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反・死刑の国連決議にアジア諸国が反対票

120カ国が支持した死刑モラトリアムに反対するアジア太平洋11カ国

A view of the United Nations General Assembly, at UN headquarters, October 1, 2018.  © AP Photo/Richard Drew

(バンコク)―アジア太平洋地域の11カ国は、死刑に反対する国連決議に反対票を投じた数少ない国家だ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。11月17日に120の国連加盟国が、死刑のモラトリアム(停止)を再三にわたって働きかけていた国連総会第3委員会の決議案に賛成票を投じた。12月には、総会本会議で当該決議案が採択される予定で、本質的に残酷かつ不可逆的な刑罰の形態である死刑を世界が否定したことを示した。

反対票を投じたのは39カ国のみで、アジア太平洋地域からの11カ国はアフガニスタンブルネイ中国インド日本モルディブ北朝鮮パキスタンパプアニューギニアシンガポールトンガだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長代理フィル・ロバートソンは、「死刑制度のモラトリアムに反対票を投じた政府に、世界でもっとも重大な人権侵害国が含まれるのは驚くべきことではない」と指摘する。「アジア太平洋地域の11カ国が反対票を投じたという事実は(いまだ死刑を執行している政府が多く含まれる)、アジア地域が人権を尊重する司法制度を確立するためにはまだほど遠いことを明示している。」

死刑のモラトリアムに賛成票を投じた国々は、死刑制度の廃止に向けて早急に必要な措置を講じるとともに、反対票を投じた39カ国に死刑の執行を一時停止するよう圧力をかけるべきだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチはその本質的な残酷性(inherent cruelty)を理由に、いかなる状況下での死刑にも反対の立場をとっている。

国連加盟国による今回のモラトリアム呼びかけ決議は、33カ国(多くのアジア諸国)を代表してシンガポールが提案した「すべての国家が適切な刑罰の決定をはじめとする独自の法制度を構築する主権的権利」を主張する決議案の改訂を事実上無効にするものである。

今回の決議は以前のバージョンよりもさらに踏み込んだもので、女性が差別的に死刑の適用対象とされているぜい弱な集団であることを初めて認めている。不利な立場に置かれている少数派の集団が不釣り合いに多く死刑囚となっている現状も再認識された。そして、子どもへの死刑の適用に対する懸念、とりわけ個人の年齢が確定できない場合の適用をせばめる必要性に言及した。

前決議では、死刑判決を受けた個人、死刑執行を待っている個人、上訴で減刑された個人の数や、死刑囚の年齢・人種・性別・国籍についての情報を開示し、各国政府が死刑をめぐり透明性を保つことが求められていた。が、いぜんとして死刑を適用しているアジア諸国政府の多くは死刑関連の統計をほとんど公開していない。

2007年以降に採択された死刑執行のモラトリアムを求める7つの総会決議は、死刑反対への世界的なコンセンサスの高まりを示しているが、アジアではいまだ死刑に処されている人が多い。2019年末の時点では世界各地で少なくとも26,604人が死刑囚として収監されていた。この時期、パキスタンは世界最多数の死刑囚がいる国のひとつだった。バングラデシュマレーシアインドネシアスリランカでも死刑囚の数は急増しており、シンガポールには上訴の手が尽きた死刑囚が50人いるとされている。略式処刑および拷問に関する国連特別報告者が、「違法薬物関連犯罪での死刑執行は国際法違反に相当し、かつ違法な殺人である」と述べて働きかけたにもかかわらず、これらの国々の多くで、非暴力的な違法薬物関連犯罪をふくむ様々な犯罪で死刑の義務的適用が定められている。

世界最大の死刑執行国が中国であり、イランがそれに続くことは広く認識されている。中国の死刑に関する統計を追跡するNGOのDuiHuaは、同国で2002〜18年の間に8万4,000件の死刑執行があったと推定しているが、最高人民法院がすべての死刑判決を再審理できるようになった2007年判決以降、その数は大幅に減少しているように見受けられる。中国における死刑判決の正確な数は国家機密のため不明なままで、北朝鮮、ベトナム、ラオスの正確な数を把握することも不可能だ。ヒューマン・ライツ・ウォッチは北朝鮮の、とりわけ政治犯収容所における公開処刑を調査・検証してきた。一方ベトナムでは、死刑関連情報が国家機密扱いとなっているものの、公安省が2017年の初め、2013〜16年の間に429件の死刑を執行したと報告した。

モラトリアムに賛成票を投じたマレーシアは現在、死刑囚監房に約1,324人を収監している。2018年10月、マレーシア政府は死刑執行のモラトリアムを発出、死刑制度廃止を目指す意向を表明した。ところが2019年3月には死刑制度を維持し、代わりに死刑の義務的適用を排除するとして、廃止の意向を撤回。死刑執行のモラトリアムは引き続き実施されているようだが、死刑適用に終止符を打つ措置はまだ講じていない。

また、投票を棄権したのは24カ国で、インドネシア、ミャンマー、タイ、ベトナムもこれらにふくまれる。2016年以来死刑を執行していないインドネシアには、10年間死刑囚監房に収監されている60人をはじめ、死刑囚が約274人いる。2019年には少なくとも80人に死刑判決が言い渡され、48人とされていた2018年から大幅に増加した。

15カ国を超えるアジア太平洋諸国が死刑のモラトリアムに賛成票を投じたが、そのなかには実態が反対方向に向かっているスリランカとフィリピンも含まれている。昨年、スリランカ政府は43年間続いた事実上のモラトリアムを終了すると警告したが、裁判所がこれを否定した。フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領もくりかえし死刑の復活を唱えている

死刑をめぐり世界的なモラトリアムを要請した2007年12月の決議で、国連総会は、「死刑による(犯罪の)抑止力をめぐっては決定的な証拠がなく、冤罪や誤審で死刑が執行された場合は不可逆的かつ回復不能」であると述べた。

ロバートソン局長代理は、「アジアで死刑囚監房に収監されている受刑者の数は衝撃的で、世界が死刑制度の廃止に向けて動くなか、この地域は脱線状態に陥ってしまっている」と述べる。「死刑のモラトリアムを支持した国連加盟国は、死刑制度を廃止し、すべての死刑判決を減刑すべく、一致団結して関係各国に圧力をかけるべきだ。」

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