〒100-8919 東京都千代田区霞が関2-2-1 外務省

外務大臣 岡田克也 殿

ビルマ政策の見直しについて

拝啓

貴殿の外務大臣就任にあたり、我々ヒューマン・ライツ・ウォッチより、ビルマにおける人権状況に関する書簡を差し上げさせていただきます。

アジアをはじめ世界中で、人権侵害が依然として続いております。アジア各地でも、一般市民が戦争で命を落とし、多くの人々が暴力と迫害を逃れて難民となることを強いられています。また、自国の政府に批判的見解を唱えたことを理由に違法に投獄されている多くの人々が存在します。日本政府は、これまでに何度も、人権と法の支配を促進していくと公表してきました。しかし、これまで長い間、こうしたコミットメントを、具体的で目に見える行動に移すことには消極的でした。いまこそ、日本政府は、外交政策を見直し、人権の促進をその柱に据えるべきと思料いたします。そして、その第一歩として、ビルマ問題に取り組むことを提案申し上げます。

御存知のとおり、ビルマでは、2010年に計画されている総選挙を前に、弾圧が続いていおります。これを踏まえ、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、日本の新政権が、対ビルマ政策の徹底的な見直しを緊急に行うべきであると思料いたします。ビルマが手に負えないような状況を呈しているとはいえ、日本政府には、同国の人権状況と政治情勢を改善するために果たせる役割があると思料するものです。

ご承知のように、ビルマは依然として世界で最も抑圧的な国家の一つであります。表現、結社、集会に関する基本的な自由は厳しく制限されております。また情報機関と公安警察の網が津々浦々まで張り巡らされ、厳しい検閲制度も存在します。現在も2,200人以上の政治囚がビルマ国内の環境の劣悪な刑務所に投獄されております。多くの反体制派の活動家のほか、2007年8月と9月の平和的なデモ行進に勇敢に参加した人々、2008年5月に襲来したサイクロン「ナルギス」後の政府の対応の不適切さを批判した人びとなども投獄されております。こうした政治囚たちはいずれも、刑務所内などで行われる形式的な裁判や、略式審理を経て有罪判決を受けています。アウンサンスーチー氏に対する近時の訴追は、1962年以来権力の座にある軍事政権の専制ぶりを世界に再び示しました。

他方で、少数民族地域での武力紛争におけるビルマ国軍の人権侵害行為も続いています。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、子ども兵士の採用と配備、強制労働の使用、超法規的処刑、強かんなど、国軍による民族的少数者(ロヒンギャ、チン、シャン、カレンなど)への人権侵害行為を長年にわたり調査し報告して参りました。ビルマ国軍は、最近も、シャン人とカレン人の居住地域の各々を攻撃しております。大量の少数民族住民が居住地を追われ、住民たちの間には、不必要なはずの死者や困難が生じております。このほかビルマ軍と少数民族民兵組織との戦闘によって、何千人の難民がシャン州北部を逃れ、中国に避難する事態にもなりました。

市民的・政治的権利の侵害が頻発しているのみならず、汚職の存在や政治の失敗も、軍政下のビルマをアジアの最貧国に落ちぶれさせる原因となっております。ビルマ政府は自国民の基本的な福祉にほとんど関心を寄せていないと見受けられます。一例にとどめますが、天然ガス輸出により、2008年には毎月推計約1億5千万米ドル(135億円)の収入を得ていたにもかかわらず、最新の政府発表によれば、2007年度のエイズ危機対策への支出額は年間でたった17万2,000米ドル(1550万円)に過ぎませんでした。大部分のビルマ人が苦労を抱えて必死に生活する一方で、政府高官たちは、国の天然資源の私物化という腐敗を元手にした贅沢な「5つ星」生活を送っているのが現状です。

