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(ヤウンデ) -ヒューマン・ライツ・ウォッチなどの人権4団体は本日発表した共同報告書の中で、同性と性的関係を持った疑いをかけられたカメルーン人たちが、警察や政治家・メディア、そして自らが暮らす地域社会からも攻撃を受けている実態を明らかにした。

この報告書を発表したのは、オルタナティブ・カメルーン(Alternatives-Cameroun)、同性愛者人権保護連合 (l'Association pour la défense des droits des homosexuels)、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、国際同性愛者人権委員会 (International Gay and Lesbian Human Rights Commission) の人権4団体。カメルーン政府は、同意に基づく同性愛行為を犯罪とするのをやめ、性的指向や自己の性認識にかかわらず、すべてのカメルーン人の人権を十分保障するための緊急措置を取るべきである、と訴えている。

同報告書「愛ゆえに処罰されて:カメルーンにおける性的指向と性自認に基づく人権侵害」は、カメルーン政府が刑法第347条第2項を使って、LGBTと見なした人びとの基本的人権を否定している実態を詳述している。また、警察による逮捕・暴行、刑務所内での虐待に加え、地域コミュニティでの人権侵害と村八分を助長するような同性愛を敵視する風潮についても記述している。これらがもたらす結果として、人びとが、非合法とされた具体的な行為によってではなく、同性愛者という「アイデンティティ」を理由に罰せられている、と人権4団体は述べている。

オルタナティブ・カメルーンの代表スティーブ・ネマンデは「法律扶助を得る術を持たない貧困層や若者が、カメルーンで続くこの虐待的状況に最も苦しんでいる」と語る。「こうした人びとは、刑務所からの出所後も、家族や友人からたびたび拒絶される。教育や就職、時には家を借りる機会まで拒否され、人生が破壊されてしまう。」

同報告書は、被害者45名への聞き取り調査を基に、体への暴行(足の裏にまで及ぶ)などの警察による虐待を明らかにしている。刑務所の看守たちにも責任がある。他の囚人が暴行やレイプ、被害者の持ち物に小便や大便するといった虐待をしているのを、刑務所の看守たちは見て見ぬふりをしている。

人権4団体の調査は、刑法第347条第2項で逮捕された者が、カメルーン法で定められた時間制限を越え、起訴もされないままに拘束されていことが多いと明らかにしている。裁判官は、同性愛行為を行った確かな証拠がないにもかかわらず、刑罰に処することもできる。裁判官が犯罪は立証されていないとした場合でも、検察官が被告人の釈放前に再度起訴をしている事案もある。

カメルーンでは、ゲイやレズビアンに対する差別と偏見がまん延している。女性らしい服装をしなかったり、「女性らしく」振舞わない女性は、度々迫害の対象とされる。男性の場合と同様、家からはじき出され、あるいは家族の手によって虐待を受ける。女性が家族という囲いの中に留まり従属することを期待される社会では特に、このような状況が顕著だ。

女性と性交渉したとされる女性は、コミュニティ内でレイプや性的暴行の対象にとりわけなりやすく、子どもの養育権をも失う可能性がある。しかし逮捕や投獄を恐れるあまり、彼女たちが法的手段に訴えることはほとんどない。

上述の人権保護4団体は、カメルーンのメディアが抑圧的風潮を更に悪化させている、とする。新聞は同性愛者とみなした人びとの名前を公表。彼らを「金持ち」で「堕落」した「権力欲のかたまり」で、「国を支配しようとしている」者として描き、人びとの恐怖と憎悪を煽るために、「同性愛階級(ホモクラティ:homocraty)」という造語で同性愛者を呼んでいる。

「カメルーンのレズビアン・ゲイ・バイセクシャルの人たちは犬以下であると見なされている」と同性愛者人権保護連合のセバスチャン・マンデン(Sébastien Mandeng)は語る。「同性愛者を嫌悪する風潮の中で、酷い行為に遭っているのだ。」

また、同性間での性行渉が犯罪とされている結果、医療上重大な影響がでていると人権4団体は述べている。LGBTの人びとがHIVウィルスに脆弱であるという証拠があるにもかかわらず、カメルーンでは、LGBTに特化したHIV/エイズプログラムが行われていない。政府はLGBTコミュニティにおけるHIV感染に関する調査や関連する行動分析を行ってこなかった。さらに、刑務所内はHIV感染率が高く、男性受刑者による同性間での性交渉やレイプが頻繁に起こっているにもかかわらず、政府は刑務所内でのコンドーム配布を禁止している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチLGBT人権プログラムのアドボカシーディレクターであるボリス・ディートリッヒは「自分がLGBTであることを隠して生活する人びとは、脅迫や人権侵害を被り易い。逮捕に至るのは比較的稀なのかもしれないが、LGBTの人びとに対する暴力と精神的虐待は大変に大きな被害をもたらしている。」

刑法第347条第2項に基づく人びとへの迫害を止めるための国際機関の非難は十分ではなかった。2008年12月にカメルーンの人権状況に関する国連の普遍的定期審査が行われた際、国連人権理事会は同性愛行為を非犯罪化するよう勧告した。2010年7月には、国連規約人権委員会もカメルーン政府に、LGBTの人びとに対する社会的偏見と差別を減らすよう求めた。国連の規約人権委員会の勧告には「HIV/エイズの予防・治療・看護・支援を誰もが利用できるようにする」公共衛生プログラムを実施するようにという勧告も含まれている。しかしカメルーン政府は両勧告の受け入れを拒否した。

NGOオルタナティブ・カメルーンは2009年11月、同性間性交渉の非犯罪化を求める請願を、1,500名以上の署名を添えて議会に提出した。しかしながら議会はこの問題を公式な議題にするかの検討すらしていない。

NGO国際ゲイ・レズビアン人権委員会のアフリカ・コーディネーター モニカ・ムバル(Monica Mbaru)は、「同性間性行為の犯罪化は、明らかに許されない逮捕が行われる。でもそれだけではない。司法制度下の不平等そのものを助長するとともに、家庭やコミュニティ内での暴力を煽る結果となっている。カメルーン政府は、性的指向や性自認にかかわらず、全てのカメルーン国民が差別されずに生きていけるよう責任を果たす必要がある。」