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ベトナム:訴追された非暴力の民主活動家たちを解放せよ

反対意見への締め付け強めるベトナム政府

(ニューヨーク)- 6人のベトナムの民主活動家たちが、国家の安全の侵害という濡れ衣で訴追されている。ベトナム政府は非暴力で活動したにも拘わらず訴追された6人を直ちに解放するべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。6名の訴追は、表現の自由を保障する国際法にも、ベトナム国内法にも反する。

裁判にかけられている6人の活動家たちが逮捕されたのは、昨年9月から始まった政府の一連の弾圧の一環。著名な小説家でありジャーナリストでもあるグエン・スアン・ギア(Nguyen Xuan Nghia)氏(60)もそのひとり。2008年のHRWのヘルマン・ハミット賞の受賞者であるギア氏は、当局に違法団体と指定された民主化運動団体Block 8406のリーダーを務め、発禁にされたTo Quoc(祖国)紙の編集委員でもある。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、5月17日付けの公安省の捜査報告書を入手。それによると、活動家たちが訴追されたのは以下のような行為を行ったためとされる。リーフレットの配布、橋に垂れ幕を掛けること、詩や記事の執筆、民主主義や人権、多元的な政治体制を求める内容の記事をインターネット上で流布したこと、である。7月3日付けの起訴状によると、6人は反政府的な宣伝活動を禁ずるベトナム刑法88条によって訴追された。最長で12年の禁固刑に処される可能性がある。

「訴追された活動家たちは、多元的政治体制と人権を平和的手段で求めたに過ぎない。」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長のブラッド・アダムズは述べた。「ベトナム政府は彼らをすぐに解放すべきである。」

警察の捜査報告書によると、民主活動家たちは、2008年8月にハイズオン(Hai Duong)とハイフォン(Haiphong)の橋に民主化を訴える垂れ幕を掛け、2007年と2008年に中国政府と北京五輪に反対するデモを計画、実行した。さらに、この6人は定期的に会って、計画をたて、ベトナム国内と海外の民主活動家たちと交流を続けたほか、海外のラジオや新聞に情報を提供したとされる。

「詩を書くことや、民主化を主張する垂れ幕を橋に掛けることのどこが国の安全を脅かすのか?ベトナム政府は、今回も、意見を言うことを犯罪扱いしている。当局は政治的信念の違いを理由とする拘禁を止めるべきだ。」とアダムズは述べた。

警察の捜査報告書は、ギア氏を団体のリーダーであると認定。2007年から逮捕される2008年までの彼の詩、長編、短編作品、記事など57点の作品の目的が「ベトナム共産党を侮辱し、国家の状況を歪曲し、国家の指導者を辱め、多元的な政治体制と複数政党制を要求し...人びとを反政府運動に扇動する」とした。

ギア氏と共に起訴され、彼の共犯として公判にかけられるとみられる他の5人の活動家は、長年の民主活動家グエン・ヴァン・ティン(Nguyen Van Tinh)氏 (67)、 土地の権利に関する活動家グエン・キム・ナン(Nguyen Kim Nhan )氏(60)、グエン・ヴァン・タク(Nguyen Van Tuc)氏 (45)、大学生のゴ・クイン(Ngo Quynh)氏 (25)、エンジニアのグエン・マン・ソン(Nguyen Manh Son)氏 (66)である。

昨年9月には、この6人のほかにも4人が逮捕された。その4人は未だに起訴されずに、ハノイのタンリエット地方拘置所 (B-14)に拘禁されたままである。この4人は、作家でブロガーのファム・タン・ギエム(Pham Thanh Nghien)氏、 教師のブー・フン(Vu Hung)氏、 詩人のトラン・ドゥック・タック(Tran Duc Thach)氏、 エンジニアのファム・ヴァン・チョイ(Pham Van Troi)氏である。

2008年9月に逮捕された以上10人の活動家に加え、少なくとも他7人の活動家が2009年5月から始まった一連の逮捕劇により捕まっている。

加えて、長年の民主活動家であるグエン・タン・ザン(Nguyen Thanh Giang)氏とブー・カオ・クアン(Vu Cao Quan)氏やファン・ヴァン・ロイ(Phan Van Loi)神父も、逮捕の危険性が高まっている。ギア氏のグループの関係者であるとの疑いをかけられているのだ。警察の捜査報告書に、さらなる調査のために訴追すべき者としてリストアップされている。

ベトナムの司法の現状に照らせば、今回も政治的な判決が下されることが予想される。国際的な公平な裁判の基準に違反した裁判が行われよう。ベトナムの裁判所は独立性と公平性を欠く。活動家は弁護士の弁護を受けることも難しく、活動家の裁判を傍聴しようとした外国メディア、外交官、外国人傍聴者が傍聴を拒絶されることも珍しくない。

「ベトナムを経済支援する国は、本事件について直接ベトナム当局に問いあわせ、表現の自由が奪われている現状に対し強く抗議するべきである。」と、アダムズは述べた。「経済発展のための政策は、基本的人権と自由の尊重と連動しなければいけない。」

ベトナム政府は、平和的な政府批判を犯罪とする刑法第88条などの刑法の公安関係の条文を見直し、撤廃すべきである。しかし、ベトナム政府はそうした刑法改正の勧告を拒否し続けている。最近では、今年5月の国連人権理事会(HRC)による人権状況のレビューの際にも、そうした勧告の受け入れを拒否。HRCは9月にベトナムの普遍的・定期的レビュー(UPR)の結果の報告書を発表することとなる。UPRは、国連加盟国である192カ国全てが4年ごとに受ける審査。

HRCは、表現や結社の自由、メディアの独立性、そして人権保護活動の制限を取り除くようベトナム政府に対して勧告。しかし、ベトナム政府はすでにこれらの勧告を拒否する意向を示している。

「ベトナム政府は、国連と協力して法律を国際基準に合うように改善すべきなのに、これを拒否した。それだけでなく、今もその問題の法律を利用して政府に対する批判の声を抑圧している。」とアダムズは述べた。「ベトナムの人権状況が国連で注目を浴びている今でさえ、状況改善の勧告を無視し続けている。」

ベトナム憲法並びにベトナムも締約国となっている市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)では、表現の自由、信仰の自由、意見の自由の尊重を国家に対し義務付けている。

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