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ビルマ:囚人の「特赦」は人権状況改善の公約を欺くジェスチャー

国連特使による全政治囚2,100人の釈放要請には無反応

(ニューヨーク)  ビルマ政府は全囚人の刑期を1年短縮すると発表したが、これは国内の全政治囚の釈放を要求したばかりの国連特使への侮辱である。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日こう述べた。

2011年5月16日に、テインセイン大統領は命令28/2011を発布し、全受刑者対象の「アムネスティ」(特赦)により死刑を終身刑に減刑し、有期刑は刑期を1年短縮するとした。残りの刑期が1年未満の囚人は釈放されると思われる。

「今回の政府の行動は大半の囚人には朗報だろう。だが、不当にも最長65年の刑を科されている2,100人の政治囚にとって、1年の刑期短縮は悪い冗談だ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理エレーン・ピアソンは述べた。「全政治囚の即時釈放を求める国際社会の呼びかけへのお粗末な反応にすぎない。」

今回の特赦の発表直前である5月11日~13日に、ナンビア国連事務総長特別顧問(ミャンマー担当)がビルマを訪問した。訪問を終えた同顧問は、政治囚の問題を3月30日に旧政権から権力を引き継いだ新政権との間で話題にしたと述べた。同顧問はこう語った。「国内的にも国際的にも、[新政権が]すぐに具体的な措置を講じるとの期待は高い。私はすべての会合で、こうした措置の一つとして全政治囚の釈放が実施されなければならないと強調した。」

ビルマでは法文上に死刑が存在するが、国による囚人の執行は何十年も行われていない。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、今回の既存の死刑囚への減刑措置を受け、ビルマ刑法下での死刑の全面禁止が行われるべきだと述べた。ヒューマン・ライツ・ウォッチの死刑に対する立場は、残虐で非人道的な性質の刑罰であり、いかなる場合でも行われるべきでない、というものである。

潘基文国連事務総長や世界の多数の国々の長期的な要請にもかかわらず、2010年11月の総選挙以来、自宅軟禁命令の期限切れによって釈放された民主化指導者アウンサンスーチー氏を除くと、ビルマでの政治囚釈放は目立った形で行われていない。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、現在実施中のキャンペーン「消された自由:ビルマの政治囚 今すぐ釈放を」で、ビルマの全政治囚約2,100人の釈放を求めている。この数字は2007年からほぼ倍増した。ヒューマン・ライツ・ウォッチは国連や東南アジア諸国連合(ASEAN)、ビルマの主要貿易相手国に対し、今回の「特赦」の不十分さをはっきり指摘すると共に、全政治囚の即時無条件釈放を求める。

長期刑に服している政治囚には以下の人たちが含まれる。

ザーガナー氏:ビルマでとても人気のある喜劇俳優。サイクロン「ナルギス」の被害への軍事政権の対応の鈍さを批判したとして、35年の刑で服役中。

ウー・ガンビラ師:30歳仏教僧侶。2007年8月~9月にかけての平和的な抗議行動の指導者の一人。63年の刑で服役中。

ミンコーナイン氏:元学生指導者。65年の刑で服役中。

ネーポンラッ氏:インターネットのブログを使って2007年の抗議行動に関する情報を流した30歳のブロガー。12年の刑で服役中。

スースーヌウェ氏: 女性の労働運動家。8年6カ月の刑で服役中。ビルマ訪問中の国連特使が宿泊するホテルの前で、ビルマ政府を批判する横断幕を掲げたことで有罪となる。

「国連とASEANは、今回のビルマ政府の不十分な『特赦』を、人権状況改善に向けた真剣な措置の一環として見なしえないことをただちに明確にすべきだ」と前出のピアソンは述べた。

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