ビルマ国軍の長期的な展望はきわめてはっきりしています。軍事政権たる国家平和発展評議会(SPDC)は、民政の皮をかぶせた軍政支配を確実に継続できる選挙プロセスを効果的に演出していることを、隠しもしません。ビルマ軍政幹部は、1990年総選挙でアウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)に完敗したこと、また反体制派の活動が周期的に活発化していることを教訓として、信頼に足る選挙の実施というリスクをとることはありえないことを理解しています(事実、昨年2008年には、ビルマを揺るがした2007年の街頭での抗議行動の余韻もさめない時期に、憲法制定のための国民投票に有権者の98%が投票し、92%が賛成したという政府発表がなされました)。ビルマ政府が、選挙の実施がアメリカ合衆国、ヨーロッパ諸国など軍政支配に反対する諸国をなだめ、政治改革と国民和解に関する成果を求めるASEAN諸国や日本からの圧力を鎮め、ひいては大規模な国際援助の流入を促進すると期待していることは明らかであります。

2008年の国民投票の経験、活動家たちに宣告される長期刑、ビルマ国内の反体制派勢力および多数の少数民族勢力との間の真摯な対話の不在、政治問題と人権問題に関する協議を目指す国連やASEANの努力への妨害、改革の不在、とんでもない容疑に基づいたアウンサンスーチー氏の訴追と有罪判決の宣告。こうした事実を踏まえれば、関係諸国と国際機関がビルマ政府のこうした抜け目ない計画を変えさせるための行動を起こさない限り、2010年総選挙の前後にビルマの方向性が目に見えて変化することはありえないと思料いたします。

私どもは、この課題が困難であることは承知しています。軍事政権は隣国である中国やインド、タイと緊密な関係を持ち、天然ガスや木材、宝石といった天然資源をこれらの国々に売却して巨額の収入を得ています。中国、ロシア、また南アフリカまでもが、国連安全保障理事会が行動をとることから、現政権を保護いたしました。この点、私どもは、日本政府が、この点について2006年に方針を変更したことを歓迎しておりますが、日本政府は今にいたるもビルマ軍政を公けに強く厳しく批判をすることは避け続けております。つまり、ビルマ政府の幹部は世界の大半から孤立的で冷酷で、軽蔑されるべき存在と見なされてはいるものの、ビルマ政府の目からすれば、自分たちには域内に有力な友好国が存在し、エネルギーなどの購入を通した巨額の資金供給をしてくれるだけでなく、国連やASEANその他の国際的な枠組みにおいて武器禁輸や対象限定型制裁といった効果的な制裁が協調して行なわれることからも、ビルマを保護してくれているのだということになるのです。

外務省の小野啓一南東アジア第一課長は、日本の現在の対ビルマ政策を「対話の維持、限定的な経済援助の提供、(そして)国連と国際社会との協力(retaining dialogue, providing limited economic assistance, [and] cooperating with the UN and international community")」と説明されておられます。但し、このアプローチは、変化を起こすための重要な政策ツールのひとつを見過ごすものであります。それは、世界における最大のドナー国のひとつとしての日本の国際的及び地域的な立場を使い、SPDCに対し、公けに圧力をかけるという政策ツールです。

長年にわたり、日本はSPDC及びビルマ軍政幹部に圧力をかけることを避けてきました。しかし今こそ、これまでと違ったより強力なアプローチを検討すべき時ではないでしょうか。我々は、適切な内容を練り上げ、かつ、他国とも協調したアプローチをとることで、ビルマへの圧力は効果をあげると思料いたします。

私どもは、日本の政策見直しが、外交、制裁、人道援助という日本の政策の三本柱すべての機能をよりいっそう発揮させることを目的とすべきであり、そのいずれかひとつが突出するという事態は避けるべきであると考えております。

外交

外交に関して、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、日本政府が、ビルマ政府とトップ・レベルでの対話を追求する努力を行なうことを支持いたします。しかし、日本が理解ある姿勢で対話にのぞめば、ビルマ政府首脳に影響を与えることができ、彼らの計画の変更につなげられるのではないかという希望的観測や幻想は排除すべきと思料いたします。ビルマ国軍は、自らが統制する選挙を通してであれ、現行制度の下であれ、事態の完全掌握を目指す姿勢を貫く政権です。軍政はこれまでも、日本政府による関与策などのアプローチを逆に利用し、ビルマ軍政との緊密なコンタクトと関係継続を日本の外交の主要な目的としてしまっております。人権を尊重する民主国家として、日本政府は、ビルマ軍政高官たちと外交を行うにおいては、日本が自国の原則的立場を堅持すること、すなわちビルマ国民の権利保護と実質的で信頼に足る政治改革プロセスの実施が、ビルマ政府指導部とのあらゆる対話における主要な目的であると明確にする必要があると思料いたします。

