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国連:シリアが人権理事会への立候補断念 しかし弾圧は継続

安保理は弾圧停止要求と制裁を

(ニューヨーク)-2011年5月11日、シリアは国連人権理事会理事国への立候補を辞退。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日、これに続いて平和的なデモへの激しい弾圧も止めるべきだ、と述べた。これまで中東および世界の人権団体が、シリアの人権理事会立候補を拒否するよう、国連加盟国に呼びかけてきた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのグローバルアドボカシー局長ペギー・ヒックスは、「今回の選挙が、実質的にはシリアによるデモ弾圧の賛否を問う投票と化したため、シリアは決定的な敗北よりも撤退を選択した」と指摘。「シリアは更なる非難を避けようとこうべを垂れるより、方針を変更し、暴力をやめるべきだ。」

3月16日のデモ開始以来、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、シリア治安部隊による実弾使用やその他の人権蹂躙の報告を続けているが、同国国内の人権団体は死者は700名に上るとしている。4月22日と23日だけで、100名以上のデモ参加者が殺害され、少なくとも数千人が拘束されるなど、ここ数週間のうちに暴力的な弾圧の度合いは激しさを増している。シリア軍は4月25日以来、南部の街ダラアを包囲しており、電気や電話、インターネットなどを遮断、街への自由な出入りも妨害している。

シリアの国連人権理事会の理事国への立候補辞退を受け、クウェートが理事会への出馬を表明、アジア地域からのインド、インドネシア、フィリピンに続く立候補国となった。またもや、今年の選挙のアジア枠内で空席となっている4議席に対して候補国数が4となるため、事実上選挙は行われない見通し。国連総会は5月20日に、人権理事会の理事国選挙を実施する予定だ。昨年はすべての地域グループで、空席数と立候補数が同数の、いわゆる「クリーン」立候補名簿が提出された。2006年に人権理事会を創設した国連総会決議の定めにより、理事国は人権保護に関して「最高水準を保つ」ことが求められている。

前出のヒックスは、「シリアの立候補が象徴するように、人権理事会選挙の出来レース的性格は深刻な問題だ」と述べる。「各国政府が選挙を避けようと結託している。それが、シリアのような人権侵害国に有利に働く事態を招いている。」

人権理事会は4月29日、平和的なデモ参加者に対するシリアの致死的な武力行使に対し、「強く非難」する決議を採択した。同理事会はまた国連人権高等弁務官事務所に対し、シリア国内で引き続き行われている人権侵害の調査を求めるとともに、同国にも全面的な調査の協力を強く求めている。

国連安保理は4月27日、シリア情勢のあらましについて報告を受けた。しかしながら、特にロシアと中国の反対により、実質の行動どころか、声明さえ出していない。

前出のヒックスは、「シリアは立候補辞退により、国連総会における非難の大合唱を回避できたのかもしれないが、安保理でも同様の幸運に恵まれるべきではない」と述べる。「安保理は、暴力行為の責任者に対する渡航禁止や資産凍結など、シリアに対して制裁措置を発動すべきだ。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチはまた、クウェートにも人権理事会理事国への立候補と関連して、国内の人権問題に対処するようを求めた。クウェートは、同国に10万人以上いるビドゥーン(無国籍住民)の状況を改善すべく、限定的な改革を始めたばかり。200万人以上の出稼ぎ労働者が直面する、雇用者による人権侵害の温床となっているスポンサー制度に基づく出入国管理の改善については、2010年9月に宣言したにもかかわらずまだ履行していない。また、同国に66万人以上いる家事労働者の労働権を保護する法律もないままである。

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