UN special envoy on Burma Vijay Nambiar and Burma's pro-democracy leader Aun San Suu Kyi in 2010.

© 2010 Reuters

(ニューヨーク)- ヴィジャイ・ナンビア国連特使(ビルマ担当)は、ビルマでは昨年11月の選挙以来、人権状況の実質的な改善が見られないことをはっきり批判すべきだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日こう述べた。

ナンビア国連事務総長特別顧問(ミャンマー担当)は2011年5月11日~13日の予定でビルマを訪問し、中心都市ラングーンと首都ネピドーで政府当局者、政党、民間団体などと会談する。特使の訪問は2010年11月下旬以来。前回訪問の直前11月7日には重大な欠陥を抱えた総選挙が行われ、同13日には民主化指導者アウンサンスーチー氏が釈放された。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理エレーン・ピアソンは「国連とナンビア特使は、今回の訪問がビルマ政府に悪用されることを許容してはならない。人権状況に実質的な改善がないにもかかわらず、そこにお墨付きを与えるような機会とすべきではない」と述べた。「仮に、特使が実効的な改革の必要性を明確に指摘しなければ、ビルマ政府は今回の訪問を自らの人権侵害を正当化するために使うまでだ。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチはナンビア特使に対し、ビルマ政府に人権状況を直ちに改善するよう強く働きかけることを求め、具体例として2,000人以上の政治囚の釈放、武力紛争地域での民間人攻撃の停止、国内外の人道団体への不必要な規制の撤廃を挙げた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは現在実施中のキャンペーン「消された自由:ビルマの政治囚 今すぐ釈放を」で、ビルマの全政治囚釈放を求めている。

ナンビア特使はこのほかにも、ビルマ政府に対して、ビルマの人権状況に関する国連特別報告者であるトマス・オヘア・キンタナ氏のビルマ訪問を許可するよう求めるべきだ。同氏は2010年2月以降ビルマ入国が許可されておらず、中には、数週間前にナンビア特使が入国許可を得たにもかかわらず入国不許可となったこともあった。

ビルマの新議会(正式な活動開始は今年3月30日)では、国軍の支配下にある連邦団結発展党(USDA)が議席数で圧倒的な優位を占める。新大統領のテインセイン元首相は議会での就任演説で、政権の重点課題に教育と汚職、経済開放を挙げた。閣僚たちは、政治囚釈放を訴える議会での質問をほぼ無視した形だ。

各国政府は、政権の名目上の変化を理由にして人権問題への懸念をかわす機会をビルマ政府に与えるべきではない、とヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。

2011年5月8日~9日にジャカルタで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の席上、テインセイン大統領は、ビルマに2014年の議長国を担当させてほしいと要請した。これは直ちに退けられず、決定は今年後半まで延期された。議長国として閉会宣言を行ったインドネシアのユドヨノ大統領はこう述べた。「ミャンマーについては、世界的な関心を集めていることもあり、民主化に引き続き取り組むことが期待される。したがって議長国に就任しても否定的には受け取られないだろう。」

「ビルマの新政権は、世界に対して自国を人権尊重国家だと思い込ませるため、懐柔策を必死に講じてはいるが、事実という事実がこれを反証する」と前出のピアソンは指摘する。「国連は今回の訪問を通じて、人権状況を正しく踏まえたうえで、政治囚、国軍による人権侵害の停止、人道団体のアクセスに関して政府からまともな譲歩を引き出すべきだ。」

少数民族が多く住む戦闘地域での民間人への攻撃は、11月の総選挙後に激化している。11月以降にカレン州東部で行われた、ビルマ軍と少数民族カレン人の反政府軍との戦闘により、2万人以上が生活場所の移動を余儀なくされ、1万人以上が隣国タイに難民として逃れた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチでは、国軍による囚人の戦闘地域での強制的な無償労働を調査・記録している。衰弱したり、反抗的だと見なされた囚人は拷問を受けるほか、超法規的処刑の犠牲となる場合すらある。シャン州北部では、3月にシャン州軍北部方面軍(SSA-N)と国軍との間で22年続いた停戦合意が破棄されたのを受け、国軍の軍事作戦が行われ、民間人3,000人以上が避難民となった。地元監視団体の信頼できる報告によれば、ビルマ国軍部隊は村落に無差別砲撃を行い、民間人を強制労働や人間の盾として徴用しているほか、シャン人女性への性暴力も行っている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはナンビア国連特使に対し、ビルマから寄せられる国際人道法と国際人権法の深刻な違反行為に関する長年の報告に基づき、国際事実調査委員会の設置を公式に支持するよう求めた。

「ナンビア国連特使はビルマ政府首脳にただ表敬訪問をするのではなく、政府当局者と政党、民族団体から調査委員会設置の支持を取り付けるべきだ」とピアソンは述べた。「こうした調査は何十年にも及ぶ人権侵害の犠牲者に正義への道を開くとともに、ビルマ政府と国軍に蔓延する不処罰に終止符をもたらす一助となる。」