第二に、日本政府は、外国人と通常応対するビルマ政府当局者は、それが外務大臣であれ、サイクロン後の復興に関わる当局者であれ、政府の中では実質的な権限を有してはいないこと、ならびに、またこうした人びとがタンシュエ議長やその他の軍政幹部を、他のビルマ国民と同じく非常に恐れていることを念頭に置くべきと思料いたします。権力構造の2層目にいる人々との関係構築に多大な時間とエネルギーを費やした多数の外交官たちは、私どもに対し、ほとんどが時間の無駄であったと述べております。権力を実際に握っているのは、タンシュエ上級将軍、マウンエー副上級将軍、トゥラシュエマン中将、テインセイン首相並びにその他の主な地域司令官たちでありますが、こうした人々は外部の人間とほとんど接触いたしません。厚生副大臣や中堅クラスの公務員との対話は、人道援助を円滑に進め、現場で起きる実務的問題を解決するのには役立つと思われますが、そのこと自体はビルマの抱える根本的な問題に対処する方法でも、ビルマと日本の間の摩擦の原因でもないのが実態であります(この点については、岡田大臣の前任者である中曽根大臣が、最近、ビルマの農業・灌漑大臣で連邦団結発展協会の事務局長でもあるテー・ウー氏と面談した件も同様です)。

主要な政治イシューに関して言えば、これまで行われた関与策は大した効果を生まず、場合によっては逆効果でさえあったと思料いたします。例えば、2007年の民主化デモに対する弾圧が行われていた時の外交的関与は、ビルマ政府が時間を稼ぎ、重要な議論に関わっているふりをするために利用されただけでした。また例えば、イブラヒム・ガンバリ国連事務総長特使の働きかけは、実質的な成果を一切もたらすことができませんでした。時折ビザが発給されたり、アウンサンスーチー氏と短い会談を行ったりといったことが「成功」と見なされるまでに状況は悪化してしまいました。また、意図的ではないにせよ、予測可能であった結果として、こうしたガンバリ特使の外交は、ビルマ政府の宣伝に利用されてしまいました。近時の潘基文国連事務総長のビルマ訪問も、実質的な成果を生み出すことに完全に失敗いたしました。潘事務総長は、アウンサンスーチー氏との面会も許されず、政治囚を解放すると空約束されるだけに終わってしまったのです。

私どもは、日本政府が、外務大臣直属のビルマ特使を任命し、ビルマ政府や主な関係国政府、また国際機関と、原理原則を一貫して守った上で協働するという具体的な指示を与えることを提言いたします。新たな収入源がビルマ政府の手に渡らないようにするために、中国、インド、タイ、インドネシア、マレーシアやその他の影響力のあるアクターとの間での力強くかつ原理原則に基づいた外交が特に求められています。

私どもは、「ビルマ連絡調整グループ(ビルマ・コンタクト・グループ)」または類似の多国間グループを設置して会合を行い、様々な問題に関してビルマ政府との交渉のあり方を定期的に協議することも提言いたします。これは中国、インド、タイ、インドネシアなどの見解や政策を集約する機能を果たすとともに、ビルマが関係国間での対立を煽ることで得ている利益の範囲を次第に狭めていくのに有益であるとも考えられます。実際、様々な問題について共通の土台はすでに存在しています。たとえば、政治改革の必要性や軍事支配体制に反対するグループの参加が確保された信頼性のある選挙の実施の必要性、ヘロインとメタンフェタミン(覚醒剤の一種)のビルマからの密輸に対する懸念、HIV/エイズの流行に対する地域全体でのアプローチの必要性などです。そのほかにも、ビルマと北朝鮮との間で防衛面の連携が強まっていることも議題のひとつとなると考えられます。たとえば、北朝鮮がビルマ国内の地下施設建設を支援していることを示す写真が最近公開されました。もちろん、こうしたグループの設置に際して、日本が基本的人権の原則にしっかり軸足を置き、改革の中心課題について妥協するような外交的な駆け引きに加わらないことが求められてることは言うまでもございません。

国連が長期にわたってビルマ外交の中心となってきたことを踏まえ、私どもは日本政府に対し、国連事務総長特使の任命を引き続き支持するよう要請いたします。一方で、国連事務総長と事務総長特使は、ビルマへの入国やハイレベル会合の実現自体を目標や変化の兆候ととらえるゲームに囚わるべきではないと思料いたします。特使には、原理原則をしっかりと持った人物で、かつ、交渉のスキルを有する人物を任命すべきと存じます。また、特使は、国際社会に広く変化をもたらすことができる人物である必要があることから、国際社会が広範に支持する人物でなくてはならないとも思料いたします。

制裁

現在、対ビルマ制裁をめぐっては激しく、ある種感情的とさえいえる議論が行なわれております。一方には、制裁は軍事政権に対して目に見える効果をまったく及ぼしていないので解除すべきだという主張がございます。また他方では、政治的・技術的な理由により、制裁措置はこれまで一度も適切に実施されたことがない、よって、制裁の対象となる企業や個人を追加するとともに、まだ制裁を行なっていない国や組織に対し、制裁を行なうように働きかけるべきであるという主張がございます。

問題のひとつは、ここでの議論が「制裁」という言葉がすべて同じ内容を持っていると捉えられる傾向があることにあります。しかし実際には、制裁措置の中身によって分けて議論する必要がございます。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、世界各国での我々の活動を通じて、対象限定型の制裁は、適切に実施すれば、人権状況の改善をもたらす可能性を有していると認識いたしました。対象限定型の制裁には、武器禁輸、軍事援助規制、個人への渡航禁止措置のほか、個人や企業への金融制裁や、人権侵害に関する重大な懸念の損する企業郡や経済セクターに対象を絞った投資・貿易制裁などが含まれます。

これらのうちおそらく最も効果的なものは金融制裁と思料いたします。私どもは、米国や欧州連合(EU)、スイス、オーストラリア、カナダなどすでに金融制裁を実施している諸国に続いて、日本政府においても、ビルマの高官たちに対する圧力を最大限のものとするための協調アプローチの一貫として、金融制裁を導入することを求めます。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、人権侵害の責任者である高官たち(軍人、民間人を問わない)に対象を絞った形の制裁(金融制裁を含む)を行なうことを支持しております。こうした対象限定型の制裁は、適切に実行された場合、一般の人びとに困難を引き起こすことなくレバレッジを生み出すことができるからです。SPDC内の重要高官や石油・ガス関係当局その他ビルマ政府に主要な収益をもたらす源となっている組織による金融取引を補足するにあたっては、米国その他の諸政府が金融制裁を行なう際と同様、情報関係機関の積極的な協力と日本政府の継続的なモニタリングと調整が必要となります。対象となる人物たちは、ビルマ国内のヒエラルキーの頂点にあるため、こうした協調的な圧力の影響を受けやすい立場にあるのです。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、国連安全保障理事会における人間の安全保障の主要な提唱者である日本政府においては、子どもと武力紛争に関する国連安全保障理事会の取組みを通して対象限定型の軍事制裁を実施する可能性も追求すべきと思料いたします。安全保障理事会は、これまでに2つの決議(決議第1539号、決議第1612号)を通して、子ども兵士の採用と使用を停止しない加盟国に対し、小火器、軽武器、その他の軍用装備の輸出および供給、ならびに支援の禁止を考慮すると明らかにしております。ビルマ国軍は現在も数千-数万人の子ども兵士を配備しており、2002年以来、子ども兵士を継続的に採用し、使用する国として、国連事務総長によって繰り返し名指しされております。安全保障理事会においてビルマ制裁措置を実施することはほとんど不可能である実態が明らかになってきているなかで、子どもと武力紛争に関する取組みは、安全保障理事会がより強力な行動に出るために有益な手段です。こうした軍事制裁の実施がはっきりとした脅威として存在すれば、子ども兵士の採用と使用が広範に行われている現状に終止符を打つための具体的な進展に向けた力になると思料いたします。

人道・開発援助

人道援助については、ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれまでも、ビルマの深刻な人道的なニーズに対処するために援助を増額すべきだと提唱して参りました。日本政府による支援は以下に概説する条件の下で増額することが可能と思料いたします。しかしその前に、ビルマの人道諸問題の原因は、利用できる資源が欠乏しているからではない、ということを認識していただきたく存じます。ビルマ政府は、タイ政府との間で、政府最大の収入源である約20億米ドル(1800億円)の年間収入をもたらす、天然ガス売買契約を結んでいます。地上パイプラインによる中国への天然ガス供給に関する新たな契約は、さらに巨額の収入をビルマにもたらします。ビルマ政府指導部は宝石や木材の売上からも大きな収入を得ております。このほか現在進行中の水力発電開発事業も巨額の収入を約束するものです。

こうした巨額の収入にもかかわらず、ビルマ軍事政権は国民の福祉に対してほとんど支出を行っておりません。国家予算のうち最大の支出は軍事費で、その割合は約4割にまで達しますが、社会のための支出の総計は、推計によれば2008年度のGDPのわずか0.8パーセントであり、健康と教育に対する公共支出の割合は世界最低水準となっています。相当数のビルマ国民が劣悪な貧困状態で生活しており、その原因には数十年にわたる経済政策の失敗と政府の腐敗があございます。したがって、外国ビジネスがビルマに経済的な投資を行うことが何らかの形でビルマの開国に結びつくのではないかという考え方は誤りと思料いたします。ビルマへの外国投資は天然資源開発と水力発電用ダムの建設が中心となっております。そこから生じる収益は、人道や開発に関するニーズに応えるのではなく、浪費や横領の対象となり、軍事費に使われており、結果的に権力者の力を強化し、ビルマ国民から、経済的社会的権利を奪う結果となっているのです。

ドナー国が人道支援についてビルマ政府と協議する際に常に念頭に置くべきなのは、ビルマ政府は実際のところ、こうした支援に対して相当な金額を支出する能力があるという事実でございます。ドナー国はまた、人道援助は人道目的であること、すなわち人道援助は人々の生命を支え、健康を支えるためのものであり、政治的なものではないことをはっきり意識すべきです。人道援助それ自体に、ビルマの開国や政府の政策の変更を実現する強い政治的な力を期待することがあってはならないと思料いたします。ドナー国側は、人道援助の実施に際して、透明性とアカウンタビリティの重要性を強調すべきであり、たとえば既存の腐敗した権力構造ではなく、市民社会を強化し、一般国民の要望とニーズに対応したアプローチの重要性を強調すべきと思料いたします。

SPDCは、中国に全面依存したくはないと考えております。それであれからこそ、日本や米国やEUからの援助も期待しております。開発援助は、ビルマの変革に向けた重要なインセンティブになると思料いたします。しかし、私どもは、日本その他各国からの開発援助については、実質的な政治改革、人権状況の改善、ガバナンスの改善が行われること、また開発目標の設定に関して市民社会や地域社会と協議を行なう可能性が存在しない限り、実施されるべきではないと考えております。同様に、これらの条件が満たされるまでは、世界銀行の開発融資も再開されるべきではありません。ビルマで本当に必要とされている開発援助とは、一般市民の貧困や窮乏を軽減する事業であるにも拘わらず、不幸なことに、ビルマ政府が優先的に行っている開発事業とは、軍政幹部のための「虚栄の事業」であり、深刻な人権侵害を伴う軍事行動を容易にし、国軍支配を強化する資金を生み出すのに役立つ種類の事業であるのが実態です。

ビルマ国民を支援することは、過去数十年に世界が直面してきた諸問題のうちでも、最も困難で、解決の難しい問題のひとつであります。私どもはその困難さを過小評価はいたしません。しかし、国際社会と日本政府が協調して、原理原則に基づいた新しいアプローチに取り組めば、はっきりとした変化が生じうると思料いたします。

敬具

ケネス・ロス

エクゼクティブ・ディレクター