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インド:政府は民兵組織の後ろ盾をやめよ

人権侵害者の訴追と国内避難民のコミュニティの保護こそ必要

(ラーイプル) - インド中央政府およびチャッティースガル州政府は、チャッティースガル州南部における2005年中頃からの毛沢東主義の反政府勢力との紛争の中で、数万人もの人びとに対する攻撃、殺害、強制移住に関与している政府の治安部隊および政府が後ろ盾となっている民兵組織の責任を追及すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日リリースされた報告書で述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、インド政府に対して民兵組織サルヴァ・ジュドムの違法活動への支援を止めるよう求めるとともに、当該地域の州政府に対して数万人もの国内避難民を早急に保護するよう促している。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、毛沢東主義の反政府勢力ナクサライトに対しても、民間人への攻撃や人権侵害を止めるよう求めている。

182ページの報告書 「中立の民間人が最大の犠牲者:インド・チャッティースガル州での政府、民兵組織、ナクサライトの人権侵害 (Being Neutral Is Our Biggest Crime: Government, Vigilante, and Naxalite Abuses in India`s Chhattisgarh State)」 は、政府の治安部隊および民兵組織サルヴァ・ジュドムと、ナクサライトとの血なまぐさい勢力争いに巻き込まれた民間人、特に少数部族コミュニティに対する人権侵害の記録である。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、政府の治安部隊とサルヴァ・ジュドムのメンバー(当局は、同民兵組織について、自発的な反ナクサライト市民運動グループという、偽りの説明をしている)が、2005年中頃より村々を襲撃し、村民を殺害・レイプし、家を焼き払い、村民を政府のキャンプに強制移住させていることを明らかにしている。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、政府の治安部隊が参加した攻撃がチャッティースガル州のダンテワダやビジャプールにある18の村で行われたとの50件以上の目撃者証言をまとめた。また、ナクサライトは爆撃を行っている。ナクサライトは、一般人のうち特にサルヴァ・ジュドムを支援していると疑った人びとを拉致、暴行、処刑している。何万人もの国内避難民(IDP)が、チャッティースガル州の政府キャンプや、隣接するアンドラ・プラデシュ州の森林地帯で行き場を奪われさまよっている。

「チャッティースガル州政府はサルヴァ・ジュドムへの支援を否定している。しかし、多くの目撃者が、警察が、サルヴァ・ジュドムの暴力的な村落襲撃(殺害、略奪、村の焼き打ち)に加担していると語っている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの子どもの権利アドボカシー・ディレクターのジョー・ベッカーと調査チームは述べた。「チャッティースガル州政府は、民兵組織の後ろ盾となるのをやめて、人権の尊重を促進し、自らの責務を果たすべきだ。」

「中立の民間人が最大の犠牲者」は、2007年の暮れから2008年初めにかけての4週間、ヒューマン・ライツ・ウォッチがチャッティースガル州およびアンドラ・プラデシュ州で行った現場調査に基づき、被害を受けた村民、サルヴァ・ジュドムのリーダー、政府当局者や警察、ナクサライトの元メンバー達など約175件の証言から成っている。

反政府組織ナクサライトは、民間人であっても、サルヴァ・ジュドムの支援者と疑うや、拉致し、暴力を加え、殺害するという残虐な報復を行っている。サルヴァ・ジュドムの作戦行動で紛争が激化した2005年中頃以前から、ナクサライトは拷問、強奪、即時処刑、少年兵の徴集といった人権侵害を広く行ってきた。

この紛争で、深刻な国内避難民問題が生じた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、少なくとも10万人が、チャッティースガル州南部のキャンプに再定住するか、隣接州(主にアンドラ・プラデシュ州)への避難を余儀なくされたことを明らかにしている。キャンプで暮らす避難民は、政府の医療支援や生活援助をほとんど受けられず、基本的な衛生状態も守られない。キャンプの避難民によると、政府は、食糧配給を停止又は提供できない状態にいる。他にも、紛争ゆえ、多くの村民たちが、チャッティースガル州南部の無認可キャンプに避難するはめに陥っている。こうした人びとは事実上行方不明者扱いで、その生活状態はほとんど情報がない。

