(ジュネーブ)-国連人権理事会は、2009年5月26日に開催される特別会期で、スリランカ政府から、同国の悲惨な人道問題の解決に取り組むという約束を取り付けるべきだ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「国連理事会の特別会期開催は、紛争中と同様、戦闘終結後も、人権の尊重が必須であるということを示す」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは述べた。「戦闘は終結したが、人道状況はまだ警戒すべき状態にあり、真の改善が今すぐ必要だ。」

スリランカ政府は、タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)に軍事的勝利をおさめ、スリランカで25年続いた壊滅的な内戦を終結させたばかり。しかし、この内戦終結は、民間人の膨大な犠牲の末にもたらされたものであり、スリランカ政府軍にもLTTEにも、この民間人犠牲に対する責任がある、とヒューマン・ライツ・ウォッチは語った。

戦闘によって故郷を追われた約30万人の民間人は、極度に脆弱な状態におかれている。スリランカ政府は、政府運営の強制収容所と、戦闘地域に残っている負傷者に対する人道的アクセスを制限したままであり、この政府によるアクセス制限措置によって、深刻な状況がさらに悪化している。

「すべての国内避難民が、差別なく援助にアクセスし、保護を受けられるようにする必要がある。国連人権理事会は、その旨の明確なメッセージを出すべきである」とアダムズは述べた。

国連人権理事会は、国内避難民への十分な保護、そして、避難民の自由への基本的権利と移動の自由の実現を強く求めるべきである。あわせて、国連人権理事会は、戦闘継続中、スリランカ政府が人道機関、メディアや人権保護団体に立ち入りを認めなかった地域への各機関の全面的な立ち入りを認めるよう、スリランカ政府に求めるべきである。国連人権理事会は、加えて、同国で続く人権問題、とりわけ同国の少数民族タミル人が直面する人権侵害に取り組むというスリランカ政府の具体的な約束を取り付けるべきである。

先般の戦闘の際、LTTEとスリランカ政府軍の両当事者が、戦争法(戦時国際法)に違反したという多くの信頼性の高い報告を、ヒューマン・ライツ・ウォッチは入手している。違反行為とは、具体的には、LTTEについては、民間人を人間の盾として使用した事及び少年(子ども)兵を使用した事実である。そして、スリランカ政府については、病院を含む人口密集地域への無差別な砲撃である。これらの疑惑には、公正な調査が必要である。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、国連人権理事会とその理事国に対し、5月26日の特別会期で、以下の4つの緊急事項を集中審議するよう求めた。

  • 閉鎖されたキャンプに収容されている国内避難民及び戦闘ゾーンに残されている国内難民への人道上のアクセスを緊急に確保する事
  • 政府が運営する強制収容所に収容されている民間人の自由と移動の自由、及び、政府がLTTEのメンバーとの疑いをかけている人の基本的人権の確保
  • 過去及び現在の人権侵害の実態を明らかにする人権活動家やジャーナリストに対するあらゆる形態の嫌がらせや脅迫を止める事
  • 近時の戦闘での紛争の両当事者による国際人権法と国際人道法の違法行為について、事実を調査した上で責任追及を勧告する公平な国際調査団を設立する事

「スリランカのマニク・ファーム収容所(Manik Farm Camp)は、世界最大の国内難民収容所となってしまっている」とアダムズは述べた。「マニク・ファーム収容所が軍によって運営されており、居住者はキャンプから出ることを許可されていないという実態、そして、人道援助団体のアクセスを制限しているために避難民の命が危険に曝されているという実態に、国連人権理事会は激しく抗議するべきである。」

戦闘が行なわれていた地域で、唯一活動を行なっていた野戦病院で、自らも避難を余儀なくされるまで負傷者に治療を施していた医療関係者たちの置かれている状況に、ヒューマン・ライツ・ウォッチは特別の懸念を抱いている。スリランカ政府が、当該医師たちをコロンボに拘束し、ウソの情報を流したとの容疑をかけたのは、この医師たちが、戦闘ゾーンで政府が行なった砲撃の実態を世界に知らせてきたせいであることは明確である。国連人権理事会は、この医師たちの即時解放を要求すべきだ。

拘束されている全ての民間人及びLTTE戦闘員であると疑われ拘束されている人びとの安全を確保するため、必要な全ての手段を講じるべきであると、国連人権理事会はスリランカ政府に求めるべきである。具体的には、LTTE支配地域に居た全ての者を登録しその登録情報を公開すること、国際人道機関にその過程への参加を許す事、収容所及び戦闘地域への人道援助機関及びメディア立入り禁止措置を撤回する事などを、人権理事会は要求すべきである。非常事態令その他の法の下で拘束されている人々に、家族と弁護士との速やかな面会を許すべきである。国連人権理事会は、スリランカ政府の治安上の予防措置であっても、決して強制失踪は正当化されないことを明確にしなければならない。

「国連人権理事会の特別会期は、スリランカが、紛争後の状況に正しい方法で取り組む素晴らしい機会だ」とアダムズは述べた。「国連人権理事会とスリランカ政府は、その機会を無駄にするべきではない。」