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紛争の当事者はだれか

  • 2006年、コンゴでは歴史的な選挙が行われた。この選挙は、1996年から2003年まで二連で起きた戦争国に安定をもたらすと期待されていたが、コンゴ東部での殺戮は続いた。2008年1月、和平合意が政府と多くのコンゴ反政府勢力の間で結ばれた時、暴力がようやく終結するかと思われた。しかし、実際には戦闘は数ヵ月後に再開した。
  • コンゴ政府は、2008年12月には、隣国ルワンダ及びウガンダと密約を交わした。ルワンダ、ウガンダともに過去に2度コンゴを侵略したかつての敵国であったが、今回の取引では、コンゴに基地を持つルワンダとウガンダの反政府勢力に対し、限定的な共同軍事作戦を認めた。その見返りとして、コンゴ政府はルワンダ政府に対してコンゴ反政府組織のひとつ、人民防衛国民会議(the National Congress for the Defense of the People 、CNDP)への支援をやめるよう求めた。CNDPはルワンダから支援を受け取っており、コンゴ軍に繰り返し打撃を与えてきた。
  • 現在、コンゴ軍FARDC)の前線は2つ:

1. 2009年1月下旬以降、コンゴ軍は東部の南北キブ州でルワンダのフツ系武装勢力、ルワンダ解放民主FDLR)と戦闘をしている。当初は、ルワンダ軍と連合していたが、35日間の作戦遂行後に退散してからは、国連平和維持活動軍(PKO)である国連コンゴ監視団(MONUC)の援助を得ている。FDLRの軍指導者の一部は1994年のルワンダ大虐殺に加担しており、コンゴに越境して以来、東部にとどまっている。FDLRにはおよそ6,000人の戦闘員がいるとされている。コンゴ政府は、以前にはFDLRを支援していた。

2. 2008年12月以来、コンゴ北部のオリエンタル州では、コンゴ国軍はウガンダ反政府勢力のひとつ、神の抵抗軍(Lord's Resistance Army、LRA)と戦闘をしている。LRAは2005年末コンゴに入り、スーダン国境沿いの人里はなれたガランバ国立公園に基地を設けた。600人弱の戦闘員がいるとされている。コンゴ軍は3月まで、ウガンダ軍主導のもとLRAに対して軍事作戦を行っていたが、3月にウガンダ軍の撤退後、コンゴ国軍が戦闘を主導するようになった。現在も、ウガンダの情報部隊がコンゴ内部にプレゼンスをもち、北部でコンゴ軍を援助し続けている。

  • コンゴ東部での中央政府の影響力は限られており、22ものコンゴ武装組織が立ち上げられた(反政府派の組織も親政府派の組織もある)。これらのグループの中でも最も有力なのが、CNDPである。CNDPはルワンダ政府を後ろ盾としており、かつてはツチ系のローラン・ンクンダ将軍に率いられていた。しかし、ルワンダ政府は、1月に劇的な政策転換を行い、ンクンダを逮捕。ICCから戦争犯罪の逮捕状を受けており、かつンクンダの参謀長であったボスコ・ンタガンを指導者に据えた。
  • 今年の3月、対FDLRの軍事作戦に協力し、コンゴ軍に軍統合するという和平協定を、コンゴ政府とCNDPなどの武装集団間で調印された。しかし、協定はもろく、一部の組織はすでに和平協定を破っている。和平協定の結果、新たに12,000人の戦闘員がコンゴ軍に加わった。ンタガンダは、逮捕されて裁判のためハーグに移送されることもなく、コンゴ軍の大将に就任した。「コンゴ民主共和国:ボスコ・ンタガンダを逮捕せよ」参照。(2009年2月ニュースリリース)
  • コンゴ軍は推定120,000人の兵士を擁し、その約半分がコンゴ東部に展開している。軍は統制がとれておらず、腐敗している。給与は、伍長クラスで月給45ドル、大将クラスでは月給95ドルである。戦場の部隊には、十分な食料やその他の必需品は与えられておらず、そのため兵士は略奪やその他の犯罪行為に手を染めるしかない状態におかれている。

人道状況

  • 国連によると、対FDLRの軍事作戦の開始以来、80万人以上が南北キブ州の家を捨て、避難することを余儀なくされている。25万人がコンゴ東部から北部に避難している。コンゴにおける国内避難民の総数は200万人を上回ると国連は推定している。
  • 家を追われた人々の少なくとも70%は遠く離れた「疎開先(ホストファミリー)」で生活しており、ほとんど、あるいはまったく人道支援にアクセスがない。
  • 1月に軍事作戦が開始されて以来、FDLRとコンゴ軍双方によって、5,000戸以上の家が焼き尽くされた。1つの村落全てが焼き尽くされたこともあった。コンゴ北部では、2008年12月以降、LRAによって何百戸もの家屋に焼き討ちにあっている。
  • 国連の人道活動計画では、緊急人道支援のために、2009年度に8億3100万ドルを申請したが、6月までにその資金の半分しか届いていない。
  • 北キブ州では、2009年人道支援組織の人員に対する攻撃が84件発生。昨年の同じ時期の36件から大幅に増加している。

殺害などの人権侵害

  • 軍事作戦が始まって以来、民間人に対する暴力は著しく増加している。ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査員らは1,864人の民間人の殺害を記録している。北部の1,200人はLRAによって、東部の664人のほとんどがFDLRによって殺害された。LRAとFDLRはともに意図的に民間人を狙っている。"DR Congo: Massive Increase in Attacks on Civilians"参照。(2009年7月ニュースリリース)
  • コンゴ東部で殺害された人々の半数近くは女性と子供たちで、12%は高齢者であった。また、9人の地方長官や政府役人も含まれていた。一部には、首が切断されている例もあった。
  • LRAは2007年12月以降、コンゴの民間人を拉致・強制失踪させている。国連によるとその数は1,625人以上に上り、そのうち645人が子供であった。6月だけでも、138人の成人が拉致された。LRAは子供を拉致し、少年兵にしてきた過去を持つ。ウガンダ政府との23年に及ぶ紛争において、LRAは2万人以上の子供をウガンダとスーダンから拉致している。
  • コンゴ軍は、前線との間で弾薬やその他の物資を何百人もの民間人に運ばせており、民間人は非常に危険な状態におかれている。
  • 1998年以降コンゴでは540万人が亡くなっていることが国際救済委員会(IRC)の死亡率調査でわかった。その大部分が、餓死または、医療援助の欠如を理由として死亡した。コンゴでの民間人の死亡者数は、第二次世界大戦以降の戦争の中で、最多の犠牲者数となっている

性暴力

  • 性的暴力対策の調整を担当する国連人口基金(UNFPA)は、1998年以降推定20万人の女性と少女が性暴力の被害をうけたとしている。2008年には、その数は16,000件近くを記録した。被害者の65%は子供たち、特に思春期の女の子であった。
  • レイプの件数は増加している。ヒューマン・ライツ・ウォッチが2009年1月以降に訪れた9つの紛争地帯では、レイプの件数は前年に比べて2倍から3倍になっている。半数以上が、2人以上の集団による強かんであり、最も幼い被害者はたった2歳であった。また、男性が強かんされるという事件も増加している模様だ。
  • ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査によると、北キブ州で新たに起きたレイプの65%はコンゴ軍兵士が行ったものであった。
  • 性暴力の被害者援助の資金のうち、女性や女の子を性暴力から保護するために使われているのはたった11%にすぎない。
  • 膨大なレイプ事件の数にもかかわらず、コンゴ東部の軍事裁判所で、2008年に性暴力で有罪になったのは、軍人27人にすぎない。今年に入ってからは、兵士17人が北キブ州で有罪判決を下された。7月、軍事裁判所はンダヤンバジェ・キパンガ大佐を強かん罪で有罪とした。彼は、これまで有罪になった軍人のなかで最高地位の軍隊幹部であるが、いまだ逃走中である。自らの行為、または部隊の監督責任に基づき有罪とされた将軍はまだいない。"DR Congo: Hold Army Commanders Responsible for Rapes" 参照。(2009年7月プレスリリース) 

国連平和維持

  • MONUCは世界最大のPKO軍であり、2009年から2010年の財政年度では、13億ドルの予算を有する。今年11月30日をもって、コンゴに10年間駐留したこととなる。MONUCは、民間人保護のために兵力の使用も許容されるという国連憲章第7章に基づくマンデートを有する。
  • MONUCはコンゴで17,000人の軍事要員を有し、その大多数は南北キブ州にいる。その他、692人の軍事監視要員、1,078人の警察要員、973人の国際文民要員、2,483人の現地文民要員と619人の国連ボランティアがいる。コンゴの国連軍事要員の主な派遣国は、インド、パキスタンとバングラデシュ。米軍の兵士はいない。EU諸国は63人の軍人を派遣し、そのほとんどが軍事監視要員である。
  • 2008年11月、国連安全保障理事会はMONUCの3,000人の軍事要員の増員を許可。しかし、増員は未だに到着していない。"UN: Send More Troops to DR Congo" 参照。( 2009年2月ニュースリリース)

財政援助

  • 2008年度の米国のコンゴに対する援助額は、2億500万ドル。一方、同年に、アフガニスタンに対する米国の援助額は21億ドルとなっている。
  • 2008年12月、ガランバ国立公園にいるLRA指導部への攻撃のために、米国政府は兵站面、資金面、諜報面での支援をウガンダ軍に提供。しかし、この作戦でLRAの指導者ジョセフ・コニーを逮捕することはできなかった。
  • コンゴには、世界のコバルトの34%、銅の10%が埋蔵されている。また、金、スズ、コロンバイト、ダイヤモンド、ウラニウムやその他様々な鉱物資源がある。国連やヒューマン・ライツ・ウォッチなどの国際機関は、コンゴの鉱物資源の富を支配したいという諸外国の軍隊や反政府勢力の欲望が、紛争に大きな影響を与えていることを明らかにしている。"DR Congo: Gold Fuels Massive Human Rights Atrocities"参照。(2005年6月ニュースリリース)
  • 中国がコンゴに90億ドルの融資を行ない、コンゴが中国に銅とコバルトの採掘権を与えるという合意が2008年に成立。これは、中国史上、アフリカとの間の最大の取引となっている。
  • コンゴは120億ドルもの対外債務を抱えており、その大部分が、1997年まで32年間統治したモブツ・セセ・セコの独裁時代に蓄積されたものだ。米国はモブツ政権の主要な支援国の一国だった。米国がこれまでにコンゴに債務救済を与えたことはない。

その他

  • コンゴは世界最貧国の中のひとつである。2008年には、国連の人間開発指数の最下位近くに位置した(179カ国中177位)。
  • コンゴはトランスペアレンシー・インターナショナルの行う腐敗認識指数(Corruption Perceptions Index)で最下位近くにいる。2008年には、調査された180カ国のうち171位であった。
  • コンゴは国際刑事裁判所(ICC)の締約国であるり、政府は、国内で起きた国際法違反の犯罪について捜査するようICCの検事に付託した。2006年以降、逮捕状が発付され指名手配された被疑者3名がコンゴからICCに引き渡されたが、軍の大将となったンタガンダの逮捕をコンゴ政府は拒んでいる。また、その他にもコンゴ人被疑者1名がベルギーで逮捕された。また、LRAの軍指導者3人に対しても、ウガンダでの戦争犯罪と人道に対する罪で逮捕状が出されている。彼らもいまだ逃走中で、コンゴに潜伏しているとみられている。

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