「数千人もの家族が、自分達の土地、家、生活を失い、ほとんど援助なきまま、老朽化したキャンプに押し込められている」とベッカーは述べた。「チャッティースガル州政府は、故郷への帰還を望む人の生活の再建を支援し、帰還を恐れる人については、その生活状態の改善に乗り出すべきだ。」

3万から5万人と言われる避難民が、アンドラ・プラデシュ州の森林地帯に避難して定住をはじめたものの、またもや立退きの危機に瀕している。アンドラ・プラデシュ州当局は、こうした人びとを不法居住者とみなしている。相談を受けたり、適切な定住先を提供したりするどころか、強制立退きや強制移住を繰り返し強いている。また、森林担当局は、こうした村落の多くを何度も焼き払っている。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、アンドラ・プラデシュ州政府が、食料補助や雇用保証などの政府の福祉政策を、避難民には適用しないという差別的な方針をとっていることを明らかにした。避難民の子どもたちは、アンドラ・プラデシュ州の学校教育で使われる言語を話せないために、中退を余儀なくされている。避難民の多くは、チャッティースガル州の故郷の村に戻ることを待ち望んでいる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ナクサライトに対し、民間人に対する攻撃を直ちに止め、キャンプの住民が報復を受けずに故郷の村に戻ることを認めるよう要求した。

同報告書は、この紛争が子どもの生活に与える影響について詳述している。ナクサライトは長年、6歳の幼い子どもさえ密告者とし、12歳以上の子どもを武力組織に組み入れてきた。チャッティースガル州警察は、子どもを特別警官として徴用して同州政府の治安部隊の補助要員として使い、対ナクサライト作戦に従事する極めて危険な部門に配備してきた。チャッティースガル州警察は、こうした取り扱いは許されないとは認めた。しかし、政府は、特別警官要員にされた未成年者を明らかにして、動員解除し、社会復帰させる施策は講じていない。

この紛争は、子ども達から教育の機会も奪っている。サルヴァ・ジュドムが活動を開始して以来、多くの子ども達は、誘拐の恐れから学校に通えなくなってしまった。ナクサライトは、軍やサルヴァ・ジュドムによる徴用を阻止するという名目で、多くの学校を破壊した。学校はキャンプ内に移動しているが、子どもたちは過密環境での勉強を余儀なくされている。

目撃者の証言から抜粋:

「ジュダムと警察が村に来た。3、4台のトラックに分乗し、さらに多くのやつらが徒歩で・・・そして私達の村を焼き払った。6軒ぐらい、小屋に火がつけられたんだ。やつらが初めて来たのは朝早く、4時頃だったろうか。まず、いくつか小屋を燃やしてから、全員が村を捨ててインジャラム・キャンプに行かないと、小屋を全部焼き払うと言った・・・そして、サーパンチ(村の役人)とプージャリ(聖職者)を殴った。他の村人も殴った。村にやって来たやつらは弓矢や棒を手にし、警察はライフルを持っていた。やつらはまた、村の・・・さん(女性、匿名、20歳くらい)をレイプし、村に置き去りにした。」
―チャッティースガル州ダンテワダ地方のムクドゥトング村から逃げてきた村民、2007年11月

「去年は1回しか仕事がもらえなかった・・・村(地名は明らかにできず)にいた時は、自分の畑を耕していた。今じゃ伸び放題のジャングルになって、もう耕せたもんじゃない・・・土地や財産はみんな(村に)ある。死ぬ時はキャンプじゃなく、自分の土地で死にたい。キャンプでなんか絶対に死にたくない。」
―ダンテワダ地方のキャンプ居住者、2007年12月

「夫は、私たちのために穀粒を持ってくると言って、(キャンプから)自分の村に戻りました。村に戻った時、彼ら(ナクサライト)が夫を連れ去り、殺し、死体を道に置き去りにしました。去年(2006年)の7月のことでした。・・・私は一度も村に戻っていません。なぜナクサライトが夫を殺したのか分かりません。彼はサーパンチ(村の役人)でも、パテル(村長)でも、SPO(特別警官)でも何でもないのに。」
―政府が管理するサルヴァ・ジュドムのキャンプ、ドーナパルの居住者、2007年12月

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