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イラン:シリン・エバディ氏の人権活動への報復やめよ

ノーベル平和賞メダルと預金口座をイラン政府が没収、家族を逮捕すると脅迫

(ニューヨーク) - イラン政府は、人権活動家で2003年のノーベル平和賞受賞者のシリン・エバディ氏と、家族に対する一連の報復と嫌がらせを直ちにやめるべきである。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日このように述べた。

イラン情報相はエバディ氏の夫と妹に出頭を命じて尋問し、エバディ氏が人権活動を続ければ、二人は仕事を失い、最終的に逮捕されると脅した。イランの革命裁判所は11月下旬に、エバディ氏の預金口座と年金の支払いを凍結し、家族の財産(氏のノーベル平和賞メダルやレジオンドヌール勲章など過去の受賞記念品を保管する夫の貸金庫など)の没収を許可。政府は理由を示していないが、この措置の前、政府は、エバディ氏が受賞賞金に対する税金を納めていないとの指摘をしていた。

「イラン政府は、人権保護の声をあげる人びとを沈黙させるため、あらゆる手段を用いている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ中東局長代理のジョー・ストークは述べた。「ノーベル平和賞授与式当日でもあり国際人権デーでもある本日にこそ、イラン政府は方針を変更し、イラン国内で最も著名な人権活動家への嫌がらせを停止すべきだ。」

 イラン政府は今年6月、エバディ氏にノーベル平和賞の賞金は課税対象であると通告。だが受賞から6年間、このような主張はなされたことがなかった。またイラン税法では受賞の賞金は非課税扱いだ。氏の弁護団は決定に異議を申し出たが、裁判所の判断はまだ示されていない。

イラン革命裁判所は、エバディ氏の夫ジャヴァード・タヴァッソリアーン氏の預金口座凍結と年金支払い凍結も命令。年金は同氏が勤務していた期間中の給与から徴収された基金から支払われているにもかかわらず、この措置が行われている。

革命裁判所はこのほかにも、エバディ氏がノーベル平和賞などを受賞した際の記念品を保管するタヴァッソリアーン氏名義の銀行の貸金庫の没収も命令。エバディ氏の弁護士は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、イラン政府はタヴァッソリアーン氏の財産の没収と預金口座の凍結について理由を一切示していない、と語った。

エバディ氏はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、夫は自分の人権活動に一切関与していないと述べた。「私たち夫婦の口座凍結を命じたのと同じ裁判所の部門が、夫の海外渡航も禁止したのです」と氏は述べた。「夫には何の嫌疑もかけられていません。取調べも受けていないし、訴追もされていない。にもかかわらず海外渡航を禁止されているのです。」

 情報省政府者はまた、エバディ氏の夫に対し、現在留学中のエバディ氏の娘二人の自宅住所と電話番号を提出するよう命じたが、氏はこれを拒否。エバディ氏本人は現在イラン国外に滞在中だ。

 この2カ月以上の間、情報省政府者はエバディ氏の妹に2度出頭を命令。そして2度ともエバディ氏とは会話しないよう警告し、エバティ氏が人権活動を続ければ、妹は大学から解雇されるかもしれない、と告げた。

 タヴァッソリアーン氏は11月10日、革命裁判所に預金口座の凍結命令を解除するよう求めたが、命令を出した裁判官からの回答はなかった。これを受けて夫妻は、この裁判官に対し、権限濫用の罪で刑事告発を行った。

 1948年12月10日に国連総会で採択された世界人権宣言の第17条(イランも支持)は「何人も、ほしいままに自己の財産を奪われることはない」と定めている。

「家族への脅迫や個人財産の没収など、一連の嫌がらせの目的は、シリン・エバディ氏の人権活動に報復するとともに、そのほかの人権活動家にも恐怖を与えることだ」とストークは述べた。

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