに対する制裁を解除、米国は2011年9月に軍事援助を含む同国援助に関する人権関連の連邦議会規制を撤廃した。同国南部のテルメズにある軍事基地を借りているドイツは、ウズベキスタンにおける人権侵害に対する態度を明らかにすることを拒否してきた。英国もこの11月、アフガニスタンから軍補給物資を移送する可能性について、領土の使用をウズベキスタン政府と交渉している。

米国、欧州連合をはじめとする外国政府・機関は、ウズベキスタン国内の人権問題に関する国連特別メカニズムの創設を支持すべきだ。また、拷問その他の重大な人権侵害にかかわる政府当局者に、資産凍結やビザ発禁処分といった制裁措置を科すことも検討すべきだろう。

本報告書内で挙げている拷問事例で「アブドゥマノブ・A」(身元保護のため仮名)の妻が、2008年末~09年を通じてタシケントの裁判前拘禁施設で、スパイ容疑のかどで治安機関に拘禁されていた夫が被った暴行について語っている。

「看守が夫を天井から手首を縛ってぶら下げ、8、9人で次々に殴ったそうです。夫に面会した時、手首からぶら下げられていたのがとてもよく分かりました。痕が見えましたから。数回取り調べに連れていかれて、看守に爪の下を針で突き刺されたそうです。一度なんか房の鉄柵に手錠で固定された上に火のついた新聞紙で局部を焼かれて、ひどいやけどを負ったんですよ。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチはまた、路上でけんか容疑をかけられ「証人」として2010年に拘禁された18歳の少年の母親にも会った。息子から聞いた話として母親は、警察が窒息させるのを装ってガスマスクを使い、もう1人の少年が現場にいたと証言する自白調書への署名を強制した、と詳しく状況を説明してくれた。

ウズベキスタン政府はこうした拷問事件に対処するとして、2008年、鳴り物入りで人身保護命令制度(拘禁に対する司法審査)を導入し、その後他の法改正も断行。欧州各国政府と欧州連合は制裁措置の解除決定の際、こうした動きを進歩のしるしとして挙げていた。

しかし実際には人身保護法の導入以降も、拷問などの重大な人権侵害問題は改善せず、悪化している点さえある。

前出のウズベキスタン調査員スワードローは、「警察や看守が拷問を続けている状況で改革について語ってみても、改善したとはいえない」と述べる。「イスラム・カリモフ大統領をはじめとするウズベキスタンの指導者たちが、問題の重大性を認めると明らかにし、ウズベキスタンの国際的義務の履行に早急に着手しない限り、この問題に終わりはない。」

人身保護制度は、恣意的拘禁や拷問、虐待などにほとんど無力なままだ。弁護士たちは、ウズベキスタンの裁判所は、事案の実際の検討もなしに、検察官からの勾留性請求をほぼすべて認めている、とする。また、逮捕状の発行の際にも、政府の請求文言を一字一句そのまま採用することが多い、という。

ウズベキスタン国内法によれば、警察と取調官は、人身保護請求に基づく聴聞を裁判官が行う前に容疑者を72時間拘禁することができるが、これは人権基準を満たすものではない。また、人身保護請求に基づく聴聞自体が非公開であるため、せっかく公正を旨として導入されたはずの措置を無力化している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査から浮かび上がってきたのは、警察と治安関係者が、有罪判決を確保し内部ノルマを達成するために、拷問を有効な手段とみなしている実態だ。自白や共犯者の関与供述を強要するため、拷問が用いられている。

2005年5月に政府が東部の都市アンディジャンで、大多数が丸腰だった市民を何百人も虐殺して以来、ウズベキスタン政府当局は拷問問題の調査をますます困難にした。調査を試みる活動家を投獄したり脅し、国際人権専門家や国際人権団体が国内で活動するのを拒否しているのだ。

ウズベキスタンの法曹関係者を完全掌握すべく行ったキャンペーンで、政府は、独立した弁護士会を廃止し、3年ごとの司法試験受験を弁護士に義務づけた。極めて豊富な経験を持つ弁護士が再試験を義務づけられた結果「落ちる」一方で、後輩の同僚が高得点で「合格する」など、おかしな試験結果が連発している。

法曹界を再編成する新法は、弁護士の独立性に関するウズベキスタン憲法および国際基準に反しており、弁護士の活動に委縮効果を及ぼしている。政治的に敏感な事件に取り組み続けてきた弁護士や、拷問疑惑に取り組んできた弁護士たちが、これまでに何人も資格をはく奪された。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはウズベキスタン政府に拷問の停止を求めた。政府は、人身保護制度が国際基準に沿って施行されるとともに、弁護士と接見する権利などの適正手続きや法曹の独立性が維持されるよう保障せねばならない。

前出のスワードローは、「極めて献身的で独立したウズベキスタン弁護士たちの一部が沈黙を強いられている。それなのに、法の支配が前進していると口にするなんてばかげている」と述べる。「弁護士が、国家からの干渉なしに刑事弁護活動を行なえることなしには、ウズベキスタンで広くはびこっている拷問問題への取り組みに希望などほとんどない。」