(ニューヨーク)-チュニジア政府は、元政治犯に対する恣意的な制約と監視をやめるべきであると、本日発表の報告書でヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。政府のこうした措置のため、反体制派の人びとは釈放後も、ごく普通の日常生活を送ることができなくなっている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書「巨大刑務所:チュニジアにおける元政治犯の自由の侵害」(42ページ)では、チュニジア政府が元政治犯を恣意的に制約・監視し続けている実態を明らかにしている。チュニジア政府による恣意的な制約・監視の例としては、徹底的な監視や、パスポート申請の却下、(人権侵害を明らかにしたり、政府の政策を批判した人に対する)再逮捕をちらつかせた脅し、移動の制限などがあげられる。しかしながら、こうした制約は事実上科されるに過ぎず、政府から文書は出されない。しかし、この事実上の制約に違反すれば、再度収監されるおそれもある。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東・北アフリカ局長、サラ・リー・ウィットソンは、「チュニジアでは、釈放後の政治犯の日常は、まるで巨大刑務所のなかにあるようなもの。監視、脅し、ありとあらゆる制約という名の鉄柵に囲まれているのだから」と述べた。「元政治犯が平穏な日常生活を送れないように、政府が画策している。本来ならば、釈放後の社会復帰や社会への再統合を支援する政策こそがあるべきなのに。」

このような措置の多くは、何らの法的根拠もなく、当局の勝手な判断によって取られている。裁判所が被告に拘禁刑を言い渡す場合、「補足判決」で釈放後の「行政監察」を合法的に科すことはまれに見られる。チュニジア法では、「行政監察」期間中、当局は、釈放された元受刑者の居住地を指定することが許されているからだ。しかしながら、当局は、この法の規定を逸脱して、元受刑者たちに、警察への出頭を求める。その際、元受刑者たちは、書面で示されたこともない「制約」に違反したとして再逮捕されてしまうことも多い。

チュニジアの政治犯のほとんどは、イスラム系の団体やイスラム思想にまつわる非暴力の「犯罪」を犯したとして有罪判決を受けた人たちだ。

元政治犯が恣意的な制約に直面しているという事実は、そのほとんどが「行政管理」の下にあるかどうかにかかわらず、パスポートの申請を却下されていることからも分かる。申請から10年以上もパスポートの発行を待っている元政治犯もいるほどで、いずれも申請が却下されたかあるいは当局からの音沙汰がまったくないのが現状だ。

チュニジア政府は、政府から不当な扱いを受けた市民は、行政裁判所に救済措置を求められる、と主張する。しかし本報告書が示すように、パスポート申請を当局が却下したことは誤りであったと行政裁判所が判断した場合でさえ、政府当局はその発行を拒否し続けた。

警察が、元政治犯を徹底的に監視することは日常茶飯事だ。例えば、親戚や近所の住人に、元政治犯の動きを尋ねて回ったり、元政治犯たちの就職を困難にするような制約を課したりといった具合である。結果として、多くの元政治犯とその家族は貧窮に陥り、社会ののけ者になり果てたという感覚を覚える場合も多い。

前出のウイットソンは、「チュニジア政府はまるで、『刑務所で打ちひしがれなかった人間は我らがかわって打ちのめす』とでも言っているようなものだ」と述べる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはチュニジア政府に以下の諸点を強く要請した:

  • チュニジアの国内法に基づき、すべての元受刑者たちに対し、自由の制限の存否及び存する場合にはすべての制限を明記した文書を渡すこと。さもなくば、完全な移動の自由を認めるとともに、その他の人権すべての行使を認めること。
  • 申請者全員にパスポートを発行するか、さもなくば申請却下の実質的・法的根拠を記した文書を渡すこと。そして、行政裁判所がパスポートの申請却下を不当と判断した場合には、その判決に従うこと。
  • 法に従い裁判所が文書で命じた範囲の制限を越えて、警察が元政治犯に制約を強制してはならない、と公けに明らかにすること。
  • 恣意的な権利制限に対する元政治犯からの申立てを調査する体制を整えること。さらに、元政治犯の権利を侵害した警察官については、その責任を問うとともに、警察の恣意的あるいは違法な行為により元政治犯が被った損害を賠償するための体制も整えること。