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ウガンダ:脅威のなかのジャーナリストたち

2011年選挙の前に、地方メディアへの脅迫をやめ、言論抑圧法の改正を

(カンパラ)-「ウガンダ政府高官及びウガンダ与党・国民抵抗運動(NRM)支持者たちは、政府への批判の封じ込めに躍起になり、ジャーナリストを脅迫している」とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日公表したレポートで述べた。2011年に予定されている選挙が近づいている。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、本日2010年5月3日「世界報道の自由の日」に際し、ウガンダ国民抵抗運動(NRM)政権に対し、表現の自由を守るため、報道に対する脅迫を公式に非難するとともに法律を改正するよう強く求めた。

60ページの報告書「地雷原のなかのメディア:ウガンダにおける表現の自由に対する脅威の増大」は、ウガンダのジャーナリストたちが直面している、ウガンダ政府当局や与党・国民抵抗運動党員からの嫌がらせや脅迫を調査してまとめている。ジャーナリストたちは、脅迫、嫌がらせのほか、ウガンダ政府が端緒となって刑事訴追されるなどしている。特に、政府を批判的に報道したり、政府見解と異なる意見を表明したり、腐敗や犯罪捜査の失敗などを暴くなどした地方のジャーナリストたちが、こうした嫌がらせの犠牲となる傾向がある。更に、ウガンダの報道規制には党派性が強く、政府与党の批判を許容しない、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアフリカ・アドボカシーディレクターのジョン・エリオットは、「ウガンダ政府は、"公共の秩序と安定の確保"をお題目として、表現の自由を制限している」と述べる。「これは止めるべきだ。権力批判の権利は、言論の自由の要の一つなのだから。」

2009年9月首都カンパラでおきた暴動は、少なくとも40名の死者を出した。その際、ウガンダ警察及び国軍は、事件を速報しようとした記者や、暴動の原因についてラジオ討論しようとしたジャーナリストたちを、暴行・拘束。政府は首都カンパラのラジオ局4つを、事前の通知や聴聞の機会を与えることもなく突然閉鎖。そして、討論ラジオとして人気の野外放送局「ビメーザ(bimeeza)」を恣意的に禁止した。この禁止措置は継続中である。

こうした報道弾圧が行われているのは、首都カンパラだけでない。ウガンダの地方全域で、与党高官及びその支持者たちが、同様の弾圧を行っている。地方当局と与党関係者が、地方の政治報道記者たちを脅そうと、カンパラ暴動へのウガンダ政府の対応を繰り返し言及していたことをヒューマン・ライツ・ウォッチの調査は明らかにしたと。「議論をよぶ」(と当局が考える)地方の問題を報道したとして、当局は、地方のラジオ記者に対しても、暴力・逮捕・局閉鎖の脅しをかけていた。

カンパラの郊外を中心として現地語で放送するトークショーのキャスターのあるジャーナリストは、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、治安当局者とNRM党員から昨年中、3度にわたり脅された、と述べた。直近では、現与党が24年前に権力の座について以来の功罪を議論する番組を放送した後、地域の治安当局者や政府の役人から複数の電話を受け、番組で議論された課題が「不適切」だったと警告されたそうである。その後、地域の与党動員責任者がそのジャーナリストに「我々はあんな事は聞きたくない。お前なんて消せるし、お前を我々がどこに拉致したって、誰も分からないんだ」と脅したそうである。

ウガンダ情報省の管理下にある複数のメディア規制機関には、事前の通告・裁判所の命令・犯罪の証拠など何もなしに、ラジオ局の備品を押収しかつ局を閉鎖できる強大な権力がある。2005年の選挙運動のあと、30名を越える中立系ジャーナリストが警察から出頭を命じられたり、暴力・党派闘争の扇動・助長などの犯罪容疑で立件・起訴されている。ほとんどの立件・起訴は、政府を批判したことや、与党に批判的な人物の意見を報道したりしたことが理由だ。

首都カンパラの外でも、大統領官邸の地方代表などの地方の政府当局者や、警察、地方の治安部隊関係者などが、メディアを沈黙させるべく公式・非公式の権力を振るっている。時には、公衆の面前であからさまに脅迫が行われることもある。グールー地方では、野党の活動を報道したジャーナリストに対し、大統領官邸の地方副代表が「抹殺する」と、公然と脅迫。こうした脅迫が公然と行われていても、警察が犯罪捜査に乗り出したためしはないし、こうした暴言によって政府当局者が懲戒されたこともない。

しかし、通常、地方のジャーナリストへの脅迫は、巧妙にかつ秘密裏に行われる。当局が取り上げられたくない話題が報道されると、与党党員が電話を掛けたり訪問をしたりして痛めつけると脅すのである。警察が犯罪捜査をしなかった事例についての情報提供を呼びかけたジャーナリストを、警察が拘束した事例も複数ある。

ウガンダ政府は、言論の自由の制限をさらに強化しようとしている。紙媒体メディアの一年ごとの免許取得を義務化するとともに、新聞の「社会的・文化的・経済的価値」に政府が合意しない場合、政府が新聞免許を取り消せると認める「報道及びジャーナリスト法(Press and Journalist Act)」改正法案が準備されているが、この法案を拒否するよう、ヒューマン・ライツ・ウォッチはウガンダ議会議員に要請。逆に、議会議員に必要とされているのは、国際人権基準や表現の自由の確立した基準、そしてウガンダ自身の憲法を順守する内容に、現行法を改めることである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べる。

政治報道に対する政府の対応は予測不可能であり、ニュース取材に「萎縮効果」を及ぼしている、とジャーナリストたちはヒューマン・ライツ・ウォッチに語った。政府の注意を引くかもしれないニュースや報復を招くかもしれない課題を取り上げることを避けるジャーナリストたちもでている。こうした自主検閲がとくに蔓延しているのは、司法による保護も、国際的な監視も行き届かない地方地域を拠点に、ウガンダの現地語で放送をしているラジオ局の記者やトークショーのキャスターたちの間だ。大多数のウガンダ人が、いまも、ニュースなどの情報を、現地語でのラジオ放送で得ている。よって、地方を拠点とするラジオ記者たちが政治的に「敏感な」課題を取り上げることに不安を持つ現状では、2011年選挙にむけて、有権者たちが公平な情報を取得するのが困難になる可能性がある。

「メディア法改悪法案にあわせて、地方のラジオジャーナリストに対して、パターン化した脅迫行為が繰り返されている現状は、ウガンダ政府が表現の自由を圧殺しようとしている証拠だ」前出のエリオットは語る。「2011年の選挙の前に、有権者たちが関心事に対する様々な見解にアクセス出来なければ、自由で公正な選挙とはいえない。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ジャーナリストへの脅迫や暴行をやめることを求めるとともに、市民が関心を寄せるあらゆる課題についての記事や意見の発表を許容すること、メディア規制機関が政府から一切干渉されないことを確保するため法律を改正すること、2009年9月に起きた暴動の際にジャーナリストに行われた違法逮捕や暴行及びその他ウガンダメディアへの脅迫疑惑を捜査する中立な専門家委員会を設立することなどをウガンダ政府に求めた。

「世界報道の自由の日」は1993年に国連総会で採択された。以来、毎年5月3日は、世界中のジャーナリストが政治的干渉にさらされることなく報道できることを保証するという報道の自由の国際原則を想起する日となっている。

 

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