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スリランカ:国際通貨基金(IMF)は人権侵害を見逃すな

スリランカ政府は、25億ドルの融資受け入れの前に人権侵害の解決を

(ニューヨーク)-スリランカ政府は、国際通貨基金(IMF)に対して融資申請中である。IMF理事国は、この25億ドルのスタンドバイ融資を承認するには、スリランカ政府が行なっている紛争後の重大な人権侵害を政府が解決することも必要であると主張すべきである、と本日ヒーマン・ライツ・ウォッチは述べた。IMFの理事会は、このスタンドバイ協定ついて今月24日に裁決を行う予定。スリランカ政府が、国際人権法および国際人道法に著しく違反する行為を行なってきたことから、今回の融資は激しい論争を巻き起こしてきた。

政府軍とタミル・イーラム解放のトラ(LTTE)の間で25年間続いた紛争の終結から2ヵ月が経ったが、スリランカ政府は、国際法に反し、紛争により避難民となった28万人以上のタミル人らの拘束を続けている。政府当局は、人道的組織やメディア、独立した監視員などによる収容施設への立ち入りを厳しく制限しており、国内避難民の人びとはスリランカ当局による虐待の危機にさらされている。

「スリランカ政府が、極めて多くの人々を収容施設で拘束し続けている真っ最中に、スリランカ政府が要求した額より6億ドルも多い融資を提供するとは、スリランカ政府にとっては人権侵害をしているのに得をしているようなもので、状況改善のインセンティブにならない。」、とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局の局長ブラッド・アダムズは述べた。「IMFはアプローチを変える必要がある。」

IMFの主要加盟国が、スリランカへの融資の提供について懸念を示すとともに、さまざまな場面で、スリランカ政府による国内避難民の扱いを非難してきた。今年の5月半ば、クリントン米国務長官は、IMFがスリランカへ融資を行う時期として、今は「適していない」と述べた。ミリバンド英外相も、5月半ば、「すべての政府は、IMFの融資を、適切かつ妥当に使用しなくてはならない。・・・スリランカ政府は、現在、こうした状況にない。」と指摘した。

IMFの7月20日の発表によると、IMFとスリランカ政府は、スタッフレベルでのスリランカ融資に合意し、7月24日には理事会が決議を行うとのことである。25億ドルの融資は、スリランカ政府がが今年3月当初に要請した19億ドルに比べて、6億ドルも多い。本融資が承認されることになれば、スリランカ政府は、3億1300万ドルもの融資を即刻受け取るほか、その余の金額を今後20ヶ月にわたり受け取り続けていくこととなる。

また、7月20日、IMFのマネジング・ディレクターであるドミニク・ストラウス-カーン(Dominique Strauss-Kahn)氏は、スリランカ政府に対する本件融資は、同国の国際通貨準備の再構築、及び国家赤字の減少に加え、スリランカ北部における紛争後復興支援にもなる、と述べた。

しかしながら、スリランカ政府は、最近、基本的人権を無視し、紛争後の復興・国民和解・安定を脅かし、もって、本融資の目的を損なう行為を繰り返している、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。スリランカ政府は、国内避難民たちを違法に収容キャンプに強制収容し続けている。そして、国内避難民の自由への権利の移動の自由を侵害しているほか、紛争の最終段階でいったい何がおきたのかという真実を話して明らかにすることを妨げている。さらに、援助機関が、収容キャンプ内の悲惨な状況を明らかにするの禁止し、政府を批判した人びとを退去強制にした。LTTEと関係があったと疑った人々を、外部からの接触を一切禁止した状態(incommunicado)で拘禁を続けるという国際法違反を続けているほか、信頼性の高い複数の報告によると、拘禁中の虐待も発生している。

スリランカ政府は、内戦の間の国際人道法違反行為に対する戦争責任を問うあらゆる動きを完全に封じ込めてきた。ジャーナリストや市民社会の活動家に対して度重なる攻撃が行われているが、政府はこうした事件の捜査を行わず、逆に、あたかも政府批判は国家反逆行為であるかのように、そうした人物たちはLTTEの関係者だと糾弾した。

タミールタイガー(LTTE)の敗北の後、スリランカ政府軍の幹部らは、軍要員を20万人から30万人に大幅に増員することを発表。さらに、国内避難民たちを強制収容キャンプに監禁するというスリランカ政府の政策の結果、国内避難民たちは仕事もできず、生活を政府や人道支援組織の支援に頼るほかない状況に置かれている。ある組織の試算によると、キャンプ運営には一日に40万ドル(約4000万円)以上のコストがかかる。IMFがスリランカ政府に対し、国家財政危機に立ち向かうとする一方で、こうした政府の政策ゆえのコストをどのようにまかなう計画なのか問うことが重要だ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「IMFの理事たちは、すべての新しい融資が、はっきりとした人権状況の改善とつながっていることを確保しなくてはならない」とアダムズは述べた。「キャンプに残るのか出て行くのかを国内避難民自らが選べるようにするとともに、独立したジャーナリストやモニターたちにキャンプ内への完全なアクセスを認めることは、最低限の条件とされるべきだ。」

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