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ICC/ダルフール:アフリカ出身の平和維持部隊の保護のための事件 進展

反政府組織の指揮官が国際刑事裁判所へ出頭予定

 (ニューヨーク) -国際刑事裁判所(ICC)が、ダルフールでのアフリカ連合平和維持部隊の殺害の責任者という容疑で反政府指導者を召喚したことは、民間人を保護するため配備された部隊を攻撃することが重大な法違反であることを明白にするもので重大だ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。反政府勢力指揮官バハル・イドリス・アブ・ガルダ(Bahar Idriss Abu Garda)は、召喚に応え、明日、裁判所に自主的に出頭するものとみられる。

バハル・イドリス・アブ・ガルダは、2007年9月30日に南ダルフール(スーダン)にあるハスカニタ(Haskanita)のアフリカ連合基地を襲撃した際、スーダン・アフリカ連合ミッション(AMIS)の12名の平和維持部隊要員と文民警官を殺害した戦争犯罪で訴追(charge)された。少なくとも他に8名が重傷を負った。アブ・ガルダは、2005年6月にICCのダルフール捜査が開始されて以来、ダルフールの事態の関連で初めて裁判所に出廷する人物となる。

「本事件の訴追に向けた動きは、民間人を保護する平和維持部隊を計画的に攻撃することが極めて深刻な法違反であることを明らかにしている」とヒューマン・ライツ・ウォッチのインターンナショナル・ジャスティス・プログラムのディレクター、リチャード・ディカーは述べた。「我々は、バハル・イドリス・アブ・ガルダが自ら裁判所に出頭することを歓迎する。こうした対応は、スーダン政府が、ダルフールにおける犠牲者に法の正義をもたらすのを容赦なく妨害し続けているのと全く対照的である。」

ICCローマ規程は、本人の裁判所への出頭を確保するのに召喚状で十分であると裁判官らが判断した場合、予備審判部が逮捕状ではなく召喚状を発付することを認めている。ICC検察官は2009年2月に召喚状を要請した。

平和維持部隊は、女性や少女たちが草や薪や水を集めるため避難民キャンプを離れる際に彼女たちを保護するパトロールなど、極めて重要な民間人の保護活動を行う責任をおっている。こうした平和維持部隊のエスコートの結果、ダルフール中でなお頻発するレイプや他の性暴力のリスクが下がった。しかし、国際平和維持隊要員への攻撃が繰り返されたため、ダルフールでの平和維持活動は効率性を低下させざるをえなかった。つまり、ハスカニタの攻撃後数ヶ月間、AMISは、より厳しい安全ガイドラインを採用し、すべての活動を縮小し、要員を基地内活動にとどめたため、民間人保護のキャパシティーが大幅に制限された。

2007年12月31日にダルフールにおける平和維持活動を引き継いだアフリカ連合国連合同平和維持ミッション(UNAMID)にとっても、治安上の懸念が、活動の深刻な障害となっている。平和維持隊要員たちは、反政府武装勢力とスーダン政府軍双方から、何度も直接攻撃されている。2008年7月以来約十数人の平和維持隊要員が殺害され(2009年3月からの2名を含む)、さらに多くが負傷した。以来、ダルフール全域は、二番目に高いセキュリティー・レベルである「国連セキュリティー・レベル4」に引き上げられたままであり、その結果、人道援助活動に深刻な影響がでている。

「平和維持部隊への攻撃は、すでに脆弱なダルフールの治安状況をさらに悪化させる」とディッカーは述べた。「反政府勢力の攻撃の規模は、スーダン政府が対ゲリラ軍事作戦のなかで犯した犯罪ほど重大なスケールではないが、しかし、民間人に大きな影響をもたらす深刻な犯罪であるという点には変わりない。」

ハスカニタ基地への攻撃で殺害された人々には、アフリカの4カ国から来た平和維持隊要員たちもいた。アフリカ連合は自ら捜査を行い、2007年10月に「容疑者を国際的な司法の場で裁く」必要性を明記した声明を発表。その後、ICC非締約国である北アフリカの数カ国は、ICCの今日までの捜査・裁判手続きがアフリカに集中しているとして近年、ICCへの批判的を強めてきている。ICCが現在捜査中の4つの事態はすべてアフリカの事態であるが、うち3件は犯罪が行われた国の政府が自らICCに事態を付託したものであり、ダルフールに関しては国連安保理が事態を付託した。

「裁判所が反アフリカ的だというICC非締約国数カ国からの批判は、ICCが幾多のアフリカ人の被害者たちを保護するために闘っているという事実を不可解にも無視している」とディッカーは述べた。「この批判は、ボツワナ、マリ、ナイジェリア、セネガル出身の平和維持部隊要員に対する攻撃の責任者を裁く努力を裁判所が行っている事実に照らすと、さらに不可解というべきである。」

2009年3月4日、ICCは、ダルフールにおける戦争犯罪と人道に対する罪でスーダンのオマル・バシル大統領に対し逮捕状を発付。スーダン政府はこれに対し、100万人以上の人命を守るための人道支援を提供していた国際援助団体をスーダンから追放。これをICCのせいだと非難した。バシル大統領はすでに様々な人権侵害の責任者と疑われているが、この追放行為により、同大統領は、さらに人権侵害を重ねたこととなる。

背景

2005年3月31日、国連安全保障理事会はダルフールの状況をICC検察官に付託した。決議は、スーダン政府及びすべての紛争当事者に対しICCと検察官に完全に協力すること要求している。バシル大統領に加え、裁判所は人道問題担当国務大臣アハメド・ハルーンと「ジャンジャウィード」民兵指揮官アリ・ウシャイブの2名に逮捕状を発付。スーダン政府は、これまで、すべての容疑者の身柄引き渡しを拒否してきている。

2008年11月1日、ICC検察官は、裁判官らに対し、ハスカニタの攻撃について、バハル・イドリス・アブ・ガルダを含む3名の反政府武装勢力指導者に対する逮捕状を請求。検察官は、平和維持隊要員を殺害しそして重度の傷害を負わせたこと、平和維持ミッションの人員、装備、物資、機材、車両に対する意図的な攻撃を行ったこと、そして略奪という戦争犯罪の容疑で3名の逮捕状を請求した。裁判官らは、残りの二人の反政府武装勢力容疑者(氏名は公表されていない)に関する申立を審理中である。2009月2月、ICC検察官は、ICCに対し、3名の指揮官らが自主的に裁判所に出頭する旨述べているため、召喚状で十分である旨伝えていた